作業分解構成図 (WBS) とは、プロジェクトの成果物を従属関係に基づいて異なるレベルに視覚的に整理したものです。これは基本的にはプロジェクト計画を見える化したもので、プロジェクトの目的を一番上に置き、その下に従属関係と下位の従属関係を配置します。この記事では、WBS のさまざまな要素について説明し、次のプロジェクトで WBS を作成する方法について、詳細な例をあげてご紹介します。
作業分解構成図 (WBS) とは、プロジェクトを分割して視覚的に図示したものです。WBS は、作業範囲から始まり、成果物と、成果物がどのようにプロジェクト全体につながるかを示します。
作業分解構成図は視覚的に図示されるため、ワークフロー管理ソフトウェアとプロジェクト管理フレームワークを組み合わせて作成が可能です。その方法には、タイムライン、かんばんボード、カレンダーなどが挙げられます。
作業分解構成図の作成方法、含める内容、そして仕事にどう応用できるかについて、例をご紹介します。
作業分解構成図 (WBS) は、プロジェクトを階層的に整理するツールです。WBS では、プロジェクトの視覚化のために成果物を副成果物に分解し、キーとなる従属関係のアウトラインができ上がります。すべての作業分解構成図は、以下の数種類の部品で構成されています。
プロジェクト計画、説明、プロジェクト名などを含む、プロジェクトベースラインあるいはスコープステートメント
整理されたプロジェクトのスケジュール
プロジェクトの成果物およびそれにつながるサブタスク
プロジェクトマネージャーは、作業分解構成図を使用して、複雑なプロジェクトスコープを分解し、プロジェクトと従属関係にある成果物を可視化ます。これによりチームメンバーが得られるのは、To-Do リストではなく、視覚的なプロジェクトの概要です。
次に、成果物を細分化していくことで、作業の階層構造を整理します。プロジェクトは、必要な業務や全体のプロジェクトのタイムラインに基づいた複数の段階を含んでいる可能性があります。
記事: 仕事を順調に進めるプロジェクト計画の作り方成果物ベースの作業分解構成図: これは、成果物指向型の階層的な作業分解方法です。言葉が理解しづらくても、ご心配なく。これは簡単に言うと、プロジェクト全体の範囲を確認して、プロジェクト達成のために必要な成果物まで作業を分解していくことを意味します。このアプローチは、求められる成果が明確な短期プロジェクト、たとえば、年間収益レポートの作成などに最適です。
段階ベースの作業分解構成図: ここでは、プロジェクトの段階を使用して、複数のタスクグループを収容するワークパッケージを作成します。そして、これらのタスクグループは、ステージごとに完了されていきます。段階ベースの WBS は、求められる成果があまり明確でない長期的なプロジェクトに使用するとよいでしょう。たとえば、今後 3 年間で社員の定着率を 20% 向上させる、といった例が考えられます。
作業分解構成図のレベル (階層) は、従属関係に基づいてタスクを分割する際に便利です。プロジェクトは千差万別のため、作業分解構成図のレベルも同様にまちまちです。プロジェクトはなんらかの従属関係があるものがほとんどですが、深い階層の従属関係は不要なプロジェクトもあるでしょう。
WBS には、主に 3 つの従属関係のレベルがあります。ただし、WBS によってはレベルがそれ以上にも以下にもなる場合があります。各レベルは親タスクに結びついており、親タスクを完了するために必要な業務が従属関係によって整理されています。
作業分解構成図の最上層に位置する 3 つの従属関係を見てみましょう。
作業分解構成図のレベル 1 は、親タスクが含まれるため、プロジェクトを最も簡易的に示したものになります。これは通常、プロジェクトの目標と一致します。
たとえば、プロジェクトチームがウェブサイトデザインのリニューアルに取り組んでいるとします。その場合の WBS のレベル 1 は次のようになります。
ウェブサイトのデザインを刷新する
ご覧の通り、シンプルで一目瞭然です。レベル 1 は、基本的な目標、すなわちプロジェクト管理のさまざまなフェーズの第一段階に当たります。この目標を達成するために必要な業務は、レベル 2 や 3 に登場します。
記事: 効果的なプロジェクト目標の書き方 (実例付)ここから、プロジェクトのスコープに応じて分解構成図は少し複雑になっていきます。WBS のレベル 2 には親タスクのサブタスクが含まれます。これを従属関係ともいいます。
それでは、先の例のウェブサイトのデザインを刷新するために必要なタスクを見ていきましょう。
クリエイティブなブレインストーミングセッションを行う
ブランドのガイドラインを見直す
メッセージングフレームワークを作成する
ロゴのデザインをリニューアルする
新しい写真を追加する
レベル 1 より少し詳細になりましたが、レベル 2 はまだ、プロジェクト目標の達成に必要な従属関係の概要に過ぎません。
WBS のレベル 3 では、これらの従属関係を、副従属関係という管理しやすい構成要素にさらに分解します。プロジェクトのライフサイクルの最下層に位置するこのステージでは、最も詳細なタスクを定義することになります。これらの実行可能なタスクが、必要な成果物すべてを完成させるための道筋をよりシンプルなものにしてくれます。
先ほどの例を取り上げて、新しいサイトデザインに使用できるレベル 3 のタスクをご紹介します。
ブランドカラーを選択する
ブランドのムードボードを作成する
UX デザイナーを割り当てる
モックアップデザインを作成する
モックアップをレビューし、承認する
ブランドの写真撮影のスケジュールを設定する
写真のサイズ変更・編集を行う
ご覧のように、プロジェクトの目標を達成するための業務がかなり明確になりました。どれだけ具体的に視覚化したいかによって、さらにレベルを追加することもできます。
作業分解構成図は、基本的には工程の階層を視覚的に整理した、簡易的なプロジェクト計画です。つまり、WBS には、目標、成果物、タイムライン、主要な関係者といった、優れたプロジェクト憲章に含まれる要素がすべて揃っていなくてはなりません。
作業分解構成図を作成するに当たって、まず何を盛り込むかを知る必要があります。ここからは、作業分解構成図に含めるべき重要な要素を詳しく解説していきます。
新しくプロジェクトの作業分解構成図を作成するに当たっては、まず WBS 辞書から始めましょう。適切に作成された WBS は視覚的であるために、詳細な説明を書き込む余地がありませんが、WBS 辞書は、各タスクを詳細に説明してくれます。辞書を作ることで、チームメンバーがさまざまなタスクの必要な詳細を簡単に把握できるようになります。
辞書を作成するのはプロジェクトマネージャーですが、各部門のチームメンバーの協力を求めることにもメリットがあります。これによって、辞書の利便性が高まり、あらゆる項目に正しい説明がつけられるようになります。
辞書に含めるべき項目の例:
タスク名: 数単語に収めて、明確でシンプルにしましょう。
説明: もう少し詳しく書きますが、それでも 1~2 文に収めましょう。
成果物: ここでも、具体性が大切です。チームが出す成果に何が期待されているのかを、明確にしましょう。
予算: 予想される出費です。いつまでに、何に、どれだけの費用が掛かるのかを説明します。
マイルストーン: プロジェクトのタイムライン上で、一連のタスクが完了する重要な瞬間です。
承認: 承認を必要とするタスクがある場合、どのタスクなのか。
項目はいくつでも追加できますが、最も考慮すべきポイントは、タスクの達成に必要なプロジェクトの業務について、プロジェクトのチームメンバーが情報を見つけられるようなリソースを作成することです。
タスクの説明には、タスク名と、目標に関する簡単な説明を入れます。WBS には詳細な説明を記載する余地がないため、追加情報は WBS 辞書にまとめましょう。
タスクの説明は、チームメンバーがタスクの内容を短時間で簡単に把握できるようにするものです。そのため、この段階ではまだそこまで詳細にこだわる必要はありません。
タスクの担当者は、責任の所在とコミュニケーションの両方の点で明記しておくべき重要な情報です。情報が見つけやすいほど、タスク達成までの時間が短縮されます。多くの場合、プロジェクトマネージャーがタスクの担当者ですが、タスクのタイプによっては、部門長や経営者も担当者になる場合があります。
プロジェクトの情報を探して時間を無駄にはしたくないものです。タスクの担当者を割り当てることで、プロジェクト関係者は適切な担当者に速やかに質問できるため、チームの生産性を向上できます。
Asana でタスクの管理と優先度設定をする必ずとは限りませんが、大規模な予算を要するプロジェクトは、注意深く管理する必要があります。予算が守られているかを簡単に管理するには、タスクの予算上限を設定しておくと便利です。
予算の管理を行わないと、予想より支出が増え、利益率が下がってしまうことになります。ですから、全体予算だけでなく、個別のタスクのコストも必ず管理するようにしましょう。
目標とする完了日を把握することが重要なのは言うまでもありません。しかし、完了日の変更を念頭においておくことも大切です。
定められた期間を超過しているプロジェクトをいくつも管理するのは大変ですが、避けられないこともあります。スケジュール表やプロジェクト管理ツール内で各タスクを細かい作業に分割して、進捗を正しく管理しましょう。スケジュールの遅れをリアルタイムで把握できるため、締め切りの問題が重なって本来の完了日にプロジェクトが終わらないといった事態を回避できます。
すばやい進捗確認のためには、スケジュールの管理と合わせて、タスクのステータスを記録することも重要です。記録方法はいくつかありますが、多くのチームは、保留、進捗中、完了といった用語を使用しています。
これによってタスクの進捗を管理しやすくなるだけでなく、チームの生産性を俯瞰的に把握できます。たとえば、一部のチームがタスクを完了できないことが続くなら、根本的な問題が隠れている可能性があります。このように、チームの仕事量やコミュニケーションのつまづきが大きな問題に発展する前に、それらを解決することができます。
記事: 効果的なプロジェクトステータスレポートの書き方それではいよいよ作業分解構成図を作成しましょう。WBS は仕事の階層構造を視覚的に示すものであり、さまざまな作成方法があります。あなたとチームにとって最適な方法を選べるのが WBS の魅力です。
チームで一般的に使用される視覚ツールには、タイムライン、かんばんボード、カレンダーがあります。使用しているソフトウェアごとに、少し違う機能もあるかもしれませんが、ここではこの 3 つのツールを紹介し、それぞれを使った WBS の作成方法を細かく解説します。
タイムラインは、カラフルに楽しく仕事を視覚化する優れたツールです。また、WBS に必要な機能も揃っています。フローチャートやガントチャートとも呼ばれる、タイムラインの機能をいくつかご紹介します。
従来のスプレッドシートをインポートする
進捗状況を追跡する
タスクを調整する
従属関係によってタスクをつなげる
期日の変更を調整する
タスクの担当者を割り当てる
未スケジュールのタスクをまとめておく
色別の管理を調整する
レベルごとにセクションで分類する
タスクの絞り込みやソート
WBS の作成を始めるには、既存のスプレッドシートのインポートや、タイムラインツールで直接作成するなど、さまざまな方法があります。タイムラインは、視覚的なレイアウトと機能の調整が自在な点が、かんばんボードとカレンダーとは異なります。どの視覚化ツールがチームに適しているかは、お好みで判断してください。
かんばんボードはタイムラインと似ていますが、視覚的なレイアウトが異なります。かんばんボードは、タスクを横長のタイムラインで整理するのではなく、数枚のボードを並べたようにデザインされています。かんばんツールは、次のような機能によってプロジェクトの進捗維持に貢献します。
進捗状況を追跡する
タスクを調整する
従属関係によってタスクをつなげる
期日の変更を調整する
製品ロードマップを計画する
かんばんボードも、WBS の作成に適したツールで、特に日常のリソース管理によく使用されています。このツールの長所の 1 つが、タスクの詳細を前もって確認できる点です。そのため、WBS 辞書を作成できない場合には、かんばんボードがおすすめの選択肢になります。
この方法で WBS を作成するなら、かんばんボードで仕事を階層化することから始めましょう。
WBS 作成の 3 つ目の選択肢が、チーム用のカレンダーツールを使用することです。タイムラインやかんばんボードに比べると WBS に使用されることは少ないものの、プロジェクトを視覚化するには優れたツールです。また、大規模なプロジェクトでは、1 日単位、週単位、月単位でビューを切り替えられるため、非常に便利です。
カレンダーは WBS 作成に活用できる優れたツールで、他の 2 つのツールとは違った形でプロジェクトを視覚化します。カレンダーを使って WBS の作成を始めるには、既存のスプレッドシートをインポートするか、カレンダーツールで新しいプロジェクトを作成します。
記事: プロジェクト計画を視覚化する 3 つの方法: タイムライン、カレンダー、ボードWBS を構成する要素と、さまざまなツールを使って WBS を作成する方法について見てきたところで、今度は WBS の具体例をご紹介しましょう。どのツールで作成するかによって多少の違いはあるかもしれませんが、必ずこの例と同様のタスクの階層構造やレベルが含まれるはずです。
WBS 作成の際の参考として、作業分解構成図の例をご紹介します。
WBS 作成の際の参考として、先に登場したプロジェクト内容をもとに作成した作業分解構成図の例をご紹介します。
WBS の名前: ウェブサイトデザイン
説明: 新しいブランディングに基づき、旧ウェブサイトデザインを刷新する。
完了日: 2021年 9月 15日
予算: 50,000 ドル
レベル 1:
ウェブサイトのデザインをリニューアルする
レベル 2:
ブランドのガイドラインを見直す (完了)
メッセージングフレームワークを作成する (完了)
ロゴデザインのリニューアル (進行中)
新しい写真を追加する (保留)
レベル 3:
1. ブランドのガイドラインを見直す
ブランドカラー — 菊井 紗代
ブランドのムードボード — 菊井 紗代
UX のデザイン — 武川 智幸
2. メッセージングフレームワークを作成する
見出し — 段田 勝也
ミッションステートメント — 段田 勝也
トーンのガイドライン — 段田 勝也
3. ロゴデザインのリニューアル
スケッチ — 川添 紀夫
モックアップ — 菊井 紗代
最終デザイン — 菊井 紗代
4. 新しい写真の追加
写真撮影 — 川添 紀夫
写真編集 — 菊井 紗代
最終選定 — 川添 紀夫
プロジェクトの規模や複雑さ、スケジュール、選択したソフトウェアによって、WBS の見え方は異なるため注意が必要です。いずれにせよ、こうした細かい業務内容の一つひとつが従属関係で結ばれ、プロジェクトの視覚的な階層構造を形作るのです。
こうして見てくると、作業分解構成図 (WBS) を作成するのはそう難しくありません。コツさえつかめば、タスクの階層構造が視覚化されるおかげで、プロジェクトマネージャーにもチームにもメリットしかないでしょう。ワークマネジメントツールを使えば、視覚的に理解するタイプの人も、言語的に理解するタイプの人も、誰もが WBS を活用できます。
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