スプリントの振り返り (レトロスペクティブ) の重要性と効率的な実施方法を解説

寄稿者 Caeleigh MacNeil の顔写真Caeleigh MacNeil2022年9月30日
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概要

アジャイルフレームワークの会議の一種に、スプリントの振り返り (スプリントレトロスペクティブ) があります。これはチームが次のスプリントに向けて、順調に進んだ作業と改善の余地がある作業について振り返ることです。継続的に改善し、学んだことを次回に反映させるために振り返りは不可欠です。この記事では、アジャイル手法で用いられるスプリントの振り返りを実践する方法と、よくある落とし穴への解決策をご紹介します。

更新: この記事は、スプリントとは何かについての記述を含めて 2022年 9月に改訂されました。

「狂気とは即ち、同じことを繰り返し行い、違う結果を期待すること」という有名な言葉があります。これはプロジェクト管理においても通用することです。何かが思い通りにいかないとき、同じことを続けて行うのは “狂気の沙汰” です。

アプローチを改善するためには、物事がどのように進んでいるかを振り返る必要があります。そういった意味で、アジャイルにスプリントの振り返りは効果的なのです。この記事ではスプリントの振り返りが重要な理由を解説し、その実践方法と注意点をまとめてご紹介します。

スプリントの振り返りとは?

スプリント (sprint) の振り返りは、アジャイルフレームワークの中で、各スプリントが終わってから行われるミーティングの一種です。スプリントの振り返りでは、次のスプリントに向けて、順調に進んだ作業と改善の余地がある作業について検討します。

スプリントってどういう意味?

そもそもスプリントとは何を指すのでしょうか?スプリントとは、日本語で「短距離走」を意味する単語で、ビジネスシーンでは主にアジャイル開発のひとつ、スクラム開発で使用されます。スクラムは、作業をいくつかのセッションにわけ、それを繰り返しながらプロジェクトを完成させていく手法ですが、その際の反復の単位がこの「スプリント」となります。

スクラムのスプリント期間は通常 2 週間程度で、各スプリントの終わりまでに特定の成果物を作成する必要があります。このように作業を整理することで、チームは迅速に働くために必要な集中力を高められます。さらに、その後の各スプリントでプロセスを改善し反復する機会が得られます。これが、スプリントの振り返りがスクラムに欠かせない要素である理由です。これを行うことで、チームがスプリントプロセスを振り返り、継続的に改善する機会ができるのです。

記事: アジャイルとスクラムのための Asanaスプリントの振り返り用無料テンプレート

スプリントの振り返りとスプリントレビューミーティングの違い

スプリントレビューミーティングもスプリント期間が終わった時点で行われるものです。しかしこのミーティングは、プロセスの改善に焦点を当てるのではなく、アジャイルチームまたはスクラムチームが達成した仕事を披露するために行われます。スプリントレビューミーティングでは、チームは通常、製品デモを使って成果を発表します。こうすることで、他の部門の関係者が各成果物を視覚的に理解しやすくなるのです。

一方、スプリントの振り返りは、先述のとおり、スプリント中に順調に進んだプロセスと改善の余地があるプロセスに焦点を当てるミーティングです。ここでは特定の成果物に焦点を当てるのではなく、チームのスプリントワークフローを改善することに焦点を当てます。

スプリントの振り返りを実施すべきチームとは?

チームがスクラム手法を使用しているなら、各スプリントの終わりに振り返りを実施するべきでしょう。スクラムは製品、エンジニアリング、ソフトウェア開発チームなどで最も一般的に使用されるアジャイル手法の一種ですが、どのようなチームであっても、すばやい開発と反復を目標とするならば、スクラムを使用し、定期的にスプリントの振り返りを行うことでメリットを得られます。

また、チームがスプリントで作業していないケースでも、プロジェクトが終了したり、目標を達成したりするたびに振り返り会議は開催する価値があります。そうすることで、経験から学び、学んだことを次のプロジェクトに反映させられるのです。

記事: プロジェクトマネジメントで学んだ教訓を記録しておく方法

スプリントの振り返りに参加すべきチームメンバーは誰?

前回のスプリントでタスクに直接取り組んだチームメンバーだけが、スプリントの振り返りに参加すべきです。通常は、以下のメンバーが参加します。

  • ミーティングを進行するスクラムマスター (スクラムチームリーダー)

  • チームメンバー

  • プロダクトオーナー

一般的には、毎日のスクラム (スタンドアップミーティング) に参加する全員が、スプリントの振り返りに参加する必要があります。

チームに直接参加していない関係者やマネージャーは通常、スプリントの振り返りに参加しません。なぜなら、振り返りは製品チームのために実施されるものであり、各チームメンバーがフィードバックを行い、スプリントプロセスを改善する方法をブレインストーミングする場であるからです。スプリントの振り返り会議に参加する人たちを制限することで、製品チームの集中力を維持し、改善の余地があるプロセスについて安心して意見できる機会を提供できます。

一方、他部門の関係者やマネージャーはスプリントの振り返りに参加しませんが、スプリントレビューミーティングには参加できます。

スプリントの振り返りが重要な理由

スクラムフレームワークの基本原則は、時間をかけて継続的に改善することです。そのために各スプリントには振り返りが組み込まれているのです。個々のスプリントは、チームがスプリント計画プロセスを改良するための学習サイクルとして機能しています。では具体的に、スプリントの振り返りが重要な理由とそのメリットには、どのようなポイントがあるのでしょうか?以下に挙げる点をチェックしてみてください。

  • 順調に進んでいる作業を祝い、続行する。たとえば、タスクが予想以上に長引いたときにスプリントの振り返りの場を利用すれば、チームの成果を認め、積極的なコミュニケーションをサポートできます。ポジティブなフィードバックは、チームが何を続けるべきかを明確にするだけでなく、チームのエンゲージメントを維持し、ストレスによる悪影響を軽減します。

  • 改善すべき点を明確にする。スプリントの振り返りを行うことで、たとえば「各タスクにかかる所有時間の見積もり方法などを変更するべきだ」や「バックログリファインメントプロセスを改善し、似たようなタスクをまとめるべきだ」など、さまざまな改善案が出てくるでしょう。このようにスプリントプロセスを最適化する方法を明確にすることは、継続的な改善に欠かせません。なぜなら、建設的なフィードバックがなければ、チームは改善できないからです。

  • スプリント計画プロセスの改善を実施するためのプランを立てる。改善策を提案することと、それを実行に移すことは別物です。スプリントの振り返りで、チームは次のスプリントに引き継ぐ具体的なアクションアイテムを考え出せます。たとえば、各タスクの所要時間を見積もるために、ポイントシステムの導入などを決定できるでしょう。アクションアイテムを作成することで、チームは責任を持ってスプリントプロセスの改善を実施することになります。

記事: プロダクトバックログ (またその作成方法) とは?

スプリントの振り返りを効率的に行う方法

スプリントの振り返り会議の開催方法はさまざまです。時間が経つにつれて、自分のチームにとって何が一番効果的かがわかってくるので、それに従ってスプリントの振り返り会議の議題を調整し、改良しましょう。標準的な議題テンプレートを作成することで、チームでの共有や、事前のフィードバック収集が容易になります。そうすることで、可能な限り情報に基づいたディスカッションを行えます。

無料ミーティング議題テンプレート

まずは、議題に以下の基本的なステップが含まれているかどうかを確認しましょう。

1. 会議の目標を決める

プロジェクトメンバー全員が同じ方向を目指して前進するには、スプリントの振り返り会議の目標を前もって設定することが不可欠です。そうするためには、まずブレインストーミングを行い、スプリントの振り返りがチームにとってどのような意味を持つのか明確にしましょう。そうすれば、その会議の目標をもとに、今後のすべての会議を効率的に進めていけます。たとえば、うまくいかなかったプロセスを非難するのではなく、スプリント計画プロセスを改善するために、率直で建設的なフィードバックを提供することに重点を置くことを、会議の目標とするべきです。

2. チームのフィードバックを収集する

スプリントプロセスを改善するために活用できる最高の情報源は、あなたのチームです。スプリントを円滑に進めるために、日々の作業をこなしているチームメンバーたちの意見を取り入れましょう。さらに、チームから直接フィードバックを集めることで、スプリントプロセスが各自のワークスタイルやニーズに合ったものになるようサポートすることも可能となります。

スプリントの振り返り会議の 1~2 日前に、各チームメンバーに以下の質問を送り、ブレインストーミングとフィードバックができるようにしておきましょう。

  • 前回のスプリントでうまくいったことは?

  • うまくいかなかったことは?

  • 学んだことは?

  • 次回に向けて、変えるべきことは?

こういった質問事項を事前に送る会議の議題と一緒に共有すれば、このプロセスを簡潔にできます。また、Asana などのプロジェクト管理ツールを活用すると、さらに効率化を図れます。たとえば、Asana のスプリントの振り返りテンプレートを使えば、議題の共有とフィードバックの収集が一箇所で行えます。

スクラムチームの中には、スタートストップコンティニュー手法と呼ばれる、よりシンプルな方法でフィードバックを集めるチームもあります。このアプローチでは、各チームメンバーが、チームがやり始めるべきこと、やめるべきこと、続けるべきことを明確にします。

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3. インサイトを引き出す

非同期的にチームからデータを集め終わったら、次に、振り返り会議中にパターンや共通項を特定しましょう。たとえば、複数のチームメンバーが共通して抱えている問題点、今後のスプリントに持ち越すべき重要な学習事項、あるいは前回のスプリントで役に立ったプラクティスなどが挙げられるでしょう。パターンを特定することで、チームが次のスプリントに設定すべきアクションアイテムの優先順位を決められます。例を挙げれば、複数のチームメンバーが「タスクの完了に必要な情報が足りない」と指摘した場合、それがアクションアイテムで対処すべきこととなります。

可能であれば、振り返り中にチーム全体と画面を共有したり、共有ドキュメントでコラボレーションしたりする方法を見つけましょう。そうすれば、あなたがメモを取り、アクションアイテムを書き留め、一人ひとりのフィードバックを真剣に検討している様子がチームに伝わります。これは、エンゲージメントを高め、会話を実行可能なステップに変えるよい方法です。特に、初めて振り返り会議を実施する場合は、この方法をおすすめします。

会議中のフィードバックを見える化し、収集する方法の一例をご紹介します。このかんばんボードには、会議の議題に加え、質問やさまざまなカテゴリのフィードバックを記録する欄があります。

スプリントの振り返りのかんばんボードの例

4. アクションアイテムを設定する

次に、共通の問題点を解決するためにアクションアイテムを作成しましょう。アクションアイテムは、担当者と期日を明確にした、次に実行する具体的なステップです。これを決めることで、次のステップを完了させることがチームの責任となります。スプリントの振り返り時にアクションアイテムを設定することで、誰がいつ何をするのかが明確になります。さらに、各アクションアイテムがグループの成功に重要である理由をチームが理解するのに役立ちます。

先ほどの例を使うと、複数のチームメンバーが「タスクの完了に必要な情報が足りない」と指摘した場合、スプリントのバックログリファインメント時に関係者から今まで以上に背景情報を集めるというアクションアイテムを作成できます。

5. 会議を締めくくる

スプリントの振り返り会議の最後に数分間、会議をまとめる時間を設けましょう。閉会時には、会議を簡単に要約し、参加者に感謝し、アクションアイテムをどのようにグループと共有するかを明確にします。振り返りを正式に終了させることで、チームの時間と貢献を評価していることを示せます。さらに、今後に向けて、全員が共通認識を持てるようになります。

スプリントの振り返りのデメリットは?よくある落とし穴と解決策

スプリントの振り返り会議は、特に初めて計画する場合は、その進め方が難しいものです。ここでは、よくある落とし穴と、それを食い止めるための解決策をご紹介します。

時間切れ

スプリントの振り返りでは、取り上げる内容がたくさんあるため、決められた時間を大幅にオーバーしてしまうことがよくあります。ここでは、振り返り会議をプラン通りに進めるために活用できる、簡単な解決策をご紹介します。

  • 事前にアジェンダを作成し、共有する。会議の議題を明確に作成しておくと、効率的な会議を行えるようになります。議題には、議論すべきトピックの一覧と、それぞれに割り当てられた所要時間を含めましょう。こうすることで、集中力を維持し、必要なときに次のトピックに移り、議題のすべてを確実にこなせるようになります。また、事前に議題を共有することで、チームメンバーが準備万端で会議に臨め、時間の節約にもつながります。

  • 会議の長さを検討する。スプリントの振り返りの議題をすべて完了できるように、十分な時間を確保しましょう。会議の長さは、チームメンバーの数、スプリントの長さ、振り返りプロセスに不慣れな新しいチームメンバーがいるかどうかなど、それぞれの状況によって異なります。一般的には、1 週間のスプリントでは 45 分、2 週間のスプリントでは 1.5 時間、3 週間のスプリントでは 2.25 時間、1 か月のスプリントでは 3 時間確保する必要があります。特に、リモートでミーティングをする場合は、30 分ごとに短い休憩を入れるようにしましょう。調査によると、ビデオ通話では 30 分を過ぎると集中力は低下してしまいます。

記事: 会議の効率を上げ、時短につなげるヒント

エンゲージメントの欠如

フィードバックを共有することは、必ずしも簡単なことではありません。特に、チームメンバーが問題点を共有することに抵抗があったり、自分の意見が評価されていないと感じたりしている場合は、なおさらでしょう。しかし、スプリントプロセスを改善するためには、チームの建設的なフィードバックが必要です。ここでは、メンバーのモチベーションを高め、全員がうまく貢献できるようにする方法をいくつかご紹介します。

  • 会議で話し合う内容を事前に共有すると、チームメンバーに自分の意見を準備する機会を提供できます。人は、特に突然スポットライトを当てられると、即座に判断することが難しくなるものです。振り返り会議でいきなり難しい質問を投げかけるのではなく、少なくとも数日前に会議の内容を送っておきましょう。この内容には、順調に進んだ作業、改善の余地がある作業、次回はどのようなことをすべきなのか、などといったことも含まれます。

  • 緊張をほぐす。楽しく、コラボレーションしやすい雰囲気をつくるために、アイスブレイク質問で会議を始めましょう。「ホットドッグはサンドウィッチか否か」「もしあなたがジャガイモだったら、どのように調理されたいか」「今すぐ CEO に絵文字をメールで送らなければならないとしたら、何を選ぶか?」などが、よく使われるアイスブレイク質問です。

  • 感謝の気持ちを表す。チームにフィードバックを共有してもらいたいのであれば、安全な空間を作り、チームメンバー一人ひとりの経験や意見が貴重であることを示さなくてはいけません。つまり、チームメンバーの発言に対して、積極的に耳を傾け、内容を書き留めて、どんな意見でも重要であることを示す必要があるのです。そして、忘れずにチームメンバーの貢献に対して心から感謝しましょう。建設的なフィードバックをすることは簡単なことではありませんが、スプリントプロセスの改善に欠かせない要素でもあるのです。

記事: 建設的批判をするコツ、受け取るコツ

次のステップが不明瞭

たとえば、何時間もかけて建設的なフィードバックを伝え、収集し、スプリント振り返り会議を終えたのに、何も起こらないということもあります。フォローアップもアクションアイテムもなく、何も変わっていません。

このような事態を未然に防ぐために、忘れずに、スプリントの振り返りで収集したインサイトを記録し、フォローアップしましょう。ここでは、それに役立つ方法をご紹介します。

  • メモを取り、可能であれば画面を共有する。会議の進行役を務めるスクラムマスターやプロダクトマネージャーは、スプリント振り返り会議ではメモを取るべきです。そうすることで、チームメンバーはフィードバックに集中できます。会議メモは、重要なポイントやフォローアップすべきアクションアイテムを覚えておくのに不可欠なツールです。また、メモの取り方はさまざまですが、最も重要な内容は、議論されたトピック、重要な決定事項、アクションアイテムです。

  • アクションアイテムでフォローアップする。これが、フィードバックをフォローアップし、スプリントの振り返りの目的である「スプリントプロセスの継続的な改善」を達成する最善の手段です。アクションアイテムには、担当者、期日、具体的な内容が書かれた (動詞で終わる) タスク名や説明文を明確に記しましょう。そうすることで、何をすべきかが曖昧になることを防げます。たとえば、単に「タスクの背景情報を増やす」と書くよりも「バックログリファインメントを始める前に関係者からタスクに関する背景情報を収集する」と書いた方が、やるべきことが明確になります。

  • 情報にアクセスできるようにする。メモやアクションアイテムは便利なものですが、チーム内で簡単に共有できなければ、あまり意味がありません。紛失しやすい書類やメールを渡す代わりに、Asana などのプロジェクト管理ツールを活用して、スプリントの振り返りをまとめてみましょう。そうすれば、一か所でスプリントの振り返り会議の議題を配布し、リアルタイムでメモを取り、アクションアイテムを割り当てられるようになります。また、Asana を使ってスプリントを調整すれば、チームがツールを切り替えずに、必要な情報にアクセスできるようになります。

Asana でアジャイルチームを管理

ゴールに向かって “スプリント”!

スプリントの振り返り (スプリントレトロスペクティブ) について解説しました。プロジェクト管理に使われているのがアジャイルなら、スプリントとは何かをまず把握して、各スプリントのあとには必ずスプリントの振り返りを行いましょう。

スプリントの振り返りは、スプリントプロセスを継続的に改善するために不可欠なステップです。次の振り返りを計画する際には、Asana のスプリントの振り返り用無料テンプレートをご利用ください。このテンプレートを活用すると、重要なステップの一つひとつに確実に取り組め、スクラムの振り返りプロセス全体を通してチームが簡単にコラボレーションできるようになります。

スプリントの振り返り用無料テンプレート

アジャイルチームにとっての重要な指標である「ベロシティ」について知りたい場合は『ベロシティとは?定義と活用方法を解説』をご覧ください。

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