この記事では、アジャイル手法における「ベロシティ」の意味とその活用方法、注意点を解説します。ベロシティの意味を正しく理解して、より効率的にプロジェクトを進められるようにしましょう。
アジャイルについての詳細は『アジャイルとは?手法とメリットを解説』をご覧ください。
ビジネスにおけるベロシティとは、作業が進む速度または作業量のことを指します。
プロジェクトを進めるには、いくつかのフレームワークがありますが、その中でも人気のひとつなのが「スクラム」で、ベロシティはこのスクラム内で用いられます。スクラムは短いサイクルを迅速にくり返すフレームワークで、以前はシステム開発やソフトウェア開発で主に使われていましたが、現在ではその他のチームでも採用されています。
スプリント (イテレーション): スクラムでくり返し行われる作業セッションのこと。各スプリント後に成果物がリリースされる。
ストーリーポイント (SP): 作業を完了するのに必要な見積もりの測定単位。
アジャイル手法のひとつであるスクラムにおけるベロシティとは、各スプリントでチームが消化したストーリーポイントの合計となります。ベロシティを見れば、各スプリント (タスク) でどの程度の仕事ができたのかが数値として見えるわけです。
Asana でアジャイルチームを管理チームの作業速度や作業量が数値化される「ベロシティ」ですが、そもそもどのような目的があるのでしょうか。ベロシティの目的は、各スプリントで行われる作業や業務のペースを安定させることです。数値として見えることで、作業スピードや作業量のバラつきを避けることができるのです。
前述のとおり、ベロシティはアジャイル手法で使われる指標ですが、どのように算出するのでしょうか?ベロシティの出し方を簡単に解説します。
各スプリントにあるそれぞれのタスク (業務) のストーリーポイントをつける: ストーリーポイントはあくまで相対値だということを忘れないでおきましょう。
前項で出した各タスクのストーリーポイントを合算する: 1 で出した各タスクのストーリーポイントを合わせたものが、そのスプリントのベロシティとなります。
1 と 2 の工程はくり返しおこない、ベロシティの平均値を出していきます。
アジャイルプロジェクト計画テンプレートを作成さて、アジャイル開発においてベロシティはどのような使われ方をされるのでしょうか。ベロシティの活用方法をまとめます。
ベロシティは、今後行うスプリントの参考値として活用できます。
次のスプリントの予定ストーリーポイントをチェックし、それが達成可能な値かどうかを過去のスプリントのベロシティと比較して考えます。ベロシティはスプリントプランを立てる時の指標として役に立ちます。
ベロシティは、プロジェクトの完了見込み時期の予測をするときにも活用できます。
たとえば、ひとつの開発プロジェクトの合計ストーリーポイントが 300 で、チームのベロシティが 30 であるとします。この場合、10回のスプリントでプロジェクトが完了すると予測することができます。また、1 回のスプリントに要する時間が 2 週間であれば、このプロジェクトは 20 週間で終了すると予想することも可能です。
各スプリントの作業速度または作業量をベロシティとして数値化することで、チームの成長が明確化します。たとえば、ベロシティが上昇傾向にあればチームが成長していると捉えることができるでしょう。また常に安定したベロシティを出していれば、ペースを乱さずにプロジェクトが進んでいると考えられます。一方、もしベロシティに大きなばらつきがあった場合は、作業工程やチームの見直しが必要なのかもしれません。ベロシティはチームの状態を可視化するのに適しています。
ベロシティはアジャイルチームにとって重要な指標です。ただし、いくつか注意すべきポイントもあるので、ご紹介します。
先述したように、ベロシティは今後行われるスプリントの参考値として用いられます。ただし、直近のベロシティだけで判断してしまうのは禁物です。わかりやすい例を挙げると、もし直近のスプリントではチームメンバーが欠けていたとしたら、そのスプリントでのベロシティは不確実であると言えます。間違った判断をしないためにも、参考値としてのベロシティは、複数のスプリントにつけられたものの平均値を使います。
プロジェクトマネジメントにおいて、ベロシティは非常に役立つツールとなり得ます。ベロシティは 1 回 1 回つけたら終わりにせず、その推移を必ず監視しましょう。ベロシティの使い方でも述べたとおり、ベロシティではチームの成長度も測ることができます。ベロシティが安定しているのか、上昇しているのか、はたまた不安定なのか。数値は監視するようにします。
ベロシティの目的は、各スプリントでの作業を安定させることです。数値が上昇すればチームが成長していると判断できるので望ましいことですが、それを目的とするのは間違いであると言えます。ベロシティの上昇が目的となってしまうと、達成が極めて難しい数値をベロシティ目標として掲げてしまう可能性もあります。そういった状況を避けるためにも、今一度ベロシティの目的を見直しましょう。
また、数値化することでチーム間に競争意識が生まれることもあるでしょう。相対値であるベロシティで争うことも、望ましくありません。ベロシティの目的を正しく理解し、あくまで参考値として認識することが重要と言えます。
アジャイルで用いるベロシティの意味、見積もり方、使い方、注意点について解説しました。アジャイル手法を採用しているプロジェクトチームメンバーなら、ベロシティについて正しく理解し、参考値としてこれからのスプリントに役立てましょう。
スクラムをはじめとしたアジャイル手法を採用するときに重要なのは、チーム全員がアクセス可能な情報を一元管理することです。そのためには、Asana のようなワークマネジメントプラットフォームがおすすめです。スクラムのスプリントを管理できるだけでなく、チームメンバーのコラボレーションとコミュニケーションの改善もサポートします。
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