プロダクトバックログとは、大きなロードマップの一部として完了・完成させるべきタスク、フィーチャー、アイテムを含む番号付きリストです。
製品づくりはアイデアから始まりますが、特別なものを生み出すには専門のチームが必要です。最初は試作品だった iPhone も、適切なチームのおかげで誰もが知っている人気の製品になったのです。開発者で構成されるスクラムチームを管理する場合、製品を成功させるためには、作業内容を整理することが重要です。
開発チームが作業内容を整理し、目標を達成するために使うべきツールは、信頼性の高い To-Do リストです。プロダクトバックログは、本質的に特殊な To-Do リストのようなものです。アジャイル手法を採用しているチームであれば、プロダクトバックログを使ってプロジェクトを分割し、どのタスクが最も重要かを判断することができます。
この記事では、プロダクトバックログにはどのようなものがあり、どのように作成すればよいのかをご紹介します。
プロダクトバックログとは、目標達成やチーム間の期待値設定に必要なアイテムやフィーチャーを、優先順位をつけてリスト化したもので、チームがタスクを把握するのに役立ちます。一般的には、開発中の製品ごとに 1 つのプロダクトバックログを用意し、そのバックログに 1 つのチームを割り当てることになっています。
場合によっては、複数のプロダクトバックログがあり、複数のチームが 1 つの大きな製品に取り組んでいることもあります。Adobe Creative Cloud を例に説明します。Creative Cloud はソフトウェア群の総称で、その中に Photoshop、Illustrator、After Effects などの製品が含まれています。このような製品には、それぞれ独自のプロダクトバックログが用意されており、開発チームが割り当てられています。
プロダクトバックログは、製品をどのように進化させていくかという行動計画を説明する製品ロードマップから派生したものです。開発者は、プロダクトバックログのタスクを使って、できるだけ早く望む結果を生み出すことができます。
アジャイルチームは、製品づくりに時間を割き、プロジェクトの進行に合わせて調整を行います。アジャイル手法を使っているため、プロダクトバックログのタスクは定まったものではなく、プロダクトバックログのすべての項目が完了するわけではありません。開発チームは、必要なタスクに優先順位をつけながら、プロダクトバックログを改良していく必要があります。
プロダクトバックログには、一般的にフィーチャー、バグ修正、技術的負債、知識獲得などが含まれます。このようなプロダクトバックログの項目とは、製品に対してまだ割り当てられていない明確に分割された作業内容のことです。
フィーチャーとは、ユーザーストーリーとも呼ばれ、製品のユーザーが価値を見出す製品の機能のことです。フィーチャーには、複雑なもの (エピックとも呼ばれます) もあれば、単純なものもあります。ストーリーマップを作成することで、ユーザーが何を最も必要としているかを判断することができます。
バグ修正はその名の通りバグを直す作業です。スクラムチームは、製品のインテグリティを維持するために、バグ修正に迅速に対応する必要があります。チームの現在のスプリントを中断するほど重要なバグもあれば、次のスプリントに回せるバグもあります。しかし、バグ全体に共通するルールは、チームがバグを忘れないように、プロダクトバックログの一番上に置いておくことです。
無料のバグ追跡用のテンプレート技術的負債は、金融負債と同様に、無視すると「利息が発生」します。開発者が技術的な作業をプロダクトバックログの下の方に押しやってしまうと、技術的負債は蓄積され、「返済」するのが難しくなります。チーム内で作業内容を整理し、技術的な作業を毎日少しずつ行うことで、技術的負債の蓄積を防ぐことができます。
知識獲得とは、将来のタスクを達成するために情報を集めることです。もしチームが、さらに調査をしなければ達成できないフィーチャーを抱えているなら、それに必要な情報を得るために、プロトタイプ、実験、概念実証などの知識獲得タスクを作成します。
プロダクトバックログは、単なる To-Do リストではありません。複雑なタスクを一連のステップに分割し、それに応じてチームメンバーに委ねることができます。ここでは、効果的なプロダクトバックログを作成するための手順をご紹介します。
製品ロードマップは、プロダクトバックログの基礎となるものです。チームは、プロダクトバックログを作成する前にロードマップを作成しなくてはいけません。ロードマップは、製品が開発される際にどのように変化していくかを示す行動計画だからです。ロードマップは、長期的な製品開発のビジョンですが、進化することもあります。
製品ロードマップを念頭に置いて、チームはプロダクトバックログの項目をリストアップし始めます。これらの項目には、優先度の高いものや、抽象的なアイデアが含まれます。プロダクトバックログ作成のこの段階では、関係者とコミュニケーションをとり、製品改善のためのアイデアに耳を傾けなければいけません。プロダクトバックログのテンプレートを使えば、項目の列を作成したり、列を移動させたりすることが簡単にできます。
チームがすべてのプロダクトバックログ項目をリストアップした後は、それらを整理し、どのタスクが最も重要かを優先順位付けする必要があります。お客様のことを第一に考え、どの項目がお客様にとって最も価値があるかを考えることで、最優先項目を特定することができます。
チームがプロダクトバックログに取り組む際、プロダクトバックログは柔軟で調節可能な文書だということを忘れてはいけません。バックログには継続的に項目を追加し、作業を進めながら項目に優先順位をつけたり、改善したりすることができます。
プロダクトバックログの管理に欠かせないのが、タスクの優先順位付けです。スクラムマスターとして、関係者が製品に求める新機能を十分に理解しておく必要があります。ここでは、バックログリストの項目に優先順位をつけるための戦略をご紹介します。
バックログの改善を行う際には、タスクを緊急度と重要度で整理してみましょう。チームは、製品の機能性だけでなく、ユーザーエクスペリエンスを向上させるプロダクトバックログの項目を優先的に選択するべきです。
記事: 最も大切な仕事を優先する方法チームは、プロダクトバックログから削除してリストを短縮するために、単純なタスクを先に完了させたいと思うかもしれませんが、これはプロジェクト管理の効率を下げることになります。プロダクトバックログの項目はどんどん増えていくものなので、複雑なタスクを先にこなすことが製品開発にとって最も効果的な方法なのです。
アジャイルチームは、スプリントで集中的に作業を行い、完了させます。この方法は、生産性向上に非常に効果的です。各スプリントの終わりには、プロダクトオーナーと関係者が、開発チームと一緒に行うスプリントレビューに参加し、すべてが順調に進んでいることを確認することができます。
プロダクトバックログの優先順位付けには、チームメンバー間のコミュニケーションが欠かせません。バックログの整理を成功させ、妥当な期間内に項目を完成させるためには、チームと協力し、スクラムガイドに従わなければなりません。
記事: 職場で効果的にコミュニケーションをとる 12 のコツプロダクトバックログの形はプロジェクトによって異なりますが、「エピック」から始まるものもあります。エピックとは、お客様のために解決しようとしている全体的な問題のことです。ここで、その例をご紹介します。
エピック: マーケティング担当者として、読者に質の高いコンテンツを提供できるコンテンツ管理システムが欲しい。
このエピックは、ユーザーが新システムでコンテンツを作成する方法から、コンテンツを編集してチームと共有する方法まで、さまざまな製品の機能を作り出す可能性があります。先ほどのプロダクトバックログの例では、エピックをより具体的なユーザーストーリーに分割することができます。
ストーリー 1: コンテンツ制作者として、コンテンツ管理システムを使いたい。これがあれば、お客様に製品の情報を伝えることができる。
ストーリー 2: 編集者としては、公開前にコンテンツを確認できるコンテンツ管理システムが欲しい。これがあれば、コンテンツの内容が適切か、SEO 施策がされているかを確認することができる。
プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームは、ユーザーストーリーから製品が搭載すべき機能を決定し、重要度に応じて優先順位をつけます。
ストーリー 1 のために製品が備えるべき機能:
コンテンツ管理システムへのログイン
コンテンツの作成
コンテンツページの編集
変更の保存
編集者にコンテンツを割り当ててレビューしてもらう
プロダクトマネージャーは、製品のロードマップやバックログリストの項目にエピックを使用する必要があります。この例でわかるように、1 つのエピックから複数のユーザーストーリーや製品機能が生まれることもあります。
Asana の無料テンプレートを検索するプロダクトバックログは、整理やコラボレーションを改善することで、チームを円滑に運営するのに役立ちます。コミュニケーションの中心的なツールとなり、全員が同じ目標や指示内容を共有して作業を行うことができます、
製品のすべての作業がバックログを経由するため、プロダクトバックログは反復計画のベースとなります。チームは、プロダクトオーナーの指示のもと、タスクに優先順位をつけると同時に、特定のタイムブロックでどれだけの作業を行うことができるかを決めます。このタイムブロックをイテレーションまたはスプリントと呼びます。
プロダクトバックログは、柔軟で生産性の高い作業環境を促すことで、アジャイルチームの開発を促進します。プロダクトバックログのタスクは定まったものではないので、チームはタスクを重要度の高い順に並べてから、先にどれに取り組むかを選択します。
記事: 反復的なプロセスを理解する (実例付)スプリントバックログとプロダクトバックログは、構成要素が非常によく似ています。スプリントバックログはプロダクトバックログのサブセットですが、特にスプリント期間中に使用されます。
プロダクトバックログは、製品の最初から最後までを管理するものなので、プロダクトオーナーが管理します。その一方でスプリントバックログの管理は、開発チームが行います。スプリントバックログは、プロダクトバックログから抜粋された小さな To-Do リストで、指定された期間内に完成させることを目的としているからです。
スプリントバックログはプロダクトバックログに依存しており、スプリントが終了すると終了します。スプリントバックログには、スプリントプランニング時に決められた独自のスプリントの目標もあります。プロダクトバックログでは、製品の目標全体に焦点を当てられ、タスクはその目標に基づいて優先順位付けされます。
プロダクトバックログは、スプリントバックログよりも柔軟性が高く、お客様のニーズに応じて変化させることができます。プロダクトバックログは、製品が本格的に開発されるまで維持されなければなりません。
先ほどのプロダクトバックログの例のように、スプリントバックログの例もあげてみましょう。手動運転補助装置を開発する場合、プロダクトバックログの 1 つのタスクとして、補助装置の試作品を作成することが考えられます。この試作品は、開発タスクのサブセットが必要になるかもしれないので、スプリントで行う可能性もあります。
カーアクセサリーの試作品のスプリントバックログには、次のような項目が考えられます。
コンセプトスケッチの作成
バーチャル試作の開発
物理的な試作品を作る
試作品の製作を委託するメーカーを探す
このようなスプリントバックログの項目は、プロダクトバックログにも含まれていますが、スプリントごとに分けることで、開発者がタスクを達成し、試作品を迅速に作成することができるため、スクラムプロセスを円滑に進めることができるようになります。
上手に整理されたプロダクトバックログがあれば、製品を完成させることが容易になります。Asana を使えば、最新のスクラムソフトウェアを使って、最も効率的な方法でアジャイルプロジェクトを管理することができます。
Asana でアジャイルチームを管理