PoC とは何か?用語解説と進め方を解説

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2024年9月12日
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概要

PoC (概念実証) は、提案する製品、方法、またはアイデアの実現性を検証するものです。関係者や投資家が安心してプロジェクトを進められるようにするには、提案したアイデアがなぜ実際に通用するのかを証明しなくてはいけません。この記事では、POC の意味や書き方、このプレゼンテーションが製品開発において有益な要素である理由をご紹介します。

更新: この記事は、PoC のメリットとデメリットに関する記述を含めて、2024年 9月に改訂されました。

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プロジェクトに時間やお金、エネルギーを費やす前に、そのアイデアが価値あるものかを調査するのは理にかなったことです。車を購入するときも、支払い前にエンジンがかかるかどうか確認しますよね?それと同じで、アイデアを実行に移したり決断を下す前に時間をかけて検証すれば、よりよい選択を行い、後悔を減らせるはずです。

PoC (概念実証) とは、プロジェクトやアイデアにコミットする前段階で行われるフィージビリティスタディ (実現可能性調査) のことです。PoC を活用することで、クライアントや製品チームに、なぜそのアイデアが実際に機能するのかを効果的に証明できるわけです。

PoC の意味

PoC (ポック) は Proof of Concept を略したビジネス用語で、日本語では概念実証と呼ばれます。提案した製品や技術、アイデアに本当に実現可能性があるのか、小規模にテストする取り組みです。たとえば、いくら画期的に見えるアイデアでも実際に機能するのか否かは試してみないとわかりません。机上の空論ではステークホルダーや投資家を納得させることも難しいでしょう。そこで PoC を行い、その実現性を証明するわけです。また、プロジェクトライフサイクルの早い段階で実行可能性を証明することで、メンバー全員が安心してプロジェクトに取り掛かれるようにもなります。もちろん、新規事業を立ち上げるときにも PoC は役立ちます。昨今では、AI や IoT といったデジタル技術を導入し新たな価値を見出す DX (デジタルトランスフォーメーション) の推進が課題となっているため、PoC の重要性はますます高まっています。

POC (概念実証) とは?

さまざまな業界が開発プロセスで概念実証を活用しています。その理由は、プロジェクトのリスクを軽減し、意思決定者がプロジェクトのメリットに関する貴重なインサイトを把握できるからです。しかし、すべてのプロジェクトが新しいアイデアから始まるわけではありません。そのため、概念実証を使う必要のないプロジェクトも存在します。


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PoC と PoV の違いとは?

PoC と PoV (Proof of Value) は、ビジネスや技術検証における異なる段階を示します。PoC は、新しいアイデアや技術が実現可能かどうかを技術的に確認するプロセスですが、PoV は、その技術やソリューションが実際に価値を提供するか、ビジネスに利益や効率性をもたらすかを検証します。簡単に言えば、PoC は「できるか」を確認する段階で、PoV は「価値があるか」を判断する段階です。

PoC を行う必要がある場面とは?

概念実証は、業界で先例のない新しい製品、方法、理論を開発するときに活用できる最も有益な方法です。ここでは、概念実証が必要になる場面をご紹介します。

  • 新しいプロジェクトのアイデアを生み出す場合: 先行事例のない製品や方法を開発する場合、概念実証はパイロットプロジェクトの役割を果たします。比較対象となる過去のユースケースがない場合、自分のアイデアを検証し、それが実際に機能するかどうかを確認する必要があります。

  • プロジェクトに新機能を追加する場合: プロジェクトに新しい機能を追加すると、既存のプロジェクトが実質的に新しいものになります。PoC を利用すれば、新しい機能がプロジェクトの機能に悪影響を与えないことを確認できます。

プロジェクトに新しいアイデアや機能を追加しないのであれば、実現可能性を実証する必要がない場合もあります。市場調査を利用して、取り組んでいるプロジェクトに先行事例があるかどうかを判断し、ある場合は、PoC の代わりにデータを使用することもできます。

記事: プロジェクト管理でフィージビリティースタディを使用する方法

PoC のメリットとは

ビジネスシーンにおいて新しいものごとを進めるときには、PoC を実施してその実現可能性を実証することがとても重要です。PoC のメリットを具体的にご紹介します。

リスクの軽減

PoC は新しいアイデアや技術の実現可能性を小規模な範囲で検証するため、大規模な投資を行う前に技術的リスクを軽減できます。これにより、開発コストや時間の無駄を最小限に抑えることも可能となります。

迅速な意思決定

PoC は短期間で結果を提供するため、プロジェクトの可否を素早く判断できます。これにより、無駄なリソースの消費を防ぎ、効率的なビジネス運営が実現します。

ステークホルダーの理解と納得を得る

実際のプロトタイプを通じて技術の効果や実現可能性を可視化することで、経営層や投資家などのステークホルダーに対して説得力のある証拠を示し、理解と納得を得やすくなります。

イノベーションの促進

PoC を通じて、新技術や新たなソリューションを試すことで、企業はリスクを抑えながら革新的な取り組みを進めることができ、競争力を強化します。

PoC のデメリットと注意点

PoC にはデメリットもいくつかあります。たとえば、IoT などの先進技術においては PoC の実施が煩雑で、複数のプロジェクトが並行すると「PoC疲れ」を引き起こすことがあります。これは、PoC が繰り返し行われることで、時間やリソースが浪費されてしまい、本来のサービスやソリューションの実装に進めなくなる状況です。

また、PoC はあくまで前段階の検証であるため、成功したとしても実際の環境でのスケーラビリティやサービスの持続可能性が不十分な場合があります。その結果、本格導入時に性能や運用上の課題が発覚し、逆効果となるリスクがあります。さらに、PoCのポイントは短期間で成果を出すことにありますが、場合によっては焦点が絞り切れず、検証が中途半端になるケースもあり、最終的な事業決定を妨げる可能性もあります。

こういった事態に陥らないよう、適切に PoC を進めるためのステップを以下にご紹介します。


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PoC の進め方: 5 つのステップ

PoC はパイロットプロジェクトの役割を果たす要素です。プロジェクトを実行しながら、その過程で行ったステップや発見したことをまとめましょう。調査内容を 1 つの文書に読みやすくまとめると、ステークホルダーから資金や承認を得られる可能性が高くなります。

概念実証を書くための 5 つのステップ

以下の 5 つのステップを使って、PoC を書き、実行しましょう。

1. ビジネスアイデアを定義する

ビジネスアイデアを定義することは、開発プロセスの中で当然のことのように思えるかもしれません。しかし、単にアイデアを口にするだけでなく、実現するためにやらなくてはならないことがあります。1 つ目のフェーズで行うことは次のとおりです。

  • 調査を行い、ターゲットオーディエンスが抱える問題点を特定。アイデアを採用すると問題点をどのように解決できるかを示す。

  • アイデアをどのように実行するかを説明する。

  • アイデアを使うと、長期的に何を達成できるかを明らかにする。

明確に定義されたアイデアで PoC を始めれば、その後も安心してプレゼンテーションを進めることができます。

2. パフォーマンス目標を設定する

アイデアとそれを実行する方法を定義したら、成功をどのように観測し、測定するかを明確にします。適切な成功指標を使用すると、ターゲット市場での実現可能性を証明できるでしょう。

たとえば、ソフトウェア開発で実現可能性を検証するために使用される指標には、投資収益率 (ROI) やリスクの発生確率などがあります。アイデアを実現するために、どのような ROI やセキュリティレベルを満たす必要があるか、ベンチマークを設定しましょう。

記事: よりよい SMART な目標作成のためのヒントと実例

3. PoC プロジェクトを実行する

重要業績評価指標 (KPI) を設定したら、テストプロジェクトを実施しましょう。概念実証のこの部分は、製品や成果物のワーキングモデル (機能を果たす試作品) を作成するため、プロトタイプに似ています。このフェーズでは、多くの機能を盛り込む成果物を作るのではなく、最低限の機能のみで開発するようにします。

このモデルをターゲットユーザーから集めたサンプルグループに提供し、製品がこのグループの抱える問題を解決するかどうかを判断しましょう。このモデルは関係者や投資家と共有するものではないので、最終製品のように洗練された状態にする必要はありません。

4. 指標を追跡する

ワーキングモデルを検証する際に、サンプルグループから反応、比較情報、価格やその他の機能に関する詳細なコメントなどのフィードバックを集めましょう。この情報を記録し、関連データと成功指標を照らし合わせて追跡します。

ユーザーが何を考えているかは、データを見ればわかりますが、言語や非言語コミュニケーションを活用すると、数字だけではわからない貴重なインサイトを把握することができます。サンプルグループが、プロジェクトのアイデアをオープンに話し合った場合、そのコメントをもとに、プロジェクトの問題点を解決できます。また、グループのボディランゲージや口調を見て、プロジェクトアイデアについてどう感じているのかを確認できる可能性もあります。

ユーザーフィードバックを共有のプロジェクト管理ソフトウェアに記録し、プロジェクトのライフサイクル全体を通して、チームがフィードバックを参照できるようにしましょう。

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5. 検証結果を提示する

アイデアが実現可能であることが証明されたら、関係者にアイデアを受け入れてもらう必要があります。これが、PoC の最終段階です。そのために一番効果的なのは、プロジェクトが解決できる課題や、オーディエンスにどのようなメリットをもたらすかを、PoC のプレゼンテーションの軸に据えることです。PoC のプレゼンテーションでは、これから生み出す機能や成果物をアピールするのではなく、アイデアがどのようにオーディエンスのニーズを満たすかを強調するようにしましょう。

PoC は、アイデアの長期的な価値を説明するものです。プロジェクトを提示する際には、解決しようとする問題を定義し、このアイデアが解決にどう役立つのかを説明します。成果物は、これらの問題点を解決するために使われるものですが、全体的なゴール達成をサポートするためのツールでもあります。

記事: リスクマネジメントの基本と 6 つのステップを徹底解説

さまざまなケースにおける PoC

ここからは、具体的な部門、部署における PoC について解説します。それぞれの場面で PoC がどう機能するのか、ポイントをチェックしましょう。

ビジネス開発における PoC

PoC はビジネス開発において大きな影響を与える重要な要素です。例えば、スタートアップは新しいサービスや製品を本格的に展開する前に、小規模なプロジェクトを実施して市場の需要や使い勝手を評価することができます。

フィードバックとデータ収集

小規模なローンチを行うことで、初期ユーザーから直接フィードバックやデータを集められます。この情報は顧客の好みやニーズ、期待を理解する上で非常に貴重であり、製品やサービスのどの部分が市場に響いているかを具体的に把握するための重要なインサイトとなります。

需要予測

小規模プロジェクトへの初期反応は、市場全体の需要を測る重要な指標です。早期の反応が好意的であれば、市場の潜在力が大きいことを示唆します。一方で、反応が低調であれば、製品やマーケティング戦略の再考が必要になるかもしれません。

リスク軽減

小規模プロジェクトで始めることにより、財務や運営上のリスクを大幅に軽減できます。市場での実現可能性が確認される前に大規模な投資を避けられるため、スタートアップが未検証のコンセプトに多大なリソースを投じることを防ぎます。

このフェーズは、製品開発プロセスの改善や潜在顧客の動向を理解するために不可欠です。顧客からの具体的なフィードバックを基に必要な調整を行い、成功の基盤を築くことができます。

プロジェクト管理における PoC

PoC は、プロジェクト管理ツールやプロジェクト管理手法の有効性を評価するときにもよく使用されます。たとえば、編集チームが新しいソフトウェアやブレインストーミングの手法を小規模なプロジェクトで試すことで、それらがニーズやプロジェクトの要件にどの程度合致しているかを評価できます。

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以下は、チームが PoC を通じて実験し学ぶ際に重要となるポイントです。

パフォーマンスのモニタリング

新しいツールや手法を導入し、そのパフォーマンスを監視します。効率性、使いやすさ、プロジェクトの成果への影響に注目することで、新しいアプローチがワークフローやプロジェクト納品にどのように影響を与えるかが理解できます。

フィードバック収集

新しいツールや手法を使った実体験に基づき、チームメンバーからフィードバックを収集します。このフィードバックによって、チームにとってどれだけ有益であるかを理解し、何が機能しているか、何が改善を要するかを明らかにします。

分析と調整

集めたデータとフィードバックを分析し、強みや弱み、改善の機会を特定します。この分析に基づいて、プロジェクトの要件やチームの期待に応えるためにアプローチの調整が行われます。

記事: チームのワークフローを改善する 5 つのプロジェクト管理フェーズ

上記のステップを通じて、チームは新しい手法をテストすることで、大規模で複雑なプロジェクトをどのように進めていくのか、そのための貴重な洞察を得ることができます。

製品開発における PoC

開発チームにとって、PoC は製品開発プロセスの重要な一部となります。たとえば、ソフトウェアアプリケーションのプロトタイプを開発し、主要な機能やユーザー体験をテストすることなどが製品開発における PoC の代表例です。製品開発における PoC には、以下のような重要なポイントがあります。

ユーザーフィードバックの収集

プロトタイプに対するユーザーフィードバックを集めることで、実際のユーザーが製品をどのように利用するか、どの機能が価値があるか、そしてどこに改善が必要かについての洞察が得られます。

機能上の問題の特定

ユーザーがプロトタイプを使用する際に、機能の問題やバグに遭遇することがあります。開発プロセスの初期段階でこれらの問題を特定することで、より深刻な問題に発展する前に解決できるようになります。

使いやすさの検証

プロトタイプをテストすることで、使いやすさを確認できます。この検証は、製品が直感的で使いやすく、意図したユーザーのニーズに応えていることを保証するためにとても重要です。

製品開発プロセスを簡素化する方法とは

マーケティングと営業における PoC

マーケティングや営業では、PoC プロセスを活用して新しいキャンペーンや戦略を実験し、洗練させます。このプロセスでは、特定のターゲット層に対して新しいマーケティング戦略を実施することが一般的です。主なポイントは次の通りです。

試験的なキャンペーンの実施

限定的な規模で試験的なキャンペーンを実施することで、管理された環境で戦略の影響を観察できます。これにより、全面展開に伴うリスクを軽減できます。

結果の分析

キャンペーン後、エンゲージメント率やコンバージョン率、全体的な反応などの指標を基にその効果を評価します。この分析により、戦略の有効性が測定されます。

戦略の調整

分析結果を基に、キャンペーン内容やターゲティング方法、全体的なアプローチを調整し、よりターゲット層に響く戦略に改良します。

記事: 13 のマーケティングトレンドと戦略

マーケティングや営業で PoC を実施することで、戦略を最適化することができます。そうすることで、大規模なキャンペーン展開時には効果的なマーケティングの実施と顧客エンゲージメントの向上が期待できます。

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PoC、プロトタイプ、MVP の違い

PoC、プロトタイプ、MVP (実用最小限の製品) などの用語が同じ意味で使われているのを見かけることがあります。これらの用語はすべて製品づくりに関連するものですが、注目すべき違いがあります。

POC、プロトタイプ、MVP の違い

概念実証、プロトタイプ、MVP の違いは以下のとおりです。

  • PoC: PoC とは、実現可能性を証明するために行われるプレゼンテーションのことです。概念実証の作成にかかる時間は、プロジェクトのアイデアの複雑さによって数日から数週間までさまざまです。その目的は、開発者や研究者に概念実証を提示し、アイデアに価値があることを納得してもらうことです。先行事例のないアイデアを検証する際には、この PoC が役に立ちます。

  • プロトタイプ: プロトタイプは、製品の作り方や完成後のイメージを示すために使用されます。これはプロジェクトの初期段階で作られるため、正確に仕上げるまでに数週間かかることがあります。完成したプロトタイプは、開発者、関係者、または限られた数のエンドユーザーに公開されます。プロジェクトの資金確保に、プロトタイプを活用することもできます。

  • 実用最小限の製品 (MVP): MVP とは、プロジェクトの中で最も完成に近い製品のことです。プロトタイプや PoC を限られた数のグループに提供した後、フィードバックを利用して変更を加え、MVP を完成させます。MVP は、エンドユーザーのために作成されるもので、作成には数か月かかることもあります。MVP の目的は、早い段階でユーザーの声を聞き、製品の方向性を検証することです。市場での競争力を獲得することにもつながります。

PoC は製品やアイデアを初歩的なレベルで検証し、プロトタイプは、アイデアを実現し、他の人たちと共有できるようにするものです。MVP は、製品やアイデアを世の中に提供する前に作成するプロトタイプの最終段階です。

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まとめ: PoC でプロジェクトアイデアを検証する

世の中を変えられるようなアイデアを思いついたら、とてもわくわくするでしょう。しかし、そのアイデアを実現できるかどうかを把握するには、実用性を検証する以外に方法はありません。PoC (概念実証) は、アイデアを実現するための第一歩であり、関係者や投資家に、これから始まるプロジェクトの最終形態を少しだけ味わってもらう機会です。

プロジェクトアイデアを明確に伝え、そのアイデアを検討する価値があると周囲に納得させる PoC を作成するためには、厳密なプロジェクト管理計画が必要です。プロジェクト管理ソフトウェアを使って、プロジェクト開発の初期段階でチームのワークフローを確立すると、作業の重複を防ぎ、全体の効率を高めることができます。


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