プロジェクト管理におけるボトルネックは、パフォーマンスレベルで発生する場合と、システムの不備がワークフローを中断させることにより発生する場合とがあります。ボトルネックの発生はほぼ回避不可能であるため、重要なのはどのように特定するのか、そしてどのように封じ込めるのかを知っておくことです。この記事では、その両方について説明するほか、実例を使って注意したいポイントをご紹介します。
更新: この記事は、ボトルネックと TOC 理論の関係についての記述を含め、2024年 12月に改訂されました。
最後にプロジェクトの進行が遅れたときのことを振り返ってみてください。フィードバックを待っていた、旧型のシステムを機能させようと悪戦苦闘していた、レビューと承認の管理に追われていたなど、プロジェクトの遅延の多くは、ボトルネックと呼ばれる 1 つの現象により発生します。
ボトルの首 (ネック) の部分で水の流れが遅くなるように、プロジェクト管理で生じるボトルネックもプロジェクトのワークフローに影響します。製造の工程では、ボトルネックは一般的に動きの遅い機械や原材料が原因で全体的な製造過程を遅らせる物理的な箇所であるため、比較的見つけやすくなっています。それに対し、プロジェクト管理のボトルネックを発見して解決するには少し注意が必要です。
それでは、プロジェクト管理でいうボトルネックとはどういったものか、その特定方法、そして発生したときにきちんと封じ込める方法を見ていきましょう。
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ビジネスシーンにおけるボトルネック (bottleneck) とは、プロジェクトのワークフローの遅延につながる混雑した箇所のことを言います。プロジェクト管理におけるボトルネックは、処理速度が限られた箇所であり、それによりプロジェクトの進行ペースが遅くなります。
プロジェクト管理において発生するボトルネックは以下の 2 種類あります。
【パフォーマンスレベルのボトルネック】この種のボトルネックは、チームメンバーやチーム全体が必要とされるパフォーマンスレベルに達しない場合に起こります。大抵の場合は、チームメイトのミス等によるものではなく、リソースや透明性の不足が原因で発生します。パフォーマンスレベルのボトルネックが発生した場合は、チームと議論の場を設け、作業に苦労している理由を突き止めましょう。人手不足の場合は追加のサポート役を採用したり、単純な作業を外部委託 (アウトソース) する。情報の共有に問題があるなら、チーム内のコミュニケーションを改善する。そうすれば、ボトルネックは十分に解消できるでしょう。
【システムレベルのボトルネック】旧型もしくは動作の遅いシステムやソフトウェアを使っていると、ワークフローが遅くなり、プロセス内でボトルネックが発生してしまう場合があります。システムレベルのボトルネックとは、動作の遅いプリンターや手動で操作するアーカイブシステム、プロジェクトのニーズに合わないワークマネジメントソフトウェアなどです。ひょっとしたら、新しいソフトウェアにアップグレードするだけで、ワークフローを軌道に戻せるかもしれません。
発生したボトルネックを解決するための最初のステップは、それがどちらの種類のボトルネックかを見分けることです。パフォーマンスレベルのものなのか、システムレベルのものなのかがわかれば、詳しく調べて問題の正確な原因を特定できます。
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Asana のプロジェクトマネジメント機能を試すボトルネック分析 (別名: 根本原因分析) は、ボトルネックを特定し、解決方法を見つけるのに最適なアプローチです。3 つのステップを踏むことにより、ボトルネックを特定し、ソリューション (解決策) を見い出し、パフォーマンスをモニタリングします。
ボトルネックの特定と回避の両方を行う一番の方法は、ワークフローを洗い出し、区分けすることです。これは、かんばんボードやガントチャート、タスクリストといったさまざまな表示方法でプロジェクトを可視化できる Asana のようなワークマネジメントソフトウェアを使えば行えます。
フィッシュボーンダイアグラム (フィッシュボーンチャート、石川ダイアグラム) もまた、ボトルネック分析用のツールとしてよく使用されます。これはプロジェクトを可視的に描画するもので、問題解決のブレインストーミングにもってこいのツールです。
記事: 「5 つのなぜ」で問題の根本原因を突き止めるフィッシュボーンダイアグラムでは、魚の頭が解決したい問題点、つまりボトルネックを表します。魚の骨は、異なるカテゴリや関連するタスクを表します。プロセスをフィッシュボーンダイアグラムを使って書き出すと、ボトルネックの根源を特定しやすくなります。
フィッシュボーンダイアグラムでは、1 つの骨に迷い込みやすいので注意が必要です。ボトルネックの潜在的原因は複数個ある場合もあるため、このダイアグラムを見るときは、1 つの可能性に深入りしすぎないように気を付けましょう。
Lucidchart との連携を使用することで、Asana でフィッシュボーンダイアグラムを作成できます。これにより、ダイアグラムを作成し、チームと共有し、必要になったときに確認できます。
Asana と Lucidchart の連携機能を試す各プロセスを可視化したら、チームはその内容を細かく検討し、良い点と悪い点を見直す必要があります。仕事が山積みになっているのは、品質管理チームが人員不足であったり (パフォーマンスレベル)、古いソフトウェアが継続的に重要なデータを失ってしまったり (システムレベル) するのが原因であると判明するかもしれません。
ボトルネックの原因がわかったら、対処法を決定できます。詳細なアクションプランを作成したり、タスクをチームメンバーに割り当てたり、プロジェクトにリソースを割り当ててキャパシティの使用率を高めるといった対応が考えられます。ボトルネックのシナリオごとに導入できるソリューションの例をいくつか見てみましょう。
チームが仕事を抱え過ぎている場合は、比較的簡単なタスクを外部委託する方法があるかも知れません。また、インターンの助けを借りたり、時間に追われているときは他のチームにサポートを依頼したり、時間に余裕があれば自らサポートに入ったりできるでしょう。今後のプロジェクトに備え、新規採用者を加えてチームを拡大したり、プロジェクトに割り当てる期間を増やしたりしてボトルネックを回避することを検討するとよいでしょう。
クライアントからのフィードバックを待つことが多いと、納品プロセスにボトルネックが発生する恐れがあります。クライアントとミーティングの予定を立て、フィードバックが必要なときに一番連絡の取りやすい方法を確認しましょう。ひょっとしたら、クライアントは成果物をまとめて受け取りたいと思っていたり、ついついメールを見落としてしまうから件名を目立たせて欲しいと思っていたりするかもしれません。ボトルネックの原因がわかれば、それを解決する体制をしっかりと整えることができます。
ツールがニーズに合っていなかったり、業務内容に特化されていなかったりすると、ボトルネックが発生します。進捗が自動保存されなかったり、操作しづらかったり、読み込み速度が遅かったりする場合は、さっと ROI 分析を行い、信頼性の高いプロジェクト管理ソフトウェアにアップグレードすることだけですべての問題が解決できるかもしれません。
仕事を最大限効率化し、チームの生産性を上げるためには、Asana のプロジェクトマネジメント機能をお試しください。日々の業務とゴール・目標をつなげ、「誰が・何を・いつまでに行うのか」を可視化します。
Asana で生産性が向上する理由作業の重複は、プロセスを遅らせるだけでなく、チームメンバーの間で摩擦やフラストレーションを引き起こします。ワークマネジメントツールを使用すると、タスクの担当者を明確にし、依存関係を定義し、プロジェクトを進めながらタスクを割り当てることができます。
プロジェクトに干渉し続けるマネージャーや関係者がいると、プロセスの進行が遅れてしまいます。その場合は、その本人とミーティングを開いて、境界線を引くことについて話し合います。また、仕事を任せることや、チームを信頼することは、プロジェクトとチームの両方が大きな成果を上げるために必要なことであると伝えましょう。
ソリューションを導入したら、理想的には残るステップは 1 つです。ソリューションの効果をモニタリングし、評価することです。
記事: マクロマネジメントを適切に行うためのヒント 8 選問題のボトルネックを適切に解消できたことを確認するために、アクションプランの出来栄えをモニタリングし、評価する必要があります。プロジェクトの進捗を追跡し、ソリューションを導入した後にプロセスの質とスピードがどのように変化したかを確認します。
この評価は、今後のボトルネック管理に役立つ貴重な情報にもなります。これは、必ずしもボトルネックを回避するということではありません。プロジェクトが一定の規模になると、ボトルネックは回避できなくなります。最も大事なのは、ボトルネックを積極的に特定し、管理することに時間を注ぐということです。すべての作業プロセスを見える化しておけば、どこかでボトルネックが発生していても、チームはとりあえず他のタスクにエネルギーをシフトして、後からボトルネックの箇所に戻ることもできるため、作業を完全に停止する必要はありません。プロセス内の他のタスクに力を注いでしまうとボトルネックに溜まるタスクが増えてしまうため、次のセクションで説明するように、ボトルネック自体に対処することが重要です。
記事: プロジェクトの 6 つの制約と、制約を上手に管理してプロジェクトを成功させる方法ボトルネックの複雑さによっては、チームメンバーを配置しなおしたり、ワークフローの特定のステージにリソースをもっと割り当てたりすれば、すばやく封じ込めることができる場合があります。しかし、時としてボトルネックを解決するには、その状況をもっと詳しく確認しなくてはいけない場合があります。ボトルネックは、特定してすぐに対処しないと、コストやエネルギーを浪費しかねません。
一旦発生したボトルネックは、以下のステップで封じ込めます。
ボトルネックを働かせる: ボトルネックを通る作業を最小限に抑えることは、効果的なソリューションに思えるかもしれませんが、そのアプローチだと、処理時間がさらに長引いたり、プロジェクト全体を遅らせる波及効果が生まれたりする場合があります。ボトルネックが発生したら、その場所をフル稼働させ続けながら、問題をフルスピードで解決しなくてはいけません。
ボトルネックの負担を軽減する: ボトルネックを通る作業量を最小限に抑えるのはよい解決方法ではありません。作業が最適な状態で届くようにすれば、ボトルネックへの負担を軽減することができます。関係者と共有する文書を事前にレビューする必要があるマネージャーがボトルネックになっているとしましょう。その場合は、ミスがゼロかそれに近い文書をマネージャーに提出することに集中して、マネージャーが簡単にチェックできるようにし、作業もよりスムーズに進むようにします。
作業を一括処理する: プロジェクトとボトルネックの種類によっては、類似の作業をまとめれば、負担を軽減できる場合があります。一括した後のサイズが大きすぎるとストレスの原因になるので注意が必要です。作業の量は、処理しやすいように極力小さくしましょう。
プロジェクトチームの士気を高める: 作業がスムーズに進まなくなると、チームは集中力、信頼、モチベーションを失ってしまいがちです。ボトルネックを封じ込める計画について、チームと効果的に話し合うことは重要です。また、その間にチームがどのようにプロジェクトをサポートできるかについて伝えておきましょう。
既成概念にとらわれない: 可能であれば、ボトルネックのキャパシティを増やしましょう。マネージャーを急き立てて書類のレビューを早く済ませてもらうということは無理かもしれませんが、作業プロセスをスピードアップできるマネージャーが他にいるかもしれません。代替のソリューションを見逃さないように、いつも目を光らせておきましょう。創造的な考え方をすると、プロジェクト管理は大いに楽しくなります。
品質について妥協しない: ステップを飛ばしたり、編集を急いで済ませたり、大量の作業をまとめて処理したりすると、時間の節約となり、フィニッシュラインに到着するまでの時間を短縮できるでしょう。しかし、作業の質を妥協すると、プロジェクトをやり直したり、クライアントを失ったり、チームの信頼を激減させてしまうリスクが生まれます。ボトルネックを乗り切るために作業品質を妥協してはいけません。長期的に考えても、そのようなリスクを負う価値はありません。
最も重要なのは、ダウンタイムが発生しないようにすることです。チームに仕事を与えずに、無為に時間を過ごさせていたのでは、フラストレーションが溜まり、プロジェクトの全体的なサイクル時間も長引いてしまいます。仕事は常に進行させて、問題解決のプロセスにはチームにも参加してもらいましょう。
TOC 理論 (Theory of constraints) は、ビジネスプロセスにおいて存在する主要な制約、すなわちボトルネックを特定し、それを管理・最適化することで全体のパフォーマンスを向上させる理論です。TOC ではボトルネックを「最も弱いプロセス」として捉え、これを見つけることで、組織全体の成長や成果を引き上げるための優先的な改善点を明確にできます。TOC の基本概念は、これらの制約がシステム全体の限界を定めているため、それを管理することで組織のパフォーマンスを最大化できるという点にあります。TOC理論についての詳しい解説は以下のページをご覧ください。
記事: 制約理論 (TOC) や制約条件についてさらに詳しく知るチームのワークフローを標準化して、業務の属人化を解消しましょう。効率的な業務プロセスが Asana ならとても簡単に構築・更新できます。その方法をご覧ください。
ボトルネックの意味とその特定方法、解消方法を解説しました。ボトルネックは、完全になくしたいものですが、どうしても発生してしまうものです。発生したときは、完璧主義な姿勢を脇に置き、チームを集結させてソリューション指向の策を見つけることにより、仕事が溜まっていくのを食い止めます。
適切なツールがあれば、アジャイル環境であっても、ボトルネックを最小限に抑えられます。プロジェクトのタイムラインやかんばんボードを作成すると、チームはいつでも作業量を目で見て確認できるため、タスク、依存関係、期日をリアルタイムに調整できます。
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