仕事の委任とは、業務フローや優先事項を考えた場合により適任であるチームメンバーに仕事を再割り当てすることです。チームやプロジェクト管理に不慣れなマネージャーにとって、仕事を任せるのは勇気のいることです。何を、どう任せればいいのか、具体的になっていなくても大丈夫です。この記事では、仕事を任せるタイミングと、上手に任せるための 10 のヒントを説明します。
仕事を任せる技術はときに、マネージャーにとって最も大切な資質です。仕事を委任できると、インパクトの大きな仕事に集中して取り組む時間が増え、チームメンバーにとっては、興味をそそられるプロジェクトに参加するよいチャンスとなります。
その際、新任マネージャーにとって難しい点は、何をどう任せるかを判断することです。仕事の委任は、時間をかけて培われるリーダーシップスキルなのです。この記事では、任せ上手なリーダーになるための 10 のヒントを説明します。
仕事の委任とは、タスクや取り組みをチームメンバーの誰かに割り振る行為です。仕事を任せる理由は、職務の分配を均等にするため、あるいは、優先事項、スキル、関心などの点でそのタスクや取り組みに適任のチームメンバーが存在する、などです。
任せるタイミングと内容を正しく判断できることがマネージャーとしての成長につながります。委任できると、インパクトの大きな仕事をこなすことができ、チームメンバーにとっては、興味をそそられるプロジェクトに参加するよいチャンスとなります。委任が効果的におこなわれれば、チームのスキルアップにつながり、チームメンバーが新しい「得意」を見つけられます。
仕事を任せることが重要な理由は 2 つあります。個人の生産性を最大化することと、重要な仕事を託すことができるチームへの信頼感を示すことです。集団の力は個よりも大きなものです。効果的な割り振りをおこなえば、チームとして、一人ではできない成果を出すことができます。
また、うまく任せていくことで、燃え尽き症候群や働き過ぎの防止にもなります。マネージャーの仕事は、すべての仕事をこなすことではありません。むしろ、全体像を把握して、適切な人に適切な仕事を任せるのがマネージャーの職務です。仕事を任せる技術を身につけるために必要なことは、こなさなければならない業務について求められる成果物を把握し、チームの各メンバーの技能に応じて仕事を割り当てることです。
仕事ができるリーダーを目指すなら、他のチームメンバーに職務を任せるタイミングを理解しておきましょう。この管理スキルは、チームメンバーが成長するための大切な機会となる点で非常に重要です。任せるタスクの種類にもよりますが、任せることで、チームは新たな技能を習得し、職業能力の目標達成に近づくことができます。
記事: リーダーシップとマネジメントの違いとは?任せる仕事の選別はただでさえ難しく、新人マネージャーにとってはなおのことです。仕事を任せることを難しくする理由は以下のとおりです。
手順を説明する時間を考えると、自分で処理した方が速いのではないかという心配
仕事の優先順位が理解できていない
関心のあるプロジェクトに自らが直接関わっていたい
自分よりも他の人員に仕事を多く割り当てることに罪悪感を感じる
自分以外にその仕事を処理できる人がいるかどうかわからない
チームにとっての自分の存在の重さを実感したい
仕事を任せるべきタイミングに、単純な筋書きはありません。しかし、その仕事を任せることが有益かどうかについての一般的な判断材料として、確認できる項目があります。
タスクを委任する前に問うべき質問は次のとおりです。
他のチームメンバーの優先事項への合致度が高い仕事ではないか。
この仕事を処理するにあたって必要な情報や背景知識を持つメンバーがいないか。
この仕事が成長の機会としてふさわしいメンバーがいないか。
今後も発生する可能性がある仕事かどうか。
担当者のトレーニング、質疑応答、仕事のレビューなど、この仕事を任せた場合に効率よく進めていくための時間が確保できているかどうか。
自分で対応すべきかどうか (インパクトの大きさ、ビジネス上の重要度など)
失敗した場合に、プロジェクトの成功に影響が出るかどうか。
必要であれば作業をやり直す時間が確保できているかどうか。
仕事を任せるにあたって、この質問の答えがすべて「はい」である必要はありません。しかし、仕事を任せる前にこれらの質問を検討しておくことで、どの作業が任せられるかを見極めることができます。
仕事を任せられるようになることは、マネージャーとしての成長であり、チームメンバーにとってはやりがいのあるプロジェクトに参加できるチャンスです。以下の 10 のヒントを参考にして、仕事を任せるプロセスを始めてみましょう。
すべての仕事を任せられるわけではありません。戦略に関わるもの、ビジネス的に重要な仕事などは、自分で担当する必要があります。仕事を任せる前に、その仕事の重要性と任せることによる波及効果を判断しておきましょう。
重要な仕事は任せられないということではありません。その仕事を効率よく進められる背景情報、経験、技能を備えたメンバーがいるのであれば、任せるのはよい選択かもしれません。しかし、最終的な結果の良し悪しの責任は自分にあることを忘れないでください。
任せるのに適している仕事は次のとおりです。
今後も発生する可能性がある仕事: 繰り返しタスクがある場合、それをしっかりとこなす時間とエネルギーのあるメンバーに任せると、よい結果につながります。
チームメンバーが興味を示している仕事: チームメンバーが新しいスキルの習得や、すでに身につけたスキルを磨きたいなどの興味を示した場合、そのスキルの育成につながり、任せてもよい仕事がないか確認しましょう。
チームメンバーの目標に関係する仕事: チームメンバーのキャリア上の目標に関連する仕事を割り当てることは、仕事を任せるにあたって最もよい方法です。
新人のマネージャーやリーダーにとって、仕事を任せることは、重要な仕事を誰かの手に委ねるということであり、難しく感じられるものです。自分の仕事に対する思い入れや、完遂することへの責任も感じているはずですから。
任せられるようになることは重要なスキルですが、その度に不安になるようではいけません。ですから、小さな仕事からはじめて、徐々に大きな仕事を任せるようにしていきましょう。そして、自分にもチームメンバーにも、寛大でありましょう。仕事を任せる技術を身につけるには時間が必要です。任せた仕事をチームメンバーがあなたと同じレベルで処理できるようになるまでにも、同じく時間が必要なのです。時間はかかりますが、仕事を任せることで、チームメンバーにスキル向上の機会と時間を与えられ、かつ、自分の仕事を一つ減らすことができます。
タスクの優先順位と難易度を把握できると、より仕事を任せやすくなります。優先順位の高い仕事は、すぐに実行する必要があり、担当者は自分または他の人が考えられます。次に、仕事の種類に応じて、自分が担当するか、任せるかの判断をします。
優先順位を明確化するには、チームと会社の目標に仕事を結びつけるのが一番の方法です。あなたやチームが、仕事の重要性を明確に理解していれば、的確に優先順位をつけ、インパクトの大きな仕事をスムーズにこなすことができます。そのためには、まだお試しでなければ、プロジェクト管理ツールのような共有の信頼できる情報源にチームのすべての作業の情報を集約してみましょう。全員の作業について誰もが、担当者、内容、期限、理由を、直接把握することができます。
Asana のプロジェクトマネジメント機能を試す仕事を任せる際には、担当するメンバーがその仕事をこなせるように準備をしておきましょう。効果的な委任には、「その分野のスキルを備えたメンバーに仕事を任せる」、「新しいスキルを習得する機会を与える」という 2 つの要素があります。
これには、それぞれのメンバーの得意分野や関心をしっかり把握しておく必要があります。次回の 1on1 ミーティングで、すでに習得していてさらに伸ばしたいスキル、まだ習得していないが伸ばしたいスキルについて確認する時間をとってみましょう。
記事: ハードスキルとソフトスキルの違い: Asana チームメンバー 14 名の例仕事を任せる際には、担当するメンバーがその仕事をこなせるように準備をしておきましょう。次の項目について、準備が必要です。
仕事の進め方のガイダンス
任せるタスクの期限
仕事についての背景情報、資料、詳細など
仕事を進める際に必要なツール類
仕事の優先順位、目標、期待値
期待される成果物
その他の関連作業
自分にとっては簡単な作業でも、担当者にとっては初めての作業であることを忘れないでください。仕事にとりかかる前に、担当者に仕事の内容を説明し、質疑応答をする時間を設けて、完遂できる環境を整えましょう。
あなたにしかできず、チームの他の人が代行できない仕事があるとします。すると、マネージャーによっては、その仕事は任せられないと思い込んでしまいがちです。そのような場合、優先順位にもよりますが、チームメンバーに、今後その仕事を担当してもらえるように、処理方法を教えた方がよいでしょう。
トレーニングには時間がかかるので、自分で処理してしまいたくなるものです。ですが、トレーニングは、チームメンバーや自身のワークロードへの投資だと捉えてください。時間と共に、仕事を担当できるメンバーが育つので、トレーニングに費やした時間は無駄にはなりません。時間のかかる仕事を任せることは、自分自身の時間管理スキルの向上と同時に、チームメンバーに新たなチャンスを与えることにもつながります。
仕事の手順を指導する際は、答えをすぐに提示するのではなく、自ら問題解決する方法を模索する機会を与えることも重要です。作業を担当しているチームメンバーが問題に直面することがあったら、問題を克服するためにできそうなことが何なのかを引き出すような質問をします。こちらから解決策を提示するのではなく、相手から提案してもらうことで、担当者の判断力を養い、正しい答えへと導くことができます。
仕事を任せることは、双方向のフィードバックとコミュニケーションをもたらす最良の機会です。仕事を任された担当者が、質問がある場合にはいつでもマネージャーに連絡できるようにします。また、1on1 ミーティングなど、定期的な確認の場を設けて、より詳細な検証ができるようにしておきましょう。
今後、仕事を依頼するときに備えて、仕事ぶりについてフィードバックをしましょう。また、担当者からは、仕事をこなすのに十分な情報を与えることができていたかについてのフィードバックをもらってください。知っていれば作業がよりスムーズに進んだかもしれない疑問点はありませんでしたか?仕事を任せる技術は、身につけるのに時間がかかる、しかも取り組み始めたばかりのスキルです。そのことを念頭に置いて、フィードバックをもらいつつ、今後の成果につなげましょう。
記事: 建設的批判をするコツ、受け取るコツ仕事を任せることの目的は、チームメンバーに自分と同じやり方で仕事をしてもらうことではありません。自分とは違うやり方であっても、期待される成果が得られればそれでいいのです。
チームメンバーに仕事を任せたり、指導したりする際は、やり方の説明に時間をとりすぎないようにしましょう。それよりも、最終目標に焦点を当て、チームメンバーが仕事を進めるにあたって自分なりのプロセスにたどり着く余地を与えましょう。そうすることで、チームメンバーがスキルを向上させる機会となると同時に、仕事のやり方については一任しているという信頼感を示すことができます。
いったん仕事を任せたら、一歩下がって、チームメンバーが自由に仕事ができる環境を与えてください。何かサポートが必要かどうか、定期的に様子を確認しつつも、手出しはせず、チームへの信頼を示します。
しかし、最終的な仕事の仕上がりについて責任を持つのはあなた自身です。初めて任せる仕事内容の場合は、レビュー工程やフォローアップ期間を設けて、仕事ぶりを確認し、必要に応じて正しい方向に導くようにします。
上手に仕事を任せることで、他のチームメンバーにとっては、新しいスキルを習得したり、重要度が高いプロジェクトに参加する機会となります。作業が完了したら、その作業を担当したチームメンバーをきちんと評価しねぎらうようにしましょう。
クロスファンクショナルの作業などで、過去にあなたが担当した仕事であれば特に、他部門のメンバーからは、あなたがした仕事だと思われがちかもしれません。他の人の業績を横取りしてしまうことのないよう、チームメンバーの仕事ぶりに感謝を示す機会を設けましょう。
仕事を任せることは、自身の管理スキルを高めるだけでなく、チーム全体の職業能力の成長をサポートするうってつけの方法です。同僚を成功へと導くためには、任された仕事を正確にこなすために必要な情報を、すべて揃えて提供してください。
まだツールは使っていないという方は、プロジェクト管理ツールを使ってみませんか。プロジェクト管理ツールのような信頼できる共有の情報源があれば、チームメンバー間の可視性が向上し、質の高い仕事につながる背景情報に無制限にアクセスすることができます。