ビジネスパーソンにとって「マネジメント能力」とは必要不可欠なスキルですが、そもそもマネジメントとは何を指すのかご存じでしょうか?リーダーシップとの違いを知っていますか?また、マネージャーとリーダーの違いを問われたら、答えられるでしょうか?
マネジメントとリーダーシップは、意味を混同されがちです。しかしこの 2 つの用語には違いがあり、同じ人がマネージャーとリーダーという両方の役割を務めることは可能でも、必ずしもそうである必要はありません。
リーダーの中には「マネージャー」の肩書きがない人もいますし、その逆もまた然りです。しかし、よい会社やチームを作るためには、その両方が必要となります。
この記事では、マネジメントとは何か、リーダーシップとは何かを解説し、両者の類似点と相違点についてまとめます。
マネジメントとリーダーシップの違いを理解できるよう、まずはマネジメントとはどういう意味かを確認します。そもそも「マネジメント」という概念は、アメリカの経営学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカーの著書『マネジメント』から生まれたと言われるビジネス用語です。
『Management』は 1974年に邦訳され、ダイヤモンド社から『マネジメント』と題して出版されました。そして、非常に難しい理論ながらも経営学の普遍的な教科書として、今なお多くの人々に読み継がれるロングセラーとなっています。
ドラッカーは「マネジメント」という概念を普及させた人物でもあり、トム・ピーターズやマイケル・ポーターなどと並ぶ、世界で最も著名な経営学者といえるでしょう。
マネジメントは、直訳すると「経営」「管理」といった意味合いをもつ言葉ですが、ドラッカーはこれを「組織の成果を上げさせるための道具・機能・機関」と定義しています。つまり、企業がもつヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を効率的に運用する管理手法を指す概念です。そしてその責任者がマネージャーとなります。
マネージャーはチームの背骨であり、マネジメントとはチームワークとコラボレーションのサポートシステムです。
船に例えて言うと、リーダーが水平線に目を向けている人だとすれば、マネージャーは地図を読んでいる人と言えるでしょう。つまりマネジメントとは、ルートを描き、そこにたどり着く方法をチームメンバーに示すことです。優れたマネージャーは、チームメンバーに明確な指示を与えることができます。
記事: 社員のモチベーションを維持するためにマネージャーだけができることでは実際のところ、マネジメントでは何が求められるのでしょうか?ドラッカーは著書『現代の経営』の中で、「企業の目的として有効な定義は一つしかない。すなわち顧客の創造である」と述べています。企業とは、事業活動を通じて顧客に付加価値を提供し、対価を得ることで発展していく組織です。顧客あっての企業であり、優れた顧客体験の提供と顧客満足度の向上なくしては、企業の発展はあり得ません。(出典:P.F.ドラッカー /『現代の経営[上]』/ ダイヤモンド社)
そして、顧客創造に至る経営体制を構築するために欠かせないのがマネジメントです。ここからは、ドラッカーが提唱するマネジメントにおいて、マネージャーに必要な能力、求められる重要なポイント、スキルを 5 つご紹介します。
企業が大きな成果を上げるためにはチームの形成が必須であり、その中でもマネージャーには、人材のパフォーマンスを最大化する管理能力と統率力が欠かせません。組織づくりにおいてドラッカーは、人材の長所に焦点を当て、短所を最小限に抑える「長所進展法」の必要性を強調しています。チームメンバーを決定する際は、従業員一人ひとりの特性や能力、強みや弱みを把握し、パフォーマンスを最大限に発揮できる人材配置が求められます。
そのために、仕事内容の一部にチーム作りの機会を作ることがおすすめです。チームメンバーがつながりを持てるシチュエーションを設定し、お互いを知ることができるようにします。それが最終的により快適なコラボレーションを促すこととなります。
ドラッカーは『現代の経営』の中で、「目標抜きでマネジメントしようとすることは、初めての空路を地図も目印もなく、無計器飛行することに似ている」との言葉を残しています。目標設定もマネージャーの重要な役割であり、組織力の向上につながる目標を設定しなくてはなりません。(出典:P.F.ドラッカー /『現代の経営[上]』/ ダイヤモンド社)
もちろん、チームの目標だけでなく、部下一人ひとりの目標も設定し、モチベーションの維持を促すのも重要な役割といえるでしょう。チーム全体を俯瞰的に捉え、短期目標や長期目標、コンプライアンスやガバナンスについての目標など、多角的な視点からさまざまな目標を設定する必要があります。
目標と主な結果 (OKR) を導入して目標設定を改善するための無料ガイド。適切な目標を設定し、会社全体で導入する方法を解説します。
そのために必要なのが、問題解決スキルです。仕事の妨げになっている依存関係をメンバーが特定できるようサポートしたり、プロジェクトのタイムラインが移動した場合には四半期ごとの優先順位を見直すようにしましょう。
近年、AI や IoT などの技術革新によって、業務のオートメーション化が進んでいます。しかし、どれほどデジタル技術が進展しても、ビジネスの土台にあるのは人間関係です。それゆえ、マネージャーには、管理能力や統率力はもちろん、チームの和を保つ高いコミュニケーション能力も求められます。
先述したように、ドラッカーはマネージャーに必要な能力、素質のうち、最も重要なものは「真摯さ」であると述べています。一方的にトップダウン形式で指示をするのではなく、部下が何を期待しているのかを理解し、相手に受け入れてもらいやすい形でこちらの要求を伝えるなど、アサーティブなコミュニケーション能力が求められます。
日本の総人口は 2008年の 1 億 2,808 万人をピークに下降の一途を辿っており、少子高齢化の影響も相まって労働力不足が深刻化しています。そのため、多くの企業において重要な経営課題となっているのが、優れた人材の確保です。人材は企業にとって最も重要な経営資源といっても過言ではなく、マネージャーは正しい方法で人材を育成して、成果の最大化へと導く必要があります。
そして、部下の教育だけでなくマネージャー自身の能力開発も、マネジメントにおける人材育成の一環です。
人材のパフォーマンスを最大化するためには、公平かつ公正な評価制度と、明確で建設的なフィードバックを与える労働環境が求められます。目に見える定量的な成果だけでなく、業績に対する貢献度や労働意欲、貢献意識や将来性などを公正に評価することで、モチベーション向上に寄与し、業務効率の改善や生産性の向上につながるでしょう。また、適切な評価制度とフィードバックは従業員の定着率や離職率の改善にもつながるため、結果として組織の業績向上に大きく貢献します。
記事: フィードバックとは?行うときのコツと注意点を解説このほかにも、優れたマネージャーとは、適材適所に仕事を割り当て、任せられる人であり、また整理や計画スキルも高いのが特徴です。今後の仕事についての明確な洞察、タスク優先順位や期日の調整など、仕事を的確に整理し計画することはマネジメントスキルのひとつと言えます。
ドラッカーの提唱するマネジメント理論は、企業が正しい方向へと進むために欠かせない計器盤であり道標です。普遍的な理論ゆえに抽象度が高く難解であるため、本記事ではすべてをご紹介できませんが、ポイントを押さえて自社の経営体制に応用することで、組織力の強化につながるでしょう。
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マネージャーになったばかりの方は、まずはチームに最高の経験を提供することに集中し、自分のマネジメントスタイルを確立することに専念しましょう。
ひとくちにマネジメントといっても、担当する役職や業務領域によって求められる内容は異なります。ここでは「階層別」と「業務別」という 2 つの切り口から、代表的な種類を整理します。
階層 | 主な対象 | 担う役割 |
トップマネジメント | 経営層 (役員など) | 経営理念や全社戦略など、組織全体の方向性を決定する |
ミドルマネジメント | 部長、課長などの中間管理職 | 経営層の方針を現場に伝え、現場の声を経営層に届ける橋渡し役を担う |
ロワーマネジメント | 係長、主任などの現場リーダー | 設定された目標に基づき、現場でメンバーの指揮監督を行う |
同じマネジメントでも、経営全体を見渡すトップと、日々の業務を預かる現場リーダーとでは、意識すべき時間軸や判断の範囲が大きく異なります。自分がどの階層にいるのかを意識すると、優先すべき仕事が見えてきます。
階層とは別に、担当する業務によっても必要なマネジメントは変わります。代表的なものは次のとおりです。
チームマネジメント: メンバーと連携しながら、チームの生産性と目標達成を高める
プロジェクトマネジメント: 期限や予算の制約のなかで、プロジェクトを計画どおりに進める
タレントマネジメント: 一人ひとりの強みや適性を把握し、人材の力を引き出す
リスクマネジメント: トラブルや損失につながるリスクを予測し、対策を講じる
メンタルヘルスマネジメント: メンバーの心身の健康に配慮し、働きやすい環境を整える
混同されがちですが、リーダーシップはマネジメントとは異なります。リーダーシップの意味やスキルについて詳しく見てみましょう。
成功へ導く仕組みであるマネジメントとは違い、リーダーシップとは組織やチームを率いる能力です。目標達成のための手段として用いるのがマネジメントなら、リーダーシップの目的は具体的な方向性を示すことにあります。そしてその能力を持っている人のことをリーダーと呼びます。
ビジネスシーンにおいて、リーダーシップはマネジメントとは切っても切れない関係にあり、これまで多くのリーダーシップ論が提唱され、さまざまなリーダーの種類が確立されてきました。
記事: 11 種類の一般的なリーダーシップスタイルと自分に合ったスタイルの見つけ方自分の目標を夢見るだけでなく、組織の模範となり、チームメンバーのモチベーションを高め、そして正しい方向に導くのが有能なリーダーです。ではリーダーには具体的にどのようなスキルが必要なのでしょうか。
【モチベーション】 チームのモチベーションを高め、不可能を可能にするスキルです。自分のエネルギーと熱意をグループと共有し、一人ではできないようなことを成し遂げます。
【創造性】 既成概念にとらわれず、現状を打破する能力です。自分自身の創造性だけでなく、チームメンバーの創造性もサポートし育みます。
【メンタリング】 チームの潜在能力を最大限に引き出すために、チームメンバーをコーチングし、指導するスキルです。マネジメントとは異なり、「適材適所に仕事を割り当てる」スキルではありません。
【問題解決】問題解決は、意思決定プロセスのあらゆるレベルで重要なスキルです。リーダーとしては、戦略的および概念的なレベルでの問題解決スキルを持つことが重要です。たとえば、組織の主要な目標を明らかにし、問題解決戦略を用いてチームの目標を阻む可能性のあるものを特定します。
【リスクを負う】 いつリスクを負うか、いつチームメンバーがリスクを負うのをサポートするかを知ることも、リーダーシップの資質です。
Asana では、AoR (Area of Responsibility、責任範囲) を用いて分散型の組織モデルを構築し、組織の各エリアの責任を委譲しています。また責任範囲は、直接管理職に就いていないメンバーにも、リーダーとして成長する機会を与えています。
マネジメントとは何か、リーダーシップとは何かを理解したところで、具体的にマネージャーとリーダーにはどのような共通点があるのか考えてみます。両者とも自分のチームや会社にとって最善のことを行いたいと考えていることは同じです。その結果、アプローチの仕方は違っていても、同じ目標を目指して仕事をします。
【仕事を会社の目標に結びつける】 自分の日々の仕事がチームや会社の目標にどのように貢献しているかを理解することは、パフォーマンスやモチベーション向上に必要なことです。マネージャーもリーダーもこの点を明確にし、メンバーをサポートします。
【双方向のコミュニケーションを大切にする】 チーム全体に目標を伝える場合でも、1on1 ミーティングで一人ひとりと連絡を取る場合でも、双方向のコミュニケーションは「自分に価値がある」と感じられるようにするための最良の方法です。
【チームの成長に投資する】 チームメンバーのサポートやメンタリングは、さまざまな形をとります。メンタリングやコーチングから、キャリア開発に関する会話や 1on1 ミーティングまで、マネージャーとリーダーは共にチームが最高の仕事をするために投資しています。
リーダーシップは「企業理念や経営ビジョンの実現に向けてチームに指針を示すこと」であり、マネジメントと「企業の経営資源を効率的に運用する管理手法」を指します。前者は「人材」を対象とするのに対し、後者の対象は「組織」である点が異なります。リーダーシップは「設計図を描いてビジョンを示す」ことであり、マネジメントは「描かれた設計図を実現すること」ともいえるでしょう。
あるいは、リーダーシップは「What (何を)」を問うものであり、マネジメントは「How (どうやって)」を問うものとも言い換えられます。このような相違点から、ドラッカーはマネジメントをリーダーシップの上位概念として定義しています。
マネジメントとは目標達成へ導くための仕組みやツールです。マネージャーはその責任者で、チームメンバーの日々の仕事をサポートし、彼らが最高の仕事ができるように教育します。一方リーダーは、チームメンバーが会社全体のビジョンに賛同できるように、仕事の全体像を共有します。どちらの立場も、効果的なチームと協力的な職場には欠かせません。
記事: Asana の CEO Dustin Moskovitz が語るリーダーシップの教訓 (英語)マネージャーとリーダーには共通する考え方があるものの、状況によってアプローチの仕方が異なることもあります。ここでは、具体的な状況を提示し、マネージャーとリーダーがそれぞれどのようなアプローチを取るのかご紹介します。それぞれの方法でどうやってチームを最大限にサポートするのか、参考にしてみてください。
企業のリーダーであるためには、会社の戦略的ビジョンを設定し、それを伝えることが重要です。6,000 人以上のナレッジワーカーを対象とした調査によると、自分の会社が目標の設定と伝達に非常に効果的であると考えているワーカーは、わずか 16% でした。リーダーであるあなたには、目標を設定するだけでなく、会社全体に目標を伝える力があります。
マネジメントとは違い、リーダーシップは具体的な方向性を示すものです。そのため、リーダーは会社のミッションやビジョンステートメントを達成するために、全体像を考え、明確な目標を立てるように努めます。これには、四半期または年間の会社目標を設定し、その目標をチームに伝えることが含まれます。たとえば、「年末までに月間の顧客解約率を 1% 未満にする」という目標を設定します。
記事: 戦略プランニングは初めてですか?ここから始めましょう。一方マネジメントとは、その戦略的ビジョンをチームの日々の仕事に結びつけることです。マネージャーには、チームメンバーの日々の仕事が会社全体の目標にどのように貢献しているかを明確にする力があります。このつながりを明確にすることで、会社の目標達成に向けてチームをサポートし、モチベーションを高めることができます。
たとえば、年末までに月間の顧客解約率を 1% 未満にまで低下させるという目標を設定したとします。マネジメントとはチームのプロジェクトを目標に結びつけることなので、マネージャーはそのつながりをメンバーに明確に示します。チームメンバーが解約フローの改善に取り組んでいるなど、仕事が直接目標につながっている場合もあれば、そうでないケースもあるでしょう。たとえば、価格とパッケージのページを改善しているチームメンバーは、顧客が何にお金を払っているのかをよりよく理解できるようにすることで、間接的にこの目標に貢献していることになります。
リーダーシップはマネジメントとは異なり、「実行」だけではなく「アイデア」も重視します。リーダーの優先事項は、全体像を考え、その全体像がどのようにして組織全体の価値を高めるのかを伝えることです。そのプロセスの一環として、全体像の課題解決を練る練習をする必要があります。会社が進むべき方向性を決定したら、自分がその決定に参加したかどうかにかかわらず、そのアイデアの価値をチームメンバーに理解させることで、優れたリーダーになることができます。
一方マネージャーの役割は、アイデアをいかにして現実化するかということです。つまりここで言うマネジメントとは、プロジェクトの人員配置、リソースの割り当て、目標達成のための予算編成などを意味します。書類を直接確認したり、仕事を承認するのも彼らです。最終的に、優れたマネージャーはチームメンバーがインパクトのある仕事を成し遂げられるようにサポートします。
企業文化は、チームメンバーが組織の一員であることを実感し、サポートを受け、最高の仕事をするための必要要素です。チームの構築活動、学習と開発の機会、強力な従業員オンボーディングワークフローなどを通じて企業文化に投資することで、チームメンバーは充足感を得て、会社への貢献度を高めることができます。
企業文化を形成し、創造するのはリーダーの仕事です。Asana の共同創業者および CEO である Dustin Moskovitz は、「リーダーとして、企業文化のトーンを設定することが私の責任であると認識しています」と述べています。リーダーは、企業文化がどのようなものであるべきかを確立し、それを具現化して、最終的には周りの人々が参加して企業文化を向上させたいと思うように促します。
一方、企業文化に関するマネジメントとは、その実践やポリシーを実際に実行することです。チームメンバーからフィードバックがあれば、それを社内でシェアするのはマネージャーの仕事です。その際、企業文化を改善するためにそのフィードバックを会社のプロセスに組み込むのは、リーダーの仕事となります。健全な企業文化につながるマネジメントとはチームのフィードバックに耳を傾け、問題があれば、それを解決することです。
実際、ギャラップの調査 (2025年) によると、自分の意見が職場で尊重されていると強く感じている従業員は、わずか 28% にとどまっています。だからこそ、リーダーがチームの声に耳を傾けることが重要になります。
記事: 社内の全員に権限を分散させる方法働き方や事業環境の変化にともない、マネジメントに求められる視点も広がっています。近年とくに重視されている考え方を紹介します。
メンバーが同じ場所にいない働き方が定着し、勤務時間よりも成果で評価する考え方が広がっています。細かく監視するのではなく、権限を委ね、信頼を軸にチームを運営する姿勢が欠かせません。
人材をコストではなく、価値を生み出す資本として捉える「人的資本経営」への関心が高まっています。マネージャーには、メンバーの成長や能力開発を後押しし、その成果を組織の価値につなげる視点が求められます。
メンバーが安心して意見を出し合える環境は、チームの成果に直結します。心身の健康や心理的安全性に配慮することも、現代のマネジメントの大切な役割の一つです。
マネジメントとは何かを説明し、リーダーシップとの違いを解説しました。マネージャーとリーダーは似ているようで、その役割や目的、必要なスキルは異なります。両方を兼ねることも可能ですし、どちらかの分野のスキルを伸ばすことに集中することもできます。マネジメントとは何か、そのポイントを押さえて、チームを成功へ導きましょう。
コラボレーションとコミュニケーションは、マネジメントとは切っても切れない関係にあります。そのためリーダーもマネージャーも、そのスキルを継続的に向上させる必要があります。チームによるコラボレーションの効率をアップさせる工夫を、日々の仕事に取り入れてみましょう。
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