心の知能を今日から優先するべき理由

寄稿者 Julia Martins の顔写真Julia Martins2021年8月19日00
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概要

心の知能 (感情知能) とは、自分の感情を正確に理解し、他者の感情を正確に認識する能力です。これは、職場において効果的なコラボレーション、対人関係、優れたコミュニケーションを実現する上で必要不可欠なソフトスキルです。この記事では、リーダーにとって心の知能が大切である理由を解説します。その上で、心の知能を培うための 9 の秘訣を紹介します。

心の知能指数 (EQ) とは何か?

心の知能とは、自分と他者両方における感情を認識し、制御し、理解する能力です。心の知能が高い場合、他者とつながり、共感に基づくつながりを築き、効果的にコミュニケーションを取り、対立を乗り越え、自分の感情を表現できます。心の知能は「EI」または「心の知能指数」(EQ) と呼ばれる場合もあります。

心の知能は後から身に付けることはできない天性のもののように感じられることもよくあります。しかし、知能指数 (IQ) と同様に、心の知能指数 (EQ) も長期的に伸ばすことができます。

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心の知能の歴史

心理学者たちが心の知能の研究を始めたのは、エドワード・ソーンダイクが 1920年に社会的知性の概念を紹介したときでした。その後、ハワード・ガードナーが、その理論を発展させ、認知能力は複数の知性からなるという考え方を発表しました。ガードナーは、1983年の著書「MI:個性を生かす多重知能の理論」(Frames of Mind: The Theory of Multiple Intelligences) で、対人的知能と内省的知能の概念を紹介しました。

しかし、「心の知能」という用語が注目されるようになったのは、1995年に科学記者のダニエル・ゴールマンが「心の知能」(Emotional intelligence) を出版してからでした。その著書で、ゴールマンは心の知能を定義し、リーダーシップにおける EQ の重要性を提唱しています。

その後、2004年、ピーター・サロベイとジョン・メイヤーが心の知能についての研究範囲と理解を広めました。サロベイとメイヤーは、心の知能を高め、測定するための特性モデルを開発しました。これは後に世界初の心の知能テストであった「メイヤー-サロベイ-カルーソ 心の知能テスト」(MSCEIT) につながりました。

今日、心の知能に関連する各種の情動的コンピテンスや対人スキル、そして EQ (心の知能指数) と IQ (知能指数) の違いを理解するために、さまざまな心理学者が心の知能を研究しています。心の知能の完全な詳細については、多くの心理学者が異なった意見を持っていますが、経験と訓練を積めば伸ばせるスキルであるという点に関してはほとんどの心理学者が合意しています。

高い EQ (心の知能指数) のメリット

心の知能は、従来の知性と同等に、そして場合によってはそれ以上に重要であることが、研究により示されています。2016年の研究によると、効果的なチームワークを予測する上で、高い EQ は、高い IQ よりも正確な予測因子です。その他の研究でも、高い EQ はより優れた仕事のパフォーマンスリーダーシップにつながることが示されています。

心の知能は、簡単に言えば、自分の感情と他者の感情を理解する能力です。心の知能が高い場合、以下のことを実現できます。

心の知能の特性

心の知能には、主要なモデルが 2 つあります。1 つ目は、ダニエル・ゴールマンにより開発されたモデルで、EQ の 5 つの主要な特性が含まれています。2 つ目は、ジョン・メイヤーとピーター・サロベイにより開発され、心の知能の主要な特徴を 4 つ定義しています。

ダニエル・ゴールマンが提唱した心の知能の 5 つの特性

ゴールマンは、EI (心の知能) において、以下の 5 つの主要なスキルを特定しました。

  1. 自己認識: 自分の感情を理解する能力を指します。自己認識力を持つことは、自分の長所、短所、価値観、目標、他者への影響力を理解することを意味します。

  2. 自己制御: 自分の感情を制御する能力を指します。優れた自己制御力を備えているリーダーは、衝動に突き動かされて行動するのではなく、反応する前にまず一歩引いて自分の感情を観察できます。

  3. 動機付け: 動機 (モチベーション) とは、成功したいという気持ちの裏にある理由のことです。自分の動機を認識すれば、他者に対しても共感的理解を発揮できます。

  4. 共感力: 他者の気持ちを察する能力を指します。共感力は他の情緒状態への重要な土台をなすため、多くの場合、心の知能の根幹と見なされています。

  5. ソーシャルスキル: 他者とコミュニケーションを取り、コラボレーションを行う能力を指します。ゴールマンは、ソーシャルスキルを自分が望む行動に向けて他者を導く能力になぞらえています。

ジョン・メイヤーとピーター・サロベイが提唱した心の知能の 4 つの特徴

メイヤーとサロベイも、心の知能の研究においてその分類を行い、4 つの特徴を特定しました。その特徴は以下のとおりです。

  1. 感情の識別: 他者が感じる感情を識別する能力を指します。自己認識と自分の感情を認知する能力もこの特徴の内に含まれます。

  2. 感情の活用: 自分または他者の感情を識別した際に、たとえば問題解決や意思決定などその他の認知プロセスを支えるために、その感情を生かす能力を指します。

  3. 感情の理解: さまざまな感情がどのように関係し合い、それらの感情が自他の行動にどのような影響を及ぼすのかを理解する能力を指します。

  4. 感情の調整: 自分および他者の感情を制御する能力を指します。自分の感情を調整することは、目前の仕事を遂行するために、感情を軽減したり、引き出したりすることを意味します。一方で、この特徴には、目標を達成するために、周りの人の感情を調整する能力も含まれます。

心の知能をリーダーシップに活用する方法

研究によると、心の知能の高さはリーダーシップの成功に欠かせません。「心の知能と職場におけるリーダーシップ効果のパフォーマンス結果とのその関係性」(Emotional intelligence and its relationship to workplace performance outcomes of leadership effectiveness) と題された 2005年の研究では、心の知能の高さとリーダーシップ効果の高さの関連性が指摘されています。

ゴールマン自身も、1998年にハーバード・ビジネス・レビューに掲載された記事「リーダーの資質」(What Makes a Leader) において、心の知能とリーダーシップの関係性を取り上げています。その記事で、ゴールマンは次のように述べています。

最も効果的なリーダーは、皆ある類似する重要な一面を持っています。それは「心の知能」として知られるようになった能力が高いことです。IQ や技術的なスキルがリーダーにとって不要なわけではありません。それらも大事な資質ですが、そういった新卒レベルの要件だけでは、人を管理するポジションには対応しきれません。私の研究、そして最近の他の研究も、心の知能がリーダーシップに絶対不可欠な要素であることを示しています。この 1 つの要素が欠けている場合、たとえ最高水準のトレーニング、鋭い分析力、素晴らしいアイデアを数限りなく生み出す力を兼ね備えていても、優れたリーダーにはなれません。

心の知能はチーム全員にとって大事な能力ですが、リーダーシップに就くメンバーにとってはとりわけ重要です。ゴールマンは、さらに次のように述べています。

パフォーマンス面でスターと見なされる人の職位が高いほど、その人の効果性の要因として心の知能に関わる能力が挙がっています。

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職場で心の知能を築く 9 の方法

心の知能の上記モデルの内どちらを実践する場合も (ゴールマンが定義した心の知能の 5 つの特性、またはメイヤーとサロベイが定義した 4 つの特徴)、EQ の向上につながる主要なスキルがいくつかあります。以下では、その各スキルの詳細について、その構築に向けてワークプレイスで使える実用的なツールと共に解説します。

1. 自己認識力を築く

心の知能を高めるために最初に取るべきステップは、自分を知ることです。EQ の大きな部分を占めるのは、自分の感情、そしてその感情が周りに及ぼす影響を認識し、理解することです。しかし、その影響を理解できる前に、まずその感情自体を理解する必要があります。

自己認識力を築くためのテクニックにはさまざまなものがあります。以下にその一部を紹介します。

  • 日記をつけること

  • 自分自身の価値観と基本理念を認識すること

  • 自分に動機付けと目的意識を与えるものが何であるか定義すること

職場で自己認識力を築く最適な方法は、日々の業務をより大きなチームや会社目標と結びつけることです。そのようなレベルの理解を得ることで、自分の仕事の真の意義を認識できるようになります。それにより、意思決定の必要が生じた場合、自分の仕事が欠かせない理由をすでに認識できているため、一番大事な情報をしっかり検討した上で最適な意思決定を行えます。

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2. マインドフルネスを実践する

自分の感情を理解したら、その感情と静かに向き合うことを通じてその制御を目指しましょう。マインドフルネスと呼ばれるこのテクニックは、自己制御において大きな役割を占めます。

マインドフルネスの最初のステップは、日記をつけることです。日記の習慣を付けたら、それにより研ぎ澄まされた自己認識を生かし、自分の中で湧き起こるさまざまな感情的反応を観察し、それを言葉で表現しましょう。たとえば、仕事でトラブルに直面したとき、一番最初に感じる感情は何ですか?怒りでしょうか?もどかしさでしょうか?情けなさでしょうか?自分の感情を明確に認識すれば、自己管理の実現につながります。

3. 共感力を磨く

共感力とは、他者の心とつながる能力です。共感力は心の知能の訓練の根幹を成す要素です。

共感力を築くためには、以下を実践しましょう。

  • 他者を理解すること。共感力を持つことは、相手の心を感じ取ることを意味します。これを実践するためには、他者に対する理解を深めるよう努めましょう。自分ならしない選択を誰かがしたら、好奇心と共感力を発揮して、その人がなぜその行動を選んだのか相手の身になって理解することを目指しましょう。

  • 判断に走らないこと。早急な憶測やネガティブな判断をささやく頭の中の声を誰しも持っています。判断に走らないという心がけは、そういった瞬時の推測を消し去るというよりは、その声をさらりと受け流し、より長期的な洞察を選ぶことを意味します。

  • 相手の立場に立つこと。共感力は心のつながりにより成り立つものであり、自分を相手の立場に置き換えることは、そのつながりをつくるために効果的な方法です。相手の選択が、違和感を覚えたり、受け入れがたく感じるものであっても、衝動的に反応するのではなく、相手の視点から状況を捉えてみましょう。

4. 傾聴する

傾聴 (アクティブリスニング) とは、理解するために耳を傾けるコミュニケーションの実践法です。次に何を言おうか考えることよりも、相手が言っていることに意識を完全に集中しましょう。

傾聴を実践すれば、共感力、つながり、そして相手との信頼関係を築けます。

傾聴のもう 1 つの重要な要素は、非言語コミュニケーションとボディランゲージです。相手が話している最中、自分の行動に注意しましょう。相手の話に関心を持っていても、腕を組んだり、目をそらしたりしていれば、その逆の印象を与えてしまいます。アイコンタクト、そして敬意と関心を示す表情を維持するよう努め、相手の話にしっかり耳を傾けていることを示しましょう。

記事: 理解するための聴き方: アクティブリスニングの実践方法 (実例付)

5. 適応力を発揮する

適応力とは、さまざまな状況に対し柔軟に対応する能力を指し、心の知能において必要不可欠な機能です。自他の感情を認識する能力が身に付いたら、次のステップとして、適切に反応するために適応力を発揮しましょう。これは自己制御と呼ばれる行動です。

職場でこれを実践する際に大きなポイントとなるのは、自分のプライオリティを認識することです。自分の仕事をより大きな目標と結びつけることを実行できている場合、自分がより大きなチームや会社の取り組みに日々のタスクを通じてどのように貢献しているのか把握できているはずです。その結果、何らかの事態が発生して適応性が必要になったとき、一番大事なタスクに集中するために、効果的に方向転換できます。

6. ソーシャルスキルを伸ばす

ソーシャルスキルのわかりやすい例は、心の知能についての理解を職場で実際の行動に反映する能力です。自他の感情を認識し、制御する能力をしっかり身に付けたら、その社会的認識力を生かし、より効果的なコミュニケーションとコラボレーションを行いましょう。

職場で社会的認識を十分に持つことは、以下のことを意味します。

  • グループダイナミクスを理解すること。グループダイナミクスとは、共に働く人々の集合体における関わり合い、態度、行動を指します。心の知能が高い場合、グループダイナミクスを正確に認識し、適切に対応できます。

  • 最適なコミュニケーションスタイルを実践すること。積極的 (アサーティブ) なコミュニケーションを行えば、自分のニーズを表現し、自分のアイデアを主張できます。心の知能が高い人は、コミュニケーションに対し積極的に対応しつつ、攻撃性や受動的攻撃性を見せることはありません。

  • 最適なマネジメントスタイルを活用すること (マネージャーの場合)。民主的なマネジメントでは、コラボレーションとコミュニケーションが重視されます。民主的なマネジメントスタイルを培うには、意思決定プロセスを分散させ、コラボレーションを強化しましょう。

その場合に活躍するのがコラボレーションツールです。効果的なコラボレーションツールを使えば、仕事を管理し、チームワークの生産性を高められます。コラボレーションアプリを使用するチームは、より簡単にコミュニケーションを取り、ファイルを共有し、仕事を調整できます。

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7. フィードバックを歓迎する

私たちの多くは、批判を受けると (それが建設的批判の場合でも) すぐにネガティブな反応に走りがちです。しかし、フィードバックを前向きに受け取り、それを歓迎さえすることが、心の知能が高い人の特徴の 1 つです。

これを実践するためには、相手が自分に提供するフィードバックの価値を認識しましょう。フィードバックを共有している人は、何らかの形であなたの力になるために尽力してくれているのです。その事実を十分に受け止め、フィードバックを貴重な贈り物として認識しましょう。

さらなるステップとして、フィードバックを日々の業務や 1on1 ミーティングにおいても実践し始めましょう。フィードバックを日常的に求め、その学びを生かしましょう。そして、チームメイトに共有してもらったフィードバックに簡単にアクセスし、学びを得るために、フィードバックのリストを To-Do リストツールに保存することも検討しましょう。

8. 対立解決について学ぶ

心の知能は、感情を認識し、制御することが大きな部分を占めるため、対立解決の際に特に役立ちます。対立解決とは、風通しがよく、誠実性が尊重され、インクルーシブな職場環境を培うために、職場の対立を解決するプロセスです。心の知能が高い場合、対立解決プロセスを進める際、自分たちの声が尊重され、サポートされていることを 1 人ひとりのチームメンバーに実感してもらえます。

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9. 迷いを感じたら、内省する

心の知能を伸ばす上で大きなポイントとなるのは、感情が生じたときにそれを瞬時に認識することです。一方で、過去の体験を省みることは、心の知能を長期的に築くために有効です。過去の習慣を認識したり、過去の感情的な状況を新たに身に付けた感情制御のノウハウを生かして見つめ直せば、将来の状況に向けたよりよい準備となります。

心の知能が高いチームになる

心の知能は、職場におけるよい対人関係の土台となります。一方で、それを実現するためには、チームメンバーと効果的にコラボレーションを行う方法を理解することもカギとなります。チームコラボレーションソフトウェアの使用を通じ、チームとのつながりを維持し、コラボレーションを行う方法を学びましょう。

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