戦略プランを支える重要成功要因 (CSF) の活用法

Julia Martins 寄稿者の顔写真Julia Martins2021年6月18日00
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目標設定は、すべてが頑丈な土台によって決まるという点で、ピラミッドの建設によく似ています。安定した基盤がなければその上にブロックを積み上げていくことはできません。しかし、その基盤を一から作るのが、なかなか大変なのです。

そこで活用したいのが重要成功要因 (CSF)。CSF とは、目標達成のカギとなる、チームがクリアするべき成功要因を指します。重要成功要因を 3 年や 5 年のスパンの戦略プランと組み合わせることで、目標設定の強固な土台作りが可能になります。その安定した土台に、具体的なプロジェクトの成果物やプロジェクト目標を積み上げることによって、あらゆる目標を計画通りに達成できるようになります。

これまで重要成功要因を設定したことがない、あるいは戦略プランのどこから手をつけるべきかもわからないという方に、初めに知っておくべき CSF の全知識をお伝えします。

重要成功要因 (CSF) とは?

重要成功要因 (CSF) とは、戦略的目標を果たすために、組織が達成する必要のある全体的な目標です。プロジェクトやプログラム毎に CSF を導入することもできますが、CSF は組織の事業戦略に密接にかかわるため、多くの場合、部門全体や組織全体で活用されます。重要成功要因をクリアすると、通常は組織にとって有意義な価値や利益がもたらされます。

CSF は全体的な戦略目標ですから、必ずしも実行に関する具体的内容は含まれていません。たとえば、ブランド認知度を高めるという重要成功要因を想定してみましょう。これは、組織に重要な価値とマーケットシェアをもたらす、非常に大きな目標です。この CSF を実現するには、専門のプロジェクトやチームが様々なイニシアチブに取り組み、定量的な重要業績評価指標 (KPI) を設定して、チームがいつまでに何を達成するべきなのか、明確に把握する必要があります。

重要成功要因 (CSF) の例

重要成功要因はこれと決まっているわけではなく、全体的な目標としてチームに進むべき方向性を示すものです。プロジェクトマネージャーは CSF を活用することで、各自のプロジェクトを成功に導くことができます。

設定する重要成功要因は、組織全体の戦略目標によって決まります。ここでは、組織の 3 か年計画や 5 か年計画に合わせて作成される CSF の例をいくつかご紹介しましょう。

  • マーケティング戦略のアップデート

  • 製品の新機能 

  • 業績管理のチェック

  • 新規顧客を獲得するための強力なセールスチームの設置

重要成功要因の歴史

成功要因という概念は、1961 年にマッキンゼー・アンド・カンパニーの顧問だった D. Ronald Daniel が初めて提唱しました。その後、John F. Rockart がこの手法を体系化し、「重要成功要因 (Critical Success Factor)」と名付けて、「Harvard Business Review」に記事を寄稿しました。この 1979 年の記事で、Rockart は CSF を次のように定義しています。

(重要成功要因とは) 望ましい結果を得ることにより、組織が優れた業績を確実に上げられる、限られた特定の領域を指す。つまり、事業が成功するために「適正に行う必要がある」少数の重点分野である。この分野における結果が不十分であれば、該当期間における組織の業績は、望ましい水準を下回ることになるだろう。
(重要成功要因とは) 望ましい結果を得ることにより、組織が優れた業績を確実に上げられる、限られた特定の領域を指す。つまり、事業が成功するために「適正に行う必要がある」少数の重点分野である。この分野における結果が不十分であれば、該当期間における組織の業績は、望ましい水準を下回ることになるだろう。

戦略目標、CSF、KPI などの関係性

目標設定では、多くの略語を使いこなし、その内容を把握しなければなりません。どの目標設定の手法も少しずつ異なりますが、まずは略語に慌てないようにしましょう。それぞれが何を表し、どこが違うのかを理解するために、典型的な戦略プランのプロセスを解説します。

戦略プランを立てる

戦略プランを立てることは、あらゆる目標設定プロセスの前提です。目標を設定する前に、まず戦略を立てる必要があります。戦略プランを立てれば、組織がどこへ向かい、目標を達成するためにどんなアクションが必要かを定義づけすることができます。

記事: 戦略プランニングは初めてですか?ここから始めましょう。

KPA と KRA を特定する

KPA、つまり「重要業績分野」とは、組織の成功を左右する、事業にとって重要な分野を指します。たとえば、ソフトウェア会社であれば、オンラインソフトウェアでバグが発生しないことが重要業績分野の 1 つになります。あるいは、製造業なら、工場が順調に稼働していることが KPA になるでしょう。

目標設定の際に、注目すべき分野を特定するには、重要業績分野を理解することが重要です。先ほどのソフトウェア会社の例で、もしソフトウェアでバグやダウンタイムが頻繁に発生しているなら、そうしたダウンタイムを短縮、解消することが適切な目標となります。

KRA とは Key Result Areas (重要結果領域) の略で、戦略プランで特定した重要ポイントがこれに当たります。KRA の範囲は目標よりも大きく、たとえば、「生産性」や「効率」などが KRA に設定されます。その上で、目標を設定し、これらの領域を改善していくには具体的に何が必要かを細かく決めていきます。

目標設定の手法を選択する

戦略プランを立てたら、目標設定の手法を実践に移します。目標設定手法としては、主に OKR と CSF (+ KPI) の 2 つがあります。この 2 つの手法は非常に似ているため、実際に計画する際は、いずれか一方だけを使用しましょう。

単純でフレキシブルな構成の OKR を活用する

OKR は Objective and Key Results (目標と主要な結果) の略です。初めて目標を設定するなら、次のようなシンプルな構成の OKR で始めるのがおすすめです。

  • 私は [目標] を、[主要な結果] によって測定する。

目標は、達成したいゴールです。ブランドの認知度を上げる、業界最大の二酸化炭素排出量削減を達成する、といったことがこれに相当します。

主要な結果は、目標達成への進捗を測定する指標です。たとえば、ウェブサイトの閲覧数 100 万回を達成する、製品の材料の 4 分の 1 を、堆肥として利用できる有機素材にする、といったことです。

記事: 目標と主要な結果 (OKR) とは?

組織の活動を CSF と KPI を使って定量的に測定する

CSF (重要成功要因) は、OKR の O (目標) と同じ働きをします。これらは組織が 3 年や 5 年のスパンで立てている戦略プランを実現するために取り組む主要な目標です。

CSF を具体的なアクションに結びつけるには、重要業績評価指標 (KPI) と組み合わせます。KPI はチームや組織が重要な事業目標へ向かってどれだけ成果を上げているかを定量的に評価する指標です。KPI が適切であれば、重要成功要因の達成、そしてその結果として戦略目標の達成へ向けて組織が順調に進んでいるかを把握できます。

記事: 重要業績評価指標 (KPI) とは何か?

CSF のタイプとそれが重要な理由

従来より、重要成功要因は 5 つのタイプに分類されます。CSF のタイプを理解することで、重要成功要因を見落とさずに、次の目標期間のプランを立てることができます。

1. 業界に関連した重要成功要因

競争力を維持するために、組織が特定の重要成功要因をクリアし続けなければならない場合があります。業界関連の CSF を把握するには、積極的に業界の動向を追跡し、予測する必要があります。

業界関連の重要成功要因の例: 

  • イノベーションによって競合他社の機先を制し続ける

  • 持続可能なパッケージングや製造によって、顧客の期待に応える

  • 業界水準を上回るカスタマーサービスを提供する

2. 競合に関する重要成功要因

競合に関する重要成功要因とは、競合他社の動向によって左右されるものです。つまり他社の成功や失敗によって自社が影響を受けるのです。これらの CSF は競合他社の業績と自社の業績を 1 対 1 で比較するのではなく、顧客が競合他社と比べて自社の事業をどう捉えるかが重要なポイントになります。

競合に関する重要成功要因: 

  • 「ラグジュアリー」なブランドとして認識される

  • 特定の顧客層の関心を集める

3. 一時的な重要成功要因

その名前の通り、一時的な要因は会社に恒久的に影響するものではありません。これらの重要成功要因は、ビジネスにプラスやマイナスの影響を与える、時限的なものです。こうした要因を特定し、場合によっては克服することで、今後の事業の成長を後押しできます。

一時的な重要成功要因の例:

  • ビジネスモデルに対する、予定外の一時的な変更

  • 特定の一時的な事象による人員のキャパシティ低下

  • 新オフィスの開設や新市場進出に伴う人材の雇用

4. 環境的な重要成功要因

環境的な重要成功要因は、組織の直接的な力が及ばない事象を指します。かといって、重要度が下がるわけではありません。環境的な要因を積極的に特定、追跡すれば、将来起こりうる問題に先手を打ち、不要なリスクを避けられるためです。

環境的な重要成功要因の例: 

  • 経済不況

  • 事業に影響を与える政策変更

  • 業界への法規制

5. 管理職に関わる重要成功要因

他の 4 つの CSF のタイプとは異なり、管理職に関わる重要成功要因は、組織全体ではなく、人物や職位に限定的なものです。これを読んでいる管理職の方は、ご自身のマネジメントやリーダーシップスキルに磨きをかけるため、CSF を設定してみましょう。

管理職に関わる重要成功要因:

記事: マネジメントスタイルを活用してチームをサポートする方法

CSF を特定する 5 つのステップ

重要成功要因は、成功の基準を設定、管理する優れた方法です。次の 5 つのステップで成功をつかみましょう。

  1. 戦略的プランを作成する。CSF は、組織の 3 か年、あるいは 5 か年の戦略プランに基づくため、まずは戦略プランを作成しましょう。戦略プランは数年にわたる全体的な目標を決めるものであり、この後、CSF を決定する重要な土台となります。

  2. 経営に関わる上層部の関係者と戦略プランを確認する。戦略プランを作成したら、戦略管理プロジェクトチームを結成します。このチームが、重要成功要因を設定する主要な関係者です。戦略プランを確認し、ビジネスプロセスと組織にとって事業の成功を左右する重要結果領域 (KRA) を特定します。たとえば、次の目標期間の KRA を「顧客満足度」に設定すると仮定しましょう。

  3. 重要成功要因を特定してチーム全体と共有する。KRA を特定したら、これらの目標の達成に役立つ重要成功要因を追加していきます。たとえば、KRA が顧客満足度であれば、専門のカスタマーサービスチームによって、顧客との関係性を改善することが関連の CSF になります。CSF を特定したら、チーム全体と共有し、フィードバックを求めます。

  4. CSF を KPI と結びつけ、行動に移す。CSF をアクションに変えるには、測定可能な重要業績評価指標 (KPI) を設定します。たとえば、CSF が「専門カスタマーサービスチームによって顧客との関係性を改善すること」なら、四半期末までに 10 名以上のメンバーから成るカスタマーサクセスチームを立ち上げることを KPI とし、次に、年度末までにカスタマーサービスの対応までの時間を 12 時間以内にすることを第 2 の KPI とします。

  5. 観測し、測定する。CSF と KPI を作成したら、それらをモニタリングして成功に導くだけです。もしまだ導入していなければ、組織の大目標を追跡、管理する目標管理システムをセットアップするのがおすすめです。このシステムは目標に関連するプロジェクトやイニシアチブの管理にも役立ちます。 

CSF を作成し、戦略を立て、成功をつかむ

適切な重要成功要因は、戦略プランの最重要ポイントにチームの目を引きつけ、目標達成を助けます。初めて CSF を管理するなら、ぜひ Asana の「ゴール」のような、目標管理ツールを使用しましょう。そうすることで、チームメンバー全員が、正確に CSF とそれを達成するための KPI、そして各プロジェクトの進捗を明確に把握できます。

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