ファイブフォース分析を解説: 競争要因からビジネス戦略を立てる方法

古田 弓恵の顔写真古田 弓恵
2024年10月1日
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概要

この記事では、外部環境を分析し、その業界での収益性を見極めるフレームワーク「ファイブフォース分析」について解説します。ファイブフォース分析とは何か、その要素と目的、メリット、注意点を知り、事業を成功に導くための戦略立案に役立てましょう。記事内ではファイブフォース分析の例もご紹介します。

更新: この記事は、ファイブフォース分析の目的と注意点に関する記述を含めて 2024年 10月に改訂されました。

どのような業界や業種、分野でも、その市場の現状を把握することはビジネスを成功させるうえで必要不可欠と言えます。そこで出てくる疑問、たとえば「業界の競争状況は?」「収益性は?」「自社が抱える課題は?」といった疑問に答えを出し、業界構造を分析するために用いられるツールが「ファイブフォース分析」です。

ファイブフォース分析とは?

ファイブフォース分析 (5フォース分析、5F 分析) とは、アメリカの経営学者マイケル・ポーター氏が著書『Competitive strategy (競争の戦略)』で提唱した収益分析のフレームワークのことを指します。業界の収益性に影響を与える 5 つの要因を分析するもので、その要因の影響が強ければ、その業界において収益を稼ぐことは困難であり (「脅威」)、逆に弱ければ「機会」となります (5 つの要因については、下の『ファイブフォース分析の “5 つの競争要因” とは?』で詳しく解説しています)。

自社にとって「脅威」と「機会」を把握できるこのフレームワークは、主に競争戦略や事業戦略、マーケティング戦略などを策定するときに活用されます。市場参入する前に、製品やサービスの競争優位性を考察することができるからです。


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ファイブフォース分析の目的

ファイブフォース分析の目的は、企業がその業界における競争環境を総合的に理解し、戦略的意思決定をサポートすることにあります。

この分析では、競争要因となる 5 つの力を評価し、業界の収益性や競争の強度を把握します。企業はこの分析を行うことで、競争優位性を獲得するための戦略を立てたり、リスクや機会を識別したりすることが可能です。また、市場への新規参入や製品の開発、価格戦略の見直しなど、企業の具体的なアクションにも役立てられます。ファイブフォース分析は、業界の構造を理解し、長期的な競争力を維持するための重要なツールとして、多くの企業で取り入れられています。

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ファイブフォース分析の “5 つの競争要因” とは?

ファイブフォース分析の提唱者マイケル・ポーターは、業界における収益性は「新規参入の脅威」「業界内の競合」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「代替品の脅威」という 5 つの競争要因により規定されているとしています。

ファイブフォース分析フレームワーク

それぞれについて、詳しく見てみましょう。

1. 新規参入業者の脅威

新規参入者の脅威とは、新しく市場に参入する業者や企業が現れ、競争が激化する脅威です。ここでは、新規参入の容易さを分析します。

この脅威が大きければ、新規参入のハードルが高いこととなり、小さければ逆に参入障壁が低いことになります。後者の場合、結果として業界内のプレイヤー (参入企業) の数が増え、価格競争が激化することが考えられるため、全体の収益性が下がることとなります。

新規参入の脅威を分析するときのポイント

  • 市場規模

  • 市場成長率

  • 既存ブランドの強さ

2. 業界内の競合

業界内の競合要因とは、市場内の競争状況に関する項目です。既存の競合他社を分析し、市場の状況を考察します。

この脅威が大きければ、業界内の競争が激しいこととなり、収益性は低くなることが考えられます。競合企業が多ければ多いほど、市場で自社製品やサービスを生み出すことは難しくなります。逆に、この脅威が小さい場合は業界の寡占化が進んでいるので競争は穏やかであると考えます。

業界内の競合を分析するときのポイント

  • 競合企業の数

  • 各社の市場シェア状況、資金力、認知度

  • 差別化の状況

3. 売り手の交渉力

売り手の交渉力では、自社と売り手 (サプライヤー、供給業者、仕入れ先) との関係を分析します。

取引先の要求が強ければ、買い手はコストアップを余儀なくされ、収益性は低下します。特に寡占化が進む業界では売り手の交渉力が高くなります。

売り手の交渉力を分析するときのポイント

  • 仕入れ値

  • 市場における売り手の数と力関係

  • コスト交渉の有無

4. 買い手の交渉力

買い手の交渉力では、自社と買い手との関係を分析します。BtoC なら一般の消費者やユーザー、BtoB なら取引先や顧客がこれにあたります。

ここで分析する競争要因は、買い手側が売り手に対して、価格の引き下げや品質の向上などを要求する強さです。買い手の交渉力が高いと、価格の引き下げに圧力がかかるため、収益性は低くなる可能性があります。また、とびぬけた購買力を持つ取引先がいる場合などは、自社の収益を上げることは難しくなるでしょう。一方、もし特許を持つ製品を扱う企業なら、買い手の交渉力は低くなります。

買い手の交渉力を分析するときのポイント

  • 購入先の数と価格帯

  • 買い手の寡占度

  • 値引き競争の有無

5. 代替品の脅威

代替品の脅威とは、既存製品やサービスと同様のニーズを満たす製品・サービスが投入される脅威のことです。それによりマーケットシェアを奪われてしまうリスクについて分析します。

ここでいう代替品は、競合他社のそれではなく、業界外部から投入されるものを指します。たとえば、書籍に代わる電子書籍、CD に代わる音楽配信サービスなどです。こういったケースでは、既存製品は代替品により市場を奪われ、収益性が低下します。影響を被るのは、企業だけでなく業界全体に及ぶ可能性もあります。

代替品の脅威を分析するときのポイント

  • 独自の商品価値

  • コストパフォーマンス

ファイブフォース分析で何がわかる?

ファイブフォース分析で明らかになるのは、業界における自社の「脅威」と「機会」です。

5 つの競争要因を検証することで、業界を客観的に考察し、状況に合わせた事業展開の判断を下すことができます。新規参入のタイミングや市場からの撤退時期など、このフレームワークを活用して見極めます。

新規事業のスタートを考えているなら、その業界での可能性を判断するためにファイブフォース分析を行います。市場の状況を判断できるので、事業の戦略計画策定に役立つでしょう。一方、業績が優れず、事業の撤退を検討し始めたときにも、このフレームワークの出番です。現況をしっかりと判断して、業績の回復が難しい見通しなら、撤退が必要かもしれません。

ファイブフォース分析はあくまで外部環境を整理するためのフレームワークです。具体的に戦略として落とし込むには、内部環境も検証する必要があります。そのためには、SWOT 分析と合わせた分析を行うことがおすすめです。SWOT 分析は、自社の強みや弱み、機会、脅威を特定するフレームワークです。


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5 フォース分析のメリットは?

では、ファイブフォース分析のメリットを具体的にまとめてみましょう。

自社の収益性が向上する

ファイブフォース分析を行って現状を知ることは、つまりその業界の魅力度 (業界での収益の上げやすさ) を把握することです。新規事業を立ち上げるにしても、闇雲に直感だけで新しい市場に飛びこむのではなく、業界の魅力度を見極めて、確実な収益を獲得することが重要となります。そのためにファイブフォース分析は非常に効果的です。

自社の強みと弱み (課題) を発見できる

外部環境分析を客観的に行うことで、自社の強みと弱みを発見することができます。競合他社にも負けない優位性があるのか、もしくは収益性に影響を与える課題を抱えているのか。そのポイントを知ることで、効果的なビジネス戦略も立てられるようになります。

記事: 7 つの戦略計画モデルと計画プロセスをスタートするのに便利な 8 つのフレームワーク

リスクを見極められる

5 つの競争要因を分析することで、ビジネスを運営するにあたってのリスクを見極めることができます。代替品はあるか、コストはどのくらい必要か、最終的に利益はどの程度望めるのか。そういった点を分析し、ビジネスの円滑な運用が危ぶまれるようなリスクを事前に発見できます。

ファイブフォース分析の例

では、ファイブフォース分析の例を具体的に挙げてみましょう。こちらでは、Amazon を例に考えてみます。

ファイブフォース分析【Amazon】

  • 新規参入の脅威: EC 業界は参入時の規制も少なく、高額な運転資金も必要ないため、参入ハードルは低いが、Amazon は業界内でも差別化されたサービスを提供しているため、新規参入の脅威は小さい

  • 業界内の競合: 物流システムを見てみても、業界内の差別化には成功しているものの、楽天など、既存業者間の競争は激しい

  • 売り手の交渉力: 運送業者や各種メーカーが売り手にあたるが、Amazon を通しての売上げは高く、交渉力は弱い

  • 買い手の交渉力: 一般消費者が買い手にあたる。市場でのブランド力は高く、スイッチングコストも高いため、買い手の交渉力は低い

  • 代替品の脅威: EC 業界は実店舗の市場シェアを奪った存在なので、代替品の脅威は小さい

ファイブフォース分析の注意点

ファイブフォース分析は業界の競争環境を評価する強力なツールですが、使用時にはいくつかの注意点があります。

定期的に見直し、更新をする

この分析は「静的」なものであり、業界や市場の変化をリアルタイムに反映するわけではありません。継続的な市場変動や技術革新、規制の変化を無視してしまうと、実際の競争力評価にギャップが生じる可能性があります。定期的に見直しや更新を行うことが必要です。

リアルタイムのデータ共有にはワークマネジメントツールを用いて、環境変化への対応や意思決定を迅速に行うようにしましょう。

客観的な分析を心がける

ファイブフォース分析では主観的な偏りに注意し、客観的な分析を心がけることが重要です。特定の結論に固執することなく、データに基づいた冷静な評価を行うために、チーム内での意見交換や外部の専門家の意見を取り入れることが有効でしょう。

分析結果を意思決定につなげる

ファイブフォース分析の目的は企業の戦略やアクションプランに反映させることです。ただ表面的な理解にとどまるのではなく、確実にそれを意思決定につなげるようにします。その際には有効なデジタルツールを活用して、タスクを明確に分割し、優先順位を設定しながら実行可能な計画に落とし込みましょう。そうすることで、迅速な意思決定が可能になります。


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まとめ

ファイブフォース分析 (5F 分析) とは何かをまとめました。分析した 5 つの要因を見て総合的に判断し、事業戦略の策定を行いましょう。このとき重要なのは、潜在的な脅威も考慮しながら業界の状況を客観的に分析し、そして最良の対策へと落とし込むことです。新規事業戦略を立てるとき、また既存事業の現状把握を行うときに活用しましょう。

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