PEST 分析とは何か?外部環境分析を行いビジネスを成功に導く

寄稿者 Sarah Laoyan の顔写真Sarah Laoyan2022年8月25日
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概要

PEST 分析とは、ビジネスに影響を及ぼす可能性のある、政治、経済、社会文化、技術の 4 つの面から外部環境を分析するフレームワークです。PEST 分析を用いることでリスクを回避し、分析結果は今後の経営判断の材料にもなります。この記事では PEST 分析の例を挙げながら、役立つ場面ややり方について解説します。

更新: この記事は「PEST」の意味と外部環境の種類に関するさらに詳しい記述を含めて  2022年 8月に改訂されました。

初めての国を訪れるとき、あなたはまず何をしますか?その国の文化や社会規範、言語について詳しくリサーチをしないでしょうか?同じことが新規市場に進出する際にも言えます。新しい事業を始めるときは、自社の内部環境だけでなく、そこを取り巻く外部環境に関する情報収集が大切です。そこで重宝されるのが、PEST 分析と呼ばれるフレームワークです。この記事では、外部環境リサーチを行うための便利なツール「PEST 分析」について詳しく解説します。

PEST 分析とは?

PEST 分析とは、ビジネスに影響を及ぼす可能性のある「政治 (Politics)」「経済 (Economy)」「社会文化 (Society and Culture)」「技術 (Technology)」に関する外部環境の変化を分析するリサーチツールです。それぞれの要素の頭文字を取って「PEST」となります。主に経営戦略やマーケティング戦略など、事業戦略を策定する際に用いられます。日本語ではカタカナで「ペスト分析」と表記されることも多いです。また、PEST に「法律 (Legal)」「環境 (Environmental)」を加え、PESTEL という略語を使う場合もあるので、PEST は短縮形だともいえます。

外部環境分析には、大きく分けて 2 種類あります。より大きな視点からアプローチする「マクロ環境分析」と、それよりも小さな視点で行う「ミクロ環境分析」です。PEST 分析はこのうち前者のマクロ環境分析に用いられるフレームワークで、ミクロ環境分析にはファイブフォース分析などの他のフレームワークが使われています。視点のほかに、マクロ環境分析は中長期的、ミクロ環境分析は短期的スパンで捉えるという違いもあります。

PEST が意味するものとは?

PEST を構成するそれぞれの要素は、具体的に何を意味するのでしょうか?ひとつひとつ見ていきましょう。

・政治 (Politics): 市場ルールを変化させる要因。法改正、政権交代、増税など。

・経済 (Economy): 景気や賃金に影響を与える要因。物価、株価、為替、景気動向、経済成長率など。

・社会文化 (Society and Culture): ニーズや消費者システムに影響を与える要因。人口動態、世論、少子高齢化、トレンド、ライフスタイルなど。

・技術 (Technology): 市場の競争に影響を与える要因。IT、イノベーション、インフラ、技術開発など。

PEST 分析と SWOT 分析の違い

PEST 分析は、SWOT 分析と結びつけられることがよくありますが、この 2 つのツールが有効な戦略上のポイントはそれぞれ異なります。

PEST 分析は、外部環境を分析して、包括的な財務判断の精度を高めるためのツールです。経済的な要因や、会社のビジネス戦略に変化を及ぼすさまざまな可能性を検討する際にこのツールを用います。

SWOT 分析は、もっと範囲を狭め、プロジェクト単位に絞って行います。SWOT 分析では、あるプロジェクトや事業計画の「強み (Strengths)」「弱み (Weakness)」「機会 (Opportunities)」「脅威 (Threats)」を見つけることができます。PEST 分析で得た情報を使って、SWOT 分析を補強することもできます。

PEST 分析の重要性とメリット

PEST 分析は、マーケティングの第一人者フィリップ・コトラー氏によって提唱されたフレームワークです。著書『コトラーの戦略的マーケティング』で彼は、新規市場参入時の調査の重要性を説いており、リサーチをせずに参入することは「目が見えないのに」参入しようとするようなものと述べました。

将来的に市場で生き残るためには、世の中の変化やトレンドをまず知ることが重要です。自社ではコントロールできない外部環境を分析するためのフレームワーク「PEST 分析」。そのメリットには、基本的に次の 4 つが挙げられます。

  1. ビジネスチャンスを見極めるほか、ビジネスへのリスクや脅威を前もって警戒できる。

  2. ビジネスを取り巻く外部環境の変化を明らかにし、チームは職場での適応力を発揮できる。

  3. 現状におけるリスクを分析し、失敗する可能性の高いプロジェクトを回避できる。

  4. 特定の地域やマーケットに対する先入観ではなく、定量的なデータや事実に基づいて、これまでと違う新たな市場を客観的に把握できる。

PEST 分析が役立つ場面

PEST 分析は、戦略プランニングの初期段階で使うと威力を発揮します。ここでは、PEST 分析の例も見ながら、どのようなシーンでこのフレームワークが有効なのか見ていきましょう。

新しい市場への進出

新しい顧客層や市場に進出を図る際、PEST 分析を使うことで、経済的要因や文化的要因など、通常は考慮しないような問題に目を向けられます。こういったケースでは、新しい市場に詳しいメンバーがチームにいて、戦略開発を補助してくれるのが理想的です。そうしたブレーンがいないと、その文化の部外者には思いつかないような文化的な壁にぶつかることがあります。

たとえば、1960年代、アメリカで成功を収めた General Mills が日本にケーキミックスを売り込もうとしました。当時、多くの日本の家庭にはオーブンがなかったため、同社は炊飯器でケーキが作れる点を宣伝しました。ところが、当時の日本には米は神聖な食物であるという考え方があり、炊飯器は普通、米を炊くためだけに使用されていました。他の食材が炊飯器に入り、白飯の味が変わってしまうことが忌避されていたのです。この点を見落としたことが、同社のケーキミックスの売上が振るわなかった最大の理由でした。これは PEST 分析を行っていれば、文化的な要因による失敗を避けられた一例です。

新製品の開発

新製品開発では、理想的な顧客像 (ICP) など、さまざまなリサーチが行われます。PEST 分析は、ICP に影響を与える外的要因と、それが ICP の意思決定プロセスをどう変化させるかを掘り下げる手がかりになります。

ビジネス面では、PEST 分析を使って、新製品開発に外的要因がどう影響するかを把握することもできます。たとえば、独立系のコーヒー会社が、コーヒー豆の新しい調達先を探しているとします。調達担当者は、政治、経済、社会文化、技術面のさまざまな要素を考慮し、相手の事業手法に倫理面で問題がなく、自社のビジネスモデルに適合しているかどうかを確認する必要があります。

外的な力によって劇的な変化が起きる場合

外的な力が、前触れもなくビジネス環境に大きな変化をもたらすこともあります。たとえばパナマ運河の閉鎖により、多くの企業が製造スケジュールや出荷時期を遅らせる必要に迫られたケースがよい例です。

ビジネス全般にわたるこうした遅れに対応するために、当時の企業はやむを得ず戦略を変更しましたが、現在も多くの企業がサプライチェーンの新たな変化に適応しようとしています。PEST 分析を前もって行い、サプライチェーンが今後どのように変化するかを予測して、さまざまなシナリオに基づいて戦略を調整することも有効です。

PEST 分析の手順は?

先述したとおり、PEST 分析はマクロ的な分析ですが、その形式はシンプルです。ここでは、PEST 分析を行う際の 4 ステップをご紹介します。

PEST 分析を行うにあたって重要なのが、ブレインストーミングです。より効率的に行えるよう、Asana ではブレインストーミングテンプレートを用意しています。

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ステップ 1: ブレインストーミングで「潜在的な環境要因」を洗い出す

最初のステップでは、ビジネス全体に影響を与える環境的要因を列挙していきます。ここで PEST の頭文字が表す言葉を思い出しましょう。ここでは PEST に「環境」と「法律」も加え、より具体的な例を挙げながら見ていきます。

  • 政治的要因: ビジネスに影響を与えかねない選挙が近づいていませんか?業績に影響を与える選挙公約は?プロジェクトを進める前に考慮すべき政府の規制はないですか?

  • 経済的要因: 現在の経済情勢が、拡大中か、停滞中か、衰退しているのかを判断しましょう。国外とのビジネスを行っているなら、為替レートに影響は出ていませんか?経済情勢によるターゲット市場の購買行動への影響は?考慮すべき関税制度や貿易規制は?現在の失業率は、会社の雇用計画に影響しそうですか?

  • 社会文化的要因: ビジネスに影響し得る社会文化的行動はありますか?人材を採用しようとしている地域の雇用情勢は?キャリアに対する考え方を変えるような社会的な動きはありませんか?

  • 技術的要因: 経営方法に影響を与える技術革新、たとえば AI や IoT の発達などは起きていませんか?競合他社は、あなたが利用するのが難しい新しいテクノロジーを利用していますか?あなたのビジネス手法に変化が生まれるような新しいテクノロジーを導入するつもりはありますか?

  • 環境的要因: あなたの新しく立ち上げた事業は、環境にどのようなインパクトを与えますか?逆に、環境はあなたのビジネスにどのようなインパクトを与えますか?天候はビジネスに大きく影響しますか?       

  • 法律的要因: 現在、ビジネスに影響を与えている法律や規制はありますか?チームが訴訟に巻き込まれた場合、対応策は用意していますか? 

ステップ 2: ブレインストーミングで「機会」を洗い出す

ステップ 1 で因子を分析したら、次はあなたの事業が発展していく機会が隠れていないか考えましょう。ここで使うのが SWOT 分析です。ブレインストーミングで PEST の要素をリストアップしたら、その分析を基に、事業を拡大するための SWOT 分析を行いましょう。

新型コロナウイルスの蔓延を例にとります。ロックダウンに伴い、政治、経済、社会文化、技術のすべての面でさまざまな変化が起こりました。チームはコラボレーションとリアルタイムのつながりを実現するために、人々はリモート用のソリューションを求め、その結果インターネット上でコミュニケーションが取れる Zoom のような企業が大きく躍進したのです。

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ステップ 3: ブレインストーミングで「脅威」を洗い出す

SWOT 分析で「脅威」を分析するのと同様に、ここではステップ 1 で集めた情報に基づき、脅威となりそうな問題について検討します。ビジネスに対する潜在的な脅威を分析しつつ、そうしたリスクが現実化した場合のコンティンジェンシープランを作成するのもおすすめです。 

こうした脅威の洗い出しに適したシナリオの好例が国政選挙です。選挙結果に応じて、あなたは会社のかじ取りをどう変えますか?選挙は定期的に実施されるので、選挙が事業に大きな変化をもたらす場合も、可能性を加味した計画を練る時間は十分にあります。

ステップ 4: 行動する

集めたすべての情報を基に、戦略プランニングのプロセスを開始し、ビジネス目標を策定しましょう。こうした潜在的な脅威やさまざまな環境因子、機会といったものを理解することで、チームの意思決定プロセスがスムーズになり、将来の戦略にも有効に反映されます。 

ヒント: 事業計画の重点領域をピックアップし、この決定にどんな外的要因が影響しているのかを明確にしましょう。たとえば、会社が大学都市にあるという事実を取り上げ、新卒の従業員をより多くチームに迎え入れたい理由を明らかにするといった具合です。

ワークマネジメントツールを使って PEST 分析を文書化する

PEST 分析 (ペスト分析) とは何か、その重要性とメリット、手順を解説し、具体例もいくつかまとめて紹介しました。PEST 分析は、チーム全員がその情報にアクセスできる場合に最も真価を発揮します。PEST 分析を Asana のようなクラウド型プロジェクト管理ツールに保管することを検討しましょう。Asana なら、チームが依存関係に注意しながらタスクを管理できるだけでなく、重要な情報に非同期的にアクセスできます。

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