IT プロジェクト管理を効率化する方法: マネージャー向けガイド

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概要

IT プロジェクト管理 (IT プロジェクトマネジメント) とは、IT 分野のプロジェクトを管理、計画、実行するプロセスです。この分野のプロジェクトマネージャーは、IT プロジェクトのライフサイクルを構成する「5 つのフェーズ」を効率的に管理しながら、複雑なタスクをより効果的に達成させていく必要があります。それには、プロジェクト全体を可視化できる、適切なツールをうまく活用することが重要です。

そこでこの記事では、IT プロジェクト管理のフェーズをまとめ、IT プロジェクトマネージャーの役割と課題をまとめます。IT プロジェクトマネジメントに役立つツールも紹介するので、参考にしてみてください。

更新: この記事は、IT プロジェクトマネジメントに関するよくある質問を含め、2025年 3月に改訂されました。

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【この記事でわかること】

  • IT 分野のプロジェクト管理における 5 つのフェーズとは何か?

  • IT プロジェクトマネージャーの役割は何か?

  • IT プロジェクト管理によくある課題

  • どうすれば IT プロジェクト管理を効率化できるか?

IT プロジェクト管理とは?

IT プロジェクト管理とは、IT プロジェクトの管理、計画、進行のプロセスです。IT プロジェクトが存在する業界は、ソフトウェア、情報セキュリティ、システム開発、コミュニケーション、ハードウェア、ネットワーク、データベース、モバイルアプリなど、多岐にわたっています。

IT プロジェクトにおいて、開発者は製品やサービスを生み出し、マネージャーは IT プロジェクト管理を担当します。その責務は、期待事項をチームに伝え、プロジェクトをスケジュールと予算通りに順調に進め、IT プロジェクトを滞りなく確実に運営することです。

IT プロジェクト管理のフェーズ

IT プロジェクトマネージャーが複雑なタスクをより効果的に達成するために、考慮すべき IT プロジェクト管理のフェーズが 5 つあります。これらのフェーズは、さまざまな仕事分野におけるプロジェクトのライフサイクルを表しています。

IT プロジェクト管理のフェーズ

1. 開始

開始フェーズでは、プロジェクトの必要性を確認して、プロジェクトの提案を作成します。プロジェクトはチームと会社全体にとって実現可能でなければなりません。さらにこのフェーズで、プロジェクトに時間とリソースを投資する価値があることを改めて確認し、その上で次の段階に進みます。

記事: より効果的なプロジェクト計画をわずか 7 つのステップで作成

2. 計画

計画フェーズは、IT プロジェクトマネージャーとチームメンバーが協力し合って、計画書を作成します。このプロジェクト計画書には、予算やリスクの特定、達成したい明確な目標などを含めましょう。目標計画はロードマップテンプレートを使って立てれば、プロジェクトのライフサイクルを通じて参照することができるのでおすすめです。

プロジェクト計画は各方面のステークホルダーと効果的に共有し、全員が足並みを揃えられるようにします。

3. 実行

実行フェーズでは、チームがプロジェクトの成果物を確定します。IT プロジェクトマネージャーは、タスクを割り当てるほか、チームメンバー全員の間でコミュニケーションを円滑化するという重要な役割を果たします。

チームのコラボレーションを支えるソフトウェアを使用すれば、誰が何をいつまでに達成するのかについての情報を、チーム全員が確実に共有できます。開発中はプロジェクトの変更がつきものなので、実行フェーズ中に、プロジェクト計画を見直す必要があるかもしれません。

4. モニタリングと調整

実行フェーズでは、IT プロジェクトマネジメントツールを使って、チームの進捗状況をリアルタイムで管理します。ここでは、時間やコストだけでなく、スコープ、品質、プロジェクトそのもののリスクもモニタリングする必要があります。このときプロジェクトロードマップを活用すれば、プロジェクトの進行がプロジェクトの提案と目標に沿っているかを評価し、必要に応じて軌道修正することができます。

5. 終了

プロジェクトが完了したら、終了フェーズが始まります。このフェーズでは、すべての業務が完了し、承認を受け、適切なチームへと引き継がれたことを確認します。また、プロジェクトで学んだ教訓を改めて振り返り、成功したこととそうでないことを確認することも大切です。終了フェーズは、チームがプロジェクトを見直し、今後の取り組み方を改善する機会になるため、欠かすことはできません。

記事: チームのワークフローを改善する 5 つのプロジェクト管理フェーズ

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IT プロジェクトマネージャーの役割

IT プロジェクトマネージャーにとってまず必要なのは、プロジェクトに関わるメンバー全員とどうコミュニケーションをとるかを明確に把握することです。部内のメンバーと緊密に連携をとる一方で、自分のチームの業務について、チームを代表して他部門と話し合うこともあるためです。

ここでは IT プロジェクトマネージャーはどのような役割を果たすべきか、4 つのポイントに分けて解説します。

製品が機能することを確認する

IT プロジェクトの基本的な目標は、顧客のニーズを満たす機能を持った製品を生み出すことです。IT プロジェクトマネージャーは、プロジェクトで問題が起きた場合の最初の窓口になります。そのため、マネージャーは製品の機能を何よりも優先する必要があります。

タスクをチームメンバーに割り当てる

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトにおけるチームメンバーの役割や責任を決定する際の中心的役割を果たします。IT プロジェクトマネージャーは、各チームメンバーの強みをしっかり理解して、それに従ってタスクを適切な担当者に割り当てることが大切です。

進捗とパフォーマンスを管理する

各プロジェクトが開始したら、プロジェクト管理の責任者は、チームのパフォーマンス、プロジェクトのタイムライン、予算を追跡し、プロジェクトが目標通りに進んでいるかを把握します。このとき、進行中のあらゆる要素を追跡し、同時にチームメンバーの成長とスキルアップをサポートするには、プロジェクト管理ツールが役に立ちます。

関係者とのアジャイルミーティングを行う

関係者とは、プロジェクトの結果によって影響を受ける人を指します。ここにはエンジニアなど部内のメンバーだけでなく、経営幹部やベンダーなど外部の人間、顧客、製品テスターなども含まれます。IT プロジェクトマネージャーは、こういった多くの関係者とコミュニケーションをとり、プロジェクトの現状に関する報告を頻繁に行う必要があります。これも、IT プロジェクト管理ソフトウェアを使うと便利です。

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IT プロジェクト管理の課題

IT プロジェクトの管理を任されたマネージャーは、さまざまな課題に直面します。しかし、適切な管理ツールを使えば、そうした問題に自信をもってすばやく対処できます。

IT プロジェクトマネージャーがぶつかる課題

時間と予算

IT プロジェクト管理において直面する中でも、時間と予算は特に重大な課題です。プロジェクトの締め切りが現実的でないと、提供する製品やサービスの品質が本来よりも低くなるリスクがあります。

プロジェクトを完了するために必要なリソースがなければ、やはりチームや顧客に悪影響が及びます。計画フェーズで、時間と予算を優先すれば、こうした問題の発生を少なくすることができます。

【具体例】経営幹部が、あなたのチームに対し、全社規模のソフトウェアの移行を 1 か月以内に完了させてほしいと言ってきています。しかし、チームの規模が小さく、経験も少ないため、与えられた期間では完了できません。あともう 1 か月が必要です。

【解決策】IT プロジェクト管理ソフトウェアを使って、チームの余力と経験について経営幹部に逐次報告しておきましょう。こうすることで、経営陣は、IT プロジェクトを指示する際に、より現実的なタイムラインを想定できるようになります。

スコープクリープ

スコープクリープは、関係者が新しい要件や成果物の追加を繰り返し、プロジェクトの本来の目標が曖昧になることで発生します。スコープクリープは、プロジェクトを脱線させ、何度も調整が必要になるため、IT プロジェクト管理の悩みの種になることがあります。

スコープクリープの頻度を下げるには、プロジェクトの開始時点で揺るぎないプロジェクト目標を設定し、変更管理プロセスを導入するとよいでしょう。そして、プロジェクトの進行に合わせて、関係者とのコミュニケーションに最大限努力しましょう。

【具体例】当初のプロジェクト目標は、本社の屋外 Wi-Fi を改善して、従業員や来訪者がどこからでも仕事ができるようにすることでした。プロジェクトの進行中、関係者が屋外 Wi-Fi を通りの向かい側の運用センターに届くようにしてほしい、しかもダウンロード速度を強化してほしいと言い始めました。

【解決策】IT プロジェクト管理では、開始時点で明確なプロジェクト目標を立てることで、関係者はプロジェクトで何が達成可能なのかを把握できます。たとえば、屋外 Wi-Fi の拡張をリクエストするのは合理的でも、ダウンロード速度を上げる要求は行き過ぎであることが理解できるようになります。

コミュニケーション不足

IT プロジェクトマネージャーは、チームメンバー、各部署、関係者の間の橋渡し役であるため、全員が情報を共有できる整然としたプロセスがない場合、コミュニケーション不足の問題に直面しがちです。IT プロジェクト管理ツールを使ってコミュニケーションの優先順位を高め、チームを成功に導きましょう。

【具体例】あなたの会社は地元の学校と提携して、テクノロジーを利用しやすい学習スペースの改良に取り組むことに同意しています。プロジェクトでは、Wi-Fi の導入のほか、学校に 100 台のコンピューターを寄付することになっていますが、経営幹部は、寄付するコンピュータは 10 台だけだと誤解していました。

【解決策】プロジェクトの開始時点でコミュニケーションを優先することは、対立を避ける上で不可欠です。IT プロジェクトマネジメントツールを使ってプロジェクトのステータス更新を頻繁に共有し、プロジェクトのライフサイクルを通じて、全員が確実に認識を共有することが大切です。

記事: 職場で効果的にコミュニケーションをとる 12 のコツ

リスクマネジメント

IT プロジェクトのリスク管理は、開始フェーズでとるべき必要なステップです。開始フェーズでは、当初の目標が達成できない場合の代替プランを必ず考えましょう。前もってリスク管理をしておかないと、実際に問題が起きたとき、修正に苦労することになります。

【具体例】あなたのチームは、病院の患者が利用するオンラインの診療スケジュールポータルを作っています。あなたは問題が起こるとは予想していませんでしたが、プログラムにバグがあり、心臓病の患者が婦人科で、神経科の患者が泌尿器科で診察を受ける事態になって慌てています。

【解決策】適切なリスク管理をしていれば、プログラムのバグを把握でき、患者にも医師にも大きな不便をもたらすことはなかったかもしれません。リスク分析は IT プロジェクト管理で見過ごせない重要な要素です。リスク登録簿を使って、リスクの把握を始めましょう。

テクノロジーの変化

複雑な IT プロジェクトは、完了までに数か月や数年かかることもあります。IT プロジェクト管理の課題の 1 つが、プロジェクトを進行しつつ、テクノロジーの変化について行くことです。開発中に顧客のニーズが変化する場合に備えて、当初の IT プロジェクトのプロジェクトスコープには、柔軟性を持たせましょう。

【具体例】あなたのチームは、自動車の GPS システムを改良する長期プロジェクトに取り組んでいます。このプロジェクトの進行中に、リアルタイムで交通状況を確認できるスマートフォンの GPS アプリが登場しました。ところが、チームで開発中の GPS システムは交通状況に対応していません。この機能を搭載するには、プロジェクトの期間がかなり延長されることになりそうです。 

【解決策】テクノロジーの進化を止めることはできないため、IT プロジェクトのほうが柔軟に対応する必要があります。この例では、スマートフォンの高度な GPS 技術と競争するために、チームはプロジェクトの方針を転換することがビジネス戦略として有効かどうかを判断する必要があります。

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IT プロジェクトを視覚化する方法

チームの業務を整理し、プロジェクトの開始から終了まで必要な情報を提供するには、IT プロジェクト管理ツールが有効です。こうしたツールは、プロジェクトにおけるチームメンバー一人ひとりの役割を視覚化して、プロジェクトの進捗をリアルタイムで示すことに役立ちます。

視覚化にはどのような方法があるか、代表的なものを 3 つご紹介します。

IT プロジェクト管理ツールの種類

RACI チャート

RACI とは、実行責任者 (Responsible)、説明責任者 (Accountable)、協業先 (Consulted)、報告先 (Informed) の頭文字をとった略語です。RACI 図を利用することで、プロジェクトを進めながら、チームメンバーの役割や責任を明確にすることができます。

タスクや成果物それぞれについて、どのチームメンバーや関係者が実行責任者や説明責任者、協業先、報告先なのかを示します。チームメンバーの責任分担を明確にすることは常に必要なので、この図は、あらゆる種類の IT プロジェクトで重宝します。

ガントチャート

ガントチャートは、考案者の機械工学者、ヘンリー・ガントにちなんで名づけられました。この横長の棒グラフは、プロジェクトのタイムラインを図示するために使用されます。グラフの棒がそれぞれプロジェクトのタスクを表し、棒の長さが所要時間を示しています。

ガントチャートでは、完了させるべき業務と、それぞれのタスクがどう影響し合っているかを、ウォーターフォール式に視覚化できます。多くのタスクが互いに依存関係にあるプロジェクトでは、締め切りを基準にタスクの重なり具合をチームメンバーが確認できるため、非常に便利なツールです。

かんばんボード

かんばんボードは、各タスクがどのステージにあるかを、作業分解構成図として示してくれます。IT プロジェクトマネジメントにかんばんボードを使用すると、チームの中で仕事の分担のバランスをとり、他のチームメンバーの余力を確認できる点が便利です。

かんばんボードは、プロジェクトのタスクが細かく段階的に進行する場合に有効です。こうしたタスクをボード表示することで、チームはタスクをチェックリストや進捗ステージに分解することができます。


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IT プロジェクトの例

IT プロジェクトの具体例として「社内 IT チームが、従業員の勤務時間を記録するための新しい iPhone アプリを開発している」というケースを考えてみましょう。

アプリのプロジェクト提案を作成し、IT プロジェクトマネージャーがアプリ開発者と相談しながら、エンドユーザーのニーズを検討しています。前述したプロジェクト管理の 5 つのフェーズに従って開発プロジェクトを実行し、iPhone アプリを完成させましょう。

まず最初のステップは、開始フェーズで、アプリの主要なアイデアについて、以下のような問いかけをすることです。

  • 企業は、従業員の勤務時間の管理に問題を抱えているか?

  • 従業員は、リモート勤務での業務時間の記録に問題を感じているか?

  • この iPhone アプリは従業員と雇用者双方にとって解決策になるか?

  • このアプリの作成は、指定された期間と予算の点で、チームにとって実現可能か?

プロジェクトが開始したら、iPhone アプリを開発する計画フェーズに入ります。

  • アプリの作成に必要な予算を割り出す。

  • チームの誰が、アプリのプログラミングを担当できるか検討する。

  • 他のチームメンバーが開発において担当する可能性のある役割について、検討する。

iPhone アプリの計画で最も重要なのは、プロジェクトの全体的な目標を決定することです。この例では、プロジェクトの目標は次のようになります。

「この時間管理アプリの目標は、従業員が就業時間を記録し、雇用者がチームの生産性を管理できる使いやすい手段を提供することとする」

iPhone アプリが実行フェーズに入ったら、IT プロジェクト管理ツールを使ってチームの進捗をモニタリングし、次いでパフォーマンスフェーズに入ります。終了フェーズでは、適切なプロジェクト管理ソフトウェアを使って、これまでのデータを振り返りましょう。

記事: 効果的なプロジェクト目標の書き方 (実例付)

IT プロジェクト管理は適切なツールで合理化する

複数のメンバーと部署をまとめ、プロジェクトを予定通りに進行していくには、適切なツールを活用することが不可欠です。たとえばプロジェクトポートフォリオ管理ソフトウェア (PPM) を使うと、IT プロジェクトを戦略策定から実行、レビューのステージまでを効率よく管理できるでしょう。

Asana なら、ガントチャートに似たビューでスケジュールを視覚化し、チームの担当業務を整理しながら進捗を追跡可能です。さらに、リアルタイムでの情報共有機能を活用すれば、デジタル環境で関係者との連携がスムーズになり、テスト段階やトラブル発生時にも迅速に対応できます。

また、大規模プロジェクトの管理には、多彩なツールを駆使することが重要です。プロジェクトの成果物を予定通りに仕上げるために、事前準備としてプロジェクトテンプレートを活用し、適切なリソースを確保しましょう。こうしたテンプレートを活用することで、プロジェクトのレビューを含め、すべての作業を円滑に進められるはずです。

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IT プロジェクト管理に関するよくある質問

Q: IT プロジェクトマネージャーの仕事内容は?

A: IT プロジェクトマネージャーは、IT 関連プロジェクトの計画から進行、完了までを管理する役割を担います。目標設定、スケジュール管理、リスク管理を行い、関係者と連携しながら予算・納期内で成功へ導きます。特にソフトウェア開発やシステム導入では、進捗を可視化し、タスクを適切に管理することが重要です。