プログラムマネジメントの基礎知識をわかりやすく解説 (成功例付き)

Julia Martins 寄稿者の顔写真Julia Martins
2024年2月24日
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概要

複数のプロジェクトを管理するのは、容易なことではありません。個々のプロジェクトの作業をしながら、全体像も把握しなければならないからです。このようなケースで役に立つのが、プログラムマネジメントです。管理するプロジェクトが相互につながっている場合は、プログラムマネジメントを行って適切に対処しましょう。

このガイドでは、プログラムマネジメント (program management) とは何かをまとめ、その基礎知識について解説します。

更新: この記事は、プログラムマネジメントのツールに関する詳しい記述を含めて 2023年 3月に改訂されました。

適切なプロジェクト管理 (プロジェクトマネジメント、program management) は、チーム全体の足並みを揃え、プロジェクトの透明性を高めることができます。また、複数のプロジェクトを管理することに対するストレスを抑えることにもつながります。チームの生産性向上と仕事の効率化を可能にする Asana は、DX の推進にも効果的です。

効率的にプロジェクトを管理する方法とは?

プログラムマネジメントとは?

プログラムマネジメントとは、互いに関連する複数のプロジェクトを同時に管理することをいいます。

複数のプロジェクトを統合的に管理するプログラムマネジメントでは、プログラム全体のリソース管理計画を立てることが必要となります。また、各プロジェクトの目標照準を企業の全体目標に合致させることも重要です。

上記に心当たりがあるという方、ひょっとしたらすでにプロジェクト管理ではなくプログラムマネジメントを導入しているかもしれません。しかし、現在のプロセスにプログラムマネジメントがどう合致するのかわからないという方は、他の類似の手法との比較をご覧ください。

プログラムマネジメントとプロジェクト管理の違い

まず、プログラムとプロジェクトの違いは何かを見ていきましょう。

プロジェクトは、特定の目標を達成するための一連のタスクであり、プロジェクト管理は、チームの仕事を計画、管理、実行するプロセスです。プロジェクト管理ソフトウェアを使用すれば、透明性が高まり、チームのコラボレーションも改善されるため、スムーズにプロジェクト管理を行えます。

一方のプログラムは、ビジネスの戦略的な目標を達成するための一連のプロジェクトです。たとえば、企業が四半期中にリリースするすべての機能は、それぞれに専用のプロジェクトが設けられる場合でも、プログラムとして扱われます。プログラムマネジメントは、会社の目標に照準を合わせた、長期的で相互に依存し合うイニシアチブを管理するプロセスのことをいいます。プログラムには関連するさまざまなプロジェクトが含まれ、その一つひとつにプロジェクトマネージャーが割り当てられる場合があります。プログラムマネージャーとプロジェクトマネージャーの違いについて詳しくは、以下の記事をお読みください。

記事: プログラムマネージャーとプロジェクトマネージャーの違いで知っておくべきポイントAsana のプロジェクトマネジメント機能を試す

プログラムマネジメントとプロジェクトポートフォリオ管理の違い

プログラムマネジメントとプロジェクトポートフォリオ管理は非常に似ていますが、管理対象のプロジェクトの種類が異なります。

プログラムマネジメントでは、プログラムの中にあるプロジェクトは相互に関連しており、依存し合うことも多々あります。たとえば、新機能のリリースを予定しているとしましょう。リリースに向けたマーケティングキャンペーンは複数予定されており、それをすべて盛り込んだものがプログラムです。また、非営利団体の助成金管理計画もプログラムに当たります。これらの機能は、そのすべてが相互につながっているため、プロジェクトポートフォリオ管理ではなく、プログラムマネジメントに分類されます。

一方、1 つの四半期またはその年に予定されているすべてのマーケティングイニシアチブが互いの関連性の有無にかかわらず含まれる場合は、ポートフォリオになります。チームは、プロジェクトポートフォリオ管理ソフトウェアを使い、こういったプロジェクトを追跡し、関係者とインサイトを共有できます。

プログラムマネジメントとプロダクトマネジメントの違い

プロダクトマネジメントは、社内における新製品開発のことを指します。チームを引っ張るプロダクトマネージャーは、ユーザーの意見を入手することから製品を無事にリリースすることまで、製品を成功に導くことを担うチームリーダーとなります。

また、プログラムには、新製品など、あらゆる種類のイニシアチブを含めることができます。例えば、翌年の製品開発プロセスを管理するためのプログラムを作成する場合、個々の製品開発プロジェクトには、専属のプロダクトマネージャーが割り当てられますが、プログラム全体の監督は、1 人のプログラムマネージャーが務めます。

記事: プロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャーの違いとは?

プログラムマネジメントとワークマネジメントの違い

プログラムマネジメントは、プロジェクト管理の 5 つのフェーズやプロジェクトポートフォリオ管理と同様に、ワークマネジメントのサブセットとして位置づけられています。

ワークマネジメントとは、プロジェクトや進行中のプロセス、ルーチンのタスクなど、組織のワークフローを調整する包括的な手法で、チームが目標を達成するために必要な透明性を提供します。ワークマネジメントでは、組織内のすべてのレベルにおいて、従業員、作業、チームを上手にコーディネートし、従業員全員が必要な情報にアクセスできるようにすることに重点が置かれます。ワークマネジメントソフトウェアを使用すれば、組織全体の計画、プロジェクト、プロセスをコーディネートできます。

電子書籍をダウンロード: ワークマネジメントとは?チームがワークマネジメントを必要とする理由Asana のワークマネジメント機能を試す

プログラムマネジメントにおける役割と責任

プログラムマネジメントの役割と責任

プログラムマネジメントプロセスでは、さまざまな役割と頭字語が使用されます。

  • プログラムマネージャー

  • スポンサー

  • SRO

  • BCM

組織の新しいプログラムマネジメントプロセスを作成するだけであれば、すべての役割と担当業務を使用する必要はないかもしれまれんが、それぞれの定義とプログラムにおいて各役割が担当する業務について知っておくことは大切です。

それぞれの役割について、その責任範囲を確認しましょう。

プログラムマネージャー

プログラムマネージャー (program manager) とは、関連する一連のプロジェクトを担当します。プログラム内のプロジェクトの進捗情報を頻繁に確認し、戦略的な目標や事業目標との整合性がとれていることを確認するのも、このプログラムマネージャーです。

プログラムマネージャーの役割は?

  • プログラムのイニシアチブが会社の目標に沿っていることを確認する

  • プログラム内にあるプロジェクトの進捗を確認する

  • プログラムに対しエグゼクティブの同意を得る

  • 上司からの指示や部下に対する指示を管理する

  • プログラムに首尾一貫した意思決定をもたらす

  • プログラム全体のリソース管理計画を立てる

  • リスク登録簿を作成してリスクを軽減し、機会を活かす行動をとる

プログラムマネージャーに資格は必要ですか?

プログラムマネージャーの認定プログラムは数多く存在しますが、最も有名なのは、Project Management Institute (PMI) によるプログラムマネージャー認定です。しかし、プログラムマネージャーになるには、認定が必須であるというわけでもありません。

プログラムマネージャーの認定を受ける方は、プログラムマネジメントをキャリアパスとして真剣にとらえ、それを示すために認定を受けます。そうすることで、給与アップやプログラムマネージャー関連の職に就くチャンスが高まることもあります。

スポンサーまたはスポンサーグループ

スポンサーは、プログラム組織の最上級メンバーです。予算や成果物、また必要であれば関連するビジネスケースなど、プログラムの主要な要素を承認したり、許可したりするのはスポンサーの担当業務です。また、スポンサーは、プログラムそのものやエグゼクティブから同意を得ることもサポートします。最後に、シニアレスポンシブルオーナー (SRO) を任命するのも、スポンサーの仕事です。

Senior Responsible Owner (SRO)

SRO はスポンサーによって任命されます。スポンサーグループを代理して意思決定を行うことが仕事であり、プログラムの目的を達成させることも、最終的には SRO の責任となります。プログラムに充てる予算など、高額の資金の承認はスポンサーが行う一方で、さまざまなチーム予算や社内の財務チームから資金を調達するのは SRO の担当です。

加えて、SRO はプログラムマネージャーと緊密に協力し合い、プログラムの照準が事業目的と戦略的に合致していることを保証しなければなりません。プログラムを実現させるのはプログラムマネージャーの仕事ですが、プログラムと組織内の上級関係者の戦略的な足並みを維持するのは、SRO が担当します。

Business Change Manager (BCM)

BCM の主な役割は、利益実現プラン、つまりプログラムによって測定可能な価値が組織に付与されていることを確認するためのプロセスを作成し、実行することです。プログラムマネージャーは SRO と一緒にプログラムの成果を定義、達成する一方で、その成果が活用されることを保証するのは BCM の責任となります。

プログラムマネジメントの 4 つのメリット

プログラムマネジメントのメリット

すでに複数のプロジェクトを管理されている方なら、今すでに行っていることと、プログラムマネジメントにはそれほど大きな違いがないのでは?と疑問に思われているかもしれません。その答えは、ずばり「違いはある」です。

プログラムマネジメントには主に 4 つのメリットがあります。

1. プロジェクトをビジネスの戦略的な目標につなげる

プログラムマネジメントとそれに関連する役割や担当業務は、関連するプロジェクトを事業の戦略的な目標につなげるのに役立ちます。

プログラム内にある複数のプロジェクトをコーディネートできるだけでなく、プログラムマネージャーは全体像を得ることができます。つまり、各プロジェクトを全体的な視点から見ることができるのです。プログラムマネージャーは、各プロジェクトの目標をプログラムの目標に紐づけ、プログラムの目標の照準を会社の目標や OKR (目標と主要な結果) に緊密に合致させることができます。

2. プロジェクトの相互依存関係を見る

プログラムマネージャーは複数の関連するプロジェクトを担当するため、プロジェクトの相互依存関係を視覚化したり、発生する問題の優先度を判定したりしやすい立場にあると言えるでしょう。

多種多様なプロジェクトを管理する場合は、依存関係があったとしても、各プロジェクトを個別に見ていたのでは、それらの依存関係を視覚化するのは難しい場合があります。プログラムマネージャーは、目標 (この場合なら会社の戦略的な事業目標) にフォーカスを定められるほか、プログラムの現状を把握することもできます。関連するプロジェクト全体で作業をリアルタイムにコーディネートする手段として、プログラムマネジメントに勝るものはありません。

3. リソースの割り当てを簡素化する

プログラム管理では、プロジェクト間の相互依存関係を視覚化し、管理する以外にも、リソースの割り当て管理の簡素化および合理化も行えます。

プログラム内のすべてのプロジェクトや各プロジェクトの相互関係のインサイトを持つプログラムマネージャーは、従業員の勤務時間であっても、予算の引き上げであっても、新しいツールやソフトウェアであっても、どのプロジェクトにどのリソースが必要なのかを、誰よりも的確に見極めることができます。

プロジェクトの予算はプログラムレベルで供給されるので、プログラムマネージャーと SRO は協力し合ってどのプロジェクトにどのリソースが必要なのかを最適なかたちで割り出します。1 つのプロジェクトチームが予定よりも早くに目標を達成することがあれば、プログラム内の各プロジェクトがそれぞれの目標を確実に達成できるように、リソースを配分しなおすことも可能です。

4. リスクと機会について共通認識を持つ

プログラムには数多くのプロジェクトがあるため、リスクと機会がともに増大することは想像に難くないでしょう。しかし、プログラムマネージャーは、プログラム内のすべてのプロジェクトの全体像を見れるため、より的確にリスクを回避し、機会を活かすことができます。

たとえば、プロジェクトのリスク管理の要素の 1 つにリソースの割り当てがあり、各プロジェクトチームのバランスがよく、十分な人員が配置されていることを確認する必要があります。プログラムレベルでは、プロジェクトの人員不足や予算オーバー、対応が必要な状態に陥るリスクを軽減するために、必要に応じたリソースの割り当てと再配分を行えます。

一方で、プロジェクトマネージャーは、プログラムが事業の戦略的な目標にどのようなインパクトを与え、どのように貢献するのかを理解しているため、プロジェクトの最終日を延ばしたり、追加の成果物を達成できるようにプロジェクト計画を変更したりする、新しい機会を特定できます。

プログラムマネジメントの成功例: Discovery Digital Studios の場合

Discovery Inc. は、TLC や Animal Planet、Food Network など、大人気のエンターテインメントネットワークを運営する大手メディア企業です。同社の Digital Studios コンテンツチームは、毎月のように各種 SNS プラットフォームやコンシューマーアプリ向けに何千もの動画を制作しています。

コンテンツオペレーションディレクターの Mike Singer 氏のチームは、スプレッドシートやメールのスレッドを使ってコンテンツ制作の状況を追跡していました。しかし、開発中のコンテンツすべてを一度に俯瞰でき、なおかつ各動画の制作プロセスに関する直前の詳細とそのステータスを一緒に取り込むことができる共有プラットフォームを欲していました。

そこで彼は、Asanaプログラムマネジメントツールとして導入します。Asana のカスタマイズ可能なワークフローを使用することで、次のようなことが可能になりました。

  • 複雑なコンテンツプロセスを楽に定義し、ステークホルダーにチーム全体の成果をわかりやすく示す

  • 個々のコントリビューターと社外のチームとのつながりを維持する

  • 最新情報を周知する

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別々に追跡していたワークフローは 6 個ほどありましたが、Asana のおかげでそれらを結びつけ、相互のつながりを確認し、スプレッドシートでは気付かなかった依存関係に気付くことができたので、とても満足しています。”
Mike Singer 氏、Discovery Digital Studios、コンテンツオペレーションディレクター

また、Discovery 社のコンテンツチームは、制作進行中の動画を集めた特定のグループを俯瞰的に確認するのに、ポートフォリオを活用しています。たとえば、Food Network Kitchen アプリ用の料理教室プロジェクトからなるプログラムを追跡するために、新規のポートフォリオを作成しています。そうすることで、関連コンテンツのキャンペーンプロジェクトステータスとその配信開始日を管理するといったことができるようになりました。

一方で、チームは連携アプリを使い、すべてのツールに Asana をつなげています。

  • Asana for Outlook の連携を使用すれば、受信トレイから直接アクションアイテムを Asana タスクに変換できます。どのメールでもコメントとしてタスクに追加できるため、受信トレイを整理された状態に保ちながら、重要な情報を保存することができます。

  • Asana for Slack との連携を使用すれば、Slack のプラットフォームから直接プロジェクトの最新情報を確認し、コメントを追加し、新規タスクを作成できます。

  • Zapier + Asana の連携のおかげで、チームはプロセスの多くを自動化し、時間の節約に成功しています。

この可視性があるおかげで、チームは仕事の所要時間を正確に予想できます。また、プロジェクトの進行が遅れている場合は、それに気付き、その原因を特定し、軌道に戻すということができます。すべての情報が一元管理され、合理化され、視覚化されているため、メンバー全員がより効率的に作業を行えます。

Asana をプログラムマネジメントツールとして使用する
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必要な情報がどこにあるのかわからない、というフラストレーションは一気になくなりました。私たちをストレスから解放してくれる企業文化の変革といっても過言ではありません。ワークフローがスムーズになったのは一目瞭然です。”
Mike Singer 氏、Discovery Digital Studios、コンテンツオペレーションディレクター

Discovery Digital Studios のチームによる Asana の使用法に関する詳細は、ケーススタディ全文をお読みください。

プログラムマネジメントはツールを用いて効率化する

プログラムマネジメントとツール

PMBOK が普及し、プロジェクトマネジメントの重要性は現在広く知られることとなりました。しかし実際のビジネスシーンでは、完全に独立したプロジェクトは少なく、別のプロジェクトと関連し合っていることがほとんどでしょう。それを管理するのが、プログラムマネジメントです。

プログラム管理は、専用のツールを使用しましょう。プログラムマネジメントツールを選定するときは、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • プログラム内の情報を見える化できる

  • データやファイルの共有がスムーズに行える

  • コミュニケーションが円滑に行える

プログラムマネジメントは、複数のプロジェクトを管理し、それらの照準を戦略的な目標に合致させるための総体的なアプローチです。複数のプロジェクトを管理していて、ぎこちないお手玉芸をしているような気分になることがあれば、各プロジェクトのつながりを示す全体像を提供してくれる、プログラムマネジメントをお試しください。

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