標準作業手順書 (SOP) は、企業やチームが特定の手順や作業工程をどのように行うかを示したものです。SOP を使用することで、チームメンバー間のコミュニケーションや業務の一貫性を改善し、新入社員の研修をスムーズに行えるようになります。このページでは、SOP の書き方をご紹介します。
特に効率よく働くチームは、ベストプラクティスから会社のファイルフォルダーの命名規則まで、あらゆることにプロセスを設けています。チームはこれらのプロセスを日常的に実行し、時間をかけて改善していきます。しかし、全員がそれぞれのプロセスを同じように実行できていることを確認するには、どうすればよいでしょうか。そんなときに役立つのが、標準作業手順書 (SOP) です。
SOP を作成することで、企業の重要なプロセスを記録し、チームメンバーが作業を覚えたり、覚え直したりする際に参考にすることができます。SOP は、チームまたは全社レベルで作成できます。このページでは、SOP の概要と作成方法について詳しく説明します。
標準作業手順書 (SOP) とは、チームが特定のプロセスをどのように行うかをまとめた手順書です。SOP は、コミュニケーションを効率化し、エラーを減らし、一貫性を促進することを目的として、チームメンバーが定期的に行う作業に使用されます。
SOP は通常、大規模なワークフローの文書化プロセスに含まれています。ワークフローは、繰り返し行われるさまざまなプロセスを最初から最後までまとめたものです。これにより、適切な人材を適切なデータに適切なタイミングで結びつけ、チームの目標達成をサポートします。ワークフローの中には、チームが定期的に行うプロセスがあり、これらのプロセスには SOP が必要です。ワークフロー内の各プロセスのために SOP を作成することで、チームがすばやく一連のプロセスを達成し、成果を出せる環境を整えることができます。
Asana のワークフローをチェックするSOP は次のカテゴリに分類できます。
ステップバイステップ: ステップバイステップの SOP は、クライアントから支払いを受けるといったわかりやすいプロセスに最も効果的です。このタイプの SOP の場合、読んだ人が理解しやすいように、プロセスが一連のステップに分割されます。
ヒエラルキー構造: 階層構造の SOP は、チームメンバーのオンボーディングのような複雑なプロセスに最適です。その理由として、ポリシー、手順、ガイドライン、文書など、あらゆる段階のプロセスを細かく分割できることが挙げられます。
フローチャート: フローチャート形式の SOP は、ユーザーに視覚的な学習方法を提供します。このタイプの SOP は、条件を伴うプロセスを行う場合に効果的です。たとえば、文書の提出と承認のプロセスでは、承認されるか拒否されるかによって、読者から異なるアクションを求めることができます。
あなたも会社全体に適用される SOP を読んで共通のプロセスを学んだことがあるかもしれません。マネージャーは SOP を作成することでチームをサポートし、共通のプロセスを明確にすることができます。
SOP は以下のようなプロセスで役立ちます。
新入社員やクライアントのオンボーディング
クライアントやチームメンバーのオフボーディング
休暇申請の処理
社内監査の実施
支払い処理
プロジェクト変更リクエストの提出
チームには、SOP を作成することでメリットを得られる業務プロセスが数多くあるはずです。初めて SOP を作成する場合、まず、チームが定期的に行う社内プロセスをすべてブレーンストーミングすることから始めるとよいでしょう。また、新しいチームメンバーに教える典型的なタスクについても考えてみてください。この情報に基づいて、SOP が役に立つプロセスと、簡単であったり、実践トレーニングが必要であったりするために SOP が必要ないプロセスを見極めることができます。
最も一般的な SOP 文書には、以下のようなものがあります。
新規クライアントのオンボーディングの仕方
勤務初日のステップバイステップガイド
ファイルの種類と場所に応じたファイル名の付け方
会議やタスクのスケジュール設定に関するコツ
チームの一般的なプロジェクトワークフローに関するガイダンス
プロジェクト管理ソフトウェアの使い方
チームのパフォーマンスレビュープロセスの概要
以下のような場合は SOP は必要ないかもしれません。
単発のタスク
特定の従業員が一人だけ使うプロセス
急速に変化し、記録することが現実的でない場合
複雑なスキルを必要とするプロセスで、綿密なトレーニングが必要な場合
チームが最もよく行う作業プロセスを書き出すことで、どのタスクに SOP が必要で、どの項目は緊急性が低く、どれを文書化しなくてもよいかを明確にできます。
どのフォーマットを使う場合でも、SOP は似た要素で構成します。チームメンバーが簡単にアクセスできるように、SOP には明確なタイトルを付けましょう。また、SOP の目的を説明するセクションと、読者のガイドとなる、わかりやすい手順を含めるとよいでしょう。以下のステップを参考に、SOP の作成プロセスを始めましょう。
初めての SOP をどのプロセスに対して書くかを決めたら、エンドユーザーが誰であるかを明確にする必要があります。チームのためにこの SOP を書くのであれば、次の点に関して確認しましょう。
この SOP を使用するのはどのチームメンバーか?
その人のチーム内の役割と周りとの関係とは?
この文書はどれくらいの頻度で使用されるか?
この SOP は研修資料または参考資料として使用されるか?
この SOP には複数の用途やエンドユーザーが存在するか?
社内で活用される SOP ですが、市場進出戦略と似たような戦略を適用することができます。バイヤーペルソナを作成し、文書のキーメッセージを決定します。商品を売るわけではありませんが、作成した SOP から読者が最大のメリットを得られるように工夫しましょう。
ヒント: 1 つの SOP に複数のエンドユーザーが存在する場合があります。たとえば、一般的なプロジェクトワークフローに関する同じ SOP でも、違う役割の人が読めば、そのワークフローにおけるそれぞれの役割を確認できます。このような場合、複数の SOP を作成する必要はありませんが、さまざまな立場から物事を考え、各ユーザーが何をすべきかを正確に理解できるように、手順を細かく分類する必要があります。
エンドユーザーが手順やプロセスを実行できる環境を整えることが最終的な目標です。しかし、SOP は、プロセスの内容や、過去に問題を経験したかどうかに応じて、さらに大きな目標が設定される場合もあります。
たとえば、チームが低い定着率に悩まされている場合、チームメンバーのオンボーディング用に SOP を作成したいと考えているとします。退職面談のデータを確認したところ、オンボーディングの質が悪いことが原因でチームを辞めた人がいることに気づきました。この場合、オンボーディング SOP の SMART な目標は次のようになります。
入社初日の流れを改善する
今後 1 年以内に、定着率を 20% 向上させる
ヒント: 他の目標と同じように、SOP 作成プロセスにも OKR (目標と主要な結果) または KPI (重要業績評価指標) を設定できます。OKR を使うと、今後 1 年間に作成する SOP の数について、ストレッチゴールを設定できます。KPI は、それぞれの SOP がチームの生産性を向上させているかどうかを測定するのに役立ちます。
そろそろ、SOP の基本がわかってきたのではないでしょうか。ということは、もう少しで SOP を作成できる段階に入ったということです。次に、情報をどのように表示するか、文書をどこまで詳細に書くかを決めなければなりません。スコープとフォーマットを決める際には、以下のポイントが役に立ちます。
単純なトピック: ステップバイステップ形式の SOP は、スコープが狭いトピックに最適です。この SOP には、少数のセクションしかありません。そのうち 1 つのセクションでは SOP の「目的」が説明され、その他のセクションで作業指示が提供されます。
複雑なトピック: スコープが広い場合は、階層構造の SOP を使用しましょう。この SOP には、見出しや複数のセクションだけでなく、目次を含める必要があります。
条件付きトピックや承認プロセス: フローチャート形式の SOP を使うと、スコープの規模を柔軟に設定できます。このような SOP にはさまざまな決定事項や条件を伴う項目が含まれがちなので、わかりやすく作成することが重要になります。また、一番上に短い「目的」セクションを入れることもできます。
ヒント: トピックの内容から SOP のフォーマットを決めましょう。その逆を行っても効果がありません。たとえば、オンボーディングのような複雑なトピックをフローチャート形式でまとめようとすると、読者は必要な詳細情報を得られず、トレーニングを完了するのに苦労することになります。
標準作業手順書を作成するには、プロセスや手順をセクションやステップに分割しなければなりません。誰が読んでもわかりやすいように、手順を詳細に説明することが重要です。当たり前だと思う手順でも、混乱を避け、エラーの可能性を減らすために、必ず記載しましょう。
たとえば、クライアントの支払いを処理する方法について新しい SOP を作成する場合、その SOP には、タイトル、文書の目的を説明するセクション、そして以下のような項目に関する細かい指示を記載できます。
支払いの請求方法
クライアントの支払い情報を保存する際のセキュリティガイドライン
決済プラットフォームの操作方法
支払い処理された内容を記録する場所
支払い処理が完了したら何をすべきか
SOP を作成したら、エンドユーザーにそれを見せ、タスクを完了するために必要なものがすべて文書に含まれているかどうか、フィードバックを求めるとよいでしょう。チームが SOP を読んでもわからないことがあれば、必要に応じて SOP に改善を加えてください。
ヒント: SOP を書き終えてからも、時折見直して、その内容が依然として適切であることを確認する必要があります。プロセスには継続的な改善が求められます。SOP を最新の状態に保つことで、チームが自信を持ってトップレベルの成果をあげられる環境を実現できます。
記事: 知っておきたい 7 種類のプロセス改善手法次に、フローチャート形式の SOP の一例をご紹介します。この SOP は、経費報告書を提出し、払い戻しを受ける方法をまとめたものです。フローチャートの上に SOP の目的を説明する文章が書かれています。
以下は、ステップバイステップ形式の SOP 無料テンプレートです。このテンプレートは、スコープが狭く、シンプルなトピックに適しています。
ステップバイステップ形式の SOP 無料テンプレートSOP の作成は、一見すると手間がかかるように見えますが、チームメンバーの日々のワークフローに長期にわたってさまざまなメリットをもたらします。また、会社全体の効率を向上させる効果もあります。SOP のメリットは以下のとおりです。
統一性を持たせる: SOP を作成することで、チームメンバーが共通の方法でプロセスを実行できるようになります。
トレーニング時間を短縮する:ガイドラインを書くことで、タスクやツールのトレーニングや再教育がしやすくなります。
よくある質問に対する答えがすぐに見つかる: チームメンバーは、SOP を使って、手順に関する質問の答えを自分で見つけることができます。
コミュニケーションを効率化する: SOP を活用すると、チームメンバーがどのように社内のタスクを達成すべきかをまとめた、信頼できる唯一の情報源が生まれます。
時間を節約する: SOP を活用することで、チームメンバーにすばやく情報を伝えることができ、関連するワークフローの関係者全員の時間を節約できます。
仕事のミスを減らす: チームメンバーは、SOP に従ってタスクを実行することで、的確な情報に基づいて仕事をしていることを実感できます。その結果、当てずっぽうな仕事をせずに済むようになります。
SOP は、チームのワークフローを文書化する上で欠かせないツールです。ワークフローを活用することで、業務を効率化し、チームが目標を達成しやすい環境を整えることができます。Asana のようなワークマネジメントソフトウェアを使用すると、プロセスやパフォーマンスの向上につながるワークフローを構築できます。
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