この記事では、仕事の生産性を上げる時間管理術「ポモドーロテクニック」について解説します。ポモドーロテクニック (ポモドーロ) とは、25 分間の作業セッションに 5 分間の休憩をはさんだ時間管理戦略。生産性アップだけでなく、作業を分割し 1 つずつ処理していけるため、精神的な疲れも減らせます。
更新: この記事は、ポモドーロのやり方とうまく活用するヒントに関する記述を含めて 2023年 3月に改訂されました。
To-Do リストを一目見るだけでストレスが押し寄せ、プロジェクトを計画通りに完了できるかどうか不安になることはありませんか?そんなときは、時間管理戦略「ポモドーロテクニック」の出番です。
この記事では、ポモドーロテクニック (Pomodoro technique、ポモドーロ法) の仕組み、メリット、やり方を解説します。時間を効果的に管理し、チームメンバーも同様に時間管理ができるようサポートを提供すれば、チームの生産性を向上させ、仕事の効果を高められます。
ポモドーロテクニックは、仕事を 25 分ずつのセッションに分け、そのあいだに短い休憩をはさんで行う時間管理術です。集中力を維持しながら生産性を上げる効果があるこの手法は、ビジネスシーンだけでなく、勉強などに集中したいときにも活用できるテクニックです。
このテクニックは 1980年代に当時大学生だったイタリア人、フランチェスコ・シリロにより考案されました。
時間管理と生産性の問題に悩んでいたシリロが「まずは 10 分間集中的に勉強できるか」と自分に問いかけたことが、このポモドーロテクニック誕生のきっかけです。ちなみに、勉強時間を測定するためにそのとき使ったのが、トマトの形をしたキッチンタイマーでした (イタリア語でトマトは「ポモドーロ」です)。ポモドーロという名前の由来はそこにあります。
その後何度も試行錯誤や微調整を重ね、完成したのが「作業時間は 25 分」というポモドーロテクニックです。
作業と休憩のセッションを交互に繰り返すのが、ポモドーロテクニックの仕組みです。
25 分間の作業セッションである「ポモドーロ」の後、5 分間の休憩を取ります。ポモドーロを 4 回繰り返したら、30 分程度の長い休憩を取ります。短時間のセッションで作業を集中的に行うことで、生産性を高めつつ、モチベーションも維持できます。
ポモドーロ法を活用するには、まず以下のような時間管理ツールを選びます。
タイマー: 物理的なタイマーまたはデジタルタイマーを使ってセッションを管理します。
ポモドーロタイマー: ポモドーロのセッション専用にプログラミングされているタイマーもあります。専用タイマーのスタートボタンを押すと、ポモドーロの完了時や休憩の終了時に通知されます。
ポモドーロアプリ: iOS や Android のスマホでポモドーロ用のアプリをダウンロードしてポモドーロを管理することもできます。
ツールを選んだら、以下の手順に従いスタートしましょう。
今日達成したいタスクを優先度順にリストアップする
作業を進めたいタスクを 1 つ選び、25 分間のポモドーロを開始する
作業セッション完了後、達成できたことを確認し、チェックマークを付ける
5 分間の休憩を取る
手順 2~4 を繰り返し、ポモドーロをあと 3 回行う
計 4 回ポモドーロを行ったら、15~30 分間の休憩を取る
上記のサイクルを繰り返しつつ、タスク完了までにかかったポモドーロの回数を記録しておく
一般的に、フルタイム勤務であれば 1 日に 16 回ポモドーロを行えることになりますが、必ず 16 回行わなければならないというわけではありません。To-Do リストを完了するために必要なだけポモドーロを行いましょう。
完了したポモドーロの回数を記録しておくと、今後のスケジュールを計画しやすくなります。次回類似するタスクが発生した際には、時間表を作成し、過去の記録を使用して、そのタスクを完了するために必要なポモドーロの回数を予測できます。
ポモドーロテクニックによる時間管理術が人気を集める理由は、集中的な作業を通じて生産性を高めることができるためです。
ポモドーロテクニックが生産性全般にもたらすメリットをいくつかご紹介します。
ポモドーロテクニックを使えば、一般的に人間の脳が得意としないマルチタスクの癖を直すことができます。1 度に 1 つのタスクのみに集中することで、適切な間隔で休憩時間を取る習慣が身に着きます。このプロセスを実践すれば、より短時間で質の高い成果を生むことができます。
ポモドーロを実践することに慣れれば、タスクやプロジェクトの計画をより正確に立てられるようになります。たとえば、レポートの作成にポモドーロが何回必要か予測し、適切な期日を定められます。
記事: より効果的なプロジェクト計画をわずか 7 つのステップで作成シリロの手法に従って 1 日の勤務時間中に集中を乱すさまざまな要因に対処し、それらを取り除くためのステップを実行すれば、集中して作業に打ち込める時間をつくるために仕事環境を最適化できます。たとえば、携帯電話を機内モードにしたり、メールの自動返信を設定したりするのも有効な手段です。
詳しくは、下の『集中できる環境を作る』をご覧ください。
国際学術誌「Cognition」に掲載された研究によれば、タスクの時間が長引くとパフォーマンスが下がり、逆にタスクに短い休憩を挟むと集中力を維持しやすくなります。ポモドーロに定期的な休憩を挟めば、脳を休息させることにより、過度な疲労を感じることなく再び作業に集中できます。
また複数のチームメンバーと共に複数のプロジェクトに取り組んでいる場合には、このテクニックを使えば、タスクのタイムブロッキングを行うことにより、ワークロードによるストレスを軽減できます。
チームでポモドーロを使用すれば、全員が自分の役割を明確に理解し、お互いの集中時間を尊重できます。加えて、進捗確認以外のチームミーティングが必要なくなるため、会議の必要回数と所要時間を減らせます。
タスクを細分化し、短期間で集中して取り組むことで、25 分間でどれだけのことを達成できるのかを知り、満足感を感じられます。またこれが高い生産性を維持するモチベーションとなり、仕事の先延ばし防止にもつながります。4 回目のポモドーロを完了すれば長い休憩を取れるというシステムも、モチベーションアップの要因となります。
記事: チームの仕事の効率を向上させる 9 つの方法ポモドーロテクニックのメリットを最大化するためのヒントをご紹介します。
ポモドーロの最中に集中力を維持するためには、集中を乱す要因を最小限にすることがカギとなります。たとえば、携帯電話を機内モードにしたり、チャットやメールの通知をオフにしたりするなどです。
しかしそれでも、チームメイトから急を要するタスクを依頼されるなど、コントロールできない外部要因が発生する可能性はあります。それに対し、ポモドーロの考案者であるシリロは、作業の中断につながる外部要因に対処するために、以下の 4 つのステップから成る手法を開発しました。
知らせる: 現在作業中で忙しいことを相手に知らせる
交渉する: 問題について話し合う時間を交渉する
予定する: ただちにミーティングの予定を立てる
電話を折り返す: ポモドーロ完了後に電話を折り返す
このようにチームメンバーへの敬意を示すコミュニケーションの取り方を実行することで、フロー状態を達成、維持できます。
タスクを計画する際のコツを以下に紹介します。
複雑なタスクを細分化する: プロジェクトやタスクが複数のステップから成り、ポモドーロが 5 回以上必要となることが予想できる場合には、より小さい、より簡単なステップに細分化しましょう。たとえば、レポートを作成する必要があれば、レポート作成プロセスの段階別にタスクを作成できます (調査、アウトライン作成、ドラフト作成、編集)。
小さなタスクをグループにまとめる: ポモドーロの回数が 1 回分に満たない簡単なタスクを他のタスクと組み合わせましょう。たとえば、「会議を予定する」と「メールに返信する」は同じセッションに含められます。これをタイムブロックと呼びます。
ポモドーロの作業セッションを多めに予定しておく: タスクが予想以上に長引いた場合を想定し、ポモドーロをいくつか多めに予定しておきましょう。計画に余裕を持たせておくことで、問題が発生しても焦らずに対処できます。結果的にポモドーロが余ったとしても、自習や優先度の低いタスクに活用することができます。
ポモドーロの作業セッション後の休憩は、精神的な疲れを取ることを目的としています。休憩中には、脳を休めて情報を吸収できる時間をつくるため、精神的な負担につながる活動はなるべく避けましょう。
画面から目を離し、身体を動かしてみるのもおすすめです。
ポモドーロの休憩中にできることの例を以下にいくつか紹介します。
ストレッチやエクササイズ
散歩に行く
机を整理する
おやつを食べる
コーヒーやお茶を入れる
音楽を聴く
ポモドーロの休憩時間には、仕事からきっぱりと離れ、脳をリラックスさせます。はじめてみたばかりのうちは慣れないかもしれませんが、そのうちこの休憩時間が楽しみになるはずです。頻繁に休憩を取ることで、身体も心も充電され、残りのタスクに集中できるでしょう。
ポモドーロテクニックをワークフロー管理ツールや生産性ツールと組み合わせれば、その効果を最大化できます。生産性ソフトウェアを使えば、ポモドーロ法の強みをさらに引き出し、仕事の整理と時間管理を両立できます。
電子書籍をダウンロード: ワークマネジメントとは?チームがワークマネジメントを必要とする理由Asana のようなワークマネジメントソフトウェアを使ってポモドーロを計画する方法を以下にいくつか紹介します。
To-Do リストを作成する: Asana の To-Do リスト機能を使えば、好きなだけ詳細にタスクを追加できます。また、期日のリマインダーを設定したり、表示をカスタマイズしたり、チームメイトと共有したりできるので、チームとしてポモドーロを実施する場合にはとても便利です。
チームのタスクを管理する: かんばんボードやそれに類似するツールの方がニーズに合う場合には、プロジェクト管理機能を使えば、タスクを割り当てたり、リアルタイムの更新情報を通じて進捗を確認したりできます。また、タスク完了にかかったポモドーロの回数を後でチームが参照できるように記録できます。すべての情報を 1 つの場所で管理することにより、情報が整理整頓されコミュニケーションの効率も上がります。
ワークフローを管理する: 効果的なワークフローを導入すれば、チーム全員が効率的に作業を進めつつ、最新の進捗状況を常に把握できます。ワークフロー管理機能を使えば、期待値を設定し、あらかじめ進捗確認のタイミングを予定し、数日前、数か月前からタスクの予定が立てられます。
生産性ツールやプロジェクト管理ツールを活用すれば、ポモドーロ法とうまく連動するようにチームのワークフローをカスタマイズすることができます。
Asana で仕事の生産性を向上させる方法一般的なポモドーロがあなたにマッチしない場合には、仕事のスタイルや好みに合わせてカスタマイズできます。自分の仕事のスタイルにポモドーロを適応させましょう。
ここでは、その方法をいくつかご紹介します。
ポモドーロの長さを変える: ポモドーロセッションの長さを調整して、自分の仕事の習慣に合わせることができます。たとえば、休憩を長く取ったり、作業セッションを短縮したりできます。作業と休憩を交互に繰り返すパターンを守ってさえいれば、このテクニックの効果を得ることができます。
他の戦略と組み合わせる: たとえば Getting Things Done (GTD) メソッドなど、整理整頓や生産性向上のための戦略がお好みであれば、それをポモドーロと組み合わせることもできます。お気に入りの方法で整理したタスクをポモドーロ法で遂行しましょう。
仕事で最も必要な時にポモドーロを実施する: ポモドーロのセッションを 1 日の勤務時間すべてを通じて無理に行う必要はありません。多くのタスクが同時進行するプロジェクトの作業を行う時など、ポモドーロが最も必要な時に活用しましょう。生産性の高さが 1 日を通じて変動する場合には、生産性がピークに達する時間帯にポモドーロを活用してみましょう。
時間の管理の仕方は、仕事の環境や仕事のスタイルにより、十人十色です。ポモドーロは研究により効果が実証されているので、仕事において役立つ可能性は非常に高いです。
ポモドーロテクニックは主にタイムボクシングから得られたヒントをもとに考案されました。タイムボクシング手法を用いれば、カレンダーに予定されたブロックの時間内にタスクを完了させ、生産性を向上することができます。生産性を高める 100 種類のテクニックを対象としたテストでは、タイムボクシングの効果がトップにランク付けされました。タイムボクシングと同様に、ポモドーロテクニックも一定の時間内に作業を行う手法です。
ポモドーロを使って生産性を計測すれば、時間の経過がネガティブな観念からポジティブな観念に変わり、どれだけ時間を失ったかではなく、どれだけ達成できたかを表すものとして意識できるようになります。
哲学者のアンリ・ベルクソンは、遅れたくないという強迫観念にかられて時間を計ることは、ストレスと不安を引き起こすことにしかつながらないと示唆しましました。
一方で、時間の経過を一連の出来事として認識できた場合には、そのようなストレスの発生にはつながりません。そこで活躍するのがポモドーロテクニックです。このテクニックを使えば 1 日の仕事をポモドーロセッションの連続として捉えることができるため、時間に関連するストレスを軽減できます。
シリロが「時間への依存性の逆転」と表現したこのテクニックにより、これまで不安の源だった時間という概念がモチベーションへと変わります。毎回のポモドーロでほどよいプレッシャーが与えられることにより、向上心や仕事をもっと進めたいという気持ちが高まります。
その一方で、このテクニックは確実な理論に裏付けられているものの、その効果は人により異なります。
ポモドーロテクニックは何も個人作業のときだけ使えるわけではありません。もちろんチームでも活用できるのですが、ではこの手法をチーム環境において活用するには、どうすればいいのでしょうか?
ポモドーロをチームで活用したいときは、まず、始業時に各チームメンバーにタスクを割り当てます。割り当てられた業務を、各メンバーはポモドーロのセッションを使って完了させます。終業前にはチームミーティングを行い、タスクの進捗状況と完了したポモドーロの回数を確認しましょう。
この手法に慣れると、各タスクに必要なポモドーロの回数を予測できるようになるため、今後のワークフローやプロジェクトのタイムラインを計画しやすくなります。
記事: 最高の成果を出すためのタイムマネジメントのコツ、タイムマネジメント術、クイックウィン (すぐできる改善) 18 選ポモドーロとは何か、その仕組みやメリット、活用するときのコツをまとめました。
ポモドーロテクニック (Pomodoro technique) は、集中的な作業セッションと休憩を交互に繰り返すことにより、簡単に時間が管理できる方法です。タスクを完了するために必要なポモドーロの予測回数に基づき計画を立てることで、自分の進捗を把握でき、チームとの進捗共有もスムーズに行うことができます。
仕事の効率をさらに向上させるには、今日から生産性を高めるための 12 のヒントをご覧ください。
ポモドーロテクニックを使えば、生産性を高め、プロジェクト管理を向上し、チームワークを強化できます。ワークフローをさらに磨き上げるには、この手法と生産性ツールやタスク管理ソフトウェアと組み合わせましょう。
Asana のタスク管理機能を使って仕事を効率化する方法