マルチタスクの 5 つの神話と、一点集中で生産性を上げる 6 つのヒント

寄稿者 Julia Martins の顔写真Julia Martins2021年7月14日00
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マルチタスクの 5 つの神話と、一点集中で生産性を上げる 6 つのヒント

複数の作業を同時に進めていると、自分が有能で優秀な気分になります。マルチタスクなんて幻想だというささやきを耳にしても、自分だけは一度に 2 つの仕事を片付ける技を獲得しているような気がするものです。実際、多くの人がそう感じてきました。

しかし残念ながら、真実はそのささやきにあります。人間の脳の回路は、文字通り、一度に 2 つ以上のことができるように配線されていないのです。一度に 2 つのタスクをやり遂げたように感じても、実際には、電光石火の早業で 2 つのタスクを切り替えているのにすぎません。このタスクスイッチングというプロセスは、本人が気づかなくても、貴重な脳のパワーを消費しています。

マルチタスクが可能であるというのは幻想です。1 つの作業からもう 1 つの作業へとすばやく切り替えることを繰り返しているだけであり、切り替えのたびに時間とエネルギーが余分に失われます。そのため、1 つの作業に集中するほうが、ほぼどんな場合でも確実に効率的なのです。1 つの作業に集中し、それが終わってから次へ移ることで、無駄な切り替えコストを使わずに済みます。

マルチタスクは幻想だとしても、多くの人はそうせざるを得ない状況を経験しています。Asana のリサーチによると、ほぼ 4 人に 3 人 (72%) の従業員が、1 日の内でマルチタスクのプレッシャーを感じることがわかっています。そうした経験がある人のために、この記事では、マルチタスクの科学的背景を検証し、生産性を高めるための 6 つのヒントを紹介します。

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マルチタスクの 5 つの神話

マルチタスクに関連する神話はいくつかあります。このセクションでは、それぞれを分析して科学的な真実を明らかにしていきます。その前にまず、マルチタスクとは何か、正確に理解しておきましょう。

マルチタスクとは

マルチタスクは、同時に 2 つ以上のことをしようと試みることです。たとえば、会議に出席しながらメールをチェックする、プレゼンテーションの資料を作成しながら電話のスケジュールを立てる、といったことです。大抵の人がマルチタスクを行っていますが、人間の脳には一度に 2 つのことをする能力がありません。そのため、マルチタスクを試みるとは、実は 2 つのタスクを光の速さで切り替えているだけなのです。

神話その 1: 人間にはマルチタスクの能力がある

一度に 2 つのことができれば素晴らしいですが、複数の研究によって、人間の脳は、一度に 2 つ以上のことに十分な注意を向けられないことがわかっています。事実、脳は、シングルタスクに適した進化を遂げてきました。つまり、一度に 1 つのことしか考えられないのです。

マルチタスクをしているつもりでも、実際には 2 つのタスクを驚くほどのスピードで切り替えているだけです。2 つの作業を切り替えるたびに、スイッチコストが発生します。ミスが増えるだけでなく、ほぼどんな場合でも、2 つのタスクを同時に完了させるためにより多くの時間がかかります。

タスクを切り替えるたびにコストが発生します。疲労が溜まり、同じことをするのに必要な時間が増えます。

神話その 2: マルチタスクはそこまで悪くない

マルチタスクは幻想だと聞いたことがあっても、タスクの切り替えの負担がいかに大きいか、なかなかピンとこないものです。マルチタスクをしばらく続けてきた人は、自分はそのスキルを身に付けたように感じるでしょう。日常の一部になっていて、その悪影響に気づきもしていないかもしれません。

多くの人が、自分はマルチタスクができると感じています。しかし、マルチタスク能力を持っている自覚があるかどうかと、実際にマルチタスクが効果的にこなせているかどうかには、ほぼ相関性がないことが研究で明らかになっています。複数の作業を曲芸のように見事にこなしているつもりになっていても、現実はそうではないのです。

神話その 3: マルチタスクで生産性が上がる

とはいえ、たとえ理想的な状況でなくても、2 つのことを一度に行えば、より多くのことを達成できるのではないでしょうか。

ところが、その逆なのです。David Meyer 博士の研究では、コンテキストの切り替えで起きる思考停止はたとえ一瞬でも、生産的な時間の実に 40% にあたるコストを発生させることがわかっています。タスクの切り替えは脳に負担をかけるため、マルチタスクは仕事を効率的かつ効果的に達成する能力に悪影響を及ぼします。

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神話その 4: マルチタスクには種類がある

マルチタスクには 2 種類、あるいは 3 種類あると聞いたことがあるかもしれません。タスクの切り替えとコンテキストの切り替え、そしていわゆる「注意残余」とを区別する考え方です。しかし、これらはマルチタスクの種類ではありません。これらの要素との因果関係によって、非効率的なマルチタスクに陥るのです。

これを分析すると、次のようになります:

  • マルチタスクとは、2 つか 3 つのことを同時に行おうとする試みである。

  • コンテキストの切り替え (タスクスイッチングまたはタスクの切り替えとも呼ぶ) は、マルチタスクの際に、作業を次々と切り替えることを指す。

  • 多くの作業を非常に短時間で行うと、注意残余の状態になる。これは、次の作業に移った後も、前の作業について考え続けることを言う。

神話その 5: 職場でのマルチタスクは許容範囲

個人としての生活でマルチタスクを避けていても、職場ではマルチタスクをしている人もいます。Asana のリサーチによると、平均的なナレッジワーカーは、1 日に 10 種類のアプリを最大 25 回も切り替えています。さらに、労働者の 4 分の 1 (27%) が、アプリの切り替え時に作業のミスやメッセージの見落としがあると答え、26% がアプリが多すぎると、個人の効率が下がると答えています。

2 つのテクノロジーを切り替えることには、「メディア・マルチタスキング」という名前さえ付いています。メディア・マルチタスキングは、マルチタスクの従来のマイナス面だけでなく、長期記憶と作業記憶に悪影響を与えることもわかっています。

マルチタスクの影響: 燃え尽き症候群と過労

マルチタスクは生産性を下げるだけでなく、精神の健康をも蝕みます。Asana のリサーチによると、昨年は 10 人に 7 人 (71%) のナレッジワーカーが、少なくとも 1 回は燃え尽き症候群を経験しました。燃え尽き症候群とマルチタスクは切っても切れない関係にあります。同じ調査で、スマートフォンが手元にないと不安になる人の 3 分の 2 (65%) が、燃え尽き症候群を経験したと報告しています。一方、スマートフォンが手元になくても平気な人々では、燃え尽き症候群を経験した割合は 45% に留まりました。

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マルチタスクをやめて生産性を高める 6 つのヒント

マルチタスクの反対語はシングルタスク、あるいはモノタスクです。シングルタスクでは、いくつもの作業を矢継ぎ早に切り替えながらこなすのではなく、その日やろうと決めたことに注意を向け、一度に 1 つのタスクに集中します。こうした「フロー状態」に到達する方法は様々ですが、そのメリットも多岐にわたります。

分散ワークに急速に移行したことで、集中力の妨げになるものが急増しました。メッセージの通知や会議の数が過去最大になり、仕事に集中する時間にしわ寄せが出ています。何かを変えなくてはいけないのは明らかです。
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1. 時間を区切る (タイムボクシングを試す)

時間区切り (タイムボクシング)とは、集中を助け、仕事を素早く達成するための目標指向型の時間管理戦略です。この手法では、作業の所要時間について予測を立てて、タイムボックス (時間区切り) を作成します。各作業には、それ専用のタイムボックスを設定し、そのタイムボックス中は該当する作業のみに確実に集中するようにします。タイムボックスが開始したら、そのボックスが終了するまで、すべての注意力を作業に向けます。

時間区切りの手法では、必ず作業を完全に終えてから新しい作業に切り替えます。カリフォルニア大学バークレー校 Becoming Superhuman 研究所の生産性に関する研究では、「フォーカス・スプリント (アプリの切り替えや受信トレイのチェックの必要がない時間帯)」を設けたチームのメンバーは、生産性が 43% も上がったことが報告されています。

記事: 時間区切りのテクニック: 目標指向型の時間管理戦略

2. タイムブロックをスケジュールに組み込む

タイムブロックは、タイムボックスと似ていますが、一つひとつの作業にタイムボックスを割り当てる代わりに、類似の作業をまとめ、1 つのタイムブロックですべてを完了させます。タイムブロックを使うと、通知などの望ましくない気が散る要因を排除して、集中力を維持することができます。これは、メールの問題の解消に特に有効です。Asana のリサーチでは、回答者 10 人中 8 人 (80%) が、受信トレイなどのコミュニケーションアプリを開いた状態で作業をしています。しかし、これでは通知を受け取るたびに、集中が途切れることになります。

一方、タイムブロックでは、午前中にメールチェックの時間を 1 時間設定し、さらに終業の直前に設けた 1 時間のタイムブロックで、仕事中に来ていたメールに返信します。こうすることで、1 日のそれ以外の時間は、ひっきりなしに来るメールの通知に気を取られずに仕事に集中することができます。

生産性を最大限に高めるには、会議と会議の間にタイムブロックを設定して、短い休憩をきちんと挟みながら様々なプロジェクトに集中するのが効果的だと考えます。また、Slack のステータスを「集中タイム」に変更しておくと、素早い返信を期待されないので、私も私の周囲の人も便利に使っています。
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3. サイレント機能を使う

時間区切りやタイムブロックをカレンダーに導入しなくても、サイレント機能を使うことで、集中時間を維持できます。これは自分の意図する通りに仕事に集中する効果的な方法です。仕事を完了しなければならないとわかっているのに、頻繁な通知に気を取られてしまうなら、サイレント機能を使って、フロー状態を維持しましょう。

サイレント機能の活用は PC だけに限りません。このテクニックを最大限に活かすには、携帯電話の通知も必ずオフにしておきましょう。

本来集中すべきこと以外に時間が浪費されるとコストが増えるので、私たちはできる限りそういった要因を排除することに注力してきました。Asana を使用すると、皆が仕事の現状と責任を把握でき、議論する必要がないので、中断することなくスムーズに仕事を進められます。
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4. ポモドーロテクニックを試す

休憩を取ることで効率を上げる方法を探しているなら、ポモドーロテクニックが適しているかもしれません。25 分間の作業セッションである「ポモドーロ」の後、5 分間の休憩を取ります。ポモドーロを 4 回繰り返したら、20 ~ 30 分の長めの休憩を取ります。短時間で集中して作業することにより、モチベーションを維持しながら生産性を高められます。

ポモドーロでは高い集中レベルを保つため、マルチタスクを避け、1 つのことに集中しやすくなります。ポモドーロの休憩は、スマートフォンや SNS をチェックする、軽食をとりに行く、メールの返信をするといったことに使いましょう。

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5. 優先順位に従う

どのタスクも同じくらい重要に見えると、マルチタスクに陥りやすくなります。ブログの投稿記事を準備したり、新しい画像をデザインしたりしていても、新たなリクエストが入ると、すぐにそちらを始めたくなるかもしれません。

各タスクの相対的な重要性を理解しておくと、優先順位がつけやすくなります。優先順位によって、入ってきたリクエストの重要度が今取り組んでいる作業よりも低ければ、マルチタスクの誘惑を退けて、今の作業に集中できます。逆に、新しいリクエストが、今取り組んでいるタスクよりも重要なら、これまでの作業を中断して、新しいタスクに注意を向けます。

6. MIT (最重要タスク) を設定する

MIT とは「最重要タスク (most important task)」の略で、優先順位の活用をワンランクアップさせたテクニックです。1 日で全部を終えることは無理なのに、優先度の高い仕事が多いと、プレッシャーを感じ、すべてを何とかしようという気持ちになります。しかし、MIT を設定すれば、その日の最も重要なタスクが明確になり、それをやり遂げることができます。そうしたタスクを達成すれば、罪悪感やストレスなく、気持ちよく 1 日を終えられます。

カリフォルニア大学バークレー校の認知神経科学者である Sahar Yousef 博士の最近の研究によると、MIT は先送りの癖を劇的に改善し、燃え尽き症候群の発生を減らすことができるそうです。Yousef 博士は、ある組織全体を対象に、毎日 MIT を設定するという 3 週間のチャレンジを立ち上げました。Yousef 博士の組織は毎日 MIT を設定することを忠実に守り、Slack でそうした MIT を同僚と共有することによって、CEO から入ったばかりのインターンまで、全社で個人の生産性が 28% 上昇し、燃え尽き症候群が 42% 低下しました。

マルチタスクから一点集中へ

マルチタスクが毎日の習慣になっている場合は特に、それをやめるのは容易ではありません。しかし、一度に複数のことをしようとせず、1 つのことに集中するように心がければ、エンゲージメントや生産性が上がり、効果の高い仕事ができるようになるでしょう。

他にもヒントを知りたい場合は、職場で生産性を高める方法についての記事をご覧ください。

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