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「kmb KMバイオロジクス」のロゴがある壁の前に立つ3人の笑顔の人物。左側に白と青の制服を着た女性、右側にスーツ姿の男性2人が並んでいます.

複雑化する組織と働き方をAIで更新 3000時間の工数削減を実現したKMバイオロジクスの働き方変革

KMバイオロジクス株式会社(以下、KMバイオロジクス)は、ワクチンや血漿分画製剤の研究・開発・供給を中核に、公衆衛生に貢献する事業を展開しています。2024年10月、開発と改善を統合した「CMC技術開発本部」を発足。マトリックス組織の導入に伴うプロジェクト管理の肥大化や、指示系統の複雑化による会議の乱立が課題となっていました。 こうした状況下で、同社が新たな業務基盤として選んだのが「Asana」です。アジア初導入の「AI Studio」により、安定性試験の管理工数を約3,000時間削減する成果を実現。組織の壁を越えた変革の歩みについて、執行役員・CMC技術開発本部長の園田 憲悟 氏、技術開発統括部 統括課 課長の横山 絵里子 氏、品質技術開発部 品質統括課の原田 拓実 氏に伺いました。

KMバイオロジクスのロゴ
お客様について

KMバイオロジクスは、熊本を拠点に、ワクチンや血漿分画製剤の開発・製造・供給を手がける医薬品メーカーです。2018年に一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研)から事業譲渡を受けて発足し、明治ホールディングスの医薬品セグメントとしてMeiji Seikaファルマと連携しながら事業を展開しています。インフルエンザをはじめ、五種混合、日本脳炎、B型肝炎など、乳幼児向けの主要ワクチンを供給し、インフルエンザワクチンにおいても国内市場で重要な位置を占めています。

地域日本
会社の規模Enterprise 以上
業界製造
主なワークフロー
プロジェクト管理仕事リクエスト年間計画
主な機能
portfolio iconポートフォリオbundle iconバンドルasana-intelligence iconAI スタジオ

ハイライト

課題

  • マトリックス組織の導入による指示命令系統の複雑化と会議の乱立

  • 大小数百のプロジェクトが個別ファイルで管理され、全体像の俯瞰やナレッジ蓄積が困難な状況

  • 専門性の高い技術者が、安定性試験などの膨大な管理・調整業務に忙殺される課題

解決策

  • Asanaを新たな業務基盤として導入し、情報の集約と業務プロセスの可視化・標準化を推進

  • アジア初導入の「AI Studio」を活用し、ステータスレポートの自動生成やタスクの自動展開を実装

  • 会議の議題や進捗を事前に共有する運用を定着させ、報告ではなく意思決定に集中できる環境を構築

成果

  • 安定性試験の管理工数を約18万分(約3,000時間)削減するという劇的な効率化を実現

  • AIによる週次レポート作成の自動化などにより、管理職の報告業務負担を大幅に軽減

  • 情報の透明性とナレッジの蓄積が進み、属人化を解消して創造的な業務に集中できる組織文化へ変革

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AIがファクトを整理してくれるおかげで、人間は『次、どうすべきか』という本質的な議論や意思決定に集中できるようになりました。以前は報告のためだけに会議を開き、そのために膨大な資料を作成していた時間が、今は前向きな議論に使われるようになっています
執行役員・CMC技術開発本部長 園田 憲悟 氏

日本のワクチン医療を支える使命と、変革への機運

KMバイオロジクスは、熊本を拠点に、ワクチンや血漿分画製剤の開発・製造・供給を手がける医薬品メーカーです。2018年に一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研)から事業譲渡を受けて発足し、明治ホールディングスの医薬品セグメントとしてMeiji Seikaファルマと連携しながら事業を展開しています。インフルエンザをはじめ、五種混合、日本脳炎、B型肝炎など、乳幼児向けの主要ワクチンを供給し、インフルエンザワクチンにおいても国内市場で重要な位置を占めています。日本に生まれた赤ちゃんのほとんどが同社のワクチンを接種するという事実が、その社会的責任の重さを物語っています。

 さらに近年では、アフリカで猛威を振るうエムポックス(旧呼称:サル痘)のワクチン開発においても重要な役割を果たしており、世界で数社しか存在しないワクチン製造企業のうちの1社として、厚生労働省を通じてコンゴ民主共和国に305万人分のワクチンを提供した実績も持ちます。

 「感染症は国境を越えます。日本の企業として、国内の予防医療を支えるだけでなく、世界の感染症対策にも貢献できる存在でいたいと常に思っております」と園田氏は語ります。

 そうした重い使命のもと、同社のCMC技術開発本部は、Chemistry, Manufacturing, and Control(化学・製造・品質管理)を略したCMCという名称が示すとおり、ウイルスや微生物の培養から精製、製剤開発、充填、包装まで、製造と品質の両面で「ものづくりの技術基盤」を担っており、医薬品の品質と安全性を最前線で守る部門です。

 2024年10月、ものづくりの技術を一体的に評価・強化できる体制を目指して、同社は開発と改善・改良の部隊を統合したCMC技術開発本部を新たに発足させました「ワクチンが完成するまでには約7~10年の歳月を要します。開発と改善・改良の双方を担う当本部が果たすべき役割は、きわめて重大なものです」(園田氏)

 しかしこの挑戦は、同時に、大きな組織的課題も生み出すことになりました。

木のルーバーを背景に、スーツにネクタイ姿でデスクに座る白髪で眼鏡をかけた男性の写真。身振り手振りを交えながら話している様子です.
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ワクチンが完成するまでには約7~10年の歳月を要します。開発と改善・改良の双方を担う当本部が果たすべき役割は、きわめて重大なものです
執行役員・CMC技術開発本部長 園田 憲悟 氏

マトリックス組織移行と「会議の乱立」という副作用

CMC技術開発本部が採用したのは、機能別の縦軸と、統括組織に属するユニットリーダーが横断的にプロジェクトをけん引する横軸を組み合わせた「マトリックス組織」と呼ばれる組織形態です。原薬製造、製剤製造、細胞生化学試験、理化学試験といった専門性ごとに縦軸を置き、ユニットリーダーが複数の機能部門を横断して、プロジェクトを推進します。

 「これまでのライン管理者は、課の管理や人材育成とともに複数のプロジェクト全体を見る必要がありましたが、ユニット式ではユニットリーダーがプロジェクト管理を専門に行うため、課長の負担が分散・軽減されます。また、課ごとにナレッジ蓄積、人材育成、その他さまざまな管理体制が進み、専門性が向上するというメリットもあります」と園田氏は語ります。

 しかし同時に、深刻な副作用も生じました。1人の担当者が機能ラインの課長と、プロジェクトラインのユニットリーダー[HK1] という複数の指揮命令系統に属することになり、誰が判断者なのかが曖昧になってしまったのです。「2つも3つものユニットを掛け持ちするメンバーも出てきて、現場の混乱は想像以上でした」と園田氏は振り返ります。

 その結果として起きたのが「会議の乱立」です。横山氏は当時の状況をこう率直に語ります。「ユニットリーダーとメンバーが集まる進捗確認の会議だけでも数多くあるのに、トラブルや課題が生じるたびに都度対応の会議が積み重なっていく。メンバーのスケジュールを見ると、ほとんど会議で埋まっているような状態でした」

 問題は会議だけではありませんでした。同本部では200以上にも及ぶ改善テーマが同時並行で進行していましたが、それらはExcelやPowerPointといった個々のファイルで管理されており、フォーマットもバラバラの状態でした。「プロジェクトの進捗を確認しようとしても、ものすごい数のファイルを開かなければならず、全体像を俯瞰できない。管理する側も管理される側も、本来の業務に集中できない状態が続いていました」(園田氏)

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プロジェクトの進捗を確認しようとしても、ものすごい数のファイルを開かなければならず、全体像を俯瞰できない。管理する側も管理される側も、本来の業務に集中できない状態が続いていました
執行役員・CMC技術開発本部長 園田 憲悟 氏

分散管理の限界と、可視化への渇望

改善・改良の部隊は複数の予算を同時に抱えることが多く、進捗管理と予算管理の両立も困難でした。かつてはプロジェクト管理ツールの使用も試みましたが、管理側の論理で設計されたツールは現場担当者には馴染まず、定着は進みませんでした。

 「管理側からも現場の状況が見えないという課題もありました。特に医薬品のような規制業種では、誰が何をいつまでに行い、その結果がどうだったかを記録・追跡できることは、品質管理の根幹でもあります。そのため透明性の欠如というのは、単なる情報共有の問題ではなく、医薬品の品質保証にも関連する重要な課題でした」と園田氏は強調します。

 横山氏も「ExcelやPowerPointで管理していた頃は、フォーマットがバラバラで、どこに何があるかを探すだけでも一苦労、ましてやそれを横断的に集計して全体を把握するなど現実的に不可能でした」と当時を振り返ります。情報が人と個別ファイルに分散している状態では、組織として機動的に動くことができない──その限界が明確になったとき、新しい仕組みの必要性は誰の目にも明らかになっていました。

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管理側からも現場の状況が見えないという課題もありました。特に医薬品のような規制業種では、誰が何をいつまでに行い、その結果がどうだったかを記録・追跡できることは、品質管理の根幹でもあります。そのため透明性の欠如というのは、単なる情報共有の問題ではなく、医薬品の品質保証にも関連する重要な課題でした
執行役員・CMC技術開発本部長 園田 憲悟 氏

現場が選んだAsana──決め手は「柔軟性」と「AI」

こうした課題を解決すべく、DX推進を担う原田氏は複数のプロジェクト管理ツールを検証しました。「さまざまなプロジェクト管理ツールも調査しましたが、管理者向けには充実していても、現場の担当者が毎日使いこなすにはハードルが高いものが多かったです」(原田氏)

 そこで注目したのがAsanaです。「Asanaは多種多様な機能がありながらシンプルで、しかもAIも活用できます。すぐに、痒いところに手が届くツールだという印象を得ました」と、最初に製品に触れた時の感想を原田氏は語ります。

 とりわけ決定的だったのはAI Studioの存在です。AsanaのAI Studioは、当時アジアで初めての導入事例となるものでした。「AI Studioは日々アップデートされており、導入を検討していた当時から、これまでできなかったことがどんどんとできるようになっていく手応えがありました。単なるタスク管理の枠を超えた、業務自動化の可能性をここに感じたのです」(原田氏)

 横山氏もその評価に賛同します。「まさに現場でも使ってもらえるツールだと感じました。どんなに優れたツールでも、現場の担当者が使ってくれなければ意味がありませんからね」園田氏も「困っているところにぴったりフィットしたのがAsanaでした」と端的に表現します。

木のルーバーを背景に、白と青の「kmb」の制服を着てデスクに座る笑顔の女性の写真。視線を外し、身振り手振りを交えながら話している様子です.
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まさに現場でも使ってもらえるツールだと感じました。どんなに優れたツールでも、現場の担当者が使ってくれなければ意味がありませんからね
技術開発統括部 統括課 課長 横山 絵里子 氏

導入初期の壁と、プロジェクト作成数41%増という成果がもたらした転換

2024年11月のトライアル開始当初、現場からは「メールやTeamsでできているのに、なぜわざわざAsanaを使う必要があるのか」「二度手間になるだけでは」という声もあがりました。これは、DXツール導入において多くの組織が直面する典型的な壁です。

 「当初は疑問の声が多かったのは確かです。でも、それは当然のことだと思っていました。だからこそ、説明するだけでなく、メンバーの業務フローとその中の課題を聞き出し、Asanaを使うとそれがどのように解決できるかの提案を繰り返しました」と原田氏は振り返ります。

 こういった努力が実を結んだ転換点が大きく2つありました。1つ目は、Asanaのフォローアップを集中的に行った前後2週間で、プロジェクト作成数が41%増加したことです。現場の人々が自ら進んでAsanaでプロジェクトを作り始めたということは、ツールが”使わされるもの”から”使いたいもの”に変わった瞬間だったと言えます。「この数字は、単なるツールの利用拡大だけではなく、業務が実際に効率化されたという実感が現場に広がった証だと感じています」(原田氏)

 2つ目は、原田氏自身が本部のDX担当部署に正式に異動できたことです。「現場からのボトムアップ提案だったDX活動を、自ら推進できる立場になれたのは大きいですね。地道に提案を続けることで、少しずつ共感者が増え、個人単位・チーム単位の改善が課や本部へと広がっていきました。DXをボトムアップで進めるには、小さな納得や共感を積み重ねることが何より重要だと改めて感じました」(原田氏)

 2025年1月の正式導入を経た現在、「Asanaに入れておいてね」という会話が日常的に交わされるほど、ツールは組織の共通言語として定着しています。「今では、Asanaの利用頻度が高い人は明らかに業務効率が上がっているという実感があります。仕事のやり方そのものが変わってきていますね」と横山氏は語ります。

木のルーバーを背景に、ダークスーツと明るいタートルネック姿でデスクに座る若い男性の写真。身振り手振りを交えて笑顔で話している様子です.
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当初は疑問の声が多かったのは確かです。でも、それは当然のことだと思っていました。だからこそ、説明するだけでなく、メンバーの業務フローとその中の課題を聞き出し、Asanaを使うとそれがどのように解決できるかの提案を繰り返しました
品質技術開発部 品質統括課 原田 拓実 氏

AIによる週次レポート改革も実現!人が意思決定など業務の本質に集中できる環境に

Asanaの導入効果として最初に目に見える形で現れたのが、週次報告業務の変革でした。マトリックス組織では、数十に及ぶ開発プロジェクトが同時進行しており、各プロジェクトの状況を本部として把握するための週次レポートは、組織ガバナンスの根幹です。

 「ガバナンスの骨格は週報だと思っています。本部として何が起きているかを把握し、判断を下すための情報基盤として、週報の精度と効率化は非常に重要です」と園田氏は強調します。しかし従来の週報作成は、まず個々のメンバーが報告内容を作成するのを待ち、それから各ユニットリーダーが報告内容の取りまとめに1時間程度を費やすという、多大な時間と労力を要するプロセスでした。

 これがAsana AIのステータスレポート機能によって自動生成されるようになりました。「2025年1月から全テーマの週報をAIで作成するようになりました。まだブラッシュアップの余地はありますが、既にユニットリーダーが週報作成に要していた時間が平均30分程にまで短縮されています」と横山氏は手応えを語ります。

 園田氏もこう続けます。「AIがファクトを整理してくれるおかげで、人間は『次、どうすべきか』という本質的な議論や意思決定に集中できるようになりました。以前は報告のためだけに会議を開き、そのために膨大な資料を作成していた時間が、今は前向きな議論に使われるようになっています」

 また、Asanaを会議そのものに組み込む運用も定着しています。「会議の議題を事前にAsanaで共有しているため、会議前にコメントでやり取りができ、会議時間の短縮にもつながっています。会議に参加した段階で全員がすでに論点を把握している状態を作れるので、会議の密度が大きく上がりました」(園田氏)

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会議の議題を事前にAsanaで共有しているため、会議前にコメントでやり取りができ、会議時間の短縮にもつながっています。会議に参加した段階で全員がすでに論点を把握している状態を作れるので、会議の密度が大きく上がりました
執行役員・CMC技術開発本部長 園田 憲悟 氏

安定性試験の自動化で、約3,000時間の工数削減を実現

今回のAsana導入事例において、最も劇的な成果をもたらしたのが「安定性試験管理の自動化」です。安定性試験とは、医薬品(原薬・製剤)が一定の保存条件下で時間の経過とともに品質がどのように変化するかを評価し、適切な保管条件や有効期限(使用期限)を設定するための試験です。国際的なガイドライン(ICH Q1A(R2))に基づき、長期保存試験、加速試験、苛酷試験の3種類を実施します。医薬品として市場に出回るためには必須の試験であり、製造してから3カ月ごとに定められたデータを取り続けなければなりません。これは規制要件であり、省略も遅延も許されません。

 「製造時から3カ月おきにデータを取っていくため、どんどんとデータ量が増えていきます。膨大な量のタスクになり、手入力ではとても追いつきません。さらに、複数の部門が分担して試験を実施する必要があり、それぞれの進捗把握と部署間の連携が不可欠です」(原田氏)

 従来はOutlookのカレンダーとExcelで試験スケジュールを管理していましたが、試験数が増えるに従い、管理業務は雪だるま式に膨れ上がっていました。

 この課題を解決したのは、Asanaのテンプレート機能、バンドル機能、そしてAI Studioを組み合わせた仕組みです。試験条件をカスタムフィールドに入力すると、AIがトリガーを認識して必要なタスクを自動的に生成します。担当者は条件を入れるだけでよく、その後の試験スケジュール全体が自動で展開されるのです。「複数部署にまたがるタスクの割り当ても自動化されますし、進捗の把握もカスタムフィールドで選択するだけで担当者が自動的に把握できるようになりました」(原田氏)

 この仕組みにより、約18万分、つまり約3,000時間の工数を削減できました。「安定性試験の管理業務としては9割程度削減できた実感があります。これは私にとっても予想以上の成果でした」と園田氏は語ります。

 ここで注目すべきは、単に管理業務が楽になっただけではない点です。園田氏はこう強調します。「安定性試験を担当するスタッフは、いずれも高い専門性を持つ研究者・技術者です。その人たちが管理調整業務から解放されることで、本来やるべき創造的な仕事に時間を割けるようになった。これが最大の意義だと思っています」

 なぜAsanaとAI Studioがこれを可能にしたのか。その核心は「標準化」と「自動化」の組み合わせにあります。安定性試験は、試験の種類や条件によって実施内容は異なるものの、プロセスの構造そのものは共通しています。「医薬品の開発はデータの形式があり、共通している工程が多いです。Asanaで進捗管理を残しておけば、皆がわかりやすく参照できますし、過去の経験を次のプロジェクトに活かしやすくなります」(横山氏)

 この「構造的な共通性」をテンプレート化し、AIが条件に応じて自動展開する仕組みを作ることで、人間が毎回ゼロから設計する必要がなくなったわけです。

 標準化は創造性を制限するのではなく、むしろルーティン業務から人を解放し、創造性を発揮する余地を生み出します。GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理および品質管理に関する基準)という厳格な規制の枠組みの中で業務を遂行しなければならない製薬業界において、プロセスの再現性と記録の完全性は品質保証の基盤でもあります。標準化された業務フローがAsana上に記録として蓄積されることは、属人化の解消であり、同時に品質の安定化でもあるのです。

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安定性試験を担当するスタッフは、いずれも高い専門性を持つ研究者・技術者です。その人たちが管理調整業務から解放されることで、本来やるべき創造的な仕事に時間を割けるようになった。これが最大の意義だと思っています
執行役員・CMC技術開発本部長 園田 憲悟 氏

透明性・再現性・心理的安心感がもたらした組織文化の変化

定量的な効果に加え、Asana導入が組織文化そのものに与えた変化も見逃せません。例えばコミュニケーションの質とあり方が変わったといいます。「メールは読むだけでも時間がかかりますが、Asanaなら要点をすぐに把握できます。Asanaは情報が整理された状態で届くので、受け取る側の負担が全然違いますね。メンバーがメールで部長や本部長に報告・質問するより、Asanaのメンションでコメントするほうがレスポンスもよく、要点が伝わりやすいという実感が現場にも広がりました」(園田氏)

 この変化は、コミュニケーションの心理的ハードルを下げることにもつながりました。「以前は上位者へのタスク割り当てやコメントを躊躇することがしばしばありました。今はお互いにコミュニケーションが取れています」(横山氏)

 もう1つの大きな変化は、「誰がいつまでに何をする」という習慣の定着です。この習慣化は、業務の抜け漏れを防ぐだけでなく、「やるべきことが整理されている」という心理的安心感を組織全体に生んでいます。

 さらに、ナレッジの蓄積という観点でも大きな変化が生まれています。「以前のやり方をメンバーが見て学んでくれるし、コミュニケーションの内容も段取りも後から参照できる形で全部Asanaに残ります。ナレッジが組織の財産として積み上がっていくわけです。これはAsanaならではの価値だと思います」と横山氏は評価します。

 医薬品開発は長期にわたるプロジェクトが多く、過去の知見を次のプロジェクトに活かすことが効率化と品質向上の鍵です。ナレッジが属人化せずAsana上に蓄積されることで、組織としての再現性が高まり、新しいメンバーでも過去のプロセスを参照しながら業務を進められるようになりました。「ナレッジを蓄積していくことは、我々のモットーでもあります。それがAsanaによって仕組みとして実現できるようになった意義は非常に大きいです」と園田氏は語ります。

 Asana導入後の社内調査では、毎日利用するメンバーの約9割が「タスクの透明性と確実性が向上した」と回答しています。利用頻度が高い人ほど効果を実感しやすいことが明らかになっており、Asanaが組織の働き方の基盤として着実に定着していることを示しています。

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ナレッジを蓄積していくことは、我々のモットーでもあります。それがAsanaによって仕組みとして実現できるようになった意義は非常に大きいです
執行役員・CMC技術開発本部長 園田 憲悟 氏

Asana活用をきっかけに、業界標準化と日本の製薬業界全体の競争力強化への貢献を 

CMC技術開発本部のAsana活用は、現在も進化を続けています。「今年から全テーマの週報をAIで作成する体制を整えました。それによって情報精度が格段に上がり、皆が積極的に使うようになりました。今後もさらにブラッシュアップしていく予定です」と横山氏は意欲を示します。AI Teammatesなど新しい機能の活用も検討しており、「本当に使えるようなら相当な効果があるはずなので、実装まで持っていきたいです」と期待を寄せています。

 また、原田氏は今後の展望についてこう語ります。「AI Studioは頻繁にアップデートして進化を続けているので、来年には完全にExcelを廃止できるはずです。今後はCMC技術開発本部に留まらず、他本部が抱える業務の悩みもAsanaとAIで解決していきたいです。Asanaで実現できないことはほとんどない、というのが私の印象です。それくらいAsanaは当社のやりたいことを実現してくれています」

 そして園田氏が見据えるのは、同社の変革にとどまらない業界全体への波及です。「日本の製薬業界全体が、安定性試験ひとつでも標準化して活用できれば、人材不足の中でよりイノベーティブな仕事に時間を割ける環境が生まれるでしょう。それが日本全体の製薬業界の強みになればと思っています」

 GMPという厳格な規制の枠組みの中で、いかに品質を担保しながら業務を効率化し、イノベーションを生み出すか──「使えるものは何でも使っていこうというスタンスに合致したツール、それがAsanaでした」という園田氏の言葉に、Asana活用を契機とした業界全体の変革への覚悟が滲みます。

 言うまでもなく、医薬品開発は社会インフラです。感染症と戦い、生命を守るワクチンを作り続けるために、高い専門性を持つ人材が本来の創造的な仕事に集中できる環境を作る。その挑戦において、KMバイオロジクスのCMC技術開発本部がAsanaとAIで切り開いた道は、製薬業界全体にとっての羅針盤となる可能性を大いに秘めているのです。

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