ビジネス要件定義書のテンプレートの 7 つの重要要素 (使用例付き)

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2024年1月21日
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概要

ビジネス要件定義書 (Business Requirements Document, BRD) とは、新しいプロジェクトを成功させるために必要なものすべてを書き出したレポートです。BRD のテンプレートには、関係者に明確性とコンテキストをもたらす、7 つの重要要素があります。この記事では、BRD テンプレートがプロジェクトの成功可能性を高める背景をご説明します。

プロジェクトには、同時に進行するさまざまな要素があります。プロジェクトでよい成果を上げるには、こういった要素をすべて適切なタイミングで、適切な場所にまとめなくてはなりません。ジグソーパズルを組み立てるときと同じで、パズルの箱にある完成形の写真を見ながら完成を目指すことが、成功のカギとなります。

ビジネス要件定義書 (BRD) は、パズルの箱の写真のようなものです。プロジェクトに伴うすべての事柄をまとめ、プロジェクトを成功させるためには何が必要なのか、ステークホルダーが理解できるようにします。この記事では、ビジネス要件定義書のテンプレートを作る上での重要要素と、ビジネス要件定義書をオンラインのソフトウェアで共有するメリットもご紹介します。

ビジネス要件定義書 (BRD) とは?

ビジネス要件定義書とは、新しいプロジェクトの成功に必要なものの詳細を書き出したレポートです。この文書ではプロジェクト目標や、プロジェクトライフサイクル中に期待される事柄、プロジェクト達成に必要なものなどがまとめられます。

以下が、BRD の 7 つの要素です。

  1. エグゼクティブサマリー

  2. プロジェクト目標

  3. プロジェクトスコープ

  4. ビジネス要件

  5. 主なステークホルダー

  6. プロジェクトの制約 

  7. 費用便益分析

これらの詳細をまとめることによって、ビジネス要件定義書を読めばそれがどんなプロジェクトなのか、何をどう達成しようとしているのか、はっきりと理解できるようになります。

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ビジネス要件定義書に書くべき内容

ビジネス要件定義書にはプロジェクトの詳細を書く必要がある一方で、内容を簡潔にとどめる必要もあります。BRD の目的は、読者にできるだけ少ない言葉で、できるだけ多くの情報を与えることです。

ビジネス要件定義書の要素

プロジェクトに関わるステークホルダーから、プロジェクトを承認する経営層、プロジェクトの最終的な成果の影響を受けるクライアントまで、BRD は多くの人に読まれます。ここでは、先ほどご紹介した 7 つの要素の詳細を解説します。

1. エグゼクティブサマリー

エグゼクティブサマリーとは、プロジェクトの概要と目的を大まかにまとめたものです。BRD の全文を読む時間がない人も、エグゼクティブサマリーを読めば、そのプロジェクトによって何を達成しようとしているのか把握できます。

エグゼクティブサマリーは BRD の冒頭に書かれるものですが、各順番としては他の要素をすべて書き終わってから書くのがよいでしょう。そうすることで、すべての内容を見直してから、包括的なエグゼクティブサマリーを書くことができます。

記事: エグゼクティブサマリーの書き方 (実例付)

2. プロジェクト目標

プロジェクト目標とは、そのプロジェクトを実行に移すことによって達成したいビジネス目標のことです。どんな仕事も、始める前にプロジェクト目標を明確にし、それを使って進捗状況を測定できるようにしましょう。

プロジェクト目標は SMART 目標の書き方に従って設定しましょう。SMART とは、

  • Specific (具体的)

  • Measurable (測定可能)

  • Achievable (達成可能)

  • Realistic (現実的)

  • Time-bound (期限がある)

の頭文字を取ったものです。プロジェクト目標の達成状況を測定することで、目標達成のためにワークフローを調整する必要があるかどうか判断できます。たとえば、目標が「顧客ベースの 10% 拡大」だった場合、四半期が終わるころに数値を確認すれば、目標を達成できたかどうか明確に把握できます。そしてそれまでに取ってきたアクションを振り返れば、何が原因で達成に至らなかったのか判断できるはずです。

3. プロジェクトスコープ

プロジェクトスコープは、ビジネス要件定義書において、プロジェクトの範囲を明確にする役割を持ちます。プロジェクトスコープを定義することで、全員が共通認識を持ち、スコープクリープを防ぐことができます。スコープクリープとは、プロジェクトが予定していた範囲を超えて拡大してしまい、コントロールが難しくなることを言います。

プロジェクトスコープでは、以下の点について要約します。

また、プロジェクト対象外のリストや、ビジネスプロセスやリスクの高い戦略など、そのプロジェクトに取り組むにあたり、避けてほしい特定の事柄に関するリストを作成してもよいでしょう。

4. ビジネス要件

ビジネス要件は、BRD テンプレートのメインとなる要素です。この項目では、プロジェクトの達成に必要なアクションをリストアップします。プロジェクトの複雑さによって、ビジネス要件の数は数個に収まることもあれば、多くなる場合もあるでしょう。

各要件はリストアップして説明するだけでなく、優先順位と重要度のランク付けをしましょう。そうすることで、読者はどの要件に優先して取り組むべきか把握できます。

たとえば、要件の 1 つが「ウェブサイトのコーディング」であった場合、これを最優先とし、重要度も「高」でランク付けしましょう。ウェブサイトのコーディングが完了するまでは、他の要件を完了させていく根拠がないためです。

5. 主なステークホルダー

プロジェクトのステークホルダー (関係者) には、プロジェクトに関与するすべての人が含まれます。おそらくプロジェクトを理解するためにこの BRD を読む必要のある人は、ステークホルダーにあたるでしょう。ステークホルダーの例として、以下が挙げられます。

  • プロジェクトに取り組むチームメンバー

  • プロジェクトを率いるプロジェクトマネージャー

  • プロジェクトを承認する経営層

  • 完了したプロジェクトの影響を受けるクライアント

この項目では、各ステークホルダーの名前と役職をリストアップし、このプロジェクトにおけるそれぞれの役割を明確にします。読者はこの項目を読むことで、自分の他に誰が関わっているのか把握でき、チームのコミュニケーションが取りやすくなります。

記事: プロジェクトマネジメントにおける関係者の分析とその重要性

6. プロジェクトの制約

プロジェクトの制約についてはプロジェクトスコープの項でも触れたかもしれませんが、ここではさらに詳細に説明します。読者はこの項目を読むことで、プロジェクトの全体像と、限界を把握できます。

制約の例として、以下のようなものが挙げられます。

プロジェクトの制約は、ステークホルダーがプロジェクトの複雑さや、プロジェクト目標達成の難易度を把握するのに役立ちます。プロジェクトに関与する全員が、まずはプロジェクトの制約を確認すべきでしょう。

7. 費用便益分析

ビジネス要件定義書を費用便益分析で締めくくるのは、戦略的なやり方です。プロジェクトの承認を得るために BRD を使用している場合は、この項目が決定的要因となる可能性があります。クライアントや経営層にとってプロジェクト目標は大事ですが、利益が出ることを証明できなければ、すべて無意味と言っても過言ではないでしょう。

費用便益分析は以下の手順で作成します。

  • プロジェクトに関連するすべてのコストについて説明します

  • 関連する利益について説明します

  • プロジェクトの推定コストを算出します

  • 推定収益から推定コストを差し引いて、推定 ROI を算出します

ビジネス要件定義書のテンプレートと使用例

ここでは、ビジネス要件定義書のテンプレート例をご紹介します。テクノロジー企業がマーケティングブログを始める場合の例です。この文書では、プロジェクトマネージャーがプロジェクトの概要と、その目的を説明しています。また、プロジェクト目標と、スコープクリープ防止のためにプロジェクトスコープについてもまとめています。

そしてその後には、プロジェクト完了に必要なアクション、つまりビジネス要件がリストアップされています。そして、ステークホルダー、プロジェクトの制約、費用便益分析と続いていきます。

ビジネス要件定義書テンプレートの例

自分のプロジェクトでもビジネス要件定義書を試してみたいという方は、以下の無料テンプレートをお試しください。

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ビジネス要件と機能要件の違い

ビジネス要件に関連して、機能要件という言葉を耳にすることがありますが、この 2 つの違いは重要です。ビジネス要件定義書ではプロジェクトの要件について説明します。情報を俯瞰的にまとめることで、ステークホルダーにプロジェクトの全体像を伝えます。

俯瞰から詳細までのビジネス要件

機能要件定義書 (Functional Requirements Document, FRD) は、プロジェクト内の特定のタスクの実行方法を詳しく説明するものです。ボードゲームに例えると、BRD はゲームの内容と魅力を伝える外箱で、FRD はゲームのプレイ方法が書かれた説明書です。

機能要件の他にも、こんな要件があります。

  • ユーザー要件: BRD よりも詳細な要件で、完成した成果物でユーザーは何ができるのかを説明するものです。

  • 製品要件: ビジネス要件やユーザー要件よりもさらに詳細な要件で、完了したプロジェクトの目的と機能を説明するものです。この文書は、チームが製品の開発やマーケティングを行う際のガイドとなります。

  • 非機能要件: 機能要件と同じくらい詳細な要件です。プロジェクトの運用方法や、完了したプロジェクトが意図するユーザー体験などについて説明します。

プロジェクト管理ツールで要件を共有しましょう

ビジネス要件定義書を作成する場合も、もっと詳細なものを作成する場合も、ステークホルダーとの情報共有は 1 つの効率的なツールで行うのが最適です。

プロジェクト管理ツールを使えば、ビジネス目標に優先順位を付けられ、見落としも防げます。Asana を使ってチームのコミュニケーションを効率化し、プロジェクトマイルストーンをスムーズに達成しましょう。

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