ウォーターフォール型プロジェクト管理は、作業内容を明確なフェーズに分割し、上から順番に進めていくプロジェクト管理手法です。前のフェーズが完了しない限り、次のフェーズを開始できないため、進行状況を可視化しやすく、スケジュール管理に強みがあります。
本記事では、ウォーターフォール型の仕組みやアジャイル型との違い、6 つの主要フェーズ、メリットとデメリット、さらに成功させるためのコツをわかりやすく解説します。これを読むことで、ウォーターフォール型の全体像を理解し、自分のプロジェクトに適しているかを判断できるようになります。
更新: この記事は、ウォーターフォール型とアジャイル型の違いとウォーターフォール型を成功させるコツに関する記述を含め、2025年 8月に更新されました。
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プロジェクトマネージャーには、アジャイルプロジェクト管理、かんばんプロジェクト管理、スクラムなど、反復的に進める手法が数多くあります。
しかし、すべてのプロジェクトが柔軟性を必要とするわけではありません。段階的に進める方が効果的なケースもあります。
そんなときに選択肢となるのが「ウォーターフォール手法」です。
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ウォーターフォールとは、作業内容を明確なフェーズに分割し、上から順番に進めていくプロジェクト管理手法です。前のフェーズが終わらない限り、その次のフェーズに進めないため、進行は直線的に進みます。
もともとは製造業や建設業で活用されてきた方法で、たとえば基礎工事が終わらなければ壁を立てられないといった工程管理が典型です。やがてこの手法は、ソフトウェア開発をはじめとする幅広い業界へ応用されるようになりました。
ウォーターフォールはフローチャートやガントチャートで表されることが多く、タスクが上から下へ流れ落ちる様子が「滝」にたとえられてその名がつけられています。
記事: ガントチャートとは?WBSとの違いなどの基本情報を解説ウォーターフォールは、1970年にウィンストン・W・ロイスの論文で紹介された開発モデルです。当初はリスクを指摘されながらも、工程を直線的に進めるシステム開発手法として広まりました。
このウォーターフォール開発は、明確な仕様書や設計書を基盤とするため品質管理に強く、高い品質を実現できる反面、仕様変更や手戻りが発生すると開発期間が延びやすいという課題もあります。
現在でも、システム全体のアーキテクチャを重視する大規模プロジェクトでは有効な開発方法として活用されています。
プロジェクト管理手法の中でよく比較されるのが「ウォーターフォール型」と「アジャイル型」です。両者は進め方や強みが大きく異なります。
項目 | ウォーターフォール型 | アジャイル型 |
---|---|---|
進め方 | 要件定義からテストまでを直線的に進める | 短いサイクル (イテレーション) を繰り返す |
柔軟性 | 途中での仕様変更が難しい | 仕様変更に柔軟に対応可能 |
管理方法 | 計画やドキュメントを重視 | コミュニケーションと改善を重視 |
適したプロジェクト | 大規模、長期、要件が明確な案件 | 変化の多い領域や新規サービス開発 |
メリット | 全体像を把握しやすく、品質管理がしやすい | フィードバックを反映しやすく、スピード感がある |
デメリット | 手戻りが発生するとコストが大きい | 全体計画を見通しにくく、品質がばらつく可能性 |
両者をまとめると、ウォーターフォール型は「計画重視」、アジャイル型は「柔軟性重視」と言えます。プロジェクトの性質に応じて使い分けることが成功のカギです。
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アジャイルプロジェクトを効率的に管理する方法ウォーターフォール型プロジェクトマネジメントは、どんなチームでも導入することができますが、この手法は、一つ一つ段階的に進めていく必要のあるプロセスに最も効果的です。取り組んでいるプロジェクトに、同時進行可能なタスクがある場合は、アジャイル手法などの別のフレームワークを試してみてください。
ウォーターフォール型プロジェクト管理を始めるには、次の 6 つのステップに従って実行に移しましょう。
これは、初期の計画プロセスで、プロジェクトを成功させるために、チームができるだけ多くの情報を収集します。ウォーターフォール手法のタスクは、前のステップに依存しているため、事前に計画を立てて進めていく必要があります。この計画プロセスは、ウォーターフォール手法の重要な過程です。そのため、プロジェクトのタイムラインの大半は計画に費やされます。
この方法を有効に活用するに、プロジェクトの各フェーズを説明する詳細なプロジェクト計画を作成しましょう。これには、どのようなリソースが必要なのか、どのようなメンバーでプロジェクトを進めるのかなどが含まれます。この文書は、一般的にプロジェクト要求事項文書と呼ばれています。
要件定義フェーズが終わる頃には、プロジェクトの最初から最後までの概要が非常に明確になっているはずです。その中には次のような項目が含まれます。
記事: より効果的なプロジェクト計画をわずか 7 つのステップで作成ソフトウェア開発プロセスにおいて、プロジェクトチームが使用するハードウェアをはじめ、プログラミング言語やユーザーインターフェイスなどの詳細情報を指定するのが設計フェーズです。
システム設計フェーズには、「上流設計フェーズ」と「下流設計フェーズ」の 2 つのステップがあります。上流設計フェーズでは、ソフトウェアがどのように動作するか、情報にどのようにアクセスするかなどの骨格を構築します。下流設計フェーズでは、ソフトウェアの具体的な部分を構築していきます。上流設計フェーズが骨格であるならば、下流設計フェーズはプロジェクトの内臓であると言えます。
ウォーターフォール手法で開発を進めているチームメンバーは、各ステップを記録し、プロジェクトの進行に合わせて何を行ったかを確認できるようにするべきです。
このフェーズでは、すべてを実行に移します。ステップ 1 の要求事項文書とステップ 2 のシステム設計プロセスに基づいて、チームは本格的な開発プロセスを開始し、要件定義フェーズとシステム設計フェーズの両方で説明された通りにソフトウェアを開発します。
記事: 実施計画とは?作成するための 6 つのステップこのフェーズでは、開発チームがプロジェクトを品質保証テストチームに引き渡します。QA (品質保証) テスターの仕事は、プロジェクトを展開する前に、修正する必要のあるバグやエラーを見つけることです。
テスターは、QA の際に見つけた問題点をすべて明確に記録するべきです。そうすることで、他の開発者が同様のバグに遭遇した際に、過去の文書を参照して問題解決に取り組むことができるからです。
開発プロジェクトの場合、このフェーズでは、ソフトウェアをエンドユーザーに展開します。その他の業界では、最終成果物がリリースされ、エンドユーザーに届けられるフェーズです。
プロジェクトが展開されると、新たなバグが発見されたり、ソフトウェアのアップデートが必要になったりする場合があります。これをメンテナンスフェーズといい、ソフトウェア開発では一般的に、このフェーズを継続的に行います。
ウォーターフォール手法は、綿密な計画と詳細な記録ができるため、一般的なプロジェクト管理手法として使われています。しかし、この手法がすべてのプロジェクトに適しているわけではありません。ここでは、どのような場合にこのタイプのプロジェクト管理手法を使うべきか、いくつかの例をご紹介します。
ウォーターフォール型の強みは、A 地点から B 地点までの明確な経路があることです。B 地点がはっきりしない場合は、アジャイル型のような反復型のプロジェクト管理手法を用いた方がよいでしょう。
目標が明確に定義されているプロジェクトは、ウォーターフォール手法に適しています。なぜなら、プロジェクトマネージャーは目標から逆算して、必要なすべての要件を備えた明確で詳細な経路を作成できるからです。
記事: 効果的なプロジェクト目標の書き方 (実例付)予算や時間の制約がないプロジェクトであれば、チームメンバーは要件定義やシステム設計のフェーズに必要なだけ多くの時間を費やすことができます。プロジェクトのニーズを好きなだけ調整し、綿密に練られ、明確に定義されたプロジェクト計画を完成させることができます。
ウォーターフォールモデルでは、プロセスのほぼすべてのステップで記録をする必要があります。各ステップが明確に記載されていれば、プロセスを再現できるため、新しいチームメンバーでも、簡単にプロジェクトを繰り返すことできるのです。
また、再利用可能なプロセスを作ることで、同じようなプロジェクトで何をすべきかを新しいメンバーに簡単に教えることができます。このことから、プロジェクト管理においてプロセスを標準化する有効な手法であると言えます。
記事: チームのワークフローを改善する 5 つのプロジェクト管理フェーズウォーターフォール型のプロジェクト管理プロセスでは、すべてのステップで文書を作成します。これにより、チームがプロセスをさかのぼって作業内容を確認する際、簡単に間違いを発見できます。また、新しいチームメンバー向けに繰り返し使用可能なプロセスを作るのにも適しています。文書化された手順は品質管理にも役立ち、プロジェクトの各フェーズで成果物の品質を体系的に確認できます。
ウォーターフォール型のプロジェクトをガントチャートで表現することで、プロジェクトの進捗状況を簡単に追跡できます。タイムライン自体がプログレスバーのようになっており、プロジェクトがどの段階にあるのかを常に把握可能です。さらに、各フェーズでレビューや承認を行うため、リスク管理の観点からも問題を早期に発見しやすくなります。
ウォーターフォール手法では、要件定義と設計フェーズで多くの計画を立てる必要があります。そのため、関係者は各プロセスにかかる時間を見積もりやすく、効率的に作業を割り振ることができます。計画通りに進めやすい点は、チーム全体の時間管理能力を高める大きなメリットです。
記事: 最高の成果を出すためのタイムマネジメントのコツ、タイムマネジメント術、クイックウィン (すぐできる改善) 18 選ウォーターフォールモデルは直線的な手法なので、何か問題が発生したり、タスクが遅れたりすると、タイムライン全体がずれてしまいます。たとえば、サードパーティのベンダーが製造チームに特定の部品を送るのが遅れた場合、その部品を受け取るまでプロセス全体を一時停止しなければなりません。
ウォーターフォール手法の難点は、一度完了したフェーズに戻るのが難しいことです。たとえば、家の壁を塗っているときに、前の段階に戻ってある部屋の大きさを変えようと思ってもできません。
かんばんやアジャイルなどの反復型プロジェクト管理手法と比較すると、ウォーターフォール型のアプローチでは、レビューの段階がプロセスの後半に起こります。プロセスの初期段階でミスがあった場合、後戻りして修正するのが難しくなるでしょう。また、ウォーターフォール型のプロセスでは、反復プロセスや最適なソリューションを探す余裕がありません。
記事: ウォーターフォール、アジャイル、かんばん、スクラムの違いを徹底解説ウォーターフォール型プロジェクト管理は、計画重視で順序立てて進めるプロジェクトに適しています。特に以下のようなケースでは、多くの場合に高い効果を発揮します。
成果物やゴールが初めからはっきり定義されている場合、ウォーターフォール型の強みが生かせます。プロジェクトマネージャーは、目標に沿って必要な工程やリソースを明確に計画できるため、無駄のない進行が可能です。
システム開発や建設プロジェクトのように、複数のチームやステークホルダーが関わる大規模案件では、工程を段階的に管理できるウォーターフォール型が有効です。工程を可視化し、文書化することで、全体の進捗や責任範囲を把握しやすくなります。
途中での仕様変更や追加要求がほとんどない場合、ウォーターフォール型は効率的です。計画に基づいて作業を進めれば、手戻りのリスクが少なく、予定通りにプロジェクトを完了できます。
工程や手順を標準化したい場合にも向いています。過去のプロジェクトで確立されたプロセスを文書化し、次回以降のプロジェクトでも再利用できるため、新しいメンバーでもスムーズに作業に参加できます。
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ウォーターフォール型プロジェクト管理は計画重視の手法であるため、成功させるにはいくつかのポイントがあります。以下のコツを実践することで、プロジェクトの効率と成果物の品質を高めることができます。
要件定義と設計フェーズはプロジェクト全体の土台です。リソース、依存関係、スケジュールを明確にし、計画を詳細に立てましょう。計画が曖昧だと、後のフェーズで手戻りが発生しやすくなります。
各フェーズでの成果物や意思決定を文書化し、関係者によるレビューを行います。品質管理が容易になり、新しいメンバーも文書を参照するだけでプロジェクトの流れを理解できます。
ガントチャートやマイルストーン管理ツールを活用することで、進捗を一目で把握できます。Asana のようなワークマネジメントツールを使えば、タスクの割り当て、期日、依存関係を簡単に管理でき、プロジェクトの進行状況をリアルタイムでチーム全員が確認できます。進捗の可視化は、リスクの早期発見や適切なリソース調整にも役立ちます。
仕様変更が発生した場合の手順を事前に決めておくことが重要です。変更内容や影響範囲、承認手順を明確にしておくことで、予期せぬトラブルを防ぎ、計画通りにプロジェクトを進めやすくなります。
計画や文書だけに頼らず、定期的に情報共有や課題確認を行います。ツール上でコメントや通知を活用することで、チーム間のコミュニケーションを効率化でき、成功率を高められます。
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