タイガーチーム: すばやく行動し機動力を維持するには

寄稿者 Caeleigh MacNeil の顔写真Caeleigh MacNeil
2024年2月16日
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概要

重要な問題を解決するためにすばやい行動が必要なとき、頼りになるのがタイガーチームです。タイガーチームとは、少数精鋭の部門横断的な専門家集団。機動力を持ち、大勢の関係者に足を引っ張られることなく決断を下します。この記事では、タイガーチームを投入すべき場面と、結果を出すタイガーチームを作るコツをご紹介します。

「ヒューストン、問題発生」

1970年のそのとき、宇宙飛行士ジム・ラヴェルの空気は失われようとしていました。アポロ 13 号に乗船してから 2 日、順調に飛行を続けていたラヴェル一行は、船体を揺るがす爆発音を耳にします。その爆発によって、サービスモジュール (機械船) にある酸素タンクが大破し、貴重な空気が宇宙空間に漏れだしました。刻々と乗組員の命の期限が迫ります。

地上で対応に当たったのは、NASA の飛行主任 ジーン・クランツでした。彼は大勢の専門家を召集し、損傷した宇宙船の問題の解決に当たります。4 日間の懸命な努力の結果、チームは乗組員を南太平洋に無事着水させることに成功しました。

この専門家集団は、のちにクランツの「タイガーチーム」として知られるようになり、現在では、仕事の現場で広く使われる用語となっています。

タイガーチームとは?

タイガーチームとは、特定の問題を解決するために召集された専門家集団です。さまざまな部門のプロが一堂に集まることにより、組織の通常の仕組みを越え、チーム間の壁を取り除いて複数の視点から重大な問題にアプローチします。こうした少数精鋭のチームは迅速に行動でき、従来のチームにはできないような画期的な解決策を編み出せます。

こうしたタイガーチームは、主に 2 つのタイプに分かれます。

  • 一つは、問題が解決し目的が達成されるまで、チームメンバーがタイガーチームのプロジェクトのみに注力するタイプです。プロジェクトが完了すれば、メンバーはそれぞれの通常業務に戻ります。上でご紹介したアポロ 13 号の例は、チーム全員が宇宙飛行士たちを帰還させることだけに集中したため、このケースに当たります。

  • もう一つが、タイガーチームのメンバーが、日常業務に加えてタイガーチームの業務にも携わるタイプです。タイガーチームのためにすべてを放り出すのではなく、他の部門横断プロジェクトと同じように取り組みますが、タイガーチームは、通常よりも目的に特化したチーム構造を持つ点が異なります。 

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タイガーチームを投入すべき場面とは?

タイガーチームは、いわばエリート人材を集めたタスクフォースです。このチームを動かすのは、事業を左右する重大事象や複雑な問題を解決するために迅速な行動を迫られた場合です。タイガーチームは小規模であるため、柔軟な発想ですばやく決断できる自由があります。機敏に行動し、大勢の関係者とのやり取りに足を取られることなく、問題解決プロセスを進められます。

失敗したプロジェクトを救済する、会社へのインパクトの大きい新規プロジェクトに乗り出す、事業上の問題の解決策を調査するといった状況が、タイガーチームを投入すべき場面です。たとえば、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった頃、旅行会社はおそらくタイガーチームを結成してビジネスへの影響をコントロールしようとしたでしょう。そこまで深刻な状況でなくても、テック企業が、顧客の共通の悩みを解決するソリューションを調査するためにタイガーチームを作る場合もあります。

どんな場合にタイガーチームを結成すべきか、まだピンとこなければ、次の問いについて考えてみましょう。

  • その問題の解決には、異なる視点を持つ部門横断チームが必要か?タイガーチームは、該当のテーマの専門家を複数チームからメンバーとして抜擢するため、チーム間の壁を取り去り、幅広い専門知識と経験を結集できます。 

  • 解決すべき明確な問題、あるいは完了する必要があるプロジェクトがあるか?タイガーチームは、目的が明確なチームです。適切なメンバーを集めるには、チームの目的を把握している必要があります。

  • 迅速な行動と決断力が必要か?タイガーチームは、何かを決める際に、大勢の関係者と意見をすり合わせる必要がありません。そのため、従来のチームよりもすばやく動けます。 

  • そのプロジェクトには、高いレベルの透明性と、関係者間の理解が必要か?タイガーチームは小規模であるため、コミュニケーションをとり、情報を共有するのもよりスムーズです。 

  • 大きな決断に伴うリスクを最小限にとどめたいか?タイガーチームは、責任を 1 人ではなく専門家の集団で分散させることで、最善の選択ができる可能性が高まります。 

これらの問いに一つでもイエスと答えたあなたには、おそらくタイガーチームが必要でしょう。  

タイガーチームに選ぶべきメンバーは?

当然ながら、タイガーチームのメンバーは、あなたの目的によって異なります。

問題に応じて必要な専門知識も違うため、タイガーチームのメンバーはチームの全体目標に応じて選びます。たとえば、顧客の悩みを解決するタイガーチームなら、カスタマーサービス、エンジニアリング、セールス、製品デザインの各チームの関係者が参加するべきでしょう。しかし、製品の改良にはあまり関係のない人事や財務の専門家は、このチームには必要ありません。

チームメンバーはそれぞれ、各自の分野の専門知識を持っているだけでなく、自分の仕事が他チームとどう関わっているかを理解できるだけの経験も必要です。そこで多くの場合、タイガーチームのメンバーには多彩な知識を持つ上級の従業員が選ばれます。特殊なスキルセットだけに特化したチームメンバーを入れてしまうと、知識不足を補うために多数のメンバーが必要になり、全体のスピードが落ちる結果になります。

タイガーチームは小規模であるべきなので、チームメンバーの数は制限しましょう。一方で、タイガーチームの進捗を把握しておきたい関係者に対し、情報を共有するのは構いません。情報共有により、さらに上級の管理職である関係者は、さまざまな詳細に振り回されることなく、全体の進捗を確認できます。たとえば、より幅広い関係者向けにタイガーチームの進捗ステータスレポートを定期的に送信してもいいでしょう。

タイガーチームのベストプラクティス

タイガーチームは、ルールもなく、道を切り拓きながら進んでいくため、メンバーはジャングルに分け入るような気持ちかもしれません。しかし、複雑な問題をすばやく解決するためにチームに必要な構造と方針を把握するには、ベストプラクティスをいくつか知っているだけで事足ります。

責任範囲とコミュニケーションルールを明確化する

タイガーチームのメンバーを選んだら、全員の役割と責任を明確にしましょう。これで会議のスケジュール調整、承認の取り付け、予算の追跡などの責任者が誰なのかを把握できます。責任内容を明確にすれば、各メンバーは誰が何をするのかを判断する必要がなく、よりスピーディに自信をもって活動できます。すべてを一目瞭然にするには、RACI チャートという、チーム全員の役割を文書化した組織図を作成することをおすすめします。

同様に、明確性を高めるという意味で、チームが互いに連絡し合う方法をまとめたコミュニケーション計画を作成しましょう。どのチャネルをどのタイミングで使用するか、そして同期的なコミュニケーションが適切な場合と、非同期コミュニケーションが適切な場合もこの中で決めておきます。

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問題を理解する

解決しようとしている問題を、タイガーチームの全員が理解する必要があります。基本的な理解が一致していなければ、チームは目標を設定することも、問題の根本原因を解消する解決策を生み出すこともできません。

全員で問題を検討し、全員の認識を確実に一致させましょう。次の問いに答えることが出発点になります。

  • が問題に関与し、影響を受けているのか? 

  • が起きていて、どんなプロセスに影響しているのか? 

  • どこでこの問題が発生したのか? 

  • いつ問題が発生したのか? 

  • なぜこの問題が起きているのか?また、このような大きな影響を引き起こしている理由は? 

  • どんな経緯で問題が発生したのか? 

記事: チームを問題解決の達人に変える問題解決戦略とは

目標を作成する

目標は、タイガーチームにとって仕事の明確な指針になります。成功の指標にもなるため、チームが目標を達成して業務を完了したことを確認する目安として使えます。従業員がタイガーチームのプロジェクトのみに集中している場合、業務が終わって日常業務に戻るタイミングを知る必要があるため、目標を決めることは特に重要です。

目標設定の方法には、「SMART な目標」や「目標と主要な結果 (OKR)」といったさまざまな方法があります。どんな方法を選択しても、必ず目標達成の進捗を測定する方法と明確なタイムラインを設定しましょう。  

スコープ (範囲) を定義する

スコープクリープは、プロジェクトの失敗を引き起こす大きな原因の一つです。当初は問題に集中していたのに、やがて関連はあっても重要性の低いことへ議論がそれていくことは誰しも経験しているでしょう。成果物が追加されたり、プロジェクトのスコープを広げた結果さらに業務が増えたりといったことが始まり、一方で初期の目的からはどんどん離れていってしまいます。 

こうしたスコープクリープを回避するために、仕事を始める前にプロジェクトスコープを定義しましょう。プロジェクトの目標と成果物を正確に定めた明確なスコープがあれば、目標からそれたときにすぐわかります。タイガーチームの関心が重要度の低い問題に向かい始めたら、プロジェクトスコープを示し、仕事を軌道に戻します。 

会議やビデオ通話で顔を合わせる

従来、タイガーチームは、対面での共同作業を中心に任務を果たしてきました。現代では、コミュニケーションツールとプロジェクト管理ソフトウェアによって、非同期的な作業も容易にできますが、タイガーチームでは、ある程度、顔を合わせる時間をとる必要があります。というのも、タイガーチームの強みは専門分野の壁を越えた深いつながりから生まれるものであり、仲間意識を育み関係性を深めるには、オンラインミーティングを含む会議が最も有効なためです。これは、部署も役職もさまざまなメンバーが組織全体から集まっているチームでは、特に重要です。

非同期的なコミュニケーションチャネルを作成する

対面のコラボレーションの効果が高いとはいえ、タイガーチームの全員がいつでも一堂に会して働くのは現実的でなく、時間効率もよくありません。集中する時間が必要でも、会議が多すぎるとスケジュールが細切れになり、いわゆるディープワークのために時間を確保できなくなります。タイガーチームが連携を保ちながら、業務や解決策のブレインストーミングに必要な一人の時間を確保するためには、対面のコミュニケーションと非同期のコミュニケーションのバランスをとることが欠かせません。

非同期のコミュニケーションにはさまざまな種類がありますが、最も重要なのは、タイガーチームの全員が同じコミュニケーションツールを利用していることです。Asana のようなプロジェクト管理ツールなら、仕事を追跡し、記録する場所でコミュニケーションをとれるため、チームが常に複数のチャネルを行き来する必要がなくなり、面倒が省けます。

仕事量を管理する

タイガーチームの一員になると、多くの時間がそれにとられ、通常は日常業務から離れなければなりません。つまり、タイガーチームのプロジェクトに取り組む時間を作るために、場合によってはそれ以外の業務を減らす必要があります。マネージャーは、タイガーチームに参加した部下をサポートして、タスクの優先順位を決め、仕事量を調節することが大切です。

記事: チームの仕事量を管理するための効果的な方法

部門横断コラボレーションの未来

仕事の性質は、過去のそれとは変化しています。人々はかつてないほど分散して働くようになり、時差や国境を越えて業務に取り組んでいます。しかし、それでもタイガーチームのような部門横断的なコラボレーション戦略が時代遅れになったわけではありません。「いかに働くか」が「どこで働くか」よりもはるかに重要になった今、適切なツールによってつながりを維持し、認識をそろえ、アジリティを維持することが必要なのです。

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