プレイングマネージャーとは、一人のプレーヤーとして成果を出しながら、部下の指導や組織の指揮といったマネジメント業務も兼務する人のことです。課長クラスに多く見られ、個人目標とチーム目標の双方を達成することが求められます。
プレイングマネージャーには、大きく分けて 2 つの役割があります。
プレーヤーとしての役割: 組織の一員として、自ら売り上げや成果を上げる
マネージャーとしての役割: 部下の育成や業務の管理、組織の意思決定を担う
現場の実情を把握しながら経営層の意向も理解しているため、現場と経営をつなぐ橋渡し役としての期待も集まりやすい立場です。単なる管理職とは異なり、マネジメントの知識だけでなく、実務での成果も同時に求められる点が特徴です。
「プレイングマネージャー」と「プレイングマネジャー」は、どちらも同じ意味で使われている表記です。英語の Playing Manager をカタカナ表記する際の違いであり、内容に差はありません。
同様に、プレイングマネージャーを構成する「プレーヤー」も「プレイヤー」と表記される場合がありますが、意味は変わりません。企業や資料によって表記が分かれているため、どちらの表記で検索しても同じ内容にたどり着くケースがほとんどです。
一般的な管理職は、部下の目標管理や育成、組織の方針決定、人材配置などマネジメント業務に専念する立場です。日常的に現場の実務を担当することは基本的にありません。
一方でプレイングマネージャーは、マネジメント業務に加えて、自らも現場の一員として成果を出す必要があります。優秀なメンバーを見出し、次世代のプレイングマネージャーとして育成していく役割を担う場合もあり、単なる管理職よりも業務範囲が広いのが特徴です。
プレイングマネージャーと管理職の違いは曖昧になりやすいものですが、注意しておきたいのが労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかという点です。
管理監督者に該当するかは役職名ではなく、職務内容や責任と権限、勤務実態によって判断されます。社内では管理職として扱われていても、実態としては管理監督者に該当しない場合もあるため、人事担当者は待遇が適切かどうかを確認しておく必要があります。
プレイングマネージャーという立場が一般的になったきっかけは、1990年代初頭のバブル崩壊だといわれています。
景気後退によって経営が厳しくなった企業では、人件費削減のためにリストラや管理職ポストの削減が進みました。その結果、少ない人数で組織を維持するために、プレーヤーとマネージャーを兼務するプレイングマネージャーが生まれたのです。
人手不足・人材不足が深刻な中小企業では、管理職の増員が難しく、優秀なプレーヤーにそのままマネジメントを任せるケースが多く見られます。
加えて、社会のグローバル化やスピード感のある意思決定が求められる中、現場に精通しながら経営の意向も理解できる中間管理職の存在は、企業にとって欠かせないものになっています。
プレイングマネージャーに求められる資質・スキルは、主に次の 5 つです。
コミュニケーション能力
リーダーシップ
タイムマネジメント (時間管理) ・タスク管理能力
バランス感覚
成長意欲
それぞれ詳しく見ていきましょう。
プレイングマネージャーは、部下のスキルや考え方を理解し、信頼関係を築きながら業務を進める必要があります。コミュニケーション能力 (コミュニケーションスキル) が高いほど、部下との認識のズレを防ぎ、スムーズに仕事を任せられるようになります。上司と部下の両方に対して、日頃から情報共有を意識することも重要です。
チーム全体の目標達成に向けて、メンバーの意欲を引き出し、能力を発揮させるリーダーシップも欠かせません。特に近年は、指示命令型のリーダーシップよりも、メンバーが安心して意見を言える環境をつくるスタイルが求められる傾向にあります。
個人業務とマネジメント業務の両方を抱えるプレイングマネージャーにとって、緊急度と重要度から優先順位を見極める力は必須のスキルです。どの仕事にどれだけの時間がかかっているかを把握しておくと、タイムマネジメントもしやすくなります。自分だけでなく、部下がどのくらいの時間で仕事をこなせるかを見極める視点も必要です。
プレイングマネージャーは、プレーヤーとマネージャーという 2 つの役割の比重を、状況に応じて調整するバランス感覚が求められます。どちらか一方に偏りすぎると、個人の成果かチームの成果のいずれかがおろそかになってしまうため注意が必要です。
プレイングマネージャーの多くは、もともと成果を出すことに意欲的なプレーヤーです。マネジメント業務が加わったあとも、新しい知識やスキルを学び続ける成長意欲と自己研鑽の姿勢が欠かせません。プレイングマネージャー自身が学び続ける姿勢を見せることで、部下の成長意欲を引き出す効果も期待できます。
プレイングマネージャーという名前が示すとおり、マネジメントだけでなく、組織の一員としての個人目標の達成も求められます。売り上げの増加や新規顧客の獲得など、担当する職務におけるスキルアップと成果の両方が必要です。
個人目標を組織目標と結びつけるうえでは、OKR のような目標設定の手法も参考になります。
プレイングマネージャーが担うチームマネジメント業務には、次のようなものがあります。
チームメンバーが抱えている業務の管理やリスク管理
組織目標に向けた戦略の推進
部下の指導や OJT (On the Job Training) を通じた育成
それぞれのメンバーの得意分野と苦手分野を把握し、役割と責任を明確にすることで、チーム全体の底上げにつながります。
「プレイングマネージャーはダメ」といわれることがありますが、これはプレイングマネージャーという立場そのものの問題というより、配置や運用の仕方に課題があるケースがほとんどです。主な理由は次の 3 つです。
仕事量が増え、業務過多になりやすい
評価基準が曖昧になりやすい
マネジメント不足に周囲が気づきにくい
プレーヤーとマネージャー両方の業務を担うため、単純に仕事量が多くなります。優秀な人材ほど「自分でやった方が早い」と考えて業務を抱え込みやすく、結果として業務過多に陥る恐れがあります。
個人の成果とチームの成果、どちらを重視して評価するかによって、プレイングマネージャーへの評価は大きく変わります。あらかじめ OKR や KPI といった評価指標 の使い分けを整理しておくと、評価基準の割合が曖昧になるのを防ぎやすくなります。
マネジメント力が十分でない場合でも、プレーヤーとしての実務能力でその不足を補ってしまうケースがよくあります。周囲がその状態に気づきにくいため、適切なサポートが行われず、チーム全体の成長が停滞するリスクがあります。
プレイングマネージャー自身がセルフマネジメントのスキルを意識的に高めていくことも、この課題への対策の 1 つです。
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働き方改革や人的資本経営への関心が高まる中、プレイングマネージャーの人材育成は多くの企業にとって重要な経営課題になっています。階層別研修などの機会に加えて、日常的な仕組みづくりも欠かせません。具体的な支援方法は、次の 3 つです。
フィードバックを仕組み化する
心理的安全性を高める
業務の可視化と権限委譲を進める
プレイングマネージャー自身の成長のためにも、部下育成のためにも、フィードバックを定期的に行う仕組みが有効です。上司からのフィードバックだけでなく、部下からフィードバックを集める機会を設けることで、プレイングマネージャー自身のマネジメントスタイルの改善にもつながります。
チームメンバーが安心して意見や課題を共有できる環境をつくることも、プレイングマネージャーの負担軽減に直結します。心理的安全性が確保されたチームでは、問題が大きくなる前に共有されやすくなり、問題解決のスピードも上がるため、プレイングマネージャーが一人で抱え込む状況を防げます。
プレイングマネージャーに業務が集中しすぎないようにするには、タスクや進捗状況をチーム全体で可視化し、任せられる業務は積極的にメンバーに権限委譲していくことが重要です。誰が何にどれだけの時間を使っているかが見える状態をつくることで、業務配分の偏りにも早く気づけるようになります。
つながりの明確化: リモートマネージャー向けワークマネジメントガイド
プレイングマネージャーが抱えやすい課題の多くは、情報共有や業務管理の仕組みを整えることである程度解消できます。具体的には、次のようなツールが役立ちます。
タスク管理ツール: 誰がどの業務をいつまでに担当しているかが一目でわかり、抱え込みがちな業務も周囲と分担しやすくなる
ワークロード管理機能: チームメンバーの工数を可視化し、特定のメンバーに業務が偏っていないかを客観的に把握できる
1 on 1 ミーティングテンプレート: 部下との定期的な対話の議題やアクションアイテムを 1 か所で管理でき、信頼関係の構築につながる
タイムマネジメントテンプレート: プレイングマネージャー自身の時間管理に役立つ
こうしたツールを活用することで、プレイングマネージャーが本来注力すべき人材育成や意思決定に、より多くの時間を充てられるようになります。導入事例としては、次のような成果が報告されています。
クロス・マーケティング: チーム内の業務を可視化して仕事配分を最適化した結果、毎月の残業時間を導入前の 5 分の 1 程度まで削減
富士通: マネージャーの事例では、タスクの優先順位や進捗状況が整理されたことで、資料作成や上司への報告、会議といった「仕事のための仕事」に費やす時間が約 30% 減少
プレーヤーとしての実務とマネジメント業務を同時にこなすプレイングマネージャーにとって、こうした業務時間の圧縮は、まさに求めている効果だといえるでしょう。
プレイングマネージャーは、プレーヤーとマネージャー両方の役割を担う、企業にとって重要な存在です。一方で、業務過多や評価基準の曖昧さ、マネジメント不足への気づきにくさといった課題も抱えやすい立場です。
フィードバックの仕組み化や心理的安全性の醸成に加えて、業務の可視化やタスク管理ツールの活用によって負担を軽減することが、プレイングマネージャーが能力を発揮しやすい環境づくりにつながります。
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