ナレッジマネジメントを解説: 情報を整理して仕事を効率化する方法

寄稿者 Sarah Laoyan の顔写真Sarah Laoyan2022年7月26日
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概要

ナレッジマネジメントとは、情報を入手、整理、保存、共有し、特定のグループに属する人々が利用できるようにするプロセスです。一貫したナレッジマネジメントのプロセスがあれば、チームの情報が常に整理された状態に保たれ、業務効率化に役立ちます。この記事で紹介する 4 つの簡単なステップに沿って、ナレッジマネジメントを始めましょう。

更新: この記事は、SECI モデルに関する詳しい記述を含めて 2022年 7月に改訂されました。

人は日々、新しい情報を処理し、最終的に知識として蓄えます。ほとんどの人は、こうした知識を「管理」する必要があるとは思っていないでしょう。というのも、大多数の人にとって知識の管理はすでに身についた習慣になっているためです。しかし実際には、人の脳は入ってくるあらゆる知識を再分類し続け、物事を忘れないようにしています。To-Do リストやメモは、情報を逃さず覚えておくための簡単な方法としてよく使われていますが、これもナレッジマネジメントの一つです。

では、話が企業全体の知識に及んだ場合はどうでしょうか?組織全体の知識、情報を管理することは、もう少し複雑になります。会社には、数百人、場合によっては数千人の社員がいて、それぞれ異なる分野の知識や経験を持っているためです。この記事では、知識の種類についてまとめ、それぞれを会社のニーズに最も沿った形で整理する方法と、情報を必要な人に届けるためにおすすめするコツをご紹介します。

ナレッジマネジメントとは?

そもそもナレッジとは、データや知識、技能などの情報を指します。そしてナレッジマネジメントとは、ナレッジを入手、整理、保存、共有して、特定のグループの人々が簡単に利用できるようにすること、またそれを再利用することで新たな知識を創造する経営手法です。これはたとえ個人が組織を離れたとしても、必要なナレッジ共有が適切なメンバーやチームと確実に行われることをひとつの目的としており、職場における積極的戦略であると言えます。ひとつのチームが必要とする情報量は膨大となるケースもあるので、適切なナレッジの共有と管理は業務プロセスを円滑に運営するために欠かせません。

ナレッジマネジメントは何も職場だけで行われる取り組みではありません。たとえば公共図書館もある種のナレッジマネジメントですし、個人の To-Do リストもナレッジマネジメントの一つです。情報を 1 か所にまとめて後で利用できるようにすることはすべて、ナレッジマネジメントなのです。

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3 つの「知識」

「知識」ということばは非常に漠然としていて、把握しにくいものです。そこで、簡単に整理するために、次の 3 つの大きなカテゴリーに分類します。

形式知

形式知は、いわゆる一般的な知識で、すぐに入手して簡単に理解でき、共有しやすい情報を指します。たとえば、あなたのオフィスの見取り図には、会議室など各部屋の配置や、出入口が明確に示されていますが、これが形式知に当たります。 

経験知

経験知とは、形式知を使って得られる知識です。行動によって学んだ知識とも言い換えられます。たとえば、会議をうまく進行するコツについての形式知を読むことはできますが、実際に会議を進行する方法を身につけるには、まずやってみなければなりません。自転車に乗ることも、経験知の好例です。自転車に乗ることについて、いろいろと読んで知ることはできますが、実際に乗ってみるまでは乗り方を覚えることはできないからです。 

暗黙知

個人の経験から得られた知識が暗黙知です。この種の知識は非常に個人的で、文化的背景に左右されることが多く、言語化されていません。時間をかけて練習する必要のあるスキルなどが含まれることが多く、人から人へと伝えることが難しい知識でもあります。ノウハウはこの暗黙知に分類されます。経験知と似た性質を持ちますが、暗黙知は情報や過去の経験を応用して行動に生かすという特徴がより顕著です。

たとえば、リーダーとして成功することは、暗黙知の好例です。リーダーシップについて、いくらでも読むことはできますが、それでリーダーになれるとは限りません。また、リーダーという称号は持てても、それだけではリーダーになるには不十分です。リーダーになるには、優れたアクティブリスニングスキルや共感力といった特別な資質が必要です。そういった「知識」は、個人がそれぞれで習得して身につけるスキルであり、人から人へ容易に伝えられるものではないのです。

記事: 文化的知性を磨くことがマネージャーとしての成長につながる理由

SECI モデル

ナレッジマネジメントという考え方をはじめて提唱したのは、日本の経営学者、野中郁次郎氏らであると言われ、ナレッジの共有、再利用により新たな知を生み出す重要性について説いています。一方で、野中氏らはナレッジマネジメントのフレームワークも示しており、それが SECI モデルと呼ばれる仕組みです。

SECI モデルは、形式知と暗黙知という 2 つの知識変換には次の 4 つのプロセスがあるとしています。そしてそれが循環することで、ナレッジマネジメントが実現します。

  • 共同化 (Socialization): 共通体験による暗黙知の共感

  • 表出化 (Externalization): 獲得した暗黙知の形式知への変換

  • 連結化 (Combination): 新たな形式知と既存の形式知の結合

  • 内面化 (Internalization): 連結された形式知を基とした暗黙知の創造

これらのプロセスが回ることによる新たな知識創造がビジネスの発展に重要であるとするナレッジマネジメントは、単なる「知識管理」にとどまらない「知識経営」であると認識することが大切です。

ナレッジマネジメントとナレッジベースの違い

ナレッジマネジメントとナレッジベースは、密接に関連のある考え方ですが、同じではありません。ナレッジマネジメントは情報を整理する行為を指し、ナレッジベースは知識のデータベースそのものです。ナレッジマネジメントの手法を使ってナレッジベースを作成する、と考えればいいでしょう。

ナレッジマネジメントによるメリット

ナレッジマネジメントは企業にとって有益な経営手法です。共通の目標を掲げて組織を運営していくにはナレッジマネジメントを行い、成功に必要な情報に確実にアクセスできるようにしましょう。以下にその方法を解説します。

全員で行うナレッジの共有

会社では、従業員全員が知識のパズルのピースを持っています。理想は全員がそれぞれのピースを定期的に持ち寄って情報共有することですが、この方法は組織が拡大した場合に応用できるとは限らず、間違いが起きる余地も少なくありません。組織が時間とともに成長するにつれ、パズルのピースは細かくなり、その違いも微妙になります。すべてのピースが砂粒のようになってしまうと、必要な情報を必要なメンバーと共有することが難しくなるでしょう。

この種の情報を組織知と呼びます。組織知は形式知のようにどこかに書き記されてはいませんが、その仕事をしながらチームメンバーが覚える基本的な情報です。重要な情報であるにもかかわらず明記されていないため、新しいチームメンバーにトレーニングを行ったり、メンバーの配属が変わったりする際に苦労することになります。

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ナレッジマネジメントを行いチームメンバーが必要な情報をすべて 1 か所にまとめれば、人に頼って情報を教えてもらう必要がなくなります。そうすることによって、メンバーは「知っていなくてはならない」という責任から解放され、情報を必要に応じて自力で見つけられるようになります。

プロセスを標準化

知識がチーム間で分断している場合、あるいは一人のチームメンバーだけに独占されている場合は、ほかの従業員がプロセスの運営方法を正確に把握できません。その結果、それぞれが自分なりのプロセスを作ってしまう可能性があります。こういったズレはあまり効果的でも合理的でもなく、組織の拡大に伴うスケールにも対応していない恐れがあります。 チームメンバーがナレッジマネジメントによって情報を蓄積し、共有すれば、全員がほかのメンバーの経験や知識、教訓を活用できます。こうした学びを基にプロセスを統一し、各自のワークフローを改善することにより、結果として会社がより安定して成果を上げられるようになります。

参考: プロセスのドキュメンテーション: 事例付き完全ハウツーガイド

コミュニケーションルールを設定

プロセスを統一するだけでなく、コミュニケーション方法の統一化も必要です。チームのコミュニケーションをとる方法についてルールを設定しましょう。たとえば、進行中の仕事や最終原稿を確認するにはどこを見ればよいか、特定のプロジェクトについて質問がある場合はどうすればよいかといったことです。ナレッジマネジメントを実践して、こうした情報をすべて 1 か所にまとめれば、全員が各プロジェクトについてどこでコミュニケーションを取ればよいかを把握できます。

さらに、ナレッジマネジメントによって、個人のコミュニケーションスタイルを整理しておくと便利です。メールやチャットでのやりとりを好むメンバーもいれば、Slack で一声かけて、短時間のコールで顔を合わせて話す方がいいというメンバーもいます。個々のチームメンバーとの最適なコミュニケーション方法を把握しておけば、全員が自分に合った方法で重要な情報を受け取れます。これを簡単に実現するには、コミュニケーション計画を作成して、チームのナレッジマネジメントプラットフォームに格納しておくのがおすすめです。

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ナレッジマネジメントデータベース (ナレッジベース) の情報

ナレッジベースにどんな情報を入れるかは悩むところです。当然、入れるべき情報は組織ごとに異なりますが、以下にナレッジベースに入れる代表的な情報の種類を部門ごとにご紹介します。

IT

  • よくある質問

  • IT 関連のリクエストを行うタイミングと方法

  • 新しいソフトウェアのダウンロードに関するポリシーと手順

人事

  • 従業員ハンドブック

  • 給与明細書のアクセス方法

  • 休暇申請の提出方法

マーケティング

  • ブランドデザインのガイドライン

  • SNS 関連ベストプラクティス

  • メディアの問い合わせ対応窓口

セールス

  • 競合情報

  • 1 枚物資料やパンフレットなどの営業資料

  • コミッション情報

ナレッジマネジメントのプロセス

会社の規模にかかわらず、知識を一括管理することは重要です。しかし、そうした情報は、チームにとって最もメリットのある形で整理する必要があります。そこで、ナレッジマネジメントを実践する際に効果的な 4 つのステップをご紹介します。

1. 情報を収集する

ナレッジマネジメントのプロセスは、有用な情報をできる限り収集することから始まります。そのために、現在のチームメンバーにそれぞれの役割と責任チーム構造について質問する、既存の文書を集めるといったことを行います。

たとえば、チームメンバーの誰が何を担当しているかを知ることは重要です。Asana では、「Area of Responsibility (責任範囲、AoR)」というシステムを採用しています。ある社員の責任範囲に関する質問があれば、すぐにその社員に問い合わせられるようになっています。このシステムでは、従業員に業務に対する責任意識が生まれるだけでなく、詳しい情報が必要な場合の連絡先が明確になります。

記事: Asana で責任範囲が明確なチームカルチャーを作る 10 の方法

2. 情報を整理して格納する

このステップはプロセスの中でも手間のかかる作業です。まずは使用するナレッジベースのタイプや、情報を整理して格納する方法をチームで決めてから行うのが効率的です。

適切に判断する手がかりとして、次の点について考えてみましょう。

  • 格納する予定の情報にメンバーがアクセスする方法は、どのような形が望ましいか? 

  • メンバーが情報にアクセスする頻度は? 

  • 格納する必要がある情報の量は?

こういった点を考慮することで、情報を整理し、格納する適切な方法を判断できます。たとえば、大規模な組織で大量の情報を格納する必要があるなら、すべてを共有の Google ドキュメント一つにまとめても、今後困るのは目に見えています。むしろ、さまざまなページを分類して検索できるようなナレッジマネジメントツールを探す方がチームにとって有益です。

3. 情報を共有する

情報の格納方法を決めたら、必要なメンバー全員がその知識を利用できるようにします。そのために必要なトレーニングを行い、新しいナレッジベースをいつどのように使用するべきか、定期的に告知しましょう。

チームメンバーにナレッジベースについて知らせる際には、いきなり通達するべきではありません。混乱や既存のプロセスとの競合が起きることを考慮しましょう。チェンジマネジメントのコツをうまく活用して、チームが新しいナレッジベースを有効活用でき、今後のワークフローに組み込めるようにするとよいでしょう。

記事: チェンジマネジメントとは?成功するチェンジマネジメントプロセスを構築する 6 つのステップ

4. ナレッジベースを使用する

ナレッジベースとナレッジマネジメントプロセスを確立したら、チームは必要に応じて会社に蓄積された知識にアクセスできます。そのメリットを大いに享受してください。

正確性を確保するために、必ず情報の更新を定期的に行うようにしましょう。はじめは各チームで 1 人ずつ担当者を決めて、四半期ごとに情報の更新と監査を行うのがおすすめです。チームがナレッジマネジメントのプロセスに慣れたら、ワークフローの一部として随時、ナレッジベースの更新を行うようにします。

ナレッジマネジメントの注意点

ナレッジマネジメントは強力なツールですが、正しく管理しないと問題の原因にもなります。ここではナレッジマネジメントのプロセスで起きやすいミスと、その予防法をご紹介します。

チームメンバーが情報を囲い込む

人によっては企業内での立場を守るために情報をわざと出さない場合や、単に気づかずに情報を開示しない場合があります。意図がどうあれ、重要な知識の共有がされないのは、チームにとっては問題です。情報の囲い込みは重要な情報の見落としが起きる原因になります。

これを予防するには、ナレッジマネジメントプロセスを一貫した方法で記録し、この情報について複数のメンバーがトレーニングを受けるようにします。これで一人のメンバーが、チームにとって致命的な問題の発生源となることを回避できます。

ナレッジベースの情報が不正確、あるいは情報が古い

ナレッジベースは情報を随時更新しなければ役に立ちません。情報の更新を行っていないナレッジベースにアクセスしても、チームメンバーが得られるのは古い情報であり、新しいプロセスにトラブルを引き起こしかねません。

予防策として、チームメンバーに自分の担当のプロセスに関する情報を更新するよう促しましょう。たとえば Asana では、各社員に Area of Responsibility (責任範囲) が設定されているため、文書の更新は簡単です。全員が自分の責任範囲であるプロセスと、更新するべき文書を把握しています。

ナレッジベースが使いづらい

ナレッジベースの対象であるメンバーが必要な情報にアクセスできないなら、そのデータベースは存在しないも同然です。情報にアクセスできなければ、チームメンバーは決まった手順を踏まなくなり、古い情報や不正確な情報を基に仕事を進めることになりかねません。

適切なナレッジマネジメントを実践するためには、ナレッジベースを可能な限り使いやすいものにしましょう。ナレッジマネジメントツールを使用することも一つの手ですが、とにかくポイントは情報の検索、新しい情報の追加のどちらの面でも手軽に使えることです。プロセスが複雑すぎて使用するのが苦痛になってはいけません。必要な情報を得るための手順をなるべく減らすことがコツです。

Asana を使ってナレッジマネジメント戦略を管理する

ナレッジマネジメントとは何か、そのメリットやプロセスについて解説しました。ナレッジマネジメントは、業務効率化や生産性向上だけでなく、担当者が退いたあと困らないためにも、それぞれの組織で実践していくべき取り組みです。

チームでナレッジマネジメント戦略の開発に取り組むなら、一元化したコミュニケーションセンター、つまり職場におけるナレッジベースを確立することが重要です。Asana のようなワークマネジメントツールを使用すれば、チームの全員がどんな仕事をいつまでに完了するべきかを、整理された情報をもとに把握できます。 

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