チェンジマネジメントとは?成功させるためのプロセス構築方法を解説

Julia Martins 寄稿者の顔写真Julia Martins
2024年6月27日
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概要

チェンジマネジメントとは、会社全体に新しいツールを導入する場合や新しいリーダーを迎え入れる場合など、大きな変化に対応するためのステップをまとめたもの、つまり変革推進の手法です。しっかりとしたチェンジマネジメントプロセスがあれば、チームは変化に適応し、楽々と対応できます。

この記事では、さまざまなチェンジマネジメントとは何かをまとめ、そのモデルとそれぞれを使うタイミング、そして新しいテクノロジーやツールを効果的に展開するための 6 つのステップについて解説します。

更新: この記事はチェンジマネジメントの 3 つのレベルについての記述を含め、2024年 6月に改訂されました。

組織の成功には「変革」が欠かせません。ビジネスが拡大するにつれ、新しいツールの導入、新戦略の検討、新規市場への参入といったことが必ず必要になります。ちょっとした見直しや、大勢の人に影響のない改革は簡単に実行できますが、組織全体を巻き込むような変革が必要になった場合、どんな手段をとるべきでしょうか。

きちんとした計画もなく組織に変化を取り入れようとすると、混乱を招き、事業の推進力に影響します。可能な限り円滑に変革を実現するには、計画を立て、実施する前に支持を得てから、慎重に段階を追って実行に移すことが重要です。

つまり、「チェンジマネジメント」が必要なのです。

組織の変革に苦労したことがある、あるいは変革を実行しようとしていて、会社をうまく着地させる方法を探しているなら、この記事をぜひお読みください。

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チェンジマネジメントとは?

チェンジマネジメントとは、組織における変革を推進するためのマネジメント手法です。日本語では「変革管理」とも呼ばれます。一般的なチェンジマネジメントのプロセスは、新たな変革への移行態勢を整え、もたらされる変化への支持を組織の中で取り付け、時間をかけてその変革を完全に実施するという順序になります。

チェンジマネジメントに不可欠なのは、変化を慎重に、かつ複数の角度から検討することです。組織全体の変革推進では、組織のさまざまな職位やチームのメンバーに与える影響を前もって考慮しなければなりません。そこで、チェンジマネジメントの手法によく取り入れられる戦略には、組織の変化をチームが少しずつ時間をかけて取り入れるための支援や、社内の一部での試験的導入、変革のイニシアチブを展開する前の、適切な関係者への根回しなどがあります。

チェンジマネジメントはプロセスであると同時にメソッドでもあります。これまで改革を実施する方法についてわざわざ時間をかけて考えたことがないという方も、心配は無用です。チェンジマネジメントのプロセスを実行すれば、あなたのチームや会社が、新たな変革のメリットを活用するための準備を完璧に整えられます。

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チェンジマネジメントの資格

組織の変革を効果的に推進するための専門知識とスキルを証明するために、チェンジマネジメント資格が存在します。代表的な資格には、Prosci® Change Management Certification や、ACMP の Certified Change Management Professional (CCMP) などがあります。

チェンジマネジメントの 3 つのレベル

チェンジマネジメントには、大きく 3 つのレベルが存在します。

  • 組織レベル: 全社規模もしくは事業規模でのチェンジマネジメントです。企業文化や経営戦略、業務プロセス全体にわたる変革を管理します。

  • プロジェクトレベル: チームで運用するプロジェクト規模でのチェンジマネジメントです。メンバーが一致団結して変化を受け入れるための環境を整えること、またチームのダイナミクスやモチベーションを維持するためのサポートが必要となります。

  • 個人レベル: 従業員一人ひとりに対するチェンジマネジメントです。トレーニング、カウンセリング、フィードバックの提供など、個々の従業員が変化に適応するためのプロセスに焦点を当てます。

この記事では、主に組織レベルとプロジェクトレベルに焦点を当てて、ベースとなる知識や成功させるためのポイントを解説します。

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チェンジマネジメントのメリット

チェンジマネジメントを効果的に活用すると、チームや組織のペースを乱さずに、新たなプロセスを導入できます。たとえ新しいやり方が客観的に見て優れていても、「これまでのやり方」にこだわる性質が人間にはありますが、チェンジマネジメントのプランなら、混乱を最小限に抑えながら、チームが新しい変革の価値を理解できるようにサポートします。

チェンジマネジメントのプロセスを効果的に実践すると、次のようなことが期待できます。

  • 社内で変革への弾みをつける

  • 変化への抵抗を減らす

  • 改革が成功する可能性が高まる

  • 変化によって起こりうるマイナスの影響を減らす

従来型モデルとそのプロセス

チェンジマネジメントの歴史は古く、1960年代に遡ります。それ以降、その時代時代のニーズに応じたモデルがいくつも生まれました。この記事では、一般的なチェンジマネジメントの従来型モデルを 3 つご紹介します。

レヴィンの変革モデル

ドイツ系アメリカ人の心理学者、クルト・レヴィンは、コミュニケーションの実践に関する応用研究の実績でよく知られています。レヴィンの変革モデルでは、チェンジマネジメントを次の 3 段階のプロセスに分割します。

  • 【解凍】「解凍」のフェーズでは、チームや社内のメンバーが、変化に対する初期の抵抗感を乗り越えるようサポートします。変化へのあらゆる反感を分析するだけでなく、変革が必要な理由をチームに納得させます。レヴィンの変革モデルのこの段階では、チームが新しいものを受け入れる準備を整えることに集中します。

  • 【変革】「変革」のステップでは、組織全体に変革を広げていきます。予想しない障害にぶつかれば、「変革」のフェーズは段階的になる場合もあります。また、全員を新しいシステムへと時間をかけて移行させるように努力します。

  • 【凍結】変革を実行したら、「凍結」によって新しいやり方を標準モデルとして定着させます。

ADKAR モデル

ADKAR モデルは Prosci® の創業者ジェフ・ハイアットが生み出しました。ADKAR とは次の 5 つの言葉の頭文字を並べたものです。

  • 変革の必要性の認知 (Awareness)

  • 変革に参加し、支援したいという欲求 (Desire)

  • 変革を確実に成功させるためにするべきことの知識 (Knowledge)

  • 変革を実践する能力 (Ability)

  • 変革が長期的、継続的に実践されるようにする定着化 (Reinforcement)

変革の 8 段階プロセス

ハーバード大学のジョン・コッター博士が打ち立てたこのメソッドは、その著書『企業変革力』で説明されています。コッター博士による 8 つのステップは次のようになります。

  1. 緊急課題であるという危機意識を高める: ただちに行動することの重要性を強調します。

  2. 変革を進める協力体制を構築する: 連携チームがリーダーシップを取り、組織の変革を主導、調整、伝達します。

  3. 戦略的ビジョンとイニシアチブを策定する: 変革によって今後がこれまでと比べてどう変化するかを明確にします。

  4. 従業員の理解を得る: 変革のビジョンを周知徹底し、理解を得ます。

  5. 行動の障害を取り除く: 本質的な変化に必要な「自由」を組織にもたらします。チェンジモンスター (変革を妨害しうるモノ) が発生しやすいのがこの段階です。

  6. 短期的成果を上げる: 組織が変革を続行するための燃料を投下します。

  7. 変革の加速を維持する: ビジョンが実現するまで、断固として変革を進めます。

  8. 変革を根付かせる: 過去のやり方に替えて、新たなプロセスをしっかり定着させます。

チェンジマネジメントを活用すべき場面

組織の変革すべてにチェンジマネジメントのプロセス全体を適用する必要はありません。チェンジマネジメントは、抵抗が大きい、あるは全社的な規模になることが予想される場合にのみ意味を持ちます。人間は変化を嫌う傾向があり、たとえ最善のやり方でなくても、現状を好みがちです。また、新しい働き方を想像するのは、個人にとってもチームにとっても簡単ではありません。

以下の例のような組織的な変革に置いては、チェンジマネジメントプロセスを活用するべきでしょう。

  • 全社で使用する新しいツールやテクノロジーの導入

  • 経営陣の交代や組織体制の変更

  • 企業文化や価値観の見直し

  • 企業方針、人事プログラム、福利厚生に関する見直し

  • 企業合併や買収

チェンジマネジメントのプロセスを実践するに当たって、忘れてはならないのは、組織にその変革を展開する方法とタイミングを慎重に検討することです。

たとえば Asana では、プロフェッショナルサービスチームとカスタマーサクセスチームが、お客様が新しいツールやテクノロジーを全社的に展開するためのチェンジマネジメント戦略を策定するサポートを頻繁に提供しています。Asana を導入すると、チームは仕事を整理し、実行するツールを手に入れるだけでなく、ワークマネジメントを通じてチームのコラボレーションに新たなアプローチで臨むことになります。チェンジマネジメントのプロセスを活用すれば、こうした変革を確実に成功させ、定着させることができます。

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チェンジマネジメントの具体例 - 新ツールを導入する場合

Asana 導入のサポートをするために、Asana のプロフェッショナルサービスチームとカスタマーサクセスチームは、コッター博士による変革の 8 段階プロセスにヒントを得たチェンジマネジメントフレームワークを作成しました。

また、これには Asana の導入に成功したお客様のベストプラクティスも盛り込まれています。その結果生まれたメソッド「Asana Way of Change」は、組織レベルで新しいツールやテクノロジーを展開するチームの取り組みを後押しします。

Asana Way of Change は 6 つのステップで構成されています。

[inline illustration] Asana's 6-step way of change (infographic)

導入ツールが Asana であるかどうかに関わらず、ここで紹介する Asana Way of Change フレームワークを、そうしたツールやテクノロジーの社内展開に役立てることができます。

Asana Way of Change の活用: ケーススタディ

たとえばあなたのチームが、仕事を効率化しコラボレーションを改善する目的で、全社規模でワークマネジメントプラットフォームを導入しようとしているとします。そうした組織的な変革を行う場合、Asana Way of Change は次のように応用できます。

1. 目的を確認する

こうした変革を組織に導入する前に、まず把握するべきなのは「変革を実行する目的」、つまりこの変革によって解決する問題は何かということです。変化に抵抗を感じるのは人間の常ですから、組織の全員がその改革を歓迎するとは限りません。なぜ変革を行うのか、具体的な理由があれば物事を進めやすくなります。

そこで、次の 3 つのプロセスに沿って「目的」を明確にしましょう。

① 「目的のステートメント」を作成する

まずは、組織変革を行う目的を以下のような文章にまとめます。この「目的のステートメント」が、今後の作業全体のガイドラインになります。

[チーム / 組織名]は、[〇〇プロジェクトやプロセスの管理]を行うために、新しいワークマネジメントツールを導入します。これにより、[〇〇の問題点を解消]し、[〇〇の目標を達成]したいと考えています。

たとえば、ワークマネジメントツールを導入するなら、次のような文例が考えられます。

当社では、部門間のコラボレーションと透明性を改善するために、この新しいワークマネジメントツールを導入します。これにより、仕事の効率をいっそう向上し、計画中のより多くのプロジェクトを完了したいと考えています。

② 成功の指標を定義する

何をもってチェンジマネジメントプロセスの成功とするかを定義する必要があります。変革を主導するチームと話し合い、成功の指標を設定しましょう。指標には次のような要素を盛り込みます。

  • いつまでに変革を実施すべきか

  • 全社における導入率またはトレーニング実施率

  • 設定した期限までの全社における使用率

たとえば、ワークマネジメントツールを展開するなら、次のような指標が考えられます。

  • このツールの導入を 3月 3日までに少人数のグループで開始する。他の従業員は、希望する場合 6月半ばから使用を開始できる。最終的に、7月 17日までに全社でツールへのオンボーディングを完了し、使用に習熟する。

  • チームは当該のワークマネジメントツール内で週 1 回プロジェクトステータスレポートを送信し、全業務の管理をツール内でのみ行う。

  • 全従業員が 7月 30日までにツールを積極的に活用する。

③ Asana 展開サポーターを招集する

組織に変革をもたらすのは、単独でできる仕事ではありません。バックアップするチーム、「Asana 展開サポーター」が必要です。Asana 展開サポーターはそれぞれ違う役割を担う 3 種類のメンバーで構成されます。

  • セッター (方向付けをする人): セッターは職場でのインフルエンサーです。方向付けをするセッターは、全社で新しいワークマネジメントツールをどう使用するかを決めるサポートを担います。トレーニングを主催したり、ツールの導入プロセスでチームメンバーから寄せられる質問に答えることもあります。

  • ビルダー (環境作りをする人): ビルダーは経営陣の中の 2 人以上のメンバーです。ビルダーは実施する変革に直接タッチしない場合もありますが、その発言力で変革を支援します。ビルダーは、チームの賛同を広げるために、変革の「目的のステートメント」を周知する役割を果たします。

  • サポーター (成果を共有、祝福する人): 積極的に協力して変革への弾みをつける、個人の賛同者や初期の導入メンバーです。

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2. 現状を把握する

大規模な変革を実現するには、まず小さく始める必要があります。新しいシステムで最初に実行するワークフローを選択し、展開サポーターが作った実例を踏まえて、全体に展開します。コラボレーションが必要で、範囲の広いワークフローが理想的です。こうしたワークフローを選択すれば、あらかじめ問題を解決してから変革を展開できます。

新しいワークマネジメントツールを展開する場合は、マーケティング部門など、1 つのチームや部門を選択します。マーケティング部門に新しいツールを導入する前に、まず、その部門での使い方を示すデモ環境を構築することをおすすめします。たとえば新しいツールを使って、マーケティングキャンペーンを運営する際に、コラボレーションを改善する方法を示します。

3. 最初のワークフローをデザインする

これによって、新しいツールなどの改革事項を 1 つのワークフローやプロセスで試すことができます。セッターはチームやワークフローを選んでトレーニングを行います。サポーターも、達成できたことのお祝いや、有効なプロセスを記録することなどで応援します。

この段階に来ると、想定していなかった疑問にぶつかるはずです。よく聞かれる質問とその答えをきちんと記録しておけば、変革を大規模に広げる際に文書で提示できます。

新しいワークマネジメントツールの展開の例では、先ほどマーケティングチームのためのデモ環境を整えたので、あとはチームのためにトレーニングセッションを開催して、ツールの仕組みや使い方を紹介するだけです。トレーニングでは、デモで見せたマーケティングキャンペーンのような部門間のプロジェクトを、ツールを使って計画することを奨励します。ツール展開の進み具合を頻繁にチェックして、チームの抱えている疑問に答えましょう。並行して、チームがやり遂げた内容も記録しておき、他のチームにそうした成果を示して、導入への意欲につなげます。

4. チームを力づけ、成果を祝う

チームの準備が整い、選択したワークフローを始動させたら、必ず頻繁に状況を確認し、たとえささやかなものでも、成果をお祝いしましょう。このように意欲に弾みをつける要素を前面に押し出すことで、変革のスピードが増すだけでなく、変革に賛同するグループが生まれ、より大規模に変革を広げる際に自主的にサポーターになってくれます。

5. 円滑に運用するための準備を整える

この段階で、チームは新しいシステムで順調に動いているはずです。この機会をとらえて初期の成果をお祝いし、一般的なフィードバックを集め、ツールの使用状況をモニタリングし、ベストプラクティスを構築します。FAQ 資料、ヘルプセッション、新しいチームメイトの継続的なオンボーティングプランをチームの中心となる場所に格納しておけば、長期的に円滑な運用が約束されます。

6. 使用状況を把握し、拡大する

変革の第 1 段階で、問題を解決できたと感じたら、いよいよ展開の範囲を拡大します。トレーニングセッション、FAQ 資料他、最初のワークフローで行った準備を活用して他のチームへの展開を行います。会社の規模に応じ、展開サポーターと連携して、質問に答える時間を就業時間中に設けます。それ以外のサポーターには、頻繁に様子をチェックして成果をお祝いし、新しいワークマネジメントツールの利用に勢いをつけるための応援をお願いしましょう。

こうして、瞬く間にチェンジマネジメントプランが達成されるというわけです。

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組織に変革をもたらすカギはチェンジマネジメント

どのような組織的変革を導入するにせよ、また採用するチェンジマネジメントメソッドに関わらず、計画的な展開を慎重に行うことが、チェンジマネジメントのカギとなります。チェンジマネジメントを活用し、チームの変革を成功に導きましょう。

新しいテクノロジーやツールを導入する際は、Asana Way of Change をお試しください。詳しくは、このチェンジマネジメントプロセスを活用してチームの Asana 導入を支援する方法を解説したガイドでご覧いただけます。


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