リスクマトリクスのテンプレート: プロジェクトの成功のためにリスクをどのように評価するか (実例付)

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2024年2月25日
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概要

リスクマトリクスは、プロジェクトのリスクを発生確率と深刻度に基づいて分析します。リスクをマッピングすると、全体的な影響度を計算でき、それに応じたリスクの優先順位をつけられます。この記事では、リスクマトリクスのテンプレートの作成方法と、この分析ツールから得られる情報を使って包括的なリスク管理計画を策定する方法について説明します。

いかなるプロジェクトにもリスクはつきもので、いつ、どのようなリスクが発生するかを知る確実な方法はありません。時には、プロジェクト全体を通してトラブルが一度も起きないこともありますし、時には、困難ばかりに思えることもあります。魔法の水晶玉の助けを借りずともプロジェクトのリスクを防ぐ唯一の方法とは、積極的にリスクへの対策をしておくことです。

リスクマトリクスでは、それぞれのできごとの影響度が 1 から 25 のスコアで高・中・低に分類され、リスク分析の助けとなります。各リスクの深刻度と発生確率を評価すると、リスクに優先順位をつけ、それに応じた対策ができます。この記事では、リスクマトリクスのテンプレートの作成方法が学べ、結果を行動に移すための有用なツールが提供されています。

プロジェクト管理におけるリスクマトリクスとは?

リスクマトリクスは、プロジェクトの計画段階においてリスクの発生確率と深刻度を評価するためのリスク分析ツールです。それらを評価したら、マトリクスに沿ってチャート化し、リスクの影響度を計算できます。これらの評価は、チームがプロジェクトのリスクに優先順位をつけて効果的に管理するのに役立ちます。

リスクのタイプ

このプロセスの一環として、リスクマトリクスに載せていくリスクの一覧をブレインストーミングする必要があります。直面する可能性のあるリスクは、以下のようなカテゴリに分類できるでしょう。

  • 戦略的リスク: 戦略的リスクとは、プロジェクトのベンダーやソフトウェアの間違った選択など、パフォーマンスや意思決定の誤りに関するものです。

  • 業務上のリスク: 業務上のリスクとは、計画の不備やチーム間のコミュニケーションの不足など、プロセスや手続きにおける誤りに関するものです。

  • 財務上のリスク: 財務上のリスクとは、市場の変化、訴訟、競合他社など、企業の利益の喪失をもたらすさまざまな事象に関するものです。

  • 技術的なリスク: 技術的なリスクには、セキュリティの侵害、停電、インターネット障害、財産の損害など、会社の技術に関連するあらゆるものが含まれます。

  • 外的なリスク: 外的なリスクとは、洪水、火災、自然災害、パンデミックなど、自分たちでは制御できないものを指します。

業種によっては、他にも検討するべきリスクのカテゴリがあります。たとえば、政府の顧客を抱えているならば、法的なリスクについてもブレインストーミングするべきでしょう。会社が物理的な製品を販売しているのであれば、製造リスクについても考えなければならないかもしれません。

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リスクマトリクスのテンプレートの作り方

リスクマトリクスのテンプレートを作成する際にはまず、マトリクスの列に配置する深刻度の尺度を定めます。これは、各リスクの結果がどの程度深刻になるかを測るものです。5 × 5 のマトリクスでは、深刻度の尺度に 5 つのレベルがあることになります。

  • 無傷 (1): 発生しても、影響がほとんどないリスク。

  • 軽微 (2): リスクの影響が簡単に対処できるもの。

  • 中程度 (3): リスクの影響を軽減するのに時間がかかるもの。

  • 重大 (4): リスクの影響が深刻で、長期的な損害を引き起こす可能性があるもの。

  • 致命的 (5): リスクの影響が有害で、回復が困難になる可能性があるもの。

次に、各リスクが発生する可能性を示す発生確率の尺度を定めて、リスクマトリクスのテンプレートの行に配置します。

  • 非常に高い (5): このリスクはある時点で必ず発生すると考えてよい。

  • 高い (4):このリスクは発生する可能性が高い。

  • 中程度 (3):このリスクは、半々程度の確率で、起こる可能性も起こらない可能性もある。

  • 低い (2):このリスクは発生しない可能性が高い。

  • 非常に低い (1): このリスクが発生することは、まずあり得ない。

リスクをその発生確率と深刻度に基づいてマトリクスに配置すると、リスクの影響度のレベルがわかります。リスクの影響度は、緑から赤に色分けされるとともに、1 ~ 25 の数字で評価されます。

  • 低 (1-6): 低リスクのできごとは、起こる可能性が低く、起こったとしても、プロジェクトや会社には大きな影響はありません。リスク管理の計画において、優先度の低いものと位置づけられます。

  • 中 (7-12): 中リスクのできごとは、プロジェクトの停滞の原因となる厄介なものですが、プロジェクト計画の段階でこれらのリスク予防・軽減の対策を講じればプロジェクトを成功に導くことができます。これらのリスクは無視できませんが、最優先する必要はありません。

  • 高 (13-25):高リスクのできごとは、プロジェクト計画の段階で最優先で考慮されないと、プロジェクトが頓挫しかねません。発生する可能性が高く、深刻な影響をもたらすこれらのリスクは、リスク管理の計画において最も大切なものです。

[インラインのイラスト] リスクマトリクスの基準 (インフォグラフィック)

上記のラベルがあなたの会社やプロジェクトに合わないと感じる場合、テンプレートにこだわる必要はありません。マトリクスのサイズや用語は、ニーズに合わせてカスタマイズできます。

リスクマトリクスの使い方

リスクマトリクスを作成すると、総合的な分析ツールとして活用できます。リスクマトリクスのテンプレートの良いところは、プロジェクトごとに変更する必要がないことです。一度作成したものを、再利用したり、他の人と共有したりできます。

リスクマトリクス作成の 5 ステップ

1. プロジェクトリスクの見定め

リスクマトリクスを活用するためには、潜在的なリスクのリストが不可欠です。このステップでは、取り組んでいる特定のプロジェクトに影響を与えうるリスクを見定めます。

プロジェクトに関連するリスクを考えるうえで、プロジェクトのスコープと目的を理解する必要があります。そこには、プロジェクトに関する以下の内容が含まれます。

プロジェクトのスコープを手がかりに、プロジェクトに影響を与えうるリスクのある状況を考えてみます。どこから手をつけていいかわからない場合は、マインドマップやスターバーストといったブレインストーミングの手法を使って、リスクタイプごとにできる限り多くのリスクをリストアップしてみましょう。

2. リスクの深刻度の決定

リスクマトリクスを作成するとともに、リスクの深刻度と発生確率の基準を定めました。プロジェクトリスクのリストができたので、マトリクスの基準を用いてリスクを分類します。リストアップした各リスクに目を通していき、まずは深刻度の尺度を判断しましょう。問うべきは以下のような質問です。

  • このリスクによって生じる可能性のある、最もネガティブな結果とは何か?

  • このリスクによって発生する可能性のある、最悪の損害とは?

  • このリスクから回復するのはどれだけ難しいか?

  • このリスクは、5 つの深刻度のレベルのどこに当てはまるか?

リスクの影響がどの程度深刻かを見極めるために必要な視点を持ち合わせていないこともあります。そういった場合には、プロジェクトの関係者と協力して、潜在的なリスクの影響を判断しましょう。

3. リスクの発生確率を見定める

各リスクの深刻度を定義すると、リスク分析の方程式の半分が完成したことになります。次は、各リスクの発生確率を見定めます。それには、以下のような質問をしましょう。

  • このようなリスクは以前にも発生したことがあるか?ある場合、どのくらいの頻度か?

  • 今回と同様のリスクが発生したことがあるか?

  • このリスクは発生しうるのか、発生するとしたら確率はどの程度か。

このステップでは、チームの協力も不可欠です。過去のプロジェクトで発生した類似のリスクについて、よく知らない場合もあるためです。過去のプロジェクトを参考に、各リスクの発生確率をチームと共に分析することによって、より的確な軽減策を立てましょう。

記事: プロジェクトマネジメントで学んだ教訓を記録しておく方法

4. リスクの影響を計算する

リスク分析の方程式の最後は、リスクの影響の計算です。使用する方程式は、以下のとおり。

発生確率 × 深刻度 = リスクの影響

各リスクをその発生確率と重大度に基づいてマトリクスに配置し、その行と列の数字を掛け合わせてリスクの影響度のレベルを求めます。たとえば、データ漏洩のリスクが重大 (4) で発生確率が高い (4) と考える場合、4 × 4 でリスクの影響度は 16 となり、これはリスクの影響度が高いとみなされます。

5. リスクに優先順位をつけ、行動に移す

これで、特定された各リスクについて、1 ~ 25 のスケールでリスクの影響度レベルが設定されたはずです。この数値により、どのリスクが最優先なのかを判断しやすくなります。影響度が同じリスクがある場合にどのリスクを優先させるかは、あなたとチーム次第です。影響度が同じリスクが複数あれば、アクションプラン作成の際に、等分に注意を払う必要があるかもしれません。

リスク対応計画には、リスクを予防するためのステップと、不運なできごとが起こったときにリスクを軽減する方法を含める必要があります。プロジェクトの計画には多くの要素が含まれるため、リスク対処のための最良の戦略は、分割統治といえるかもしれません。

記事: 結果を出すアクションプランの作成方法

リスクアセスメントマトリクスのテンプレート

リスクマトリクスのテンプレートの規模は、プロジェクトのリスクをどれだけ詳細に分析できるかを決めるものです。リスクマトリクスのテンプレートの規模が大きければ、リスクの影響度の範囲に余裕ができ、小さければ、リスクの影響度の評価がシンプルになり、あまり主観的にならずに済みます。

マトリクスのそれぞれのマス目は、発生確率と深刻度のリスクレベルを表すため、リスクマトリクスは最小でも縦横 3 マスにするべきです。

5 × 5 のリスクマトリクスが理想的なのは、各リスクをさらに分析できるためです。完成したリスクマトリクスのテンプレートに沿ってリスクを図式化すると、このマトリクスは、各リスクの影響を高、中、または低として俯瞰するためのカラースペクトルとなります。

以下の例は、5 × 5 のリスクマトリクスのテンプレートです。

リスクマトリクスの例

リスクマトリクスのテンプレートは、以下のリンクから無料でダウンロードが可能です。このテンプレートを使ってプロジェクトのリスクを図式化し、リスクの影響度を総合的に判断しましょう。

リスクマトリクスの無料テンプレート

ワークマネジメントツールとリスクマトリクスのテンプレートを組み合わせる

複数のプロジェクトを横断してリスクを測定する場合でも、同じリスクマトリクスのテンプレートを使用できます。しかし、直面するリスクも進化していくことを忘れてはいけません。環境は変化し、技術はよりスマートになり、ワークプレイスは成長します。あらゆるプロジェクトが独自のリスクに直面するもので、毎年これらのリスクを再評価していく必要があります。

リスクマトリクスのテンプレートとワークマネジメントソフトウェアを組み合わせると、過去のデータを現在のプロセスに反映させられます。Asana を使用すると、リスクマトリクスの結果を関係者と共有し、リスク管理の計画が共同で作成できます。しっかりとした計画が立ったら、チームのアクションをリアルタイムで監視できるのです。

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