ギャップ分析を使ってビジネス目標を達成する

寄稿者 Sarah Laoyan の顔写真Sarah Laoyan
2024年2月6日
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概要

ギャップ分析とは、現在の業績を理想の業績と比較するプロセスであり、企業戦略を立てたり、ビジネスの欠点を特定したりするのに役立ちます。この記事では、ギャップ分析でビジネス目標を強化する方法をご紹介します。

たとえばあなたのチームが今、来年の戦略計画作成に取り組もうとしているとします。しかし、チームはどこから始めればいいのかよくわかっていません。そんなとき、あなたならどうしますか?

何から始めればいいのかわからなければ、ギャップ分析を使ってみましょう。ギャップ分析を行うことで現在の状態から理想の状態へ、または最終的な目標へと到達する方法がわかります。

ギャップ分析とは?

ギャップ分析 (ニーズ分析) は、現在の業績を理想の業績と比較するプロセスです。ギャップ分析の「ギャップ」とは、現在のビジネスの状態と、理想とするビジネスの状態とのギャップのことです。

ギャップ分析がビジネスにもたらすメリットとして、以下のようなものがあります。

  • 戦略のブレインストーミングができる。 ギャップ分析は戦略チームが目標達成へ向けて取ることのできるアクションプランの特定に役立ちます。

  • 弱点を特定できる。 ビジネスの業績が思わしくなかった場合、ギャップ分析を使って業績のギャップを生んでしまった根本原因を特定することができます。 

  • 実際のリソースを測定できる。 一年の終わりにチームのリソースが余っていた場合、ギャップ分析を使ってこれまでの業績状況や、リソースの割り当て状況を確認し、今後のリソース活用に役立てることができます。

ギャップ分析が使える場面

ギャップ分析は A 地点から B 地点へと到達する方法を導き出したいときに役立つプロジェクト管理手法です。どんな場面でも使える手法ですが、適切なプロジェクトや取り組みで戦略的に活用することで、ギャップ分析の効果を最大限まで引き出すことができます。ここでは、ビジネス改善に必要な背景情報を集めるのにギャップ分析が役立つ場面をご紹介します。

戦略的プランを立てるとき

チームが成長のために戦略的なプランを作成しようとしている場合、戦略プランニングプロセスの早い段階でギャップ分析を取り入れることでチームはよいスタートを切ることができます。ギャップ分析によって、チームが今の状態から特定の最終目標へと到達するためには何が必要なのか、データに基づく指針を得ることができ、成長やビジネスの改善へ向けた戦略的プランの作成を始めるにあたっての足がかりを得ることができます。

記事: 戦略プランニングは初めてですか?ここから始めましょう。

業績の問題が発生しているとき

チームの業績が予想外に低くなっている場合、ギャップ分析を行うことでチームの現在の状況における問題点を特定できます。ギャップの根本原因が特定できれば、生産を妨げることなく、その原因を解消できるようプロセスを改善できます。たとえば、組み立てラインを担当するプロジェクトマネージャーが、生産量が想定よりも少ないことに気付いたとします。ギャップ分析により、根本原因が一部の機械の問題にあることが判明しました。この問題の解決と、プロジェクトマネージャーが行ったこのギャップ分析により、この原因による生産量低下を補うためのソリューションを開発することができました。

ステークホルダー (利害関係者) が追加情報を求めているとき

あなたのチームが投資家向けのビジネス情報や、その他の目的で情報をまとめている場合にも、ギャップ分析は非常に役立ちます。ギャップ分析は単なる数字よりもより詳細な背景情報を提供するためです。また、経営陣が何らかの理由であなたのチームの業績低下を心配しているような場合も、ギャップ分析を行うことでギャップを埋めるための詳細な計画を提供し、不安を和らげることができます。

ギャップ分析の 4 ステップ

分析というと難しいものに聞こえるかもしれませんが、実はギャップ分析はそれほど複雑なものではありません。これからご紹介する 4 つのステップでチームのためのギャップ分析を行いましょう。

1. ビジネス目標を定義する

現在の業績と理想の業績を比較するには、まず将来の理想的な状態について定義する必要があります。理想的な状態は、測定可能な目標を設定することで定義できます。どんな目標設定の手法を用いても構いません。目標設定手法をまだ試したことがない場合は、目標と主要な結果 (OKR)重要業績評価指標 (KPI) を使ってみましょう。またどの手法を使う場合でも、目標はかならず SMART な目標にしましょう。SMART な目標とは、Specific (具体的)、Measurable (測定可能)、Achievable (達成可能)、Realistic (現実的)、Time-bound (期限がある) の頭文字をとったものです。ここで設定する目標が、業績の測定方法や理想とするビジネスの状態を定義します。

2. 現在の業績を基準として設定する

ステップ 1 で特定した目標の形式を使用して、現在の業績を基準として設定しましょう。これまでのデータや過去に行ったギャップ分析の情報がある場合は、そういった情報を参考にしてもかまいません。

またこれは現在のプロセスを評価するよい機会でもあります。戦略の一部としてプロセスの改善も目指している場合は、ビジネスプロセスの現状を把握することが重要です。しっかりと現状を把握しておくことで、理想とする状態を実現させるためにはどのプロセス改善手法を取ればいいのか判断する助けとなります。

記事: ビジネスプロセス管理 (BPM) のビギナーズガイド

3. ギャップ情報を分析する

先述の通り、ギャップ分析の「ギャップ」とはビジネスの現在の状況と理想とする状況の差のことです。2 つの状況の違いがわかったところで、今度はそのギャップを埋めるために必要な戦略や戦術を仮定します。

まずは目標が実際に達成可能であり、手の届かないようなものではないことを確認します。不可能に思えるほど高い目標を設定すべきではありません。また、一定の期間内にチームが達成できるような目標であることが重要です。現在の業績戦略に変更を加えても、チームは予定の期間内に設定した目標を達成することができるでしょうか?

またこのステップでは目標を達成するための戦略プランニングについて、ステークホルダーとブレインストーミングを行います。

4. 詳細なレポートにまとめる

すべての数値とビジネス目標が固まったら、どのようにしてギャップを埋めるのかを詳細に示したアクションプランを作成します。ステップ 2 でまとめた基準に関する情報などの定量的なデータと、現在のプロセスや過去のプロセス改善戦略などの定性的なデータの両方を取り入れることが重要です。

一般的なギャップ分析手法

これまでにご紹介した 4 つのステップがギャップ分析の主な手順となりますが、プランニングに役立つ手法がいくつか存在します。ここではギャップ分析でよく用いられる手法をいくつかご紹介します。

SWOT 分析

SWOT 分析とはビジネスの強み、弱み、機会、脅威を特定するために用いるプロジェクト管理手法です。一般的に、SWOT 分析では以下のように 4 つに区切られた表の各項目を明らかにします。

SWOT 分析の例

すべての項目が埋まったら、この表の各領域を使ってブレインストーミングを行い、ギャップを浮かび上がらせましょう。

記事: SWOT 分析: 知っておくべきすべてのこと (実例付)

マッキンゼーの 7S モデル

Robert H. Waterman 氏と Tom Peters 氏によって開発されたマッキンゼーの 7S モデルは、組織の分析によく用いられる管理モデルです。このモデルは、組織には互いに影響し合う 7 つの要素が必要だという考えに基づいています。この 7 つの要素のうち 1 つでも欠けてしまうと、ビジネス全体に影響を及ぼすおそれがあります。

このモデルの 7 つの S とは、以下のものを指しています。

  • Structure (構造): 会社がどのように組織されているか。活動がどのように分割され、チームがどのようにコミュニケーションを取っているかなどを指します。 

  • Strategy (戦略): チームがビジネスを前進させるために用いる、決まった一連の計画。 

  • Systems (システム): 業績を測定する方法と、ビジネスを行うためにチームが使用する手段。

  • Skills (スキル): チームメンバーがあなたの会社に提供する能力。 

  • Style (スタイル): 会社内の特定のグループの行動パターン。

  • Staff (スタッフ): あなたのために働く個人およびその特性や、会社がチームを育成、開発する方法。

  • Shared values (共通の価値観): 会社が仕事に対しどうアプローチするかを定義する基本原則。

この 7 つの S の関連性を確かめることで、マッキンゼーの 7S モデルを利用できます。Strategy (戦略) に変更を加えると、Systems (システム) にはどう影響しますか?ここでギャップ分析を行うことで、組織の各要素がどのように関連しているか、明確な答えを得ることができます。

ナドラーとタッシュマンのコングルーエンス・モデル

ナドラーとタッシュマンのコングルーエンス・モデルは、業績の問題の根本原因を特定するビジネス管理手法です。1980年代初頭に組織論者の David A. Nadler 氏と Michael L. Tushman 氏によって開発されました。

このナドラーとタッシュマンのモデルは、ビジネスには主に 4 つの要素があり、各要素が相互に独自の関係性を持っているという考えに基づいています。

以下がその 4 つの要素です。

  • 仕事: 業績を生みだす一つひとつのタスク。「仕事」は、「何が行われたか」「どう行われたか」の 2 つの視点から見ることができます。 

  • 人々: 物事を行う際に関わり合う個人。たとえば、上司と部下やチームリーダーと請負業者などが挙げられます。

  • 組織構造: 会社がどのように組織されているか。たとえば仕事がどのように任されているかや、どのチームが何を担当しているか、どのようにプロセスが構築されているかなど。 

  • 文化: 会社全体におけるグループ規範やベストプラクティス、理想、共通の価値観の導入状況。

ナドラーとタッシュマンのモデルではこの 4 つの要素をさらに 6 つの異なる組み合わせに分け、会社の業績を分析します。以下がその 6 つの組み合わせです。

  • 仕事と人々: どの従業員が何の仕事をしているのか分析します。適切な人材が適切な仕事に携わっていますか?

  • 仕事と構造: 作業を完了するためにどんなプロセスが作られているかを分析します。完了すべき仕事を明確に指示できる構造や組織が揃っていますか?

  • 仕事と文化: 作られた環境に焦点を当てます。企業文化によってパフォーマンスによい影響をもたらす習慣が促進されていますか?

  • 人々と構造: チームの組織的な構造を分析します。それぞれの個人が能力を最大限に発揮できるようなチーム構造になっていますか?

  • 人々と文化: 従業員の姿勢に焦点を当てます。従業員は生産的な文化のもとで働いていますか?仕事をうまくこなすためのリソースを特定することができていますか?

  • 文化と構造: この組み合わせでは文化と組織がお互いに与える影響について分析します。あなたの会社の組織は企業文化と競合関係にありますか、それとも支え合う関係にありますか?

マッキンゼーの 7S モデルと同様、ナドラーとタッシュマンのモデルでも各要素を組み合わせることで、それぞれの要素がどのように関連していて、片方を変更するともう片方にどのように影響するのか確認できます。

ワークマネジメントツールでギャップ分析を始めましょう

ギャップ分析はステークホルダーと便利かつわかりやすい方法で共有された場合に最もその効果を発揮します。Asana のようなワークマネジメントツールは、チームの情報整理やステークホルダーとのスムーズなコミュニケーションに役立ち、全員の足並みをそろえます。Asana を使ったワークマネジメントをぜひお試しください。

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