CCPM (クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント) の基礎知識を解説

寄稿者 Sarah Laoyan の顔写真Sarah Laoyan
2024年2月17日
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概要

CCPM (クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント) とは、プロジェクトに絶対に欠かせないリソースをモニタリングし、プロジェクト内で依存関係のあるタスクの優先順位を決める手法です。この記事では、CCPM フレームワークに基いて、組織内でリソースを効果的に管理し、可能な限り効率的にプロジェクトを遂行する方法をご紹介します。

更新: この記事は、CCPM のメリットに関する記述を含めて 2023年 11月に改訂されました。

積み木遊びをしているところを想像してみてください。あなたは好きなものを何でも作れますが、使える積み木の数には限りがあります。手元にある積み木を使って、作品を作っていきますが、手持ちの積み木を使い果たしてしまったらゲーム終了です。そこで、今持っている積み木で作りたいものを確実に作るにはどうするか?それが CCPM の基本にある考え方です。

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CCPM とは?

CCPM (Critical Chain Project Management、クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント) は、プロジェクト完了のために必要なタスクおよびリソースを特定、モニタリングし、可能な限り効率的にプロジェクトを完了するためのプロジェクト管理手法です。

各タスクには時間的余裕 (バッファ) を設定せずに最短で完了するという前提を立て、代わりにプロジェクト全体の余裕 (プロジェクトバッファ) を共有します。そうすることで、プロジェクトの進捗と日程を最適化することができます。同じリソースをくり返し投入する必要があるプロジェクトなら、CCPM は取り入れたい戦略の一つと言えるでしょう。

CCPM の歴史

CCPM の概念は、1997年にエリヤフ・ゴールドラット博士が考案しました。これは博士の提唱するさまざまな理論の一つ「制約条件の理論 (TOC)」と密接な関係があります。

TOC は、あらゆるプロジェクトには大きな制約事項が 1 つあり、全体の中で最も弱いプロセスが、プロジェクトそのものの足枷になるという考え方です。これは、プロジェクトの進行を妨げる主要なボトルネック、つまり制約事項の特定に応用できます。

記事: ビギナーズガイド: 制約理論

クリティカルチェーンとクリティカルパスの違いは?

これらの 2 つのプロジェクト管理手法は、非常によく似ていますが、大きな違いが 1 つあります。

クリティカルパス法では、プロジェクトを完了するために必要な、依存関係のあるタスクを特定し、それらをつなげた単一の作業経路に注目します。その他のタスクも完了する必要がありますが、クリティカルパスによって、プロジェクトの工程が明確になり、チームは最適なワークフローを判断して、効率的なプロジェクトタイムラインを作成できます。クリティカルパスに含まれないタスクは優先度が下げられ、プロジェクトの健全性はそれぞれのクリティカル (重要) なタスクが決まった期限までに完了するかどうかによって決まります。

一方、CCPM もタスクの依存関係を重視しますが、プロジェクトを完了するために必要な「リソース」、つまり人員や設備なども考慮する点が異なります。リソース不足の原因となりうる不確実性の高い要素に対し、CCPM ではプロジェクトのタイムライン全体に、プロジェクトバッファを組み込み、個々のタスクで余剰リソースが必要となったときのために備えます。

タスク完了のタイミングだけに注目するクリティカルパス法と異なり、クリティカルチェーン法では、このバッファ消費のタイミングや有無がプロジェクトの成功判断基準になります。チームがバッファをまったく使用しなければ、プロジェクトはうまく進んでいるということになります。

クリティカルパス法: プロジェクト管理における CPM の使い方プロジェクトスケジュールを効率的に管理する方法

クリティカルチェーンとは?3 つの構成要素

クリティカルチェーンは、主にクリティカルパス、合流チェーン、リソースバッファの 3 つの要素から構成されています。

【クリティカルパス】

クリティカルパスは、プロジェクトを完了するために必要な、互いに依存関係のあるタスクで構成される作業工程のうち、最長のものを指します。言い換えれば、プロジェクトの成功に絶対的に必要なタスクのすべてを、完了するべき順番に並べたものです。クリティカルパスの算定は PERT チャートを活用しましょう。

記事: PERT チャート (PERT 図): 実例付き解説

クリティカルチェーン法では、依存関係にはさまざまなレベルがあることを理解することが重要ですが、クリティカルパスには最重要の依存関係、つまりプロジェクトに必須のタスクが含まれます。クリティカルパスに影響しないタスクは、次で紹介する「合流チェーン」と呼ばれる別のパスに含まれます。

【合流チェーン】

合流チェーンは、クリティカルパスと同時に進行し、依存関係のあるタスクで構成される副次的なチェーンです。合流チェーンはすべて、最終的にクリティカルパスに結びつきます。これは、合流チェーンに含まれる一連のイベントは、クリティカルパス上のタスクの 1 つにしか影響を及ぼさないためです。合流チェーンは、クリティカルパスに遅れが発生しないように、クリティカルパスと同時進行させる必要があります。

クリティカルパスと合流チェーンの簡単な例を見てみましょう。

職場のパーティーを企画しているとします。このとき、クリティカルパスは次のようになります。

  • テーマを決める

  • パーティーの招待状を送る

  • 開催場所を見つける

  • イベントの進行を行う

上記のクリティカルパスと同時進行する必要があるタスクが、合流チェーンを構成します。たとえば、パーティーの招待状を送る前に、誰を招待するか決める必要があります。イベントを実際に進行する前には、テーマに沿った飾りつけを購入し、会場を設営しなければなりません。こうした作業がすべて、合流チェーンのタスクです。

【バッファ】

バッファとは、プロジェクトが円滑に進むように、クリティカルチェーンに組み込む余裕のことです。バッファは、ボーリングレーンのバンパーのように、計画通りにいかない事態が発生したときに、プロジェクトの調整が可能な余地を作るために設けられています。

CCPM で一般的に使用されているバッファには 3 タイプあります。

  • プロジェクトバッファ: プロジェクトバッファは、最終タスクとプロジェクトの期日の間に設けられた時間的余裕を指します。予定された期日の前に時間の余裕を組み込むことで、遅れている未処理のタスクがあれば、それを完了し、タイムラインに追いつけます。

  • 合流バッファ: 合流バッファは、合流チェーン (非クリティカルチェーン) とクリティカルチェーンの間に設定された時間的余裕です。タイムラインにこの余裕を見込むことで、合流チェーンの遅れによるクリティカルチェーンへの影響を回避できます。

  • リソースバッファ: リソースバッファは、クリティカルチェーンを実行する際に、追加の人員や設備、第三者の応援など、リソースがさらに必要になる場合を考慮した、文字通りリソースの余裕です。

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CCPM のメリットは?

CCPM は現在、PMBOK に代わるプロジェクト管理手法として注目されています。その CCPM のメリットには、次のようなポイントが挙げられます。

  • スケジュールを可視化できる: CCPM では各タスクにバッファではなく、工程全体でのバッファを設定します。そのため、各工程に実際に必要な時間とリソースが明確化します。

  • タスクの優先順位がわかる: プロジェクト完了のために必要なタスクを特定することで、それぞれの作業に優先度をつけることができます。

  • 不確実性に対処できる: プロジェクトにリスクはつきものです。リソースも考慮した CCPM なら、不測の事態が起きてもプロジェクトバッファを利用して対処できます。

こういった CCPM のメリットを最大限発揮させるために、クラウド型プロジェクト管理ツールを活用しましょう。チーム内で効果的にスケジュールや進捗状況を共有することで、プロジェクトがよりスムーズに進むようになります。

プロジェクト管理を最適化する方法

CCPM を実践する 4 つのステップ

CCPM のプロセスに初めて取り組む際には、次の 4 つのステップに沿って進めてみてください。

1. クリティカルパスを見極める

クリティカルチェーン法を使用するにあたって、プロジェクト全体の背骨となるのがクリティカルパスです。これが計画全体の土台になるため、どのタスクが軸となるこのチェーンを構成するのかを見極めることが非常に重要です。

2. リソースの量を判断する

この場合、リソースとはチームメンバーにとっての所要時間、最終的な成果を出すためにチームが使用する製品やツール、あるいはタスクを完了するための実際の作業者などを指します。

可能であれば、プロジェクトを完了するために必要と思われるリソースの量を見積もりましょう。クリティカルチェーン上のいずれかのタスクを完了するために必要な人員の数と所要時間を推定し、この作業をすべてのタスクについて行います。この計算に基づいて、プロジェクトを完了するために必要なリソースが十分にあるかどうかを判断します。

休暇でチームメンバーが離脱するなどの事情で、リソースが制限されることがあらかじめわかっていれば、それを考慮して計画を立てます。このように、プロジェクトが開始する前にプロジェクト計画の大部分を行えるのも、クリティカルチェーン法の大きなメリットです。

記事: 初めてのリソース管理ガイド

3. バッファを設定する

クリティカルパスと合流チェーンに必要なリソースの見積もりができたら、バッファにどれくらいの時間やリソースが必要かを判断し、どこに組み込むかを簡単に決められます。

この段階で、クリティカルパスを決定した際に算出した必要リソースに基づき、設定すべきバッファを算出しましょう。プロジェクトマネージャーがバッファ管理を行う場合は、こうして設定したバッファがリソースの供給を維持し、ボトルネックの発生を防ぐ役目を果たします。

4. チームメンバーの集中力を維持する

マルチタスクは、チームにとって大きな障害になります。チームメンバーが複数のプロジェクトやタスクを掛け持ちして、作業を切り替える必要があると、集中が途切れ、本来の品質やスピードで成果を上げることが困難になるためです。

チームがプロジェクトのスケジュールに沿って順調に仕事を進められるようにするには、一人のメンバーに割り当てるタスクの数や種類が多くなり過ぎないようにしましょう。一つのプロジェクトやタスクに取り組むほうが、集中力を維持しやすくなります。また、チームメンバーが一度に担当するプロジェクトの数を絞ることによって、ストレスや燃え尽き症候群を引き起こす恐れのある、コンテキストの切り替えを防ぐこともできます。

【おすすめ】ワークマネジメントツールで効率的に CCPM を進める

Asana のようなワークマネジメントツールなら、クリティカルチェーンスケジュール作りを簡単に行え、チーム全体の業務を滞りなく進められます。たとえば「タイムライン」や「ワークフロー」機能を使って、タスクの期間、完了日、必須のリソース、依存関係などを一か所ですばやく確認できたり、「ワークロード」機能を使ってチームメンバーの工数管理を行ったりすることも可能です。

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