サンクコスト効果に惑わされない判断をするには

寄稿者 Caeleigh MacNeil の顔写真Caeleigh MacNeil2022年1月10日
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概要

サンクコスト効果 (サンクコストの誤謬) とは、お金や労力、時間を投資した結果、たとえ今後のコストがメリットを上回っても、同じことを続けてしまう傾向のことをいいます。サンクコスト効果の落とし穴にはまると、自分に利益をもたらさない不合理な決断をして、さらに深みへとはまり込んでしまいます。この記事を読み、サンクコスト効果を克服して、あなたやチームにとって真にメリットのある選択ができるようになりましょう。

1976年 1月、超音速ジェット機コンコルドがついに旅客便の初飛行を果たしました。しかしその背後には、英仏両政府による28 億ドル (約 3,000 億円) という巨額の出資がありました。その時点ですでに、この飛行機は採算が取れないことが明らかになっていましたが、投資家たちはさらに 27年にわたってこの破綻したプロジェクトにお金を注ぎ込み続けたのです。

この出来事をもとに、「コンコルドの誤謬」という言葉が生まれました。人は多大な投資を行うと、失敗が明らかな事業でも継続してしまうことを表しています。一般的には、「サンクコスト効果 (サンクコストの誤謬)」とも呼ばれています。

サンクコスト効果とは?

サンクコスト効果とは、事業に金銭や労力、時間を投資すると、たとえ今後のコストがメリットを上回るとしてもそれを継続してしまう傾向のことです。専門用語のように聞こえますが、サンクコスト効果は、人生やビジネスにおける判断の落とし穴として、私たちがよく経験するものです。退屈な映画を、お金を払ったからといって観続けるといった些細なことから、採算が取れないビジネス上の投資を引き上げずに継続するような重大な問題まで、サンクコスト効果はさまざまな意思決定に影響しています。よりわかりやすい言葉でいえば、サンクコスト効果とは「損の上塗り」ということです。

サンクコスト効果に惑わされると、人は自分に利益をもたらさない不合理な判断をしてしまいます。この傾向は人間の行動心理に深く根差しているため、どんどん深みにはまり込むことなく論理的に正しい判断をするには、サンクコスト効果がどう働くのかを理解することが大切です。

サンクコストとは?

経済学では、「サンクコスト」とはすでに負担し、回収できない費用のことです。たとえばビジネスプロジェクトに投資したお金や、恋愛で費やした時間など、もう取り戻せない過去のコストがサンクコストです。合理的に考えれば、こうしたサンクコストは、私たちの未来に関する決定には無関係です。なぜならそうした判断は、回収不能な過去の投資ではなく、将来的なコスト予測やビジネス目標のみに基づいて下すべきだからです。

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サンクコスト効果の歴史

サンクコスト効果は一種の認知バイアスで、情報を誤って解釈し、意思決定に影響を与えてしまう思考のエラーです。1972年に、心理学者のエイモス・トベルスキーとダニエル・カーネマンが初めて認知バイアスという概念を生み出し、これがサンクコスト効果の研究の土台となりました。2002年、カーネマンは、サンクコスト効果をはじめとした、ビジネス上の意思決定における認知バイアスの研究によってノーベル経済学賞を受賞しています。

長年にわたり、行動科学者や経済学者はサンクコスト効果が起きる理由を解明しようとしてきました。行動経済学の専門家リチャード・セイラーは、サンクコスト効果の概念を初めて提唱し、人間は金銭を投資したモノやサービスをより利用したがる傾向があると結論づけました。その後、心理学者のハル・アルケスやキャサリン・ブルマーがセイラーの仮説を発展させ、雑誌「Organizational Behavior and Human Decision Processes (組織行動と人間の意思決定プロセス)」にサンクコストに関する論文を発表しました。アルケスとブルマーは、一連の実験を行って、サンクコストがもたらす心理、具体的には人間がサンクコストについて考えた場合、判断にどう影響するかを明らかにしました。そしてその影響は、私たちの予想を超えて大きなものだったのです。

たとえば、あるアンケート調査で、実験の参加者に週末にスキーツアーを誤って 2 つ予約した場合を想定してもらいました。一つはミシガン州への 100 ドルのツアーで、もう一つはウィスコンシン州への 50 ドルのツアーです。研究者たちはウィスコンシン州へのツアーのほうが楽しめると説明しましたが、参加者たちの大部分がミシガン州のツアーに行くと答えました。心の中で計算した参加者たちは、たとえあまり楽しめないにしても、初期投資のより大きい方の行動を選んだのです。

サンクコスト効果の背景にある心理

行動経済学者たちは、サンクコスト効果をもたらす心理学的要因として、少なくとも次の 5 つを挙げています。

損失回避

損失回避とは、損失を避けようとする傾向のことです。これは、何かを失うと考えると、同じものを得ると考えるよりも強い心理的影響を受けるために起こります。たとえば、1 万円を手に入れれば嬉しくなりますが、1 万円を失った落胆はそれを上回ります。結果として、私たちはなんとかして 1 万円を失うことを回避しようとします。たとえそれで 1 万円を新たに手に入れるチャンスを犠牲にするとしてもです。サンクコスト効果でいえば、損失を被って嫌な思いをしたくない一心で無駄な投資にこだわり続けることが、損失回避の心理です。

フレーミング効果

フレーミング効果は、何かを選ぶ際に、その選択肢の提示方法が肯定的か、否定的かに影響されることを指し、これもサンクコスト効果を補強します。私たちがある決断を継続する場合は、それがおおむね成功だというように、肯定的にフレーミングします。しかし方針を変更する場合、たとえ論理的には損を切り捨てることが正しくても、私たちは失敗のストーリーを作り上げがちです。たとえば、あなたがブログキャンペーンを開始したとしましょう。ところが途中でブログのトラフィックが期待したほどではないため、残りの予算を有料広告に投資した方がよさそうだと気づきます。しかし、そうするとブログキャンペーンが失敗だったことになると考え、お金を別の目的に使うべきところを、キャンペーンを継続する判断を下してしまうのです。

非現実的な楽観主義

非現実的な楽観主義は、自分は他人に比べてネガティブな出来事を経験しないだろうと思い込む心理傾向です。サンクコスト効果においては、特に金銭を投資した場合、成功の確率を過大評価し、失敗の可能性を過小評価しやすいことに表れます。たとえば、新規事業に多額な投資を行った場合、現実のエビデンスがどうあれ、いつかうまくいくだろうと思い込みがちになります。

自己責任の意識

過去のコストに責任を感じている場合、サンクコスト効果の落とし穴にはまる確率が高まります。他人が下した判断なら、方針転換は比較的容易ですが、あなた自身が投資の決断をしたプロジェクトを中止するのは非常に難しいのです。というわけでサンクコスト効果は、プロジェクトの発案者や意思決定者などプロジェクトの成功に利害のある人にとって特に厄介な問題になります。

無駄にしたと思われたくない心理

決断を下した本人は、お金を無駄にした罪悪感から、無意味な投資を続けてしまうことがあります。たとえば、チケットを買って映画館に入ったものの、30分くらい経ってうんざりしてきたとします。しかし、他の観客に自分がお金を無駄にしたと思われたくない、そして自分自身もお金を無駄にしたという嫌な気分を味わいたくない、という二つの理由から、残りを頑張って観続けます。これが無駄を避けようとする心理です。チームにとって役に立たないソフトウェアツールを、購入したからといって使い続ける場合も同じです。投資を無駄にしたくないばかりに、ツールにこだわり続けるというわけです。

サンクコストの例

サンクコストは、すでに投資して、回収できないものすべてを指します。ここで紹介するサンクコストの例を参考に、あなた自身がサンクコスト効果に影響を受けていないか、振り返ってみましょう。

サンクコストには次のようなものがあります。

  • 機会費用: ほかにもっと生産的な目的に使えたかもしれない時間など

  • 労力: 特に困難なタスクなど

  • 精神的負担: それまでに感じた不安など

  • 施設や諸経費

  • 材料と設備

  • 企業買収などの投資

  • 年間のサブスクリプション費用

  • 弁護士費用や広告費など、払い戻し不能のビジネスコスト

サンクコスト効果は問題か?

ひとことで言えば、問題です。サンクコスト効果の影響下にある判断は、不利益をもたらす誤った選択につながることが多いためです。論理的な判断ではなく、たとえ自分に利益をもたらさなくても、時間や金銭、エネルギーを投資し続け、さらに引っ込みがつかなくなるという悪循環に陥ります。投資をすればするほど、私たちは深みにはまり、当初の誤った判断にさらにリソースをつぎ込むのです。

サンクコスト効果を回避するには

幸いなことに、サンクコスト効果は確定事項ではなく、回避可能です。次にご紹介する戦略に従って、認知バイアスにとらわれず、論理に基づいた合理的な判断を下しましょう。

サンクコスト効果を知る

サンクコスト効果を知るだけでも、その影響を逃れる大きな一歩になります。つまり、ここまで読んできたあなたは、すでに不合理な決断をする可能性が低いということです。サンクコスト効果がどう作用するか、それを補強する心理学的要素にどんなものがあるかを理解していれば、判断を下す際に、認知バイアスについて気を配るようになるからです。

そのために、次の質問を自分に問いかけるようにしましょう。

  • 自分は何を失うことを恐れているのか?その結果、自分は何をすることをためらっているのか?

  • この状況について、自分は失敗や成功をどう定義しているのか?その成功と失敗の定義は理にかなっているか?

  • 自分の試みが成功する実際の可能性はどれくらいか?

  • 誰か別の人がこれに投資すると決めたら、自分はどうするか?友人が自分と同じ状況にいたら、どんなアドバイスをするか?

  • 恐れているのは、無駄にしたと思うことや、他人にそう思われることか?その懸念は合理的か?

データに基づく決断をする

サンクコスト効果は理にかなった判断を覆すものです。つまり、この思考の罠に対抗するには、意思決定プロセスを支えるデータを集め、論理を判断材料として復活させるのが最も有効な手段です。

ここでは、実際のデータに基づく判断をする方法をいくつか挙げてみます。

投資する前に目標を設定する

新しいプロジェクトにリソースを投資する前に、達成したい具体的な成功指標を設定します。前もって測定可能な目標を決めることで、目指すターゲットが明確になり、成功を測る手段も手に入ります。つまり、プロジェクトの目標に到達しない場合、方法を調整するか、そのまま継続するかについて、データに基づく判断ができるのです。

効果的な目標を設定するフレームワークは、目標と主要な結果 (OKR)SMART な目標など、いくつかあります。どの手法も、具体的で測定可能な目標を設定し、プロジェクトの成功を測定する明確な指標を持つという共通点があります。

たとえば、有料広告によって製品の登録者数を増やすプロジェクトに取り組むとします。目標は 6 か月間で登録者数 30% 増です。ところが 6 か月後、登録者数の増加率は 10% にとどまり、広告費の方が新規登録によって得た収益を上回っていました。この場合、具体的な目標をあらかじめ設定しているため、それがプロジェクトを中止するべき確固としたエビデンスとなります。その結果、サンクコスト効果に引きずられて広告に投資を続けることなく、新しい方法を試すことができます。

重要業績評価指標 (KPI) を追跡する

重要業績評価指標は、目標達成に向けたプロジェクト、チーム、組織のパフォーマンスを定量的に判断する指標です。プロジェクトの開始前に KPI を設定しておくと、成功を測定する具体的な手段があるため、プロジェクトを中断するか、継続するかの判断を迫られた際に、判断材料のデータが手元にあることになります。これによって、過去にどれだけ投資したかではなく、プロジェクトの現在の業績を基に判断を下すことができます。新製品のパフォーマンスを測定するには、顧客の解約率、顧客満足度、有料会員の合計数などを KPI として追跡するとよいでしょう。

記事: ビギナーズガイド: データに基づいた意思決定

意思決定マトリクスを作成する

意思決定マトリクスとは、さまざまな選択肢の中から最善の選択をするために役立つツールです。最終的な判断に影響する複数の要素をもつ、似通った選択肢を比較する際に特に有効です。たとえば、会社の人事管理ツールを選ぶ際に、意思決定マトリクスを使って、現在使用中のものとそれに代わる 2 種類の新しい候補とを比較します。それぞれのツールについて、費用、顧客サービス、顧客レビューという 3 つの要素を考慮し、各要素の点数と設定した重みに基づいてスコアをつけます。

この例では、意思決定マトリクスを作成することで、実際のコストと各選択肢のメリットを比較できるため、サンクコスト効果に引きずられて、時間やお金を投資してきた選択肢を選んでしまうことがありません。

戦略を見直す頻度を決める

サンクコスト効果は、特に定期的にプロジェクトの進捗を確認していないと、気づきにくいものです。その手法が有効かどうかを検証しなければ、失敗のプロジェクトを何か月も、場合によっては何年も続けてしまいかねません。そこで、定期的な進捗レポートと進捗確認のチェックインを設定してプロジェクトの戦略を見直すようにすれば、忘れずにプロジェクトの成功について再評価を行えます。進捗を確認するたびに、今の方法で続けるか、変更を加えるか、方針を転換するかの判断が必要になります。

プロジェクトのために目標や KPI を設定してあれば、現在の戦略が有効かどうかを判断できます。そこで、設定した目標をそのまま忘れてしまわないように、定期的な進捗チェックと状況アップデートのスケジュールを立てましょう。プロジェクトのタイムラインに応じて、週の終わりや月末、四半期末などに設定するとよいでしょう。

このプロセスをスムーズに運用するには、プロジェクト管理ツールの使用が有効です。たとえば、Asana で目標を作成すれば、期日のほか、目標の進捗を更新するための自動リマインダーを設定できます。さらに、進捗の内容を関係者に簡単に共有できるため、全員が現状を把握し、認識を揃えられます。

Asana で目標を設定し、達成する

沈む船から脱出しましょう

プロジェクトにコストをかけたからといって、沈みそうな船と運命を共にすることはありません。ここで紹介した戦略を活用し、過去を手放して、あなたとチームにとって最善な決断を下しましょう。サンクコスト効果の影響下では、自分自身が最大の敵となってしまいます。しかし自己の内面を振り返ることによって、あなたはチームの成功を導くキーパーソンになれるのです。

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