たとえば、年に一度の社員旅行に向けて準備しているところを想像してみてください。ゲームやチーム作りのアクティビティでチームメンバーの絆が深まるのが待ち遠しいことでしょう。イベントは明日から始まりますが、あなたはイベントがスムーズに進行するように週末の旅程を細かく計画しておきたいと考えました。
アクティビティの大半は屋外で行われる予定でしたが、当日突然の雷雨に襲われ、あなたはパニックに。イベントの計画に集中してしまったために、悪天候時の代替案については考えていなかったのです。直前に内容を変更していては、多額の損失になってしまいます。
この例からわかる教訓とは、優れたリーダーになるためには、前向きな性格や確かなコミュニケーションスキルだけでは不十分だということです。万が一の場合にも備えて計画を立てる方法を知っていれば、チームとの信頼関係を築き、心構えを示すことができます。
危機管理 (クライシスマネジメント、crisis management) は、ビジネス計画においてとても重要な要素です。危機管理がなければ、予期せぬ事態が発生したときにチームが準備できません。このガイドでは、危機管理とは何か、そして困難な時期に備えて会社を準備する方法について説明します。
危機管理は、危機が発生した場合の企業の対応方法の概要を示すものです。この計画では、誰が行動を起こし、その役割分担がどうなるかを明確にする必要があります。危機管理計画における目標は、被害を最小限に抑え、可能な限り早く事業を復旧させることです。
危機管理計画は、チームが必要な時に参照して頻繁に更新できる、いわば生きた文書、マニュアルです。計画の概要説明にはさまざまな方法がありますが、一般的な危機管理計画はチェックリスト式で作成されることが多いです。危機が発生した際に、チームはその危機に対応するためにどのような項目を実行する必要があるのかチェックすることができます。
どのような危機がいつ発生するかを前もって知る方法はありませんが、リスク分析を行うことにより、企業が直面する可能性のある潜在的な脅威について、大体の予想を立てることができます。
たとえば、SNS マーケティング企業は公的謝罪を必要とする組織的な事故リスクが高く、一方でテック企業はサイバー攻撃のリスクが高いかもしれません。どんな業界に所属しているか考えることは、潜在的危機の特定や、危機に対処する方法を見つけるのにも役立ちます。
記事: リスクマネジメントの基本と 6 つのステップを徹底解説クライシスマネジメント、リスクマネジメント、BCP (事業継続計画) は混同されがちですが、対象とするタイミングと目的が異なります。リスクマネジメントは危機の発生前に、想定できるリスクを洗い出して予防・軽減する取り組みです。一方クライシスマネジメントは、想定外の危機が実際に起きた後に、被害を最小限に抑え、二次被害を防ぎ、早期復旧を図る取り組みを指します。
BCP は、災害やシステム障害などで通常業務が止まった際に、中核事業を継続または早期復旧させるための行動計画です。事業継続という一点に焦点を絞っているため、BCP はクライシスマネジメントの一部と位置づけられます。
項目 | 対象のタイミング | 主な目的 |
リスクマネジメント | 危機の発生前 | 想定できるリスクの予防と軽減 |
クライシスマネジメント | 危機の発生後 | 被害の最小化と早期復旧、二次被害の防止 |
BCP (事業継続計画) | 危機の発生後 | 中核事業の継続と早期復旧 |
3 つは対立する概念ではなく、補い合う関係です。発生前の備えをリスクマネジメントで固め、発生後の対応をクライシスマネジメントとBCPで担うことで、組織はあらゆる局面に一貫して対応できます。
危機管理計画は、災害や予期せぬ事態に備えて組織を備えておくためのものです。計画を立てることにより、危機が社員や会社の業務に与える影響を軽減できます。予期せぬ事態に備えてチームが適切な訓練を受けていれば、長期的な被害を受ける可能性も低くなります。
あなたが組織のリーダーである場合、他の上級管理職のメンバー、トップ層と協力して、チームに適切な緊急時の管理戦略を考え出す必要があります。最初はどこから始めればよいかわからないかもしれませんが、プロジェクト計画ソフトウェアは、この未知の領域での計画の決定に役立ちます。
しっかりとした危機管理計画があれば、災害時の適切な対応や災害発生後の企業の復興に役立ちます。
危機管理計画テンプレートを作成記事: チームを問題解決の達人に変える問題解決戦略とは危機管理計画を効率的かつ効果的に作成するためには、これをより小さく、より達成可能なステップに分割します。そうすることで、潜在的な危機全体に圧倒されることなく、可能性のあるリスクを特定できます。危機管理計画を作成する際には、以下の 6 つのステップから成る危機管理テンプレートを使用するのがおすすめです。
危機管理計画への最初の一歩を踏み出す前に、危機管理計画のプロセスに協力するチームを選択しましょう。このチームには、危機が発生した際に行動を起こすメンバーを含めます。危機管理計画の最初の段階でこのチームを編成して、危機戦略の詳細を全員が理解できるようにしましょう。
危機管理プロセスを開始するには、会社が直面する可能性のあるさまざまなリスクを評価するために、ブレーンストーミングを行います。前述のとおり、まずは自分の業種に関連するリスクを調べることで、ブレーンストーミングセッションを開始できます。
リスク登録簿を使用して、リスクが発生する可能性を特定して分析しましょう。リスク登録簿を使用することにより、進捗の遅れをなくし、起こりうる障害に備えることができます。また、これによりどのようなリスクが発生する可能性が高いのかを可視化できるので、これらのリスクへの対応を計画するのにも役立ちます。
リスク登録簿テンプレートを作成自社に影響を及ぼす可能性の高いリスクを特定したら、危機管理チームの助けを借りて、これらのリスクのビジネスへのインパクト (影響) を判断します。リスクごとに異なる結果が生じる可能性があるため、これらのリスクを個別に分析することが重要です。潜在的なビジネスへの影響としては、顧客離れ、評判の低下、売上の遅延、収益の減少、または規制違反による罰金などが考えられます。
次に、特定した各リスクについて、脅威が発生した場合にチームが対応するために実行する必要のあるアクションを決定します。たとえば、ソフトウェア関連の企業で仕事をしていて、会社でサイバー攻撃が発生した場合、ネットワークのセキュリティを確保する人、顧客にそのニュースを知らせる人、被害評価を行う人などが必要になります。
自社が直面する可能性のある脅威、ビジネスへの影響や対応方法などを口頭で理解できたら、次に計画を固めます。危機管理計画は、書面や口頭による戦略だけではありません。危機管理計画には、始動ルールや緊急連絡先など、この後に詳しく説明する重要な項目を含める必要があります。また、主要関係者と協力して、誰が何をいつ行うべきかを理解できるようにしなければなりません。
危機管理計画が完成したら、最終的な成果物を見直し、ギャップがないことを再確認しましょう。潜在的なリスクは時間の経過とともに変化するため、最低でも年に 1 度は危機管理計画の見直しと更新を行うようにします。
Asana でプロジェクトを計画する危機管理計画には、次のような項目を含める必要があります。危機管理計画を作成する際には、このチェックリストを使用して、重要な詳細を見逃していないかを確認してください。
リスク分析では、自社が直面する可能性のあるリスクを具体的に示し、発生する確率の高い順に並べます。緊急時の対応計画に危機管理計画を盛り込むことにより、担当者が変わっても新しい担当者がその情報を参照できるため便利です。
始動ルールは、危機が発生した場合にいつアクションをとるべきかを決定します。始動ルールがあれば、チームメンバーは危機が一定レベルのビジネスインパクトに達するまで行動を控えるという判断をとることができます。そしてそのビジネスインパクトが発生した時点で、危機管理チームは対応を開始できます。
外部からの援助を必要とする危機への対応プロセスを高速化するために、主な緊急連絡先を記載しておきましょう。緊急連絡先のリストには、その地域の警察、病院の救急隊員、消防署のほか、配管サービス、電気技術者、毒物管理業者など、分析で特定したリスクに関連するその他のあらゆるサービスが考えられます。
始動ルールは、危機対応チームが危機に対応するタイミングを具体的に定義するものですが、対応手順は、危機が発生した際の各メンバーの行動計画を概説するものです。危機対応計画の中での意思決定の位置付けを明確にするために、RACI チャート (RACI 図) として知られる役割と責任のマトリクスを使用しましょう。RACI チャートは、たとえば誰が一般市民や従業員とのコミュニケーションを担当するかを対応チームが判断する際に役立ちます。
危機が発生した際、社内業務だけが影響を受けるとは限りません。危機がある程度広がってしまった後は、外部の主要関係者や一般市民に状況を説明する必要があります。社外に対する危機コミュニケーション戦略には、誰が情報を伝え、誰がフィードバックを処理するかについての詳細を含める必要があります。
事後の危機評価では、チームでフォローアップを行い、うまくいったこと、いかなかったことを評価します。次に、学んだ教訓に基づいて危機管理計画を更新することにより、対応手順を改善し、ビジネスへのインパクトを軽減できます。
記事: 戦略プランニングは初めてですか?ここから始めましょう。すべての危機を予測することは不可能ですが、危機の種類をカテゴリ別に概括し、発生する可能性のあることに基づいた計画を立てることはできます。危機管理の例としては、以下のようなものがあります。
財務上の損失: 会社が財務上の損失を被った際には、破産を発表したり、社員を解雇したりする必要があるかもしれません。財務危機の根本的な原因は想像できなくても、こういった状況に備えて事前に計画を立てることはできます。
技術的障害: 技術的な問題による事故が発生すると、顧客は長期間サービスにアクセスできなくなる可能性があります。このタイプの危機は企業の評判や収益に悪影響を与えるため、事前に備えておくことが重要です。
自然災害: 自然災害の中には、企業の所在地に応じて備えておけるものもあります。たとえば、会社がアメリカの南東部に所在する場合はハリケーンに備えて、避難、顧客とのコミュニケーションや災害復旧などを含む危機管理計画を作成できます。
業務上の変更: 他と比べると危機のようには聞こえないかもしれませんが、予期せぬ経営陣の異動などに備えて計画を立てることも重要です。また、多くの社員を解雇する必要がある場合、運用プロセスに影響したり、一般の人々に通知する必要がある場合があります。
組織の不祥事: 企業が不正行為や犯罪で告発される可能性は常にあり、この危機的状況においては、その対応方法についての計画が必要となります。この危機計画の内容としては、公的な謝罪の方法や、危機から回復する方法などが考えられます。
危機管理計画を実際に機能させるには、情報を一元管理し、全員がいつでも参照・更新できる状態を保つことが欠かせません。ここでは、ワークマネジメントツールで業務プロセスを一元化し、統制とセキュリティを両立した日本企業の事例を紹介します。
ホーユーは、複数プロジェクトに紐づく細かなタスクの情報を一元管理する必要に迫られていました。同社はワークマネジメントツールを比較・評価し、セキュリティ要件を満たす形で導入しました。その結果、メールやチャット、口頭による調整の手間を削減できました。危機管理計画も一元化しておけば、担当者が変わっても最新の内容を全員が参照できます。詳しくはホーユーの導入事例をご覧ください。
キャンサースキャンは、ISO や P マークを取得してセキュリティを強化しました。同時に、IT ツールの活用とプロセスの見直しを進めました。経営会議のアジェンダや OKR も一元的に管理し、責任者と期日を明確にしています。危機管理計画の準備段階でも、こうした統制と責任の明確化が復旧の速さを左右します。詳しくはキャンサースキャンの導入事例をご覧ください。
同様に SmartHR の導入事例でも、複数プロジェクトをまたぐタスクを一元管理し、放置されがちな業務の抜け漏れを防いでいます。
危機管理とは何か、その作成方法や構成要素をまとめました。昨今の新型コロナウイルス感染症の流行に見られるように、予測不能の事態は突然やってきます。突然の変化にも対処できるよう、危機管理対策をとっておきましょう。
危機管理計画は、適切なツールが手元にあれば簡単に作成できます。プロジェクト計画機能を使って、他のプロジェクトと同じように、チームの役割や、始動ルール、対応手順などのアクションプランを立てましょう。危機管理計画を理解しやすく、社内の全員がアクセスできるようにすることにより、準備態勢が整い、危機発生時の復旧に役立ちます。
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