2030年問題とは ー 日本社会における背景

土橋 雪乃
2025年9月1日
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2030年問題
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概要

2030年問題とは、少子高齢化に伴う人口減少により、2030年までに直面する社会的な問題を総称したものです。また社会保障制度に影響が及ぶことを問題視した総称でもあります。

総称を定めることで、政府や企業が不明確なまま進行してしまうことへ警告できます。言い換えれば、今から具体的な対策を立てられれば、企業として明確な成果へと繋げるチャンスが残されているという考えです。

総務省の推計では、2004年 12月をピークに日本の人口は減少傾向にあります。結果として生産年齢人口が減ることにより、労働力不足、人件費高騰、企業規模の縮小、GDP の低下など、様々な問題に直面している企業も多いです。

また内閣府の予測では、2030年には総人口の 30.8% が高齢者、約 58.9% が生産年齢人口となる推測です。すなわち 2 人の社員で 3 人分の業務を担う時代が目前にあります。

2030年問題の放置は、悪循環を生むこととなります。

表面的な問題 - 利益や市場の縮小など

内面的な問題 - 社員たちのモチベーションの低下や、業務の質の悪化など

以下では、2030年問題で起きる影響や対策、成功事例などについて徹底解説します。

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企業に与える影響

吹き出しの画像

2030年問題を放置した場合、以下の 5 つの問題が起きます。

  • 人材不足

  • 市場の縮小

  • 人材獲得競争の激化

  • 技術や技能の継承が困難

  • 外国企業への依存

以下で詳しく説明します。

人材不足 

人材不足が起きると、企業規模の縮小を食い止めることが難しくなります。AI などのデジタル技術を用いて、人材不足を解消していくことも可能です。

人材不足により、起きること:

  • 生産性が低下し、利益が減る

  • 利益を取り戻すための人材が足りないため、シェアを拡大できない

  • 業務量だけが増えるため、既存社員の不満が増加する

  • 業務量だけが増えるため、既存社員の残業が問題になる可能性が高い

市場の縮小

市場が縮小すると、同じ製品を同じ市場で販売しつづけても、利益が拡大しづらくなります。

利益拡大を維持するするために厚利少売に変換する、もしくは激化する競争の中で薄利多売を拡大するなど、製品になんらかの変化を加える必要が出てきます。

市場の縮小により、起きること:

  • 人口の縮小により、消費者が減り、売り上げが伸びなくなる

  • 高齢社会により、顧客層が変化し、既存の製品が売れなくなる

  • 市場構造そのものが変化し、売り方や売る先を変更する必要が出てくる

  • 同じ方法を考える企業が続出し、競争が激化する

人材獲得競争の激化

2人で一緒に作業

人材不足に加え、新たな取り組みを実施する必要性などにより、どこの企業も優秀な人材を欲しがるようになります。

しかし、多くの企業が同様の戦略を考えると、優秀な人は充実した福利厚生や待遇を受けられる企業へと流れていきます。優秀な人材を確保するための環境や、現社員で事業を周す仕組みづくりが必要です。

人材獲得競争が激化することにより、起きること:

  • 給与を上げないと人手を得られなくなる

  • 既存社員たちも業務が増えたことによる不満から、より好条件な他社へ流出する可能性がある

  • 売り上げを拡大することが難しい状況のため、社員の収入を捻出することが困難となる

技術や技能の継承が困難

ベテラン社員の退職により、若手に技術やノウハウを伝えられる人材が失われます。解決策として、技術を用いて伝達を可能にする必要が出てくるでしょう。

技術や技能の継承が困難になることにより、起きること:

  • 後継者が育たないことで製品の品質が悪化し、顧客満足度が低下する

  • 顧客離れを起こし、経営に直接打撃を受ける可能性がある

  • 若手が技術やノウハウを身につけるための時間やコストがよりかかる

外国企業への依存

社内人材が不足し、社内で賄えなくなったときに外国企業への業務の委託 を考える人もいます。

しかし、これは様々なリスクを孕みます。解決策としては、社内の体制を変更し、外国企業に頼らなくても維持できることが重要です。

外国企業へ依存することにより、起きること:

  • 社内の技術や経営ノウハウが外部に流出するリスクが高まる

  • 製品やサービスの価格や品質がその国の政策や為替、国際情勢に大きく依存する

  • 社内での意思決定権を維持できなくなる

  • 長期的には国内産業が衰退する可能性が高い

深刻化が予想される業界

データ用紙

2030年問題による人材不足は多くの業界で影響を与えますが、特に次の 6 業界が影響を受けると言われています。

  • 教育業界

  • 医療および介護業界

  • 不動産および建設業界

  • 航空業界

  • テックおよび IT 業界

  • 農業業界

どのような影響を受けるのか、以下でご紹介します。

教育業界

教員の長時間労働は既に社会問題となっていますが、更なる高齢化社会を生きていく現在の子供達を育てることは、今後の日本社会においてとても重要です。

しかし新しい教育をするには、様々な壁があります。教員達への負担を減らしつつも、子供たちが自らの力で人生を切り開けるような、新しい教育も必要です。

深刻化する問題 :

  • 教員の長時間労働がメンタルヘルスの悪化をより引き起こす

  • 生成 AI や ICT などに不慣れな教員により、子供に十分な新しい教育を与えられない

  • 個人情報の保護や著作権侵害などについても慎重に教える必要がある

  • 子供への教育は慎重になる必要があり、導入までに時間がかかる

医療および介護業界

高齢化が進めば、病院を必要とする患者の数も増えます。それにより医者や看護師など、人材の確保が難しくなる見込みです。

また要介護者は地方で暮らしていることも多く、インフラや施設が老朽化しており、安全性や周囲との繋がりが薄くなります。これらの患者に対応できるかどうかによっても、企業の明暗が分かれるでしょう。

また DX (デジタルトランスフォーメーション) が思うように進まなかった場合、財政を圧迫することとなるため、今までのような保健財政を受けられない可能性が高いです。

病院への利益引き下げなどが起きれば、市場に大きな影響を与えます。テクノロジーを使用した業務の効率化が求められます。

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深刻化する問題 :

  • 労働時間が増加する

  • 多忙により、手をかけられない資料はブラックボックス化する

  • 若手医療者の確保が厳しくなる

  • 企業同士の競争激化する

  • 財政の悪化による、医療への負担が増加する

不動産および建設業界

家のイラスト

不動産および建設業界では、特に地方における建設の老朽化や空き家の増加などが問題視されています。改修するには、大規模な維持管理費や修繕費が伴う一方で、少子化により、暮らす人も減少しています。

また内閣府によると、地方の過疎化により、就職のために都心部へと引っ越す若者も増えており、その変化により都心部での業界の競争が激化している状況です。

企業を守るためには需要構造の変化についていけるような戦略が重要です。

深刻化する問題 :

  • 維持管理費や修繕費など、コストが積み重なる

  • 地方での不動産および建設市場の縮小

  • 都心部での競争激化

  • 事業の縮小を避けるために、更なる営業活動が必要となり、人員が必要となる

航空業界

航空業界はインバウンドでの訪日が増えており、国土交通省は 2023年に約 2,500 万人だった訪日外国人旅行者数を、2030年には 6,000 万人呼び込むことを目標としています。

しかし、その需要についていけないほど、航空業界でも高齢化が起きています。2023年 1月時点では、55 歳 のパイロットが最も多く、2030年にはこれらのパイロットは 62 歳となります。

外国人旅行者数を考えると、7 年の間でパイロットの数も 2 倍以上必要です。一方で、現実では 2 倍どころか現時点の数字を維持しつづけることも厳しいです。

パイロットの年齢別数データは以下のとおりです。

年齢

パイロット数 (2023年 1月時点 ) 

51 歳 - 55 歳

1,250 名以上

45 歳 - 50 歳

750 名以下

40 歳 - 45 歳 

750 名以下

深刻化する問題:

  • ベテランが減ることで、 新人教育の機会が減少

  • 新人教育の機会が減ることによる訓練コストの増加

  • 待遇格差による外資系航空会社への人材流出

  •  LCC 市場での競争激化

テックおよび IT業界

少子高齢化が進むにつれて生成 AI を始めとした技術を用いて、人材不足を解消する動きが見られます。AI や IoT 、ビックデータなどの普及に伴い、IT を取り扱える、もしくはセキュリティを理解している企業の需要が増加していく見通しです。

一方で、その需要に対する供給が追いつかないと想定されています。DX に対するノウハウを持つ人が少なく、どのような人材を確保すればいいのか不透明だからです。

またIPAのデータによると、実際に 2022年度では 1,001 名以上の大手企業でも、54.9% 以上の人が量的にも質的にも DX を推進する人材が大幅に不足していると答えています。

深刻化する問題 :

  • 需要が追いつく前に、業界の人材不足による影響が顕著になる可能性がある

  • DX を推進するにあたる、知識や情報が不足

  • 若手人材の獲得競争が激化

  • 外資系企業にシェアを取られる可能性がある

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農業業界

農業は地方で行われることが多いですが、若者が都心部へ移住することで、地方の過疎化や人手不足、農業に携わる人達の高齢化が目立っています。地方創生や技術を用いた改革などが必要となるでしょう。

深刻化する問題 :

  • 農業における人材不足により、食料自給率が低下

  • 国内食材の物価高により、輸入依存が高まる

  • 地方の施設、機械の老朽化により、生産性が抑えられる

詳しくは「日本の農業の課題とは?現状と解決へのアプローチ」をご覧ください

企業が取るべき具体策

バトンを渡す

企業が 2030年問題に対して取れる対策は DX 化を推進し、より働きやすい環境を構築していくことです。

そうすることにより、①人材を確保しやすくなる、もしくは②社内にいる人間だけで業務を周せる環境作りができるようになります。

しかし DX 化と働きやすい環境の構築は簡単な話ではありません。以下では目標を実現するために、 IPA のデータを参考に、実施できる 5 つのステップについて説明しています。

DX 推進のための人材配置

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するとき、ただ「推進する」だけでは実際に何をすればいいのか悩むでしょう。

今後どのように行なっていくのか目標を作成し、その目標に沿って人材を配置しなおすことで、社員も目的が明確になります。

例えば、書類作成をすべてオンラインで行うことから始めるのであれば、効率化ツールを渡すだけではなく、実際に使用してもらうための勉強会が必要でしょう。

勉強会を開くための人員、そして通常の業務が滞らないように手配できる人員などが必要です。しかし、 DX 推進が完了すれば、今まで 2 人で実施していた作業も 1 人で行えるようになる可能性が高くなります。

そうなると、 DX 推進中、推進後、それぞれの知識やスキルが役立つような人材配置を事前に考えることが大切です。

AI やテック技術を学ぶ機会の設置

DX 推進にあたって、一人一人に教えるのは骨がいる作業です。そこで自発的に学べるような機会を設置することで、各自で自己スキルを高めてもらうことができます。

生成 AI の面白い使い方やオンラインツールで業務効率化を図る方法など、実践的な講座から、 DX 推進を行うことで起こりえる影響や結果など、効果的な導入方法までを学べると、会社全体での業務促進に繋がるでしょう。

AI 活用ガイド: ゼロから構築する変革戦略

AI 導入の課題を克服し、責任をもって倫理的に AI ツールを活用しましょう。イノベーションの文化を築く方法をこのガイドでご紹介します。

AI 活用ガイド

業務効率化のための業務見直し

新しいことに反対はつきものです。生成 AI やオンラインツールを導入したはいいものの、今までの方法を使用しつづける人が出てくるかもしれません。

使用が複雑に感じたのか、それとも効率化する部分を間違えたのか、など。なぜそう感じたのかを社員にヒアリングしながら形を変えていくことで、実際に DX 推進へと繋げられます。

多様な労働力の実現

正社員や契約社員、アルバイトなど、多様な人材の雇用だけではなく、多様な働き方の導入や、現在ある働き方の見直しを行うことで、激化する人材確保から逃れることができます。

例えば、フリーランスを導入すれば、プロジェクトごとに助けを得られます。また、外国人社員を雇用することで異なる言語の市場へと参入することが可能です。

フレックスタイム制やリモートワーク、時短勤務などを取り入れれば、育児や子育て、もしくはその他の理由で外出が難しい層にもアプローチすることが可能です。

副業を可能にすれば、社員の能力アップにも繋がり、スキルを実業務に反映してもらうこともできます。また収入を増加できるという点で、満足度もアップするでしょう。

人口の多いシニア人材を活用すれば、彼らの高い結晶性知能を業務で活かすことができます。

従業員満足度の改善

従業員満足度は、社員や今後の人材確保を左右します。働き方改革を推進して、社員の職場環境を改善すれば、応募してくる人材にとって魅力的な企業になります。

人材不足に悩まされている部署やチームにもアプローチすることで、業務効率化に繋がるだけでなく、社員たちの離職率も低下するでしょう。スキルアップするような機会を設けることで、個々で自分たちを高めることにも繋がります。

企業の成功事例

ひらめき電球

DX 推進は、簡単なことではありませんが、実際に成功している企業もあります。以下では 3 社の DX 推進の成功事例について紹介しています。

日本航空 (JAL) : 整備士の技術継承を実現

日本航空は、「航空機エンジン内部検査ツール」を開発したことによって、従来はベテラン整備士が見抜いてきたような「異常兆候の見分け方」や「注意すべき部位」を、若手でも見分けられるようになりました。

過去事例データも AI によって蓄積されているため、過去事例を教育資料としても活用できます。

そのため、人材育成が行えるベテラン整備士の数が縮小しても、若手に対して同等に技術やノウハウを届けることが可能になりました。

三菱地所 : IT インフラ構築や DX で業務効率化を図る

三菱地所ではプロジェクトにおけるさまざまな業務をデジタル化することで業務効率化を図っています。

例えば、請求書の電子化や営業情報収集の自動化などによって作業にかかる時間を短縮しました。さらにはゼロトラストを導入することで、テレワークや外部接続が増えても安全に働けるような環境を整備しました。

第一三共 : DX による組織基盤の強化

第一三共では、会社全体で AI 導入を行っています。例えば、 RPA (Robotic Process Automation) をはじめとした自動化テクノロジーを活用しました。

RPA は業務プロセスの見える化に役立ち、さらには業務を一部ロボットに委託することにより、社員がより創造的な業務に取り組めるようになっています。

また社内の機密情報とプライバシーを保護するために独自の生成 AI を開発。独自の生成 AI を用いることで、技術がなくても自分でアプリをカスタマイズすることが可能となっています。結果的にアウトプットの量や品質向上に貢献しました。

画像 AI 技術では、中量合成装置の液体の量や分離面を AI がリアルタイムで認識することで、スピードアップや人件費削除、そしてヒューマンエラーの減少などに役立っています。

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まとめ : 2030年問題の企業への影響を理解しておこう

2030年には、 2 人の社員で 3 人分の業務を回す時代が来ます。企業においては人材確保が困難になるだけではなく、利益の縮小にも繋がる恐れがあります。

より幅広い労働のあり方を見直したり、DX を推進したりと、業務効率化や優れた人材の確保に努めることが必要です。

2040年、 2050年と、 2030年以降も少子高齢化は続く見込みです。企業としても早急に対策を立てることから始めましょう。

よくある質問

以下では 2030年問題に取り組む際に、事前に知っておくと安心できる情報を質問形式で答えています。

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