CSR とは何か?メリットや活動事例、サステナビリティとの違いを解説

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2024年6月28日
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概要

企業が社会貢献へ取り組む CSR。この記事では、CSR とは何か、その意味とサステナビリティやボランティア活動との違いを解説します。メリットや実施する際の注意点を把握して、積極的な CSR を推進しましょう。また、日本企業が実際に行っている具体的な CSR の例も紹介するので、参考にしてみてください。

更新: この記事は、CSR と CSV の違い、アメリカとヨーロッパにおける CSR に関する記述を含めて 2024年 6月に改訂されました。

CSR という用語を知っていますか?東洋経済新報社が毎年行っている『CSR 企業ランキング』で耳にしたことがある人も多いかもしれません。企業が会社の利益獲得とは別に行う環境活動、寄付活動、社会貢献活動などが含まれる CSR。この記事では、CSR の定義とそのメリット、実施するときの注意点を紹介します。具体的な事例を参考に、積極的な CSR を進めましょう。

CSR とは

CSR とは Corporate Social Responsibility の頭文字を取った略語で、日本語では「企業の社会的責任」と呼ばれます。簡単に言ってしまえば、企業も社会の一員として、消費者をはじめとするステークホルダーのニーズに応える義務があるとする考え方です。

CSR は日本独自のものではなく、ISO (国際標準化機構) が 2010年に正式なガイドラインとして国際規格 ISO26000 を発行しています。この規格には、7 つの原則と 7 つの中核主題が掲げられており、企業などのすべての組織が取り組む義務があるとしています。

CSR は企業の義務なので、ウェブサイトなどに CSR 活動のコンテンツページを設け、積極的に発信していくことが求められます。

CSR 7 つの原則

以下 7 つの原則は、CSR の基本的概念です。

  • 説明責任: 企業活動が社会に与える影響について十分に説明する

  • 透明性: 企業活動や意思決定に関する透明性を保つ

  • 倫理的な行動: 高い倫理基準に基づいて行動する

  • ステークホルダーの利害の尊重: ステークホルダーの利益や意見を尊重し、配慮する

  • 法の支配の尊重: 事業活動を行う国・地域の法令を遵守する

  • 国際行動規範の尊重: 国際行動規範およびガイドラインを遵守する

  • 人権の尊重: 普遍的である人権を尊重する

CSR 7 つの中核主題

以下に示す 7 つの中核主題は、具体的な CSR 活動の枠組みとして考えます。

  • 企業統治: 内部統制の強化、利益相反の防止、公正な意思決定

  • 人権: サプライチェーン全体での児童労働の禁止、ダイバーシティの推進、差別の排除

  • 労働慣行: ワークライフバランスの推進、労働環境の改善

  • 環境: 再生可能エネルギーの利用、省エネ、二酸化炭素の削減

  • 公正な事業慣行: 反腐敗対策、コンプライアンスの尊重、公正な競争

  • 消費者課題: 消費者のプライバシー保護、品質管理や製品安全

  • コミュニティへの参画: 地域社会支援、地元企業との連携、ボランティア活動

企業は利益の追求だけ行うのではなく、社会の一員、つまり市民として、人権の尊重や環境への配慮、地域社会への貢献、適正な雇用と労働条件の設定、消費者に対する適切な対応などを行わなければなりません。現在 CSR は世界中の企業のスタンダードとして認識されています。

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CSR と似た用語とその違い

CSR とサステナビリティの違い

CSR と並んで昨今よく聞かれる用語が「サステナビリティ (sustainability)」です。持続可能性を意味するサステナビリティは環境保護活動分野でよく使われ、環境と社会、経済のバランスを考慮しながら、社会全体を持続可能な状態にしていくことを意味します。2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標 (SDGs)」との関わりが深いことでも知られています。 

この用語は企業活動分野においても使用され、その場合は「企業は利益を上げるだけでなく社会的責任も果たさなければならず、そうすることで将来的にも事業を持続できる可能性を保ち続ける」という意味を持ちます。CSR とサステナビリティは混同されがちですが、企業のサステナビリティのために必要な事業活動が CSR 活動であると考えられるでしょう。

CSR と CSV の違い

CSV は Creating Shared Value の頭文字を取ったビジネス用語で、「共有価値の創造」を意味します。これは企業活動を通じて、経済的価値と社会的価値を同時に創造することを目指す経営概念です。CSR と CSV はどちらも社会課題を解決していくという点では同じですが、その焦点と目的に違いがあります。CSV は経済的価値、つまり企業の利益を獲得していくことに焦点を置いている一方、CSR はあくまで企業が社会の一員としてその責任を果たしていくという考えで、利益には焦点を当てていません。

CSR とボランティア活動の違い

CSR とボランティア活動は、活動内容に焦点を当てると似ているところがあるかもしれませんが、両者には明確な違いがあります。CSR の目的は、企業価値の向上です。投資家などの利害関係者、または世の中全般に対して自社の信頼度や価値を上げるために行われるのが CSR 活動である一方、ボランティア活動は無償で行われる慈善活動です。どんなにボランティア性の目立つ活動だったとしても、一企業が行う CSR 活動はイメージ戦略とする考え方ができるわけです。

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日本における CSR の普及

組織と地域社会は相互依存の関係にあり、地域社会が不安定では、そこに依存する組織の発展はあり得ません。そういった意味で、企業などの組織は目先の利益ばかりを追うのではなく、地域社会に貢献する必要があるとするのが CSR の基本的考え方とされます。

日本でこの CSR が急速に普及したのは、食品成分表示の偽装や産地偽装、”ブラック” と呼ばれる過酷な労働環境などの不祥事が次々と発覚したことが原因でした。こういった情報は Twitter やインスタグラムなどの SNS を通じて瞬時に拡散。利益のみを追求した結果、企業はネガティブなイメージを背負うことになったのです。昨今、消費者が「社会の一員としての企業」に向ける目は厳しく、そういった意味で CSR の徹底は、企業の信頼性を確保するためにも必要不可欠の要素と言えるでしょう。

アメリカやヨーロッパでの CSR

CSR 活動が進むアメリカでは、1990年代後半にはすでに CSR への取り組みが見受けられるようになりました。2000年代に入ると、企業活動のグローバル化に伴い、発展途上国での雇用状況などで問題が発生。それをきっかけに、CSR に関する法整備も加速しました。近年では、環境問題や DEI (ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン) への対応が重要視されています。

一方、ヨーロッパにおける CSR は EU の指導方針に基づいています。各国にそれぞれ CSR に関する方針が存在しますが、加盟国の足並みは揃っており、政索と連携した取り組みが特徴です。


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CSR のメリット

では具体的に、CSR (企業の社会的責任) にはどのようなメリットが企業側にもたらされるのでしょうか。メリットをまとめます。

企業価値、企業イメージの向上

まず第一に挙げられるのが「企業のイメージアップ」です。環境問題への配慮などの CSR 活動は、商品やサービスへの安全性と安心、信頼を内外的にアピールすることにつながるので、結果的に企業のブランドイメージが向上するのです。実際、東京商工会議所が 2005年に行った『企業の社会的責任 (CSR) についてのアンケート調査』では、中小企業のおよそ 80%、大企業の 98% が CSR のメリットとして「企業イメージの向上」と答えています。

事業の付加価値を把握できる「バリューチェーン」という考え方についての記事『バリューチェーンとは?分析して競合他社との差別化を図る』もご覧ください。

利害関係者との関係強化

投資家や株主、顧客、取引先などのステークホルダーとの良好な関係は、ビジネスを円滑に運営するために必要不可欠な要素です。CSR 活動によって企業のイメージを向上させることは、こういったステークホルダーの信頼を獲得することにつながります。社会からの信頼を得ることができれば、実際に共に仕事をする販売先や納入先などの利害関係者からの信頼も厚くなり、結果的に関係が強化されていくのです。

従業員満足度の向上

その会社で働く従業員もまた、利害関係者の一部です。従業員満足度 (ES, Employee Satisfaction) は、パフォーマンスおよび生産性の向上、人材の定着率アップにもつながる非常に重要な指標です。労働環境に配慮した CSR を行うことで、仕事に対するモチベーションも上がり、働きがい、やりがいを感じながら仕事をすることが可能となります。従業員の満足度が向上することも、CSR 活動の大きなメリットのひとつと言えます。


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コンプライアンス違反の防止

昨今、ますます企業コンプライアンスへの関心が高まっています。コンプライアンスとは、会社の規則や法令、社会倫理を守ることを意味し、「法令遵守」とも呼ばれます。このコンプライアンスを順守することは、企業の義務のひとつであり、就労時間や過度の残業などの労働問題に活発に取り組む CSR は、コンプライアンス違反の防止にも役立つのです。

CSR を実施するときの注意点

多くのメリットがもたらされる CSR ですが、実施する際に注意すべき点にはどのようなポイントが挙げられるのでしょうか?推進するときの参考に、ひとつひとつチェックしていきましょう。

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コスト面の不安

長期的に見て、CSR は多くのメリットをもたらす活動です。しかし実施するにはコストがかかり、通常そこに利益は生まれません。ますます重要性が高まる CSR ですが、コストがかかりすぎて企業経営にまで影響が出てしまっては本末転倒です。自社でできる範囲を見極め、推進するようにしましょう。

記事: コスト管理は初めてですか?ここから始めましょう。

人材リソースの不足

CSR を推進するにあたって大きな壁となり得る要素のひとつが、人材不足です。もともと人手不足は企業にとって頭を抱える要素のひとつですが、そこに CSR という事業とは別の活動をするとなると、リソース不足が発生することは避けられません。この活動自体は利益と直結しないため、新たな人材を雇用するとなると企業にとっては一時的な損失となります。ただ、長期的に見て CSR は必ず有益となる活動なので、人材への投資がどこまで可能かをよく見極めて投資することが必要となります。

記事: プロジェクトを成功させるためのリソース管理完全ガイド

事業内容との不一致

CSR はなんでも闇雲にやればいいというものではありません。企業の事業内容に合致し、企業イメージからかけ離れていない活動を選ぶことが重要です。企業文化に沿っているか?ブランドイメージに合っているか?実施する意義や意味について、よく検討してから実施するようにしましょう。


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【活動事例】CSR はどんな活動?

CSR の活動例には、代表的なものとして以下のような活動があります。

  • 汚水を減らす活動

  • 植林活動などの地球環境に関わる活動

  • 文化や芸術、スポーツ分野などを支援する活動

  • 地域活性のためのイベントや文化財保全運動

  • 従業員の人権保護活動

  • 女性の地位向上に向けた活動

ここからは実際に CSR に取り組む企業の具体例を紹介します。以下の CSR 事例を参考に、今後の取り組みを検討してみましょう。

KDDI

「安全で強靭な情報通信社会の構築」や「多様な人材の育成と働きがいのある労働環境の実現」「エネルギー効率の向上と資源循環の達成」などを自社の CSR 重要課題として挙げている KDDI。特に海外での慈善活動は活発で、モンゴルで光ファイバーネットワークを構築したり、ネパールの小中学校では e ラーニング環境整備、ロボットプログラミング教育などを実施しています。また、コロナ禍での医療物資寄付や社会貢献のための募金受付も行いました。

NTT グループ

NTT グループは、さまざまな面で CSR 活動を活発に行っています。たとえば労働環境面では、有給休暇取得率や介護休暇など、高水準をキープ。雇用面では、障がい者雇用を積極的に実施し、法定雇用率を大きく上回った数値を保っています。また環境面でも、雨水を利用するなどして飲用可能な上水の使用を削減したり、長期的な視点で CO2 排出量の削減に取り組んだりしています。コロナ禍における CSR 活動としては、リモートワークに関連する環境構築サービスを無償で提供するなど、社会貢献を進めています。

富士フイルム

環境、生活、働き方など、さまざまな分野で CSR 活動を行う富士フイルム。中国やベトナムでの植林ボランティアや、弱視者のための拡大教科書製作への支援、有名なところでは「全国高校サッカー」への支援でも知られています。また、自然保護をテーマとする「公益信託富士フイルム・グリーンファンド (FGF)」も設立しており、きれいな水と空気、緑を目指す活動を活発に行っています。

まとめ: 企業の社会的責任を果たし信頼を確保する

CSR とは何か、その定義とサステナビリティやボランティア活動との違い、メリットなどの基礎知識を解説しました。日本の企業が具体的に行っている CSR の事例もあわせて紹介したので、ぜひ今後の参考にしてみてください。企業が社会の一員としての責任を果たし地域社会とのつながりを強固にすることは、短期的には利益が出ずとも長期的には有益な活動となります。CSR (企業の社会的責任) を積極的に実施し、ブランドイメージを高め、利害関係者からの信頼を獲得しましょう。

具体的な CSR を進めるにあたっては、チームメンバーが唯一のツールで情報共有ができるよう、Asana のようなワークマネジメントツールの活用を検討してみてください。部署の壁を超えて効率的で生産的な仕事をサポートするクラウド型ツールの導入は、DX 推進にもつながる効果的手段です。

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