認知的不協和とは?解消法とビジネスにおける活用術を紹介

Yumie Furuta headshot古田 弓恵2022年6月29日
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「認知的不協和」という言葉を聞いたことがありますか?たとえなかったとしても、実は私たちは日常的にこの認知的不協和を体験しており、それによりもやもやを抱えたり不安になったりしています。この記事では、認知的不協和とは何かを解説し、具体例とともにその解消法も紹介します。また、この認知的不協和がビジネスシーンでどのように利用されているのかもまとめますので、今後の参考にしてみてください。

認知的不協和とは?

認知的不協和 (cognitive dissonance) とは、社会心理学における概念のひとつで、矛盾する認知を同時に抱えた状態、またその際に覚える不快感やストレスのことを指します。自分の中に矛盾する複数の情報や気持ちがあると、居心地が悪くなったり不安になったりしませんか?それが、認知的不協和です。私たちは日常的にこの認知的不協和を体験しており、決して珍しくはない心理状態だと言えます。

認知的不協和理論

認知的不協和理論とは、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した理論で、認知的不協和が起こると、人はその不協和を解消もしくは低減させようと行動をとったり、態度を変えたりすると説いたものです。先述のとおり、自分自身の中に矛盾する情報や気持ちがあると、人は不快感や不安を覚えます。それを解消するために、どちらかを正当化したり、つじつまを合わせたりして、その不快感や不安を消そうとするのです。さらにフェスティンガーは、認知の矛盾が大きければ大きいほど、それを解消しようとする力も強くなるとしました。このセオリーはマーケティングをはじめとしたビジネスシーンで広く応用されており、日常のさまざまな場面で垣間見ることができます。

フェスティンガーが行った認知的不協和の実験

A と B、2 つのグループに分けた学生に、フェスティンガーは次の課題を与えました。

  • 単調でつまらない作業を行う

  • 次に同じ作業をする別の学生に、その作業の楽しさについて語る

さらにフェスティンガーは、A グループには高額の報酬を、B グループには低額の報酬を支払いました。

この実験で学生は、「つまらない作業」について「楽しいと語らなければならない」という認知的不協和を体験します。フェスティンガーが得た結果は、B グループのほうが「作業の楽しさ」を強調する度合いが高いというものでした。両グループにも認知的不協和は発生しましたが、報酬は割に合わないのに「作業が楽しかった」と語らなければならない B グループのほうが、不協和を解消しようとする心理が強く働いたわけです。

認知的不協和の例

それでは実際に、認知的不協和の例をいくつか挙げてみましょう。まずは 2 つの認知の意味と矛盾について考えてみてください。また同時に、その不協和を人はどう解消しようとするのかも見ていきます。

タバコ

日常生活において発生する認知的不協和の例として、最もよく知られるのがタバコです。

  • 喫煙者である

  • タバコは体に悪い

このような状況で人は「タバコを吸うとストレス解消になる」「タバコは気分転換のために吸っている」とタバコを吸う行動を正当化したり、もしくは 1 つ目の認知を否定、つまりタバコをやめることで、この認知的不協和を解消します。

酸っぱいブドウ

イソップ童話の中に『酸っぱい葡萄』という有名な話があります。取れなかったブドウはどうせ酸っぱくておいしくないと主人公の狐が決めつける物語ですが、この心理はまさに認知的不協和の例です。

  • ブドウが食べたい

  • ブドウを取れなかった

この矛盾を解消するために、狐は「あのブドウはきっと酸っぱくておいしくない」と認知を修正しました。そうすることで、ブドウを取れなかったという事実を正当化し、不協和を解消しようとしているのです。

甘いレモン

「酸っぱいブドウ」の例の対としてよく挙げられるのが「甘いレモン」です。甘い果物が食べたいのに、手元にはレモンしかない。このような状況のとき、人は次の 2 つの認知的不協和の状態に陥ります。

  • 甘くておいしいフルーツが食べたい

  • レモンしかない

このような 2 つの相反する認知を抱えた場合、「このレモンは甘い」と 2 つ目の認知に修正をかけ、認知的不協和を解消しようとします。

ビジネスと認知的不協和

認知的不協和は日常的に私たちが体験している心理状態ですので、もちろんビジネスシーンでも現れます。それは仕事内容そのものによって生じるケースもあれば、同僚や上司との人間関係に関連して発生する場合もあります。いくつかビジネスシーンで起こりうる認知的不協和の例を挙げてみますので、もし自分だったらどのような解消法を取るのか考えてみましょう。また、もしあなたがチームリーダーだとして、チームメンバーがこのような認知的不協和の状態だったら自分はどのような行動をとるべきかについても考えてみてください。

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「夢の職業」と「楽しくない」の不協和

たとえば、ずっと憧れだった職業に就いたとします。夢にまで見た職業でしたが、実際の業務の中には楽しくないものも多いのが現実です。このような状況で人は、もやもやとしたマイナスの感情を抱えてしまいます。

  • 夢だった職業に就いている

  • 仕事が楽しいと思えない

もやもやとしてしまう原因は、2 つの矛盾する認知が存在するからです。この不協和を解消するために、「どんな仕事も甘くない」と 1 つ目の認知を正当化したり、「楽しくないと感じるのは、その業務の本質を見極められていないからだ (見極められれば、きっと楽しい)」と 2 つ目の認知を修正したりします。

このような不協和を感じるのは、新入社員や転職したばかりの人に多いかもしれません。こういった認知的不協和を抱え、もし「夢だった職業だが、この会社はよくない」と 1 つ目の認知を否定した場合、その従業員は退職を希望する可能性もあります。このようなケースは、上司やリーダーが 1 on 1 ミーティングなどを定期的に行い、従業員とのコミュニケーションを大切にしていれば免れることができるかもしれません。

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「年下」と「自分より早く昇進」の不協和

年下の後輩が自分より早く昇進していく姿を目の当たりにすると、なんとも言えない思いが胸のあたりをくすぶりませんか?その後輩と会話をしなければならないとき、どうしても居心地の悪さを感じてしまいませんか?

  • 年下である

  • 自分よりも早く出世している

「年功序列」という言葉が時代遅れになった昨今ですが、やはりこの例も認知的不協和のひとつです。このようなときは根拠もなしに「後輩は上司に気に入られているから」と思い込んだり、「自分は先のプロジェクトでミスをしてしまったから」などと言い訳をしたりして、この矛盾を解消しようとします。

「薄給で長時間労働」と「働きたい」の不協和

安い給料しかもらっていないのに、毎日のように残業している。くたくたになりながらも、なぜか辞めずに働き続ける。このようなケースは、決して珍しくはありません。

  • 労働環境がよくない (辞めたい)

  • 無職になりたくない (働きたい)

近年社会問題となっている「やりがい搾取」ですが、これはまさに認知的不協和を解消しようとした結果と言えます。つまり、2 つの相反する認知の矛盾を解消するために、1 つ目の認知に「辛いが、やりがいがある仕事だ」と付加価値を与え、悪環境で働く自分を正当化しているのです。

仕事にやりがいを感じることは悪いことではありませんが、ごまかして働き続けることは精神的かつ肉体的苦痛ともなりうるので、おすすめできません。認知の矛盾に気付き、それが意味するところについてよく考え、合理的な判断をするようにしましょう。また、このような場合に従業員がすぐに声を上げられるような仕事環境、チーム環境、人間関係を日頃から作っておくことが、マネージャーやリーダーの役目だと言えるでしょう。

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ビジネスシーンで活用できる認知的不協和理論

日常でもビジネスシーンでも生じる認知的不協和ですが、その心理を逆に利用する術も存在します。認知的不協和の理論がマーケティングセールスをはじめとしたビジネスシーンでどのように応用されているのか、いくつか例を見てみましょう。

矛盾する書籍のタイトルやキャッチコピー

代表的な例が、書籍のタイトルや広告などのキャッチコピーです。たとえば「1 日たった 1 時間勉強するだけで東大に合格する方法」という本がもしあったら、少なからず関心が引かれませんか?それは「東大は難関」という認知と「少しの勉強時間で合格できる」という認知が矛盾し、認知的不協和が起こっているからです。

このように書籍のタイトルやキャッチコピーには、わざと不協和を生じさせることで、消費者やターゲットにその不協和の解消 (つまり、製品やサービスの購入) を促す目的があります。

商品購入を正当化

たとえば、ある製品を購入しようか迷っている顧客がいるとしましょう。その人は「この商品が欲しいけど、少し高いから買えないかな……」と購入に後ろ向きになりそうです。この顧客は、買いたいけど高いという不協和を抱えています。そんなときに、その商品の必要性や重要性を述べることで、顧客は「商品が欲しい」という認知を正当化し、商品購入に踏み切るでしょう。

また同じ理由から、アフターフォローを充実させるのも顧客の認知的不協和を利用したマーケティング手法です。購入を迷っている消費者に対して「購入後にはクーポンが付与される」「購入すれば次回の買い物時に 20% の割引が適用される」などといった特典を用意することで、顧客の購入意欲を正当化させています。また、購入者のレビューを掲載したりすることも、消費者の認知的不協和を解消する同じ目的があります。

ビジネスにおける認知的不協和を理解する

認知的不協和について解説し、その具体例や解消方法、ビジネスシーンにおける活用術をまとめました。認知的不協和は日々の暮らしの中で私たちに生じる、決して珍しくない心理状態です。同僚との会話や上司との関係、オフィスでの時間の中にも認知的不協和は当たり前のように発生します。2 つの認知の矛盾が、意味もなく不快感や不安を感じてしまう原因かもしれません。もしそのような状況になったら、認知的不協和の可能性について一度考えてみてください。また、マーケティングや営業など、ビジネスシーンではこの認知的不協和の心理の利用がよく見られます。セールス戦略やマーケティング戦略を考えるときは、顧客の認知的不協和について考えを巡らせてみましょう。

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