ケーキを焼く前には、まず正確な分量の材料を確実に用意するものです。卵や砂糖が足りなければ、当然、ケーキの味は少し落ちてしまうでしょう。
大きなプロジェクトについても同じことがいえます。プロジェクトを完了するために十分なリソースがなければ、期待通りの結果は得られません。必要なときに必要な材料、つまりチームメンバーやスキル、ツールをすべて確保するには、キャパシティ計画を活用します。
キャパシティ計画は、プロジェクトに必要なリソースを判断するプロセスです。必要なときに適切なリソースを使えるようにすること、とも言い換えられます。なお、リソースとは、適正なスキルをもった人員、ほかのプロジェクトを追加できる時間的余裕、必要な予算などを意味します。
キャパシティ計画テンプレートを作成プロジェクトマネージャーがキャパシティ計画を作成するべき理由は何でしょうか。さまざまなプロジェクトに必要なキャパシティを把握しておけば、プロジェクトの進行を妨げるボトルネックを防ぎ、プロセスをスムーズに進められます。ここではキャパシティ計画のメリットをいくつかご紹介します。
新規プロジェクトが見込まれる場合、チームの余力を圧迫しないようにキャパシティ計画を立てましょう。チームのキャパシティを明確に理解することで、燃え尽き症候群を防ぐことができます。2020年には、なんと働き手の 71% が一度は燃え尽き症候群を経験しました。
効果的なキャパシティ計画があれば、チームの現在のスキルセットと新規プロジェクトに回せるチームの時間に矛盾が生じません。プロジェクトに使えるリソースが不足していれば、チームにリソースを追加すべきであるとわかります。
チームのスキルセットを理解し、追加の仕事に対するキャパシティを把握することで、燃え尽き症候群を防ぎ、タスクの割り当てに関する意思決定プロセスを円滑に行えます。
チームのキャパシティを管理することによって、完了すべき仕事のスコープに合わせてリソースを最適化できます。つまり、必要以上にリソースに費用をかけずに済むため、結果的に生産コストの低減につながります。たとえば、9 名で完了できる A というプロジェクトに 12 名のチームが携わっているなら、そのうちの 3 名をプロジェクト B に移動することで、プロジェクト A にかかるコストを削減できます。
キャパシティ計画は、将来のプロジェクトにかかる費用の軽減にも役立ちます。あるプロジェクトのためにキャパシティ計画を作成しておけば、それを今後発生する同様のプロジェクトのベースラインとして利用できます。そうした目安を便利に活用すれば、必要なリソースの予測を一から立てずに済み、チームの時間を無駄にせず、速やかにキャパシティ計画を立てられます。
この二つはしばしば同じ意味で使われますが、キャパシティ計画とリソース計画は似ていても、プロジェクト計画の戦略としては多少の違いがあります。
キャパシティ計画のポイントは、リソースの需要と供給です。優れたキャパシティ計画があれば、どんな場合にリソースの需要が増加するかを予測し、リソース不足を想定できます。
リソース計画は、すでに持っているリソースをどう割り当てるかを中心とした計画です。そしてリソースキャパシティ計画はこの二つを組み合わせ、今後必要になるリソースの増加を予測します。
記事: 初めてのリソース管理ガイドキャパシティ計画には 3 つのタイプがあり、それぞれ異なるシナリオで利用され、生産キャパシティを最適化します。
リードキャパシティ戦略 (リード戦略) とは、リソースの需要が高まることが予想された時点で、生産キャパシティを増大するプロセスです。
リードキャパシティ計画の例としては、小売店がホリデーシーズンに臨時スタッフを雇用する場合が挙げられます。小売店の雇用主は、この時期に顧客が増えるのがパターンであることを知っているため、短期間、追加でスタッフを増員します。
ラグ戦略によるキャパシティ計画は、実際の需要を確認してから生産キャパシティを上げる方法です。
これは飲食業界で、待機スタッフがいる場合などによく見られる戦略です。レストランの混雑具合に合わせて、その晩の顧客全員にサービスを提供するために十分なリソース (この場合はチームメンバー) を確保できるよう、マネージャーが追加のチームメンバーを呼び出します。
マッチ戦略によるキャパシティ計画は、リード戦略とラグ戦略を組み合わせたものです。マッチ戦略によるキャパシティ計画では、リソースの活用が望ましい状態になるまで、段階的かつ小規模にキャパシティを増加していく必要があります。
先ほどの飲食業界の例で見てみましょう。フロアマネージャーは、その晩のために数人の従業員を待機させています。予想外に大人数の客が来店した場合、マネージャーは混雑が解消されるまで、スタッフ 1 名から徐々に応援を呼ぶ判断を下します。
Asana でプロジェクトを計画するキャパシティ計画のプロセスは会社によって異なりますが、どんなプロセスでも必ず必要になる基本ステップがいくつかあります。
需要を予測する: 新規プロジェクトの立ち上げがわかった時点で、そのプロジェクトでどんな業務が必要になるか、知識や経験に基づいて予測を立てます。これによって、プロジェクトを完了するために必要なリソースを予測し、予測と現在利用できるリソースとを比較できます。
必要なキャパシティを判断する: 前のステップでの予測に基づき、業務の完了に必要なキャパシティを見積もります。時間数などの一般的な測定単位や、T シャツ見積もりのようなプロジェクトの見積もり手段を使って判断しましょう。たとえば、エンジニアリングチームのマネージャーなら、プロジェクトの完了に必要な作業時間数に応じて、キャパシティ計画を立てます。
現在のチームのリソースキャパシティを計算する: チームの現在の仕事に新しいプロジェクトを追加する場合は、チームが燃え尽きないよう、新規プロジェクトをこなす余裕があるかどうかを確認する必要があります。平均的な従業員が週に約 30 時間働けるとして、その人が現在、プロジェクトに取り組んでいる場合には、現在の仕事量を時間数で表し、その 30 時間から引き算して、1 週間のキャパシティを割り出します。
現在のキャパシティと必要なキャパシティの差を測定する: プロジェクトに必要なキャパシティに基づき、現在あるリソースと、想定される需要とを比較します。
キャパシティと需要を一致させる: キャパシティの差を確認したら、需要と一致するように調整します。チームの現在のキャパシティが一杯で、プロジェクトの完了に必要な追加の業務を引き受けられないなら、臨時でチームメンバーを増員してプロジェクトを完了させます。必要以上にリソースがある場合は、さらにプロジェクトを追加して、利用できるリソースを活用することも考えましょう。
さまざまなキャパシティ計画ツールが市販されていますが、チームのために何を優先するかが適切なツール選択の決め手になります。リソース管理ツールによっては、機能が限定的で、キャパシティ計画やリソース管理のみに特化している場合もあります。
Asana のようなワークマネジメントツールなら、1 つのプラットフォームでチームの仕事量をモニタリングし、コミュニケーションを円滑化できます。Hudl のチームは、Asana を使ってチームの仕事量を定期的にモニタリングすることで、チームのキャパシティを手軽に検討し直し、メンバーが燃え尽き症候群になる前に、仕事の割り当てを調整しています。あらゆる業務を 1 つの共有スペースで確認できるため、どのメンバーも割り当てが重なることがありません。詳しくは、Hudl がマーケティングの成功のために Asana を使ってプレイブックを書き替えた事例を紹介した、こちらの記事をお読みください。