本記事では、AI (人工知能) 導入を検討している中小企業の経営者、担当者に向けて、すぐに活用できる方法を 18 件紹介します。Chat GPT のような汎用的な AI から特定のタスクに特化したツールまで、それぞれ実践的な方法、もしくは他企業や自治体の事例と共に紹介します。自社に最適な AI の活用方法を見つけるためのヒントとしてご活用ください。
中小企業こそ AI を戦略的に導入することで、競争力の強化と持続的な成長を実現できます。
本記事では、中小企業がどのように AI の活用を進め、DX (デジタルトランスフォーメーション) を実現できるのか、具体的な活用事例も交えながら解説します。
業務とワークフローを全社の目標につなげ、明確な方向性と大きな成果を組織全体に広げましょう。
2030 年問題や 2050 年問題で代表されるように、深刻な人手不足の時代において AI は業務を飛躍的に向上させる力を秘めています。競合他社と差別化を図るための大きな要因です。
AI 導入のメリットは多岐にわたります。
メリット | 内容 |
人手不足の解消 | AI が定型業務やデータ処理を担うことで、従業員はより創造的で戦略的な業務に集中できます。 |
コスト削減 | 自動化により、人件費や運用費を最適化し、経営資源を有効に活用できます。 |
データに基づく意思決定 | 勘や経験に頼る経営から脱却し、迅速かつ的確な意思決定が可能となります。 |
顧客体験の向上 | 顧客ごとに最適な提案・サポートを実現します。 |
新規ビジネスモデルの創出 | AI を活用した新規事業や製品開発が可能となります。 |
中小企業が AI ツールを導入もしくは構築する場合、国や地方自治体による補助金制度を活用できる可能性があります。
補助金制度は予算や期間が定められているため、活用できるうちに導入するのが得策です。
以下は AI に関連する補助金です。
業務効率化や生産性向上のための IT ツール導入を支援。ソフトウェア購入費やクラウド利用料などが補助対象であり、通常枠なら最大 450 万円の補助を最大2年分受けられる。
人手不足を補うための省力化投資を支援。オーダーメイドの設備導入やシステム構築を行う場合は、最大 1 億円の補助を受けられる。
※本情報は 2025年 11月 24日時点の情報です。制度の詳細や最新情報については、必ず各補助金の公式サイトをご確認ください。
AI ツールには大きく分けて以下の 3 パターンがあります。
大規模言語モデル (LLM) ツール - ChatGPT や Google Gemini のように、幅広いタスクをこなす汎用的な AI ツール
特定タスク特化型ツール - Notta (文字起こし) や Midjourney (画像生成) のように特定の業務に特化した AI ツール
AI 搭載型業務ツール - Asana (プロジェクト管理) やサポートチャットボット (カスタマーサービス) のように、既存の機能に AI 機能が組み込まれたツール
AI 導入を考えるなら、大規模言語モデルを導入し、続いて特定タスク特化型や AI 搭載型の業務ツールを複数検討することを推奨します。
今回は大規模言語モデル (LLM) と特定タスク特化型とAI 搭載業務ツールの活用例に分けて紹介します。
| 活用方法 | 内容 |
1 | マーケティングの個別化 | 顧客の行動履歴や購買傾向をデータ分析し、個々に最適な商品やサービスを提案できます。 |
2 | 文書作成 | マニュアルやメールなど、日常的に執筆する文章を作成し、手間と時間を削減できます。 |
3 | 専門知識のナレッジ化 | 自社のマニュアルや成功事例を AI に学習させ、知識がない社員や顧客にも迅速に専門知識を共有できます。 |
4 | 正誤率のチェック | 文書の正確性を確認することで、社員の負担軽減に加え、ヒューマンエラーのリスクも低減できます。 |
5 | 文書やデータの要約 | 理解や把握するのに時間がかかる内容を要約 し、内容を迅速に把握できます。 |
6 | カスタマーサポートの自動化 | チャットボットの導入により、顧客満足度の向上と問い合わせ対応の減少を実現できます。 |
7 | 画像の文書化 | 画像のデータを自動で文字に直し、時間と労力を削減できます。 |
8 | 新規事業や製品アイディアの施策 | 要望に合わせて、自社に合ったユニークなアイディアを活用できます。 |
9 | 意思決定のためのリサーチ | 必要なリサーチを短時間で行い、膨大なリサーチ量を踏まえ、自信を持った意思決定ができます。 |
10 | 議事録の作成 | 文字起こしと要約を自動化し、作業時間や委託費を削減できます。 |
11 | 採用プロセスの効率化 | 履歴書のスクリーニングや一次面接の自動化により、採用担当者の負担軽減と客観的な評価を元にした採用を実現できます。 |
12 | 業務の自動化 | バックオフィスにおける幅広いタスクを AI が代行し、業務の効率化に繋げられます。 |
13 | 在庫管理や電力消費などの最適化 | 需要予測により、ロスを削減し、キャッシュフローを改善できます。 |
14 | 品質管理と不良品検出 | AI 搭載の画像認識システムで、人間以上のスキルで高精度に検出し、品質の安定と向上を達成できます。 |
15 | サイバーセキュリティの強化 | サイバー脅威をリアルタイムで検知し、防御することでセキュリティ強化できます。 |
16 | プロジェクト管理 | 全体の進捗状況が分かりやすくなり、スケジュール通りプロジェクトを進めやすくなります。 |
17 | 予知保全 | 起こり得るリスクを事前に察知し、予期せぬダウンタイムを削減。生産効率も最大化できます。 |
18 | リスクのリアルタイム監視 | 今起きていることを、いち早く把握し、監視する労力を削減できますを。監視範囲も広げられます。 |
LLM は、日常の定型的な業務を簡略化してくれる、汎用性の高い生成 AI のモデルです。
以下は LLM で生産性を向上できる方法を 9 件紹介します。
生成 AI は、顧客の行動履歴や購買傾向をデータ分析し、個々に最適な商品やサービスを提案する文章や戦略を生成します。たとえばアパレル業界では、顧客の閲覧履歴から好みのスタイルを学習し、個別のおすすめ商品をメールやサイト上で提示することが可能になり、クリック率や購買率が大幅に向上します。
LLM でも顧客データや行動を入力することで提案をしてもらえますが、データをトラッキングする場合、 AI を導入したマーケティングツールを活用するのがお勧めです。
マニュアルやメール、SNS 投稿など、日常的に執筆する文章をプロンプトで依頼したいことを簡潔に伝えるだけで作成可能です。
たとえば、メールであれば「A と B の件について佐藤さんに伝えたい。佐藤さんは今タスクがたくさんあって、確認する余裕がないと思うので、簡潔なメールを作成してください。」と入力すれば、相手に伝わるメールを短時間で生成できます。
長崎県の自治体職員間では、ICT 関連に対するナレッジの属人化や効率的な情報共有などに問題意識を持っており、離島が多い地域に遠隔で対応できる必要がありました。
そこでナレッジ管理に AI を使用することで、今までは問い合わせの趣旨を十分に理解できなかったところを、AI が自動で回答を提示できます。
ただし、熟練技術者のノウハウや機械が伴うような技術継承は専門のツールや社内開発を検討したほうがいいです。
専門知識が必要な文書や複雑な計算式が書かれた文書を生成 AI に渡し、プロンプトで何を確認するかを伝えるだけです。たとえば、計算式が記載されたデータを添付し「これらの計算式が合っているか確認してください」と伝えると、確認を行うことができます。
生成 AI を使って、コールセンターの不満や感情をデータ分析し、抽出できます。これにより、より客観的で的確な判断や課題解決が可能となります。たとえば、コールセンターの録音データを読み込ませ、プロンプトで「どのような内容の不満が多いですか?」「最も重要なトピックは何ですか?」と打つことで、最も改善が必要なトピックが分かります。
また、書かれている内容が難しい学術を社内で共有したい場合、LLM に学術を読み込ませて要約を作成することで、社員の読む時間を削減できます。
より多くの情報を一度で吸収できるため、より的確な判断が可能になります。
チャットボットでは、商品の配送状況や FAQ への問い合わせを自動化し、顧客からの問い合わせに 24 時間 365日対応できます。そのため
成功事例として、タレント管理システムを開発・販売・サポートしている株式会社カオナビは、AI を用いたサポートチャットボットを導入したところ、前年比で顧客数が 115% 増加した一方で、問い合わせ数は減少。
受付から解決までに要する時間も約 20 分短縮できました。
LLM でも画像を読み込んで、成分表の記載やお店のコピー、紙でしか保存されていない内容などを文書化できます。
ただし、ワークフローシステムとして AI-OCR を組み込む場合は、特化型ツールの活用が向いているかもしれません。
つくば市では、2019年 12月から 画像をテキスト化できる AI-OCR ツールを活用して、住民票や税関係書類、出生届などをデータ化しています。
自身が求めている事業やアイディアに加え、どれぐらいの費用対効果や付加価値を生むのか、など自身が気になっていることも付け加えてみましょう。
たとえば、木材を製造している会社であれば、以下のようなプロンプトでアイディアを生成できます。
「普段は椅子を作っていますが、椅子以外の木製製品を考えています。木材の製造、簡単な大工仕事であれば社内で行えます。新たな事業として、この木材を B2B で販売できるアイディアを 10 個出してください。すぐに思いつきそうな家具は提案に出さないでください。」
製品 A と B、どちらが主力製品として向いているのかを客観的に調べることができます。
それぞれの特徴とターゲット層を入力し、昨今のトレンドについても AI にリサーチさせることで、客観的にどちらが適しているのかを把握することが可能です。
LLM は 必ず導入したい生成 AI ですが、企業による業界や特性を伸ばすには特化したツールも必要です。
例えば、 クリエイティブ企業であれば、画像を生成する Midjourney で高品質な画像をアウトプットし、より高品質な製作物を創造できます。
また、プロジェクトの多い中小企業では、Asana のような業務効率化ツールを検討するかもしれません。生成 AI が既に導入されているツールであれば、ツールの持つ強みを強化してくれるでしょう。
以下は特化した AI ツールと AI を導入した業界や業務特化型ツールでできる活用方法を 9 件紹介します。
青森県の自治体では、会議の文字起こしに時間を要していることに気づき、議事録作成業務への AI 導入を行いました。
その結果、作業時間を 40 %削減し、委託費も削減しました。
LLM でも、音声を入力して書き起こすことは可能ですが、頻繁に記録するなら、録音から業務を行ってくれる AI ツールを活用するのがお勧めです。
データ入力やレポート作成、ファイル移動などの定型的な PC 作業を AI ロボットが代行できます。それにより人件費削減と生産性向上ができます。
たとえば、 業務効率化ツール、Asana では、休みやミーティングを連想させる単語をタスク名にすると、自動的に関連のある社員に通知が送られます。
さらに Google カレンダーと連携していれば、Google カレンダーに予定を自動で入力します。
Asana は Google カレンダーだけではなく、Slack や Microsoft Teams など、300 種類以上のアプリと連携することが可能です。既に使用しているアプリがあれば、使用をおすすめします。まずは Asana について知ってもらえたらと思います。
Asana AI について知るさいたま市の保育所入所選考で AI を用いることで複雑な思考をし、10日以上普段ならかかる選考作業が数秒で完了するようになりました。また職員で行った選考結果とほぼ一致したとのことです。
中小企業では採用に割けるリソースが限られているため、AI 導入による業務効率化は大きな助けとなります。
LLM でもプロンプトで選考基準を伝え、選考する社員のデータなどを入力することで分析してもらえます。
AI を用いることで、過剰在庫や欠品のリスクを低減し、発注量を最適化することが可能です。
食品卸売業の中小企業が AI を活用することで、過去の販売データ、季節性、天候などの要因から将来の需要予測できます。
在庫管理と同じ形で、使用機器に AI を導入することで電力や水の使用量を管理することもできます。
製造業では、特に製品の欠陥を高速かつ高精度に検出することが求められます。
大量の画像を参考データとして読み込ませることで、AI は欠陥とされる特徴を学び、製品を仕分けられるようになります。
人間の目では見逃しがちな微細な傷や異常も AI が見つけ出すことが可能です。
生成 AI において機密情報の漏洩リスクが懸念されていますが、企業向けプランの利用や、自社サーバー内で AI 運用するなどの対策で、リスクを低減できます。
オンラインで情報を管理する企業であれば、中小企業はサイバー攻撃の標的になりやすいため、AI によるセキュリティ強化は事業継続のために不可欠です。
Asana のような業務効率化ツールでは、遅延しそうなタスクを予測し、タスクの割り振りを再調整してくれます。
実際に、福山市の行政では Asana を用いることで、タスク数や完了率などが可視化されただけでなく、600 以上ある事業報告を省力化できました。
Asana は IT を普段使用しない人でも簡単に使用できる業務効率化ツールです。何から始めたら DX できるのか分からない、 簡単なところから AI の導入を始めたい人は、ぜひデモをご覧ください。
実際の使い方を見る特に製造業では重要な機能です。工場の機械に AI を導入することで、過去のデータを元に、故障の兆候を事前に察知し、計画的なメンテナンスを可能にします。
SNS などのビッグデータを用いて、いち早く今起きていることを把握できます。
一例として FASTALERT 社では、自然災害や事件などの目撃情報などを収集し、すぐに対応できるため、常に監視する労力を削減するだけでなく、手が届かなかった範囲までサービスを提供できるようになります。
AI 導入を成功させるには、まず「どの業務の課題を解決したいのか」を明確にすることです。いきなり大規模なシステムを導入するのではなく、スモールスタートで効果を検証し、徐々に範囲を広げていくのが賢明です。また、外部の専門家やパートナーと連携することも、限られたリソースの中小企業にとっては非常に有効な戦略となります。中小企業向けの生成AI活用セミナーなどにも参加すると、社内と認識を共有できます。AI はビジネスの強力な味方となるでしょう。