SIPOC ダイアグラムとは?ビジネスプロセスをマッピングして理解する 7 つのステップ

寄稿者 Caeleigh MacNeil の顔写真Caeleigh MacNeil
2024年2月23日
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概要

SIPOC ダイアグラムを使用すると、「サプライヤー」「インプット」「プロセス」「アウトプット」「カスタマー」を文書化することにより、ビジネスプロセスをマッピングして分析できます。たくさんの詳細を提供するのではなく、意思決定者にプロセスの主な情報を与えるために使用されます。SIPOC 分析は、一般的に、お客様の体験に関連するプロセスを改善、または理解する目的で使用されます。この記事では、SIPOC ダイアグラムを使用する場面およびチームと一緒に作成するときに便利な 7 つのステップをご紹介します。

ビジネスプロセスは、その内容を理解せずに改善できるものではありません。プロセスは、一般的に、描画すると一番理解しやすくなります。

そこで重宝するのが SIPOC ダイアグラムです。ビジネスプロセスそのものは複雑ですが、SIPOC ダイアグラムはプロセスの各要素の関連性を可視化するためのシンプルな方法です。

SIPOC ダイアグラムとは?

SIPOC ダイアグラムは、「サプライヤー」「インプット」「プロセス」「アウトプット」「カスタマー」を文書化することにより、プロセスの俯瞰的なビューを提供します。プロセスの参加者がどのように素材やデータをやり取りするのかを図示するもので、お客様の体験に関連するプロセスを改善したり、理解したりする目的でよく使用されます。

SIPOC ダイアグラムは、たくさんの詳細を提供するものではなく、むしろ、関係者が意思決定を行い、改善のアイデアについてブレインストーミングをしやすくするために、プロセスの俯瞰的なマップを提供することを目的としています。そういう意味では、SIPOC 分析は、ビジネスプロセス管理 (BPM) に使われるツールの 1 つということになります。BPM では、プロセスを調査し、改善方法を計画し、改善事項を実践します。

SIPOC とは、以下 5 つの要素の頭文字をとった用語です。

  • Suppliers (サプライヤー): プロセスに取り入れられるインプットの供給者

  • Inputs (インプット): プロセスを機能させるのに必要なリソース

  • Process (プロセス): プロセスを構成する俯瞰的なステップ

  • Outputs (アウトプット): プロセスの実行結果

  • Customers (カスタマー): プロセスのアウトプット (メリット) を得る人

[旧バージョン製品 UI] SIPOC ダイアグラムのサンプル画像 (ボード)
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SIPOC ダイアグラムとワークフローダイアグラムの違い

ワークフローダイアグラムは、ビジネスプロセスやプロジェクトをグラフィカルに図示したマップであり、SIPOC ダイアグラムは、ビジネスプロセスを通じて誰が素材やデータを作成し、受け取るのかがフォーカスとなるワークフローダイアグラムの一種です。

一部のワークフローダイアグラムでは、プロセスの各ステップが時系列でマッピングされます。しかし、SIPOC ダイアグラムでは、依存関係 (他のタスクを開始する前に他のタスクを完了させる必要がある) がマッピングされません。代わりに、プロセスの素材を作成する人、その素材がプロセスに取り込まれる方法、そしてプロセスのアウトプットを受け取る人が図示されます。

SIPOC ダイアグラムの用途

SIPOC ダイアグラムは、シックスシグマのプロセス改善メソッドの一環として、リーンプロジェクト管理で多用されます。シックスシグマは、最終製品における不備や矛盾を最小限におさえることを目的としたものであるため、製造やお客様の体験に関連するプロセスの改善に効果を発揮します。リーンシックスシグマの中核的コンポーネントは、Define (定義)、Measure (評価)、Analyze (分析)、Improve (改善)、Control (管理) の頭文字を取った DMAIC プロセスです。SIPOC ダイアグラムは、DMAIC プロセスの「Define」フェーズで活躍します。

たとえ、シックスシグマやリーンプロジェクト管理を使用していなくても、以下を行える SIPOC ダイアグラムは便利です。

ビジネスプロセスを説明する

SIPOC ダイアグラムでは、俯瞰的な概要が図示され、細かい詳細は含まれないため、ビジネスプロセスに精通していないオーディエンスに対して使うと便利です。そういう意味では、新規採用者にプロセスを紹介したり、意思決定者にプロセスの主な詳細を伝えたりするのに適した手段と言えます。

チームメンバーの足並みを揃える

SIPOC ダイアグラムは、簡単に作成できます。プロセス改善に向けたブレインストーミングのはじめに作っておけば、問題の解決策を探るディスカッションをフレーミングし、関係者全員に共通認識を持たせることができます。

プロセスの構成要素を明確化する

SIPOC ダイアグラムをチームと一緒に作成するときは、サプライヤーの連絡先情報やプロジェクトの仕様、ターゲット顧客といった主要な情報を特定することが求められます。そのため、SIPOC ダイアグラムを作成するという行為そのものがプロセスを理解し、改善することに役立ちます。

SIPOC ダイアグラムをチームと一緒に作成すると、以下のような疑問の答えが見えてきます。

  • このプロセスは、どうすればもっと簡単にできるか?

  • お客様に質の高い製品を提供できているか?

  • サプライヤーを管理する方法を改善できるか?

  • サプライヤーは私たちが必要とするものを提供しているか?

  • お客様の人間性を把握しているか?お客様はどの顧客層に属しているか?

  • 製品の制作プロセスにおいて効率の悪さが見られる箇所のうち改善できるものはあるか?

SIPOC ダイアグラムは、プロセス管理のツールボックスを構成するツールの 1 つに過ぎません。ビジネスプロセスを調査し、その改善に取り組む中で作業をきちんと整理するには、一層堅牢なシステムを構築する必要があります。プロセス改善に乗り出す前に、一か所で担当者と期日を明確に割り当て、依存関係を表示し、チームとコミュニケーションが取れるプロジェクト管理ツールを選択してください。Asana を使用すると、SIPOC ダイアグラムをかんばんボードとして作成できるため、リアルタイムに共有、更新できます。

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SIPOC ダイアグラムを 7 つのステップで作成する方法

SIPOC ダイアグラムの作成はいたってシンプルですが、頭字語のアルファベットを順に進んでいくのは最良のアプローチではありません。当社では、一番始めやすい「Process」セクションからスタートすることをおすすめしていますが、「Customer」から「Suppliers」へと逆に進むこともできます。そのため、このツールを COPIS ダイアグラムと呼んでいるチームもあります。

SIPOC ダイアグラムは以下の手順で作成します。

1. プロセスを選択する

SIPOC ダイアグラムを使って可視化するプロセスを選択します。これは、実装したい新しいビジネスプロセスであったり、最適化したい既存のプロセスであったりします。SIPOC ダイアグラムを作成すると、プロセスを理解し、改善のアイデアについてブレインストーミングを行ったり、プロセスの俯瞰的な概要を提供して関係者による意思決定をサポートしたりできます。

たとえば、製品の発送と配達のプロセスを改善したいとしましょう。SIPOC ダイアグラムを使用すると、プロセス内の効率の悪い箇所を特定し、各サプライヤーを最適に管理できていることを確認し、お客様に質の高い製品を届けることができているかどうかを判断できます。

2. プロセスを定義する: P

SIPOC ダイアグラムは、「S」から順に進んで行く代わりに、「P」セクションからスタートして、最初にプロセスを定義するのが多くの場合に一番やりやすい方法です。プロセスを 4~5 個のハイレベルなステップに分割し、それぞれにアクションと課題を設けます。そうしたステップは、それぞれが次のステップにつながるフローチャートとして整理することもできます。

先ほどの製品の発送に関する例では、そのプロセスは以下のようなステップに分割できます。

  1. お客様がチェックアウトする

  2. 請求書が倉庫に送信される

  3. 倉庫チームが製品の発送準備をする

  4. 配送業者が製品をピックアップする

  5. 配送業者が製品を宛先の住所に届ける

プロセスが長く、多様なステップが含まれる場合は、類似の小さなステップをグループ化してみましょう。たとえば、e コマースプラットフォームから倉庫に情報が送信される段階に関するすべての詳細を「請求書が倉庫に送信される」という一つの広範なステップにまとめてしまってもよいでしょう。SIPOC ダイアグラムを使用する目的は、詳細なビューではなく、俯瞰的な概要を提供することなのです。

記事: フローチャートとは?フローチャートの記号、種類、読み方について

3. アウトプットをリストアップする: O

プロセスのアウトプット (結果) を特定します。そうすると、プロセスに投資するリソースからは何を得られのか、そしてお客様は実際に何を受け取っているかを理解できます。アウトプットは、素材や製品、サービス、情報など、あなたや社内チームのメンバー、お客様がプロセスから得るものであれば、実質あらゆるものが該当します。アウトプットはお客様からの要件に対応していることが理想的です。

上述した製品発送の例においては、以下のような結果が得られます。

  • 製品が一定の期間内にお客様の元に届く

  • あなたの会社が製品に対する支払いを受ける

4. カスタマーを特定する: C

カスタマーとは、アウトプットを受け取る人、もしくはプロセスから何らかのメリットを得る人を指します。カスタマーは社外の人間 (お客様) でなくてはいけないということはありません。同僚や社内の関係者の場合もあり得ます。発送のシナリオとは違った例として、あなたは社内の年次旅行の準備をしているとしましょう。このシナリオでは、お客様と関係者がイベントに参加するチームメンバーとなります。

発送の例では、製品を受け取るオンラインショッパーと製品に対する支払いを受ける自分の会社をカスタマーとしてリストアップできます。

5. インプットをリストアップする: I

インプットとは、プロセスを適切に機能させるのに必要なリソースのことです。アウトプットと同様に、素材や製品、サービス、情報などを指します。インプットをリストアップすると、プロセスにおけるリソースの要件を理解し、必要な素材をサプライヤーから入手できているかどうかを判断できます。

製品発送のプロセスにおいては、お客様の配送情報や支払い情報、オンライン決済サービス、パッケージングサービス、パッケージ素材、倉庫内のスペース、配送用トラックなどが含まれます。

6. サプライヤーを特定する: S

サプライヤーのステップでは、プロセスに使用する各インプットを入手します。このステップは、提携しているサプライヤーの数を把握し、各サプライヤーを最も効率的に管理できているかどうかを判断するのに役立ちます。

製品発送の例では、以下が含まれると考えられます。

  • お客様: 配送情報と支払い情報を提供する

  • 倉庫チームのメンバー: パッケージングサービスを提供する

  • パッケージ製造業者: パッケージ素材を作る

  • 倉庫のリース会社: 倉庫内のスペースを提供する

  • 配送サービス: 配送用トラックを提供する

7. ダイアグラムを共有する

SIPOC ダイアグラムは共有するためのものです。あなたやチーム、関係者がビジネスプロセスの仕組みを理解するのを助力するツールとして最も効果を発揮します。つまり、SIPOC マップのメリットを完全に引き出すには、共有するだけでなく、簡単にアクセスできるようにしなくてはいけません。

情報を共有するのに適した手段の 1 つとして、プロジェクト管理ツールを使用するという手があります。プロジェクトの情報とタスクを 1 か所で整理できるという利点があるためです。いくつものメールを別々に送信したりせずに、ダイアグラムの 1 つのバージョンを各関係者と共有し、1 つのスレッドで関係者全員とコミュニケーションを取れます。

判断に困ったら、ダイアグラムを書いてみましょう

SIPOC ダイアグラムは、プロセス改善のツールボックスにキープしておきたい便利なテンプレートです。作成するのも、共有するのも簡単で、主要な情報だけを提供し、意思決定者がビジネスプロセスを俯瞰的に理解するのに役立ちます。さらに、SIPOC ダイアグラムをチームと一緒に作成すると、プロセスの各要素のつながりと、ビジネスプロセスを最適な内容に仕上げるために合理化を図る方法が明確になります。

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