カスタマージャーニーマップ: バイヤー体験を可視化する方法

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2024年2月13日
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概要

カスタマージャーニーマップは、顧客が購買プロセスを通してどのような行動を取り、何を考え、感じるのかを可視化したものです。このマップを使用すると、顧客がどのような行動を、なぜ取るのか理解できます。そうしたインサイトがあれば、顧客のニーズをより的確に満たすセールス戦略やマーケティング戦略を立てることができます。この記事では、カスタマージャーニーマップの作り方と使い方について説明していきます。

1 冊の本を最後まで読み飛ばせば、すべての登場人物の結末が分かります。しかし、間の部分を読まないと、何が起こったのかは分かりません。ストーリーは、最初と最後だけでは成り立ちません。その間のジャーニーが必要なのです。購買プロセスも、ストーリーのようなものです。アナリティクスを見れば、顧客の最終的な決断を見ることができますが、なぜその決断に至ったのかを理解するには、バイヤージャーニーを調べる必要があります。

カスタマージャーニーマップを使用すると、顧客の A (悩み) から B (購買決定) にいたる購買体験を可視化できます。顧客の意思決定を左右する要因を突き止めることができれば、適切にビジネス戦略を調整できます。

カスタマージャーニーマップとは?

カスタマージャーニーマップは、購買プロセスを通して顧客の行動を追跡するためのツールです。このマップには、顧客の悩みに対する考えや感情、そしてそれに対応するアクションが含まれます。

顧客の情報に加え、顧客の意思決定を後押しするものが分かれば、顧客の関心に合わせて、より適切にビジネス戦略とマーケティング戦略を調整できます。

つまり、カスタマージャーニーマップを使うと、以下のことを行えます。

1. 自社の製品やサービスに興味を持っている顧客を特定し、理解する。

2. 自社の製品やサービスのメリットを顧客が理解できるように、メッセージの内容をカスタマイズする。

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カスタマージャーニーを構成する 6 つの要素とは?

カスタマージャーニーマップは 6 つの要素で構成されており、そのすべてを総合的に見ることで、なぜ顧客がそのような行動を取るのかが明確になります。これらの要素はすべてがカスタマージャーニーマップに関連するものですが、必ずしも同じ順序で起こるとは限りません。

[インラインのイラスト] カスタマージャーニーマップの各要素 (インフォグラフィック)
  • 購買プロセス: まずは、顧客の購買プロセスについてわかっていることをまとめます。顧客はどのようなプロセスを経て認識、関心、購入へと進んでいるでしょうか?

  • 顧客のアクション: 顧客のアクションでは、顧客が実行する具体的なアクションにフォーカスします。記事を読んだり、電子書籍をダウンロードしたり、セールスデモをリクエストしたりといった行動がこれに含まれます。

  • 顧客とのタッチポイント: ユーザーによるアクションとは異なり、タッチポイントでは会社にフォーカスが置かれます。あなたの会社は、顧客の興味を引くためにどのようなことをしていますか?これには、SNS 広告の投稿や、メールマガジンの発信などが含まれます。

  • 感情: 顧客がどのような行動を取っても、その決断には具体的な考えや気持ちが結び付いているものです。そうした感情がわかれば、顧客がそうした行動を取った「理由」がはっきりとします。

  • 悩み: 悩みは、顧客が製品を購入するのを後押しします。顧客は、解決する必要のある問題や、私生活において満たしたいニーズなどを持っています。

  • 期待: 悩みを解決したい顧客は、求めているものに対して何らかの期待を持つでしょう。顧客は、それを基に製品を絞り込んで探します。

顧客のアクションを分析するときは、6 個の要素すべてを考慮しなくてはいけません。たとえば、感情はプロセス全体を通して起こる一方で、悩みと期待は通常、購買プロセスに影響を与えます。

カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーマップは、顧客が行う各アクションについて調べ、それぞれに感情を割り当てて作成します。マーケティングチームとセールスチームは現在の戦略を評価し、改善するためにカスタマージャーニーマップをよく使用します。カスタマージャーニーマップは、マーケティングやセールスの新キャンペーンを展開する際にも使用できます。そうすることで、常に顧客のことを意識できます。

[インラインのイラスト] カスタマージャーニーマップの作り方 (インフォグラフィック)

以下のステップを踏んで、カスタマージャーニーマップを作成します。ユーザーと企業の最初のやり取りから最後のやり取りにいたるまで、ユーザーエクスペリエンスのさまざまなステージを考慮します。

1. マップの目標を設定する

新しいプロジェクトを始めるときや、新しいツールを開発するときは、目標を設定する必要があります。マップを作成することで何を達成したいのかが分かっていると、明確性を持って開発プロセスを進められます。カスタマージャーニーマップの目標には、以下のようなものがあります。

  • 顧客がカートを放棄 (カゴ落ち) する理由を特定する

  • 顧客は何を理由に購入を決断するのかを理解する

  • カスタマージャーニーに影響を与えられる領域を特定する

目標を立てるときは、部門横断チームを組んでインサイトを得ます。セールスチームやカスタマーサポートチーム、マーケティングチームのメンバーに、顧客の行動をどのようにとらえているかを聞いてみましょう。メンバー全員の意見を取り入れることで、目標をまとめ上げ、より大きな成功を手にすることができます。

2. バイヤーのペルソナを作成する

バイヤーペルソナ (別名顧客ペルソナ) は、ターゲットオーディエンスを象徴する架空の顧客のことです。ペルソナは、顧客の人物像、好き嫌い、全般的なモチベーションやフラストレーションを描きます。バイヤーペルソナを確認すると、顧客のストーリーを伝えるのに必要な情報が手に入ります。

ターゲット市場: 女性

ターゲットオーディエンス: 母親

バイヤーペルソナ: Daniela Vargas、32 歳、既婚女性、子供 1 人。

[インラインのイラスト] バイヤーペルソナ (例)

ターゲット市場が女性であっても、すべての女性にサービスを提供するとなると、さまざまなオーディエンスが含まれてしまいます。架空のペルソナを構築すれば、チームは見込み顧客に共感しやすくなり、見込み顧客にとって関連性の高いメッセージを作成できます。

マーケティングチームとセールスチームは、商品やサービスを購入する人のタイプごとに異なるバイヤーペルソナを用意しているでしょう。人々は、性格などによって、それぞれが独特な購買体験をするものです。したがって、各ペルソナに別々のジャーニーマップが必要になります。

記事: 共感マップ: 顧客をよりよく理解するには

3. 顧客のアクションとタッチポイントを分類する

顧客のアクションは顧客が行う各アクションに重点を置く一方で、タッチポイントはそうしたアクションを行うための手段になります。タッチポイントには、顧客がウェブサイトを見つける前、もしくはすでにウェブサイトにアクセスしているときのやり取りなどが含まれます。過去の顧客に関するアナリティクスを使うと、ターゲットオーディエンスのバイヤーがオンラインであなたとどのようなやり取りをするかを想定できます。

ウェブサイト外での顧客とのタッチポイント:

  • 有料広告

  • SNS の投稿

  • メールマガジン

ウェブサイト外での顧客によるアクション:

  • Google を使ってウェブサイトを検索する。

  • Google に掲載される有料広告からウェブサイトにアクセスする。

  • SNS 投稿のウェブサイトへのリンクをクリックする。

  • メールからウェブサイトにアクセスする。

  • メールを開くが、アクションを起こさない。

  • SNS の広告に「いいね」するが、ウェブサイトにアクセスしない。

ウェブサイト上での顧客とのタッチポイント:

  • ブログ

  • ウェブサイトのランディングページ

  • チャットボット

ウェブサイト上での顧客のアクション:

  • ショッピングカートにアイテムを入れる。

  • 一定時間、1 つのページにとどまる。

  • ウェブサイト上の広告をクリックする。

  • ウェブサイトを閉じる。

  • ショッピングカートを放棄する。

  • 購入を完了する。

こうしたタッチポイントのタイムラインを作成し、バイヤーストーリーのベースとして使います。これを可視化して、それぞれのタッチポイントに関連付けられる顧客のアクションを 1 つずつ書き出していきます。

4. カスタマージャーニーマップを作る

これで、顧客が何かを購入したかどうかは別にして、顧客が製品を認識してから最終的なアクションにいたるまでのタイムラインが出来上がりました。タイムラインは、バイヤーのジャーニーを基に複数のステージに分割します。

購入プロセスの各ステージ

  • 認識: 顧客が解決しなくてはいけない問題があることに気付き、あなたの製品やサービスが解決策になり得ると判断する。

  • 検討: 顧客があなたの製品やサービスを購入すべきかどうかを検討する。

  • 比較: 顧客は、あなたの製品を市場にある別の製品と比較する可能性がある。

  • 決断: 顧客があなたの製品が最適であると決定する。

  • 購入: 顧客があなたの製品またはサービスを購入する。

  • 維持: 顧客があなたの製品やサービスを気に入り、リピーターとしてまた購入する。

  • 唱導 (布教): 顧客があなたの製品やサービスをとても気に入ったため、他の人にも勧めてくれる。

最初の 3 つのタッチポイントは、認識ステージに、次の 2 つは検討ステージに入ると考えられます。すべての顧客が各ステージを順調に進んでいくとは限りませんが、その進み具合を見れば、改善すべき領域が分かります。

ストーリーの間を埋める

ジャーニーマップを完成させるには、各ステップを順に追ったストーリーラインを書いて、各タッチポイント間の隙間を埋めていきます。対象となるペルソナの背景情報が分かっているため、手元にある情報を基に、顧客は最初どのようなことを考えながらあなたの製品を探していたのかを洗い出します。顧客がカートを放棄したなら、製品に関心を持ってからサイトを去ってしまうまでの間に一体何があったのかを考えます。

顧客の感情を追加する

顧客は、ジャーニーの中で各アクションや状況に対して、特別な思いを抱くことでしょう。顧客の立場になって、顧客の気持ちを察する努力をします。人の感情は判断しにくいものですが、バイヤーペルソナやそのペルソナのタッチポイント、ストーリーラインを使えば、自信を持って推測できます。

5. マーケティング戦略を評価する

カスタマージャーニーマップが完成したら、顧客が製品の購入を躊躇したり、完全に放置してしまったりしたターニングポイントが見えてきます。たとえば、ウェブサイトにアクセスしても、すぐに去ってしまうような顧客は、認識ステージにはたどり着いたものの、検討ステージには入っていかないでしょう。

顧客に各ステージを進んでいってもらうには何が必要かを評価して、適切にマーケティング戦略を調整します。このシナリオでは、以下について考えます。

  • お客様はどれくらいの時間ウェブサイトにアクセスしていたか?

  • トップページから他のページにアクセスしたか?しなかった場合、その理由は何だったのか?

  • トップページの弱点は何か?

  • トップページをどのように改良すれば顧客の関心をつかめるか?

顧客がトップページを見て、すぐにウェブサイトを去ってしまうのなら、サイトの第一印象が弱い可能性があります。トップページのデザインが直感的でなかった、コンテンツがあまり目立たなかった、といったことが考えられます。マップ内のターニングポイントを調べれば、次の顧客のジャーニーをもっと直線的にする方法が見つかるはずです。

記事: CRM 戦略の策定方法と 6 つのステップ (実例付)

カスタマージャーニーマップの例

このカスタマージャーニーマップの例では、Sally さんが職場で仕事を整理できないという悩みを抱えています。Sally さんが問題を発見してから解決策を見い出すまでのジャーニーにおいて、彼女の指針となるタッチポイントがたくさん出てきます。たとえば、彼女は、友人たちからタスク管理のサクセスストーリーを聞き、それをよいソリューションと考えます。それから、彼女は、プロジェクト管理ソフトウェアを開発する企業の SNS 広告を目にし、それがその会社のブランドを検討するきっかけとなります。Sally さんが購買プロセスを通して抱いた感情を考えれば、彼女が各ステップをどのように進んでいったかが分かります。

[インラインのイラスト] カスタマージャーニーマップ (例)

会社: プロジェクト管理ソフトウェア企業

シナリオ: Sally さんは、仕事を整理して、職場でのパフォーマンスを向上させるために、タスク管理のソリューションを必要としている。

期待すること: 使いやすく、仕事に責任感を持てる、手ごろな価格のソリューション

認識

1. 職場で仕事を整理するのが苦手なことに気付く

2. タスク管理が問題を解決できると判断する

タッチポイント: 口コミ、ラジオ / テレビ / 印刷物

対応する感情:「この問題を解決する必要がある。」

検討

3. タスク管理ソフトウェアの SNS 広告を目にする

タッチポイント: オンライン広告

対応する感情:「この製品はいいかもしれない」

比較:

4. ソフトウェアを市場の他のソフトウェアと比較する

5. ソフトウェアのユーザーレビューを読む

タッチポイント: SEO、ブログ

対応する感情:「私のニーズに一番合うのはどのツールか?」

決断:

6. あなたの製品は購入する価値があると判断する

タッチポイント: カスタマーレビュー

対応する感情:「他のユーザーはこの製品を気に入っているか?」

購入

7. タスク管理ソフトウェア企業のウェブサイトにアクセスして、トライアルを申し込む

タッチポイント: ブログ、ウェブサイト

対応する感情:「これが最適な選択肢のようだ、ぜひ試してみよう。」

維持 / 唱導 (布教)

8. トライアル期間が終了したらソフトウェアを購入する

9. ソフトウェアを同僚に勧める

タッチポイント: メール、ウェブサイト、口コミ

対応する感情:「これは投資に値するツールだ。チームにも教えよう。」

カスタマージャーニーマップを作成するメリット

カスタマージャーニーマップの作成には、顧客がブランドとやり取りをする際の行動、思考、気持ちについて、新しい見解を得られるというメリットがあります。他にも以下のようなメリットがあります。

  • カスタマーサービスに情報を提供できる: 顧客の悩みが明確に分かると、それを基に顧客へのサポートや顧客体験を改善できます。

  • 効果の低いタッチポイントを取り除く: カスタマージャーニーマップを見れば、効果のないタッチポイントが分かります。顧客がブランドとやり取りしても、購買プロセスの駒を進めてくれない場合は、そのタッチポイントを調整する必要があるかもしれません。

  • 戦略の焦点を特定のペルソナに合わせる: カスタマージャーニーマップは、単一のグループにとって最適な戦略を見つけるのに役立つものです。ターゲットオーディエンスごとにマップを作っておけば、オーディエンスごとに戦略をカスタマイズできます。

  • 顧客の行動に対する理解を深める: 製品やサービスを販売するには、対象のオーディエンスを理解することが欠かせません。ジャーニーマップがあると、顧客がどのような行動を取り、なぜそうした行動を取るのかがわかります。

顧客の現在の状態を示すマップを作ることも、将来的に予測される状態を示すマップを作ることもできます。どちらのマップも、顧客の視点を理解するのに役立ちます。

カスタマージャーニーマップを使ってオーディエンスをもっと深く理解しましょう

カスタマージャーニーマップは、マーケティングチームとセールスチームのリソースとなります。マップを作成したら、他のメンバーもアクセスできる場所に保管して全員が参照できるようにしましょう。デジタルなマップを作成しておけば、オーディエンスに合わせて内容を変更できます。

ワークマネジメントソフトウェアは、チームと関係者にとって、信頼できる唯一の情報源となります。カスタマージャーニーマップを共有する際も、改善に取り組む際も、Asana を使えばチーム内で同じ情報を周知できます。

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