コスト差異計算式: プロジェクトを予算内に収める

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2024年1月6日
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概要

コスト差異計算式は、プロジェクトの全期間を通じてプロジェクトの進捗を追跡しながら、予算を越えないよう確認するのに役立ちます。この記事では、コスト差異計算式やさまざまなコスト計算方法について説明し、実際のコスト差異の例をご紹介します。

コスト差異計算式は、プロジェクトを予算内に収めるのに役立つプロジェクトコスト管理ツールです。「コスト差異」とは、プロジェクトの予測されたコスト (立てられた予算) と、プロジェクトの実際のコスト (費やされた費用) との差のことです。値がプラスの場合、プロジェクトは予算内であり、マイナスの場合、プロジェクトに予算以上の費用がかかっていることを意味します。

プロジェクトを管理する際に、定期的にコスト差異を計算し、プロジェクトが予算内に収まっているかを判断しましょう。プロジェクトにおいて予算超過の原因となりやすい部分を特定するために、人件費や購入品といったさまざまな予算カテゴリごとに個別の差異を計算することも可能です。

この記事では、コスト差異とは何か、コスト差異計算式をどう適用できるかについて解説するとともに、さまざまなコスト差異計算式とそれぞれの計算方法もご紹介します。

コスト差異とは?

コスト差異とは、プロジェクトの計画されたコストと、追加の出費や想定外の節約を踏まえたうえでの実際のコストとの差のことを指します。コスト差異計算式は次のとおりです。

  • 予測コスト (PC) – 実コスト (AC) = コスト差異 (CV)

コスト差異の値がプラスの場合、プロジェクトが予算内に収まっていることを示し、マイナスの値はプロジェクトが予算を超えていることを示します。コスト差異がゼロの場合、実際のプロジェクトのコストが、想定されたコストと等しいという意味となります。

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[インラインのイラスト] コスト差異とは (インフォグラフィック)

プラスのコスト差異と、マイナスのコスト差異

パーフェクトな世界では、想定された予算と実際のコストがまったく同じ、つまりプロジェクトのコスト差異はゼロとなることでしょう。しかし現実には、プロジェクトの実際のコストが当初の予算と完璧に一致することは非常に稀です。

通常は、プロジェクトが予算内であることを示すプラスの値の差異を目指しましょう。しかし、マイナスの値の差異が必ずしもプロジェクトがうまくいっていないことを意味するわけではありません。それが意味するのは、単に当初の予算が楽観的すぎたことや、全コストを管理下に置くために行動をとる必要があるということです。

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シンプルなコスト差異の例

コスト差異についてよく理解するには、実際の例を見るのが一番です。あなたが小さなビジネスのオーナーで、最近グラフィックデザイナーを雇ったとしましょう。そのデザイナーは、時給 50 ドルの料金で、マーケティング資料、ウェブサイトデザインその他のビジュアルアセットの作成の実行責任者となります。プロジェクト全体の完了に 7 か月半 (1,200 時間) の作業を想定している場合には、このプロジェクトには 60,000 ドルの予算を立てることになるでしょう。

そのプロジェクトに、はじめの予想よりも 10 週間長くかかり、グラフィックデザイナーは合計で 1,600 時間働くとします。すると、グラフィックデザインには、合計で 80,000 ドルかかったことになります。

そのビジネスのグラフィックデザイン予算のコスト差異の計算はというと、計画・予測されていた予算 (60,000 ドル) から実際のコスト (80,000 ドル) を差し引いた、-20,000 ドルのコスト差異となります。コスト差異の値がマイナスの場合、プロジェクトはその値の分だけ予算を超えたということを意味します。

[インラインのイラスト] コスト差異 (例)

上の例では、あなた (ビジネスオーナー) は、プロジェクトの終わりにのみコスト差異を計算しています。コスト差異が最大の効果を発揮するのは、予算オーバーの傾向が出てきているまさにその時にそれを特定し、プロジェクトを財務面から軌道修正する場合です。そのためには、出来高 (アーンドバリュー) を計算に入れる必要があります。

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出来高管理とは?

計画価値 (PV) と呼ばれることもある「出来高」は、プロジェクトのある時点で実行されている作業の、予測されたコストを表すものです。出来高管理は、定期的に進捗を確認し、プロジェクトを順調に予算内で進メルのに役立ちます。

上の例に戻って、作業の 25% が終了したときにグラフィックデザインプロジェクトの進捗をチェックしたとします。25% 完了の時点で費やされたコストは、合計予算の 25% である 15,000 ドルであることが予想されます。

しかしこの場合、25% の作業を終わらせるのにデザイナーは 400 時間働きました。つまり、実行された作業の実際のコストは 20,000 ドル (時給 50 ドルで 400 時間) だったのです。

25% の進捗の時点で、出来高 (予測コスト、15,000 ドル) から実コスト (20,000 ドル) を引いて、コスト差異が -5,000 ドルと計算していれば、早い段階でプロジェクトの予算オーバーがわかり、それに応じて調整できたことでしょう。

プロジェクトを通じて定期的にバリュー分析を行い出来高が実際のコストと等しいまたは超過していることを確認するこのプロセスは、アーンドバリューマネジメント (出来高管理) と呼ばれます。

コスト差異の 3 つの計算方法

コスト会計において、差異を計算するための方法が 3 つあります。

  • 累積コスト差異

  • 期間別コスト差異

  • 完了時点での見込みコスト差異

3 つの方法ではいずれも同じ計算式を使用しますが、さまざまな事柄を判断するために、それぞれ異なった方法で計算を適用します。

累積コスト差異

累積コスト差異は、プロジェクトの実際に累積したコストと予測された累積コストとの差を取って計算します。この方法は、プロジェクトが当初の予算からどれだけ外れているかの概観を得るために使用できるものです。

上記の例では、累積コスト差異を使って、プロジェクト全体のコストがある時点まででどれだけ予算から外れているかを判断しています。

期間別コスト差異

期間別コスト差異は、ある期間の特定の時点あるいはプロジェクトのある段階を取り上げて、プロジェクトの実際のコストと予測コストとの差を取って計算するものです。

たとえば、上記のグラフィックデザインのプロジェクトにおいて、半分完了の時点で進捗を再び確認するとしましょう。期間別コスト差異を計算するには、初めの 25% と、次の 25% のコスト差異を別々に計算するということです。

期間別コスト差異のメリットは、プロジェクトのスケジュールにおいて予算の変動がどこで起こるかをよりよく把握できることです。もしプロジェクトが、半分の時点で順調に進んでおり、4 分の 3 の時点で軌道を逸れた場合には、問題が起こったという事実だけでなく、いつ起こったのかもわかるのです。小刻みに期間を設定することで、さらに簡単に問題を発見、修正できるようになります。

完了時点での見込み差異

完了時点での見込み差異は、プロジェクト全体のどの時点でも使用可能で、その時点の進捗状況に基づいて、プロジェクトが完了時にどれだけ予算を上回るあるいは下回るかを予測することができます。完了時点での差異は、開始時点で予測していたプロジェクトの合計コストから、現段階で見込まれる合計コストを差し引いて計算します。

上記のグラフィックデザインのプロジェクトを 25% 完了の時点で評価し、すでに 20,000 ドル使ったことがわかった場合、その時点でのプロジェクトの合計コスト見込みは 80,000 ドルということになります。開始時点での予測コスト 60,000 ドルから見込みのコストを差し引くことで、プロジェクトがこのペースで進んだ場合に完了時点でのコスト差異が -20,000 ドルだと判断できるのです。

完了時点での見込み差異方式では、現段階でのペースに関する情報をもとに、プロジェクトが完了時点でどれだけ予算から外れそうかを予測できます。

コスト差異の 5 種類

上述の 3 つのカテゴリは、コスト差異の計算方法 3 種類を表したものです。ここからは、計算できるコスト差異の 5 つの種類をご紹介します。

これらの計算式のそれぞれは、異なったカテゴリの予算のためのコスト差異の計算に使用でき、プロジェクトマネージャーは、予算を上回ったり下回ったりしているコストの原因を掘り下げ、それに応じて調整できます。

[インラインのイラスト] コスト差異の種類 (インフォグラフィック)

材料コスト差異

直接材料費のかかるプロジェクトでは、材料コスト差異が計算可能です。これは、材料のために立てられた予算と実際に費やされた費用との差を計算するものです。

材料費は、材料の値段に材料の量を掛けて算出できます。実際の材料のコストは、材料の分量や値段が変わった場合に、予算で立てたコストから逸れることがあります。

プロジェクトの半分完了の時点でコスト差異を計算し、材料コスト差異が予想よりも高い傾向がある場合、プロジェクトスコープを調整するか、余計にかかった材料コストをカバーする追加の資金源を見つける必要があるでしょう。

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人件費差異

人件費のコスト差異は、直接人件費のために立てられた予算と実際のコストとの差を指すものです。人件費が予算から外れる可能性があるのは、プロジェクトに予想以上の時間がかかる場合または時間あたりの賃金が増える場合です。先ほどのグラフィックデザインの例は、人件費のコスト差異の例と言えます。

もし会社の人件費のコスト差異が大きなプラス値、つまり立てられた予算が必要よりも多かった場合には、人件費を調整し、余った資金をコスト差異がマイナスになっている他の予算カテゴリに当てましょう。人件費のコスト差異がマイナス値の場合、チームの生産力が足りていない、あるいはプロジェクトスコープが予想を上回っているということを意味します。追加のトレーニングや、より優れた品質管理措置により、人件費のコストを下げることが可能です。

セールス差異

セールス差異は、どちらかというと出ていくコスト (支出) よりも、入って来るコスト (収入) に関するという点で、他の種類のコスト差異と異なります。セールス差異は、セールス要素を備えたプロジェクトでのみ生じるもので、たとえば、売られるものがない上記のグラフィックデザインの例では出てくることはありません。

セールス差異の計算は、売上の見積もりから実際の売上を引いたものです。これは、マイナス値が良い意味を表す、唯一の差異の種類です。予算での (予定された) 合計売上が 1,000 ドルで、実際の売上が 2,000 ドルだったとしたら、セールス差異は -1,000 ドルです。実際の売上が予算での売上を上回った場合、差異はマイナスになりますが、利益はプラスとなります。

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変動間接費差異

間接費 (オーバーヘッド) とは、ビジネスの運営に関連した費用です。変動間接費はビジネスの運営中に生じるコストで、ビジネスの生産性により増減するものです。運送費、倉庫のエネルギーコスト、機械のメンテナンスなどがすべて、変動間接費の例といえます。

変動間接費のコスト差異を計算するには、まず「1 時間あたりの標準変動費」を出す必要があります。それは、生産 1 時間あたりに生じた変動費の合計です。たとえば、ユニットあたりの運送費が 2 ドルで、1 時間に 10 ユニット生産するとしたら、1 時間あたりの標準運送費は 20 ドルということになります。

変動間接費のコスト差異は、一定期間の標準変動間接費と、値段の変化や労働時間の変化を考慮した結果、実際に生じた変動間接費との差です。

固定間接費差異

固定間接費は、実行された作業量に関係なく常に一定です。賃貸料、固定資産税、サブスクリプション費などはすべて固定間接費の例です。固定間接費の「固定」とは、間接費の種類と量のことを具体的に指しており、たとえば、オフィススペースをより長く使ったところで支払う賃貸料を増やす必要はありません (ただし、貸主が賃貸料を上げる可能性がないことを意味しているわけではありません)。

固定間接費の差異は、標準間接費 (予算で立てられた間接費) から実際の間接費を引いて計算します。数値は両方とも一定期間の間接費をすべて合計したものです。

会社に、賃貸料 (毎月 10,000 ドル) と事業保険 (500 ドル) という 2 つの固定間接費があるとしましょう。すると、6 か月かかるプロジェクトの標準間接費は毎月 10,500 ドル、合計 63,000 ドルです。プロジェクト半分の完了時点で貸主が賃貸料を 15,000 ドルに上げたとしたら、実際の固定間接費のコストが上がります。はじめの 3 か月は 10,500 ドルずつ、残りの 3 か月は 15,500 ドルずつ、つまり合計は 78,000 ドルとなります。

固定間接費のコスト差異は、標準固定間接費から実際の固定間接費を引いて計算し、その結果は -15,000 ドルとなります。

コスト差異を使って、プロジェクト予算を順調に保つ

プロジェクトのコストをコントロールし続けるための一番の鍵は、初めのコスト見積もりをできるだけ正確にすることです。それには、プロジェクトに必要な費用を決定するためにプロジェクトチームと密接に協力するようにしましょう。次に、財務部門や会計部門といった、内部の他のステークホルダーと協力して、生じうるコストや費用を正確に見積もっていきます。

そこからは、プロジェクト全体を通して費用カテゴリごとにコスト差異分析を定期的に行うことで、ミスや遅れによる支出が大きくなる前に、想定外のコストをしっかり把握し軌道修正ができるようになるのです。

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