株式会社Mizkan(以下、ミツカン)は家庭用・業務用の調味料や加工食品、納豆の製造販売を手がけ続ける老舗の食品メーカーです。そんな同社が近年変革を試みたのが、社内の情報共有環境です。グループウェアのNotesに依存していたところから、現場からの草の根の広がりとマネジメント層による後押しにより、現在は国内社員約830名が日常的に「Asana」を活用。年間470勤務日相当の業務削減を実現するだけでなく、意思決定そのものの変化を生み出しています。ミツカンの取り組みについて、カスタマーリレーション部 CRM推進チーム マネージャーの酒井 悠美氏、デジタル推進部の近藤 陽菜氏、同部 主任の立野 真代氏にお話を伺いました。
情報共有をグループウェアのNotesに統一していたが、サポート切れが近づき、開発もブラックボックス化が進行
新たな成長領域への挑戦で事業領域が広がり、関わる部門や人数が増えるほど「誰が、いま何に取り組んでいるのか」が把握できない状況
2020年8月のトライアル開始後もNotesに慣れたメンバーの戸惑いから定着せず、同年末に一度活用を停止
マネジメント層の発案で「Asanaによる業務の見える化プロジェクト」を立ち上げ、対象部署を絞り込んで再挑戦
タスクの中でコミュニケーションが完結するAsanaに情報を集約し、メール・チャット・Excelへの重複作業を解消
ライセンス払い出しの承認フロー、会議アジェンダ管理など活用範囲を全社的に拡大
国内社員約830名が日常的にAsanaを利用し、年間470勤務日相当の業務削減を実現
情報共有会のアジェンダ管理にAsanaを活用し、部課長会議は30分程度で終わるように変化
業務の可視化と標準化により社内外のメールコミュニケーションを大幅に削減し、対応漏れの防止と意思決定の迅速化を実現
情報共有会のアジェンダ管理にもAsanaを使うようになり、部課長会議は30分程度で終わるようになりました酒井 悠美氏
カスタマーリレーション部 CRM推進チーム マネージャー
ミツカングループの歴史は1804年、初代中野又左衛門が、酒づくりから生じる酒粕を原料に、発酵という自然の力を活かしてお酢を醸造したところから始まりました。以降220年以上にわたり変革と挑戦を積み重ね、現在は日本国内にとどまらず、アジアや北米、欧州へと活動の場を広げ、グローバルに事業を展開しています。
有力な同業他社がひしめく食品業界において、既存事業の磨き込みだけでなく、新たな成長領域への投資をいかに両立させるかは、同社にとって長年の経営課題でもありました。
そうしたなか、2026年度には新たなカテゴリーの成長を担う「グロース事業部」が発足しました。これまでの調味料や納豆といった主力事業に加え、まるごと素材の栄養をおいしく食べる「新しい食」を提案する「ZENB(ゼンブ)」や、発酵性食物繊維をおいしく取り入れられる「Fibee(ファイビー)」といった新ブランドの育成に力を入れる動きは、ミツカンにとって大きな変化のひとつです。
このように事業領域が広がり、関わる部門や人数が増えるほど、社内の情報共有とプロジェクト管理のあり方が重要性を増します。今後の成長のためにも「社内で誰が、いま何に取り組んでいるのか」を把握できる環境の整備は必須の課題になっていきました。
酒井氏がミツカンに2020年に中途入社し、最初に任された業務がAsana導入でした。当時、ミツカンにおける社内情報共有はNotesに統一されていました。「一つのツールですべてを完結させる文化が根づいていた一方、サポート切れが近づき、開発もブラックボックス化が進んでいました」と酒井氏は当時を振り返ります。
並行してMicrosoft 365(SharePoint、Teamsなど)の導入も進められましたが、複数人で進めるプロジェクト管理の課題は依然として残っていました。「より柔軟性の高いSaaS型で、気軽に、誰もが使いやすく、タスクと進捗が見える仕組みが必要だと感じていました。こうした課題感のなかで、口コミからトライアルがスタートしたのがAsanaです」(酒井氏)
2020年8月からトライアルとして、チームで抱える改善課題や導入プロジェクトといった「複数人で進める仕事」の管理にAsanaを活用しようと試みました。しかし、Notesに慣れたメンバーが多く、当初は新しいツールが増えることへの戸惑いも重なり、2020年末には一度活用を停止する局面を迎えます。
それでもAsana推進チームは諦めず、2021年から対象部署を絞り込んでの再挑戦に踏み切りました。転機となったのはマネジメント層からの後押しです。「単なるタスク管理ではなく、会社として『社員が今何をやっているのかが見えない』状況を変えたい」という問題意識から、マネジメント層の発案で、Asanaによる業務の見える化プロジェクトが立ち上がり、当時のデジタル推進と内部統制が一緒にタッグを組んでこのプロジェクトを進めていきました。
そのプロジェクトで最初に明確な手応えを感じたのは、R&D部門や工場をはじめとする生産現場でのタスク管理でした。「対象人数が多いこともあり、Asanaがもたらす効果のインパクトの大きさが知れ渡り、その後のスムーズな浸透を後押ししました」と酒井氏は強調します。
一つのツールですべてを完結させる文化が根づいていた一方、サポート切れが近づき、開発もブラックボックス化が進んでいました酒井 悠美氏
カスタマーリレーション部 CRM推進チーム マネージャー
Asanaを最終的に採用するにあたっては、いくつかの決め手がありました。ひとつは、働き方そのものへのインパクトです。Microsoft製品では個別のアプリケーションの使い分けが必要だったのに対し、Asanaならタスクの中でコミュニケーションを完結可能です。その都度メールを書き、チャットツールで告知し、必要であればExcelにも転記し、といった重複作業から解放され、朝に一度Asanaを確認するだけで情報共有が完了できました。
残業時間をはじめとした勤務改善効果を定常的に可視化できること、こうした可視化のための機能が充実していること、そして社内のコミュニケーションを一つのプラットフォームに集約できることも、選定の大きな理由となったといいます。加えて、新規事業プロジェクトでAsanaを試験運用した際にも、当時のCOOが「これならレポートで進捗を信号機のように把握できる」と可視性を高く評価したといいます。
Asanaの活用はプロジェクト管理にとどまらず、定常業務にも徐々に広がっていきました。「異動した社員が異動先の部署で『Asanaがないと不便』、と周囲を巻き込んでいくケースが積み重なり、利用範囲は着実に拡大していきました」と、近藤氏は振り返ります。
各部署で生まれたこうした小さな成功体験が部署を越えて伝播していったことも、利用拡大を後押ししました。そのようにして広まったAsanaは単なるタスク管理ツールを超えて、名実ともに働き方そのものを変える存在になっていったのです。
異動した社員が異動先の部署で『Asanaがないと不便』、と周囲を巻き込んでいくケースが積み重なり、利用範囲は着実に拡大していきました近藤 陽菜氏
デジタル推進部
現在Asanaはコミュニケーション部門、開発や生産、品質環境など、社内の幅広い部門で活用されています。その用途も、社内外双方で進める新規事業プロジェクトのWBS(作業分解構成図)管理や、ライセンス払い出しの承認フロー、オウンドメディアの新規・改修タスク管理、月次の定例会議のアジェンダ管理、面談や1on1といった課のマネジメントまで多岐にわたります。例えばライセンスの払い出しでは、申請から承認までのフローをAsana上で完結させることで、誰の承認待ちで止まっているのかがひと目で分かるようになり、ガバナンスと業務スピードの両立につながりました。月次の定例会議でも、あらかじめAsana上にアジェンダを整理しておくことで、会議の場では議論そのものに時間を割けるようになっています。
酒井氏自身も複数のプロジェクトでAsanaを活用してきました。2023年にはファンコミュニティ「ミツカン365」の構築プロジェクトに参画(2024年6月サービス開始・現在の登録者数19万人)。社外パートナーやベンダーも交えながら、社内向けの見積もり情報などは社内公開しつつもタスクはクローズドに保ち、社外の協力会社との仕事管理に、社内外の双方が可視化できる進捗管理基盤としてAsanaを活用しました。その後異動したCRM推進チームでは、メールやLINE配信の管理、部署内の事務的な連絡まで、ほぼすべての業務をAsana上で運用しています。
さらに、新製品の量産化に向けた実機レベルでのテスト検証や生産技術の研究を行う大型の実証設備「MILABO(MIZKAN MIRAI LABO)」の建設プロジェクトでは、PMOとして複数部門にまたがる進捗をAsanaで管理。現在はグローバルの新規事業チームにも携わり、カナダのブランドデザイン会社との協業プロジェクトについても、Asanaでの進捗管理を進めています。新事業やグローバル展開の現場でAsanaが基盤として機能しているのです。
近藤氏が紹介するのは、工場現場での活用です。「設備や品質トラブルへの対応、シフト管理などにおいて、前日に起きた出来事をAsanaに記録し、その内容を見ながら引き継ぐ運用が定着しています。担当者の動きが可視化されることで、情報や人員の重複なくスムーズな引き継ぎが実現できました」と説明します。
同じくデジタル推進部の主任、立野真代氏は、工場や不動産を管理する業務での導入を支援したといいます。「全国5つの工場にまたがる設備管理情報をダッシュボードに集約したことで、承認待ちのタスクや進行中のタスクがひと目で把握できるようになりました。関係者の多い業務だけに、現場からも効果を実感する声が上がっています」
全国5つの工場にまたがる設備管理情報をダッシュボードに集約したことで、承認待ちのタスクや進行中のタスクがひと目で把握できるようになりました。関係者の多い業務だけに、現場からも効果を実感する声が上がっています立野 真代
デジタル推進部 主任
こうして現在は国内社員のうち約830名が日常的にAsanaを利用しています。Asana社のレポートによれば、年間で470勤務日相当の業務削減が可能になっているとのことです。この数値はマネジメント層への報告にも用いられており、投資の妥当性を裏づける根拠のひとつになっています。
定性的な効果も着実に積み上がっています。2020年からの導入・推進活動を経て、現在ではプロジェクト管理、承認フロー、オウンドメディア運営、会議運営、組織マネジメントといった幅広い業務がAsanaに集約されました。社内外のメールコミュニケーションも大幅に削減され、業務の可視化と標準化が進んだことで、対応漏れの防止や意思決定の迅速化にもつながっています。
変化はマネジメント層にも及びました。酒井氏は「情報共有会のアジェンダ管理にもAsanaを使うようになり、部課長会議は30分程度で終わるようになりました」と語ります。会議や報告に費やしていた時間が、本来注力すべき議論や判断へと振り向けられるようになったのです。
情報共有会のアジェンダ管理にもAsanaを使うようになり、部課長会議は30分程度で終わるようになりました酒井 悠美氏
カスタマーリレーション部 CRM推進チーム マネージャー
今後1年程度のAsanaの活用計画について、近藤氏は2つの方向性を挙げます。ひとつは、現在は部署やチーム単位での利用にとどまっている状況から、複数部署が関わる大規模プロジェクトでの部署横断的な活用を広げていくことです。「履歴の蓄積が進めば、テンプレート化によってさらに業務を効率化できるはずです」(近藤氏)。
もうひとつは、AsanaのAI機能と組み合わせた業務効率化です。プロジェクト管理を通じて蓄積された情報から、より多くのノウハウを引き出していくことを目指しています。
酒井氏と立野氏が期待を寄せるのは、マネジメント層による積極的な活用です。個々の従業員やチームの進捗がひと目で把握できる利便性を、上位のマネジメントや経営の意思決定にまで広げていけば、組織内のコミュニケーションはさらに円滑になり、判断のスピードも一段と増し、同社はさらなる成長を目指していけるでしょう。
ミツカングループの歴史は1804年、初代中野又左衛門が、酒づくりから生じる酒粕を原料に、発酵という自然の力を活かしてお酢を醸造したところから始まりました。以降220年以上にわたり変革と挑戦を積み重ね、現在は日本国内にとどまらず、アジアや北米、欧州へと活動の場を広げ、グローバルに事業を展開しています。
Asana を使えば組織全体で最高の成果を上げられます。