デジタルツールで従業員の体験を損なわないために

2024年4月5日
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この記事は Reworked に掲載されたものです。

優れた企業は、従業員体験 (EX) を重視するにとどまらず、強いこだわりを持っています。これまでは、そのこだわりがクライミングウォールやクッションソファー、バリスタの作る本格的なラテ、気持ちを落ち着かせるための瞑想スペースといった、大人の遊び場のようなオフィス空間に反映されていました。

しかし、今日の分散型ワークの時代においては、オフィスにいる従業員もリモートの従業員もデジタルツールに大きく依存しているため、EX も急速にデジタル化してきています。皮肉な状況です。企業はデジタルツールに莫大な資金を投じています。1 人の従業員にかかる SaaS ライセンスの費用が、医療費を上回るほどです。しかし、こうしたツールがデジタル従業員体験 (DEX) に与える影響という重要な点は見落とされています。

導入したデジタルツールによって、従業員体験が損なわれているかもしれません。その解決策を解説します。

問題を認識する

この問題に真っ向から取り組むための最初のステップは、問題を認識することです。ある推定によると、平均的な企業は 300 個を超える SaaS ツールを扱っており、その多くがコラボレーションツールです。デジタルツールが整理されていない状況は不便なだけでなく、従業員の時間と集中力を大幅に消耗します。

Asana のシンクタンク The Work Innovation Lab が、スタンフォード大学の Bob Sutton 教授およびカリフォルニア大学サンタバーバラ校の Paul Leonardi 教授と共同で実施した調査により、こうした煩雑な環境が与える大きな影響が明らかになりました。コラボレーションツールの切り替えだけで、一日あたりなんと 57 分もの時間が失われています。さらにタスクでどのコラボレーションツールを使うか決定するのに、30 分失われています。つまり、生産的な仕事に費やされるべき時間が、ツールの切り替えに伴う脳内作業で 1 時間半近くも失われているということになります。

それだけではありません。ツールを切り替えるたびに、「再集中コスト」もかかります。集中力と勢いを取り戻すのに、20 分以上かかる場合もあります。こうした頭の切り替えやその結果生じる集中力の低下は仕事のあらゆる側面に波及し、広範な影響をもたらします。Asana の調査によると、ナレッジワーカーのほぼ 3 分の 2 がデジタル疲れを報告しており、個人の幸福度と組織の効率性の両方に直接的な影響を与えています。

技術監査を始める

この問題に対処し、DEX を改善するための次のステップは、技術監査を始めることです。会社のデジタルツールの定期的な健康診断と考えてください。当社の調査によると、ナレッジワーカーのほぼ半数 (43%) が、自社がコラボレーションツールの有効性を定期的に評価しているかどうかわからないと回答しています。企業が定期的な監査を実施しないと、重複したツールや最適でないツールが知らず知らずのうちにのさばり、デジタル環境が混乱することになります。

技術監査は、ただ単にツールの数を数えるだけではありません。誰が、どのツールを、どのくらいの頻度で、具体的にどんな目的で使っていて、どれだけの価値を生んでいるのか、理解する必要があります。適切な技術監査を行うことで、余分なツールを排除できるだけでなく、デジタル環境を細部まで調整し、効率を高める新しい連携やワークフローを導入できます。その結果、使用しているテクノロジーを、単なるツールや支出内訳ではなく、DEX と組織全体のパフォーマンス向上に不可欠なものにできます。

従業員の賛同を得て、トップダウン戦略に取り組む

効果的なデジタルツールの管理には、トップダウン戦略が必要です。当社の最近の調査で、74% の従業員は全社員が共通のコラボレーションツール群を使うことを望んでいることがわかりました。細部までカスタマイズされたツールは魅力的に思えますが、従業員は頭の切り替えを減らし、仕事に必要な情報をすぐに見つけられるような、標準化されたツールを望んでいます。

当社が最近行った「コラボレーション浄化」実験でも、標準化とトップダウン型指導のニーズが明らかになりました。この実験では、一部のコラボレーションツールの使用を 2 週間停止するよう従業員に求めました。その結果、回答者の半数以上が、テックスタック内の余分なツールを判断するのにこのデジタルデトックスが役立ったと回答しました。

ただし、リーダーによるサポートや指導の必要性も示されました。リーダーは、デジタルツールの使用に関する明確なガイダンスやルールを従業員に伝える必要があります。Slack はどんなときに使用するのか、Google ドライブはいつ使うのか、Asana は、PowerPoint は、そしてその理由は?ここで重要なのは、ただトップダウン型で指導することではなく、明確性と一貫性、そして戦略です。また、従業員からのフィードバックを積極的に求め、取り入れることも重要です。ツールや方針は従業員の理解を得ていて、生産性向上に役立っているでしょうか?それとも、単に余計な手間を増やしているでしょうか?確かめましょう。

CIO の戦略的役割を認識する

最高情報責任者 (CIO) や最高技術責任者 (CTO) などの IT リーダーは、トップダウン型の技術戦略をリードし、デジタルツールの無秩序な増加を抑える上で重要な役割を果たします。IT リーダーの役割は、「ツールの門番」になることではなく、戦略的な警戒です。つまり、会社の中に入り込んでいく、一見無害そうなツールを監視することです。CIO は、組織の DEX をより効率化する上で重要な役割を果たします。デジタル環境を整理するために「適切な摩擦」を取り入れた、ある企業の CTO の実例をご紹介します。

この CTO は会計チームに、企業のカードで請求されているすべてのソフトウェア費用を精査し、報告するよう指示しました。IT 部門によって承認されていないツールの使用は直ちに保留となり、マネージャーにはツールの選定理由に関する正式な説明が求められました。その結果、Slack、Teams、Webex など、同様の機能を持つツールが複数使われていることが判明しました。最終的に、この企業は SaaS ツールの数を 55 個から 20 個に減らすことができました。

DEX の未来

従業員体験がますますデジタル化している今、企業は適応するか、取り残されるかという重大な局面にあります。必要なのは単なる手順の積み重ねではなく、戦略の抜本的な見直しです。

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