この記事では、アクティブリスニング (active listening) の重要性や効果、具体的な実践方法について解説します。ビジネスシーンでの信頼関係構築やチームの連携強化に役立つスキル「アクティブリスニング」。聞く力を高めるためのポイントや注意点もわかりやすくまとめるので、今後の参考にしてみましょう。
更新: この記事は、アクティブリスニングのタイプとその歴史に関する記述を含め、2025年 4月に改訂されました。
人の話を「聴く」という行為は、ただ耳を傾けるだけではありません。相手を理解し、信頼関係を築き、人間関係を深める大切なコミュニケーションスキルです。この記事では、さまざまな「聴く」スタイルを紹介し、相手の言葉にしっかりと注意を向け、共感しながら受け止めるアクティブリスニングの実践方法をご紹介します。
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人の話を聴く方法には 4 つのタイプがあるとされています。
【共感的傾聴】理解するために聴く方法です。誰かが個人的な話をしているときにどのような聴き方をするか考えてみてください。このタイプの聴く方法では、自分ではなく、相手に焦点を当てます。
【鑑賞的傾聴】自分自身が楽しむために聴く方法です。音楽を聴くとき、誰かのスピーチを聴くとき、宗教儀式に参加するときなどに、どのような聴き方をするかを考えてみましょう。
【包括的傾聴】何か新しいことを学ぶために聴く方法です。このタイプの聴き方は、ポッドキャストやニュース、授業などの教育的な講義を聴くときに使われます。
【批判的傾聴】これは、誰かが言ったことに対する意見を述べるために聴く方法です。このタイプの聴き方は、誰かと議論しているときや、営業担当者の話を聞いているときに使われます。
アクティブリスニング (理解するために聴く方法) は、共感的傾聴のカテゴリに属します。このような聴き方をすることで、強い人間関係を築き、友人や同僚をより深く理解することができ、さらには自分自身の共感力を深めることもできます。
アクティブリスニングとは、相手の言っていることを理解するために耳を傾けることです。アクティブリスニングを実践するときは、議論や会話のように何を言うべきかを考えるのではなく、相手の話に集中します。そして、自分がきちんと理解したかを確認するために、聞いたことを相手に言い換えて伝えるのです。会話の内容によっては、その話題をより深く掘り下げるために、具体的な自由回答形式 (オープンクエスチョン) の質問をすることもできます。
アクティブリスニングを使うと、有意義で興味深い会話を交わせるようになります。自分が言いたいことを考えたり、相手の会話を邪魔したりせずに、相手の話にしっかりと耳を傾けることで、より効果的なコミュニケーションスキルが身につきます。
アクティブリスニングは、アメリカの心理学者カール・ロジャーズ氏によって 1957年に提唱されました。この手法では、聞き手がただ情報を受け取るのではなく、相手の感情に寄り添いながら耳を傾ける姿勢が求められます。日本語では「積極的傾聴」と呼ばれ、信頼関係を築くための基本的なコミュニケーションスキルのひとつとして広く知られています。
ロジャーズ氏は、アクティブリスニングの原則として、以下の 3 つを挙げています。
共感的理解: 相手の立場や感情を理解し、共感を示すこと。相手の気持ちに寄り添い、理解していることを伝える。
無条件の肯定的関心: 相手を無条件に受け入れ、評価や判断をせずに、ありのままの相手を尊重する態度。
自己一致: 聞き手が自分の感情や考えを偽らず、誠実で一貫した態度で接すること。自己表現を通じて信頼を築く。
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Asana とは?コミュニケーションには大きく分けて 2 つのタイプがあります。ひとつは「バーバルコミュニケーション (言語的コミュニケーション)」で、言葉を使って意思を伝える方法です。会話や書き言葉などがこれにあたります。
もうひとつは「ノンバーバルコミュニケーション (非言語的コミュニケーション)」で、表情や視線、声のトーン、身ぶり手ぶりなど、言葉以外の要素で気持ちや意図を伝える方法です。アクティブリスニングでは、これら両方を意識して使い分けることが、相手の理解や信頼につながります。
バーバルコミュニケーションの例: 「なるほど」「それでどうなったんですか?」など、相手の話に応じて言葉で反応すること。要約や言い換え、共感の言葉も含まれます。
ノンバーバルコミュニケーションの例: 相手の目を見て話を聞く、姿勢を相手に向ける、うなずき、表情、声のトーンなど、言葉以外で「ちゃんと聞いていますよ」という姿勢を伝えることです。
この 2 つのタイプ両方をバランスよく使うことで、相手は「本当に理解しようとしてくれている」と感じやすくなり、信頼関係の構築に役立ちます。
記事: 職場で効果的にコミュニケーションをとる 12 のコツアクティブリスニングは、特にチームメンバーとの対人関係を構築し、より良好な関係を築く最良の方法のひとつです。このソフトスキルは、対立解決、問題解決、建設的批判を行う上で重要な役割を果たします。
アクティブリスニングを実践すると、このような効果があります。
コミュニケーション能力の向上
コラボレーションの促進
相手の言っていることをきちんと理解する
より深くでつながる
共感を示す
対立を解決する
信頼を築く
アクティブリスニングは、時間をかけて開発するソフトスキルです。アクティブリスニングができる人は、たとえば以下のようなことを日々実践しています。
詳しく知るために、自由回答形式の質問をする。
相手の言っていることを言い換えたり、要約したりして、自分がしっかり理解していることを確認する。
自分の偏見や視点を捨てて、偏りのない聴き方をする。
自分の考えではなく、相手に集中することで忍耐力を発揮する。
アイコンタクトや身を乗り出すなど、積極的な非言語的コミュニケーションをとる。
邪魔になるものや、並行作業を避ける。
このスキルをトレーニングするためには、今から紹介する 6 つのアクティブリスニングテクニックを試してみてください。
会話の流れの中で、自分の考えを加えたり、誰かが話したことを詳しく説明したりしたくなることがあります。このような邪魔をすることで、会話が進むこともありますが、理解しようと積極的に耳を傾けているときにはしたくないことです。
【ヒント】アクティブリスニングを実践するには、相手の言葉にすべての注意とエネルギーを注ぎます。相手の話を聞いていると、どうしても自分の考えや意見が出てきてしまいますが、理解するためにはその考えは一旦置いておくようにしましょう。
アクティブリスニングを学んでいると、「ノンジャッジメンタルリスニング (偏った判断を避ける聞き方)」という言葉を目にすることがあります。これは、ポジティブな偏見やネガティブな偏見というよりは、「自分の中の思考」を指しています。この場合のジャッジメント (判断) とは、ポジティブであろうとネガティブであろうと、誰かが言ったことに対してあなたが持つ考えのことです。他人の話に反応してこのように心の中で考えてしまうということは、本質的に、相手の話ではなく自分の考えに焦点を当てていることになります。
【ヒント】可能であれば、判断せずに話を聞き、頭に浮かんだ考えを一旦置いておくようにしましょう。自分の考えが相手の考えと違っていても大丈夫です。アクティブリスナーになるには、相手の話に集中しなくてはいけません。そうすることで、相手をより深く理解することができるようになります。
アクティブリスニングを実践するうえで効果的な方法のひとつが「オウム返し」です。これは、相手の発言をそのまま、あるいは要点をくり返して伝え返すことで、「ちゃんと聞いているよ」という姿勢を示すテクニックです。相手の言葉を受け入れ、否定せずに返すことで、安心感のある雰囲気をつくり出し、会話がより深まりやすくなります。
【ヒント】「オウム返し」は、相手の言葉をただくり返すのではなく、その中に含まれるキーワードや感情を丁寧に拾い上げて返すことがポイントです。たとえば、「プレゼンがうまくいくか不安で…」という言葉には、「プレゼン」「不安」といったキーワードと、心の状態が含まれています。この場合、「プレゼンのこと、不安なんですね」と返すことで、内容と感情の両方を受け入れていることが伝わります。
相手の話が終わったら、聞いたことを自分の言葉で言い換えてみましょう。言い換えをすることで、相手が表現しようとしていたことを確実に理解することができます。間違った言い換えをしたり、相手が伝えようとしていたことを見逃したりしても、相手が明確にしてくれるはずです。そうすれば、会話をより深く掘り下げることができるのです。
【ヒント】余分な情報を加えるのではなく、言い換えや要約をすることで、自分の関心が相手に向いていることを示すことができます。アクティブリスニングの目的は、相手に焦点を当て、自分の判断を差し控えることなので、言い換えの際に自分のコメントや意見を加えることは避けてください。
アクティブリスニングのプロセスではあまり話をしないので、ポジティブなノンバーバルコミュニケーション (非言語コミュニケーション) を使うことが最良のサポート方法になります。非言語的コミュニケーションとは、前述のとおり、言葉を使わずに伝えるもので、顔面の表情、ジェスチャー、姿勢、ボディランゲージなどのことを言います。
ポジティブな印象を与えるには、話している人の目を見て聞いていることを示しましょう。腕を組んだり、そわそわしたりするのは、気が散っている証拠となってしまうので避けましょう。また、必要に応じて、笑顔でうなずくこともできます。これらの非言語シグナルは、自分が相手の話に集中していることを明確にするだけでなく、相手がより快適に会話ができるようにする効果があります。
【ヒント】ビデオ会議のようなバーチャル会議の場合は、相手が話している間、笑顔でうなずいてください。他の作業をしたり、スクリーンの外を見たりしないで、ビデオをつけたまま、話し手に注意を向けることで、自分が話を集中して聴いていることを示すことができます。
相手が話を終えた後は、自由回答形式の具体的な質問をすることで、自分がきちんと話を聴いていたことを示しましょう。自由回答形式の質問とは「はい」「いいえ」で答えられない質問のことです。
このとき、自分の偏見を加えないようにしましょう。相手の話に集中するためです。
たとえば、次のような質問をしましょう。
「そのことについて、もう少し詳しく教えてください」
「どのように感じましたか?」
「なぜそのような選択を取ったのですか?」
「何かお手伝いできることはありますか?」
【ヒント】偏見を含むような質問や発言は避けましょう。ここでは悪い例と、その代わりに使える例を紹介します。
「なんでそんなことをしたんですか?」→「その動機は何だったのですか?」
「本気で言っているわけではないですよね?」→「どういう意味ですか?」
「意味がわかりません」→「話についていけていないので、~を説明していただけますか?」
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アクティブリスニングを実践したことがない人は、実際にやってみるとなると少し戸惑ってしまうかもしれません。ここでは、アクティブリスニングで同僚をサポートしている人と、その同僚の対話例を紹介します。例を挙げる前に、「理解するために聞く」ときに使う重要な対話の要素を紹介します。
「~についてもう少し詳しく教えてください」
「なるほど」
「その後は何が起きたのですか?」
「つまり、~ということですね」
「その後どう感じましたか?」
「~については、どうしたいですか?」
「何かお手伝いできることはありますか?」
「お時間をいただき、ありがとうございました」
チームメンバーの一人が、新しい構想をチーム全体に発表することを任されました。発表する前に、あなたの意見を聞きたいと言っています。アクティブリスニングのスキルを使うことで、チームメンバーをサポートし、アイデアを引き出すことができるでしょう。その例を紹介します。
【同僚】「今回の取り組みでは、当社の Instagram でさまざまなお客様を特集しようと思っています。毎月、その月のテーマに沿ってお客様を紹介していきましょう。たとえば、2月の「女性史月間」には女性クリエイターを、10 月の「黒人史月間」には黒人クリエイターを取り上げるのはどうでしょうか」
この会話でアクティブリスニングを実践するには、まず聞いたことを言い換えてみましょう。
【あなた】「つまり、毎月異なるお客様を Instagram で紹介し、そのプログラムを女性史月間のような毎月の大きなテーマに合わせたいということですね...」
そして、その話題をより深く掘り下げるために、自由形式の質問をします。
【あなた】「どのような投稿になるのでしょうか?」
【同僚】「お客様に 1 日限定で Instagram の投稿をお任せするのはどうかなと考えています。そうすればお客様の声も拡散できますし、お客様の作品も披露できます」
相手の話を聞いていることをアピールしましょう。
【あなた】「なるほど、いいアイデアですね...」
そして、具体的に掘り下げて興味を示します。
【あなた】「このようなクリエイターをどのようにして見つけるのか、詳しく教えてください」
【同僚】「来月はプライド月間なので、もしマネージャーから許可が出れば、すでに X で話したことがあり、クィアであることを公表している女性に声をかけて、興味を持ってもらえないかと考えています」
相手の話を聞いていることをアピールしましょう。
【あなた】「クィアであることを公表している女性に、X で声をかけるのはいいアイデアですね!」
そして、自由形式の質問をしてみましょう。
【あなた】「何か手伝えることはありますか?」
アクティブリスニングは、対人コミュニケーションを向上させるための効果的な方法ですが、常に実践しなければならないわけではありません。上司や部下、同僚との対話では重要ですが、特定の状況においてアクティブリスナーになることで、より良い人間関係を築くことができます。特に、相手の気持ちや意図を深く理解しようとする姿勢が、信頼感や安心感を生み出し、関係を改善する手助けとなります。
チームを管理している場合、アクティブリスニングは従業員に自信を持たせ、話を聞いてもらっていると感じてもらえる便利なツールです。熱心に耳を傾け、その内容を繰り返すことで、チームメンバーがサポートされていることを実感することができます。
マネージャーとしてアクティブリスニングを使用してできることを紹介します。
チームメンバーが対立して相談してきた場合、アクティブリスニングを用いて相手の話を理解し、明確にします。理解するために耳を傾けることで、チームメンバーがしっかりと聴いてもらえていると感じられるようになります。効果的に対立を解決するためには、自分の考えや感情にとらわれてはいけません。チームメンバーを効果的にサポートするためには、相手の話に集中することです。対立解決に役立つコンシャスリーダーシップ戦略については、こちらの記事をご覧ください。
会議の進行役としては、特にチームブレインストーミングを行う会議などでは、全員の意見が聞き入れられ、全員のアイデアが検討されるようにしたいものです。聞き方を工夫することで、相手の言いたいことをすべて引き出すことができます。そして、その言葉を言い換えてチームに伝えることで、全員が理解していることを確認し、チームメンバーにアイデアを広げる機会を与えることができます。
記事: ファシリテーターとは?役割、スキル、上手くこなすコツを紹介マネージャーとしての問題解決とは、解決策を提示することではなく、チームメンバーが自分で結論を出せるようにサポートすることです。自由回答形式の質問と効果的なリスニングは、直属の部下を助けるのに役立ちます。多くの場合、部下は自分の問題に対する答えをすでに知っているものです。それに気づいてもらうために、明確にするための質問をするのです。
チームメイトが解決すべき問題を持ち出してきたら、その内容を振り返ってみましょう (「つまり、こういうことですか?」)。問題を聞き返すだけで、すでに答えを知っていることに気づくこともあります。”
職場でアクティブリスニングを有効活用できるのは、マネージャーたちだけではありません。チームを管理していなくても、アクティブリスニングは同僚との関わりを深め、結束力の高いチーム環境を築くのに役立ちます。
一人のメンバーとしてアクティブリスニングが使える場面にはこんなものがあります。
一番効果的な対立解決は、1 対 1 で行われるものです。同僚が職場での対立について相談してきた場合、アクティブリスニングを用いて相手の見解を理解しましょう。積極的に耳を傾けることで、心を開いて状況に臨むことができ、より効果的に解決策を見出すことができます。
チームメンバーとのつながりを深めることができれば、より効果的なコラボレーションが可能になります。チームメンバーがアイデアや意見を話しているときには、アクティブリスニングのテクニックを使って相手の話をしっかりと聞きましょう。偏見を持たずに、自分の意見を一旦置いておくことで、チームメンバーが何を言おうとしているのかをより効果的に理解し、その後で自分の考えを伝え、結果的なコラボレーションを促進することができます。
記事: チームによるコラボレーションの効率をアップさせる 10 個の簡単な手順Asana のイベントに参加して、プロジェクト管理や働き方改善、業務効率化に関する有益な情報を得ましょう。ツールを最大限効果的に使う方法も学ぶことができます。
アクティブリスニングとは何か、そのメリットと実践方法をまとめました。
アクティブリスニングは、その他の対人スキルと同様に、習得するには時間がかかります。また、常にどんな場面でも使わなければならないわけではありません。しかし、対話は重要なコミュニケーションの手段です。特に、同僚が何かを話しているときにアクティブリスニングを実践することで、会話に共感やつながり、深い理解をもたらします。相手の話を理解するために聴くことによって、チームメンバーとの距離が縮まり、コラボレーションのハードルが下がり、チームワークがより良くなります。
詳しくは、あなたが活用していない最善の対立解決戦略をご覧ください。
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